朝顔

日々の見聞からトンガったことを探して、できるだけ丸く書いてみたいと思います。

破綻、破産

2010-01-25 | もろもろの事
JALの企業再生法申請を伝える記事です。(2010年1月20日)

 会社の倒産を破産と普通はそう呼びますが、最近は企業再生法の適用が大手会社の場合には増えていて、その場合は資産を保全するので破産とはいえなくなりました。
 


 「破産」すると、その企業は所有する「全ての財産」を差し出して、債権者の弁済に使います。それでも不足する債務があることが多く、その分(債務超過額)は貸し手の損失となります(返済してもらえない)。資本金も債務の弁済に使われますが、それ以上は株主に債務の請求はありません。「有限責任」の原則です。まれに黒字倒産もありますがそれは、別の話題。

 「破綻」した会社が、裁判所に企業再生法の適用を申請し、それが承認されると、中核の業務を継続しつつ、業績を回復する方法を探ります。
 会社の解散を意味する「破産」はしないので、別の用語で「破綻」という表現が使われています。もとは「着物が破れて使用に耐えない」という様な意味だそうです。

 そもそも、なぜ「破産」という仕組みがあるのでしょうか?

 企業は「法人」、つまり法律で定義された「人格」を持ちます。その法人が事業を行うために資本金を集めて資金を作り活動を開始します。もし業績が悪くなり、負債額が資産と資本金の総額よりも大きくなると、特別な理由がない限り、借り入れが出来なくなります。借金の返済日に支払いが出来なくなります。期日に手形が「不渡り」(指定銀行で決済できない)、そして「倒産」「破産」となります。

 法人は、生物ではないので自然死することはないのです。ですが、どこかで決着をつけないと債務、各種の契約や税金など社会的約束の処理が不可能となり、ゴミがたまり整理がつかなくなるので、活動停止して再建の見込みのない会社は解散とします。その際、負債のほうが多いと倒産、破産になります。




 さて、

 「貸し手責任」とは、会社に資金を貸している銀行などの金融機関・企業と、物品をその会社に販売してまだ代金を受け取っていない取引先などの「責任」のことです。お金を貸すときに銀行などは、その会社の経営状況を把握しているはず。取引先が物品を納入するときも、支払い条件を承認しています。現金払いなら、責任はからみませんが。
 破綻可能性が高い会社に、資金を貸したり、物品を後払いで販売していることは、いざとなったら回収できない(返してもらえない)ことを承認しているとみなされます。そのリスクを担保するため貸付金利を高くしています。それが「責任」の意味。

 「株主責任」とは、株式会社を始めるときに最初に設備資金や運転資金が必要なので出資者を募って資本金を作ります。出資比率に応じて、株券を発行し株数を割当てます。現在は、株券は紙ではなくて全て電子データとして、株数と所有者氏名、売買記録などが公的管理会社に記録されています。その後、会社が成長すると増資をして徐々に資本金が増加します。
 分譲マンションのオーナー持分と同様、「株主」はその会社の所有者の一人となり、株数に応じて所有権を有することになります。

 株主とは所有者なので、借金を全て返すために資本金を全部使っても返済しきれない場合、所有権を放棄して「清算」することになります。ただし、それ以上の「債務」を株主が請求されることはありません。この点は、個人破産の清算より「甘い」です。(個人の破産では、所有する個人資産以上の金銭返済は免除されますが、ペナルティとして公民権の停止があります)

 その株主責任ですが、銀行、保険会社や商社など大手の株主は出資先企業の経営を十分に監視し、意見申し入れをする専門知識をもつスタッフを抱えています。
 一方、個人株主は、新聞雑誌、インターネットに公開される経営情報だけを頼りに株を購入して「株主」になっています。そのようなハンディがある株主にも同等な「責任」を負わせることが、合理的でしょうか。

 株式市場(東証など)に上場している全ての会社は、法律と規則で、株価を左右するような経営情報の「適時開示」が義務付けられています。
 新聞報道によれは、数千億円に上る債務超過があると伝えられています。それが実態だとすると、粉飾決算をしたか、虚偽の情報を公開したか、少なくとも適時開示に違反しています。その結果、個人投資家は経営者の違法行為により損害を被った。したがって、経営者に損害賠償の請求する集団訴訟を起こせば、ある程度の賠償を得られると思われます。

 米国には、この種の「クラスアクション」制度があり、多数の株主を集めて訴訟を起こす弁護士が多いので弁護士サイドから勧誘があるようです。


引用www.safespeedlafayette.com/


次の論点は、日本の航空輸送を支えてきたといえども、法律的には「民間企業」のJALに税金を投入して救済することの可否です。
 
 ダイエーや三洋電機は破綻後、分解して価値の残っていた事業だけは売却されました。山一證券は破産し解散。
 大手銀行各社は破綻しそうになり、合併し公的資金を資本金として補填して資金力を増加して乗り切りました。その後政策的に預貯金金利を低く抑える「見えない税金」方式にて業績を回復し、公的資金の返済を果たしたわけです。

もう一つの論点は、「行政の責任」です。新聞の記事やテレビの解説でもこの言葉が出てきます。政治、国会での決議、与党の責任、大臣を最高責任者とする官庁の責任とは、どう整理できるのでしょうか。
 政治家は選挙で落選させることで、理論的には責任をとることになるのでしょう。行政官は、法的には、法律の規定と大臣の指揮下で業務しているので、善管義務違反以外には責任を問いようがないでしょう。文字通り、真に「親方日の丸」ですから。

 だとすると、政党サイドに政策企画機能や調査研究を大幅に移して立法スタッフの能力を格段に向上すること、行政職幹部は政治任用すること、行政官のインセンティブ(人事、昇格・昇給、ボーナス等)とペナルティ(免職、処罰等)の制度を整備すること、公務員の転職・中途採用・官民間異動を容易にすること、最終的な政治と行政の責任は選挙で決着をつけること、などの根本的な制度改革が必要になると思われます。


 
コメント
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