2015年11月のテーマは「山梨市の丸石道祖神」。1日からは、八幡地区を5回に分けて、16日からは、山梨、加納岩、日下部、日川、後屋敷を各地区ごとに分けて掲載します。
各地区は、昭和29年、合併して旧山梨市になる前の町村です。なお、岩手地区は、日程の都合で取材していません。
日下部地域は、昭和29年合併して旧山梨市になる前の日下部町。
山梨市の中央部で市役所周辺、JR東山梨駅北側一帯。
▼下井尻424番地路傍
台石に珍しく石工銘が彫られている。
「高遠 石工浅次郎」。
私にもブランド信仰があると見える。
「おっ、高遠の・・・」
それとなく風格がありそうに見えるから面白い。
▼下井尻776番地 西上組道祖神場
この道祖神場のどんど焼きについては、ブログ「山梨県峡東地域の道祖神祭」http://www.digi-ken.org/~archive/kyoto_dosojin.html#simoijiri
に詳しく載っています。「NPO地域資料デジタル化研究会デジタルアーカイブ」の許可を得て、写真と文を紹介します。
山梨市下井尻のどんど焼き行事では、「おこや」と呼ばれるわら小屋を作る。同地区の西上組では、伝統的に中学生以下の子供達が組内の家庭を回り、小屋の材料となるわら、竹、薪(ここでは「もしき」と呼ばれる)をもらい集める。この作業を昔は、「木勧進」(「きっかんじょ」と呼ぶ)といったが、現在では、「きっかんじょ」は小正月の前の晩に、組内の家庭を回り、祝い言葉を申して、金銭をもらって歩くことの意味に使われる。祝い言葉は以下の様である。
「きっかんじょ、きっかんじょ、お祝いもうせ。家内安全、農業繁盛(または商売繁盛)」
小屋作りのリーダーは「親方」と呼ばれ、中学3年生から選ばれる。親方は、小屋作りの指揮をするほか、きっかんじょで得た祝い金の分配を行う役目もする。
■山梨市下井尻西上組の道祖神は、丸石の数の多さと礎石の石組が大きいことで知られる。「おこや」と呼ばれるわら小屋は、道祖神隣の「道祖神場」という専用の空き地が確保されている。 おこやは、切り妻式で、昭和30年代頃までは、内部にいろりを設けて、餅をやいたり、甘酒を暖めて呑んだり、遊びの場となっていた。現在は、どんど焼きの火勢を強めるため、果樹の剪定枝を詰め込んでいる。
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山梨市下井尻西上組のどんど焼き行事を記録に残した。(平成13年1月14日夜撮影) |
■おこやが燃え上がる瞬間
提供・「NPO地域資料デジタル化研究会デジタルアーカイブ」 |
▼七日市場 辻四つ角 辻組道祖神場
台石も自然石なのは、珍しい。
丸石は加工してあるように見えるがどうだろうか。
▼七日市場664番地 下組道祖神場
逆光の分かりにくい写真だが、この広い空地は祭場専用。
ドンド焼きも火災の心配なく盛大にやれそうだ。
丸石が枠に収まり切れずに転げ落ちている。
それでも丸石を見つけるといそいそと車で持ち帰るんだろうな、この辺の人は。
この「山梨市の丸石道祖神」を初めから読んでくれた人は、お気づきだろうが、燈籠の竿は穴だらけ。
縁石にも穴がある。(「凹み穴」については、当ブログNO44-45、56-60をご覧ください)
市井の石造物なら気兼ねなく穴を穿った、その証拠ではないか。
▼七日市場 七日市場公会堂前中組道祖神場
数ある丸石神の中で、この丸石神が最も有名かも知れない。
なにしろ直径120㎝の巨大自然丸石。
県内最大というから、当然、日本一ということになる。
どこにあったものか。
見つけた者たちの欣喜する姿が目に浮かぶようだ。
ここ七日市場の3組の道祖神祭は、市内でも盛況でオコヤも精巧で傑作だと評判が高い。
祭の写真があるのでお借りした。
七日市場公会堂前の道祖神は、日本全国でも最大級の丸石道祖神をご神体とする。直径110cm、高さ95cmの安山岩自然石が安置されている。
■七日市場のどんど焼きでは、わら小屋を作らず、丸石のご神体に常緑樹の枝を飾る。提供・「NPO地域資料デジタル化研究会デジタルアーカイブ」
▼七日市場 石島公会堂北側 石島組道祖神場 中組と同じように、丸石神を包むようにオコヤを作っている。
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写真提供・「NPO地域資料デジタル化研究会デジタルアーカイブ」5372
こうした立派な小屋を、大人と子供が共同して建て、ドンド焼きで燃やすーそうした年中行事がある日下部の人たちを心から羨ましく思う。
▼小原東 日下部小学校北東の辻
丸石神と蚕影神がまるで夫婦のように寄り添って祀られている。
養蚕はもうなくなったのだから、蚕影(こかげ)神を祀る必然性はないわけだが、丸石神のある所、蚕影神ありと人々の頭にはセットで刷り込まれているようだ。
▼小原東 朝日天神社
神社の細長い境内の隅に雑然と丸石が積まれている。
台石なのか、丸石神なのか、いささかはっきりしない。
1個の方が神威があるように私には見えるが・・・
◇参考図書
〇『山梨市史 民俗編』平成17年
〇市史編纂委『山梨市の石造物』平成13年
〇中沢厚『山梨県の道祖神』昭和48年