福聚講

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地蔵菩薩三国霊験記 10/14巻の1/10

2024-10-08 | 先祖供養

地蔵菩薩三国霊験記 10/14巻の1/10

地蔵菩薩三国霊験記巻之十目録

一鎌倉の濱地蔵材木はこび給ふ事

二虚夢想の事

三殺生の人を助給ふ事

四遁世者耕作止事

五恵心僧都妹蘇りたまふ事

六中夭を助給ふ事

七田に水を入れ給ふ事

八神女尸を蔵し給ふ事

九噁に前世を知らしめ玉ふ事

十下女火印を免る事

 

 

地蔵菩薩三国霊験記巻之十

一、鎌倉の濱地蔵材木はこび給ふ事(沙石集「地蔵菩薩種々利益の事」に同趣旨の記述あり)

中古鎌倉の濱に古き地蔵堂あり。丈六(約 4.85m)の地蔵を安置す。其の邊の浦の人常に歩みを運びける。或時日来詣でつる浦人共面々夢に見けるは、若き僧のみめうつくしきが日来常に見参しつるに人にうられてほかへこそまかれ、さてなごり惜しくて詣で来たりとの給ふと見てあやしみ思ふほどに此の堂の主、まずしきままに先祖の堂を賣る間、東大寺の大勧進の願行房の上人(泉涌寺六世。東寺大勧進。願行方の祖。高野山意教の嫡嗣。鎌倉大樂寺住職、理智光寺・安養院建立。大山寺中興。東寺・高野山修営。後宇多天皇より宗燈律師の諡号。)これを買て二階堂(鎌倉市二階堂)の邊にうつしすつらんとて佛像をわたしたてまつるに人夫不足にして思煩ふ所に、いずくよりともなく下手(げす)法師の勢大なる来たりて十人が振る舞いは仕るべしとて、もち奉る。十人ばかり不足なるに此の法師かひがひしくもちてやすやすとぞわたしつ。さて食せさんとするほどに、かきけすやうにうせぬ。権化のしわざにやと人あやしむ。同法の僧、慥かに見て語り侍りき。さて彼の佛御うなじの貧相に御座すを上人、佛師をよびてなをさしめんとするに霊像にて御坐せばたやすくやぶり難しといひければ別の佛師をよばんとする処に、件の佛師来て夢に若き僧来たりて只我が身をばなおせ、くるしみなきぞと仰せらると見て候へばとてなおし奉りぬ。其の後旦那出来て供料など寄進してけり。佛の相も人の相にたがはずといへり。當代の不思議なり。彼の上人の弟子の説なり。世間にかくれもなし。さてかの夢に見奉る浦人信をいたし、あゆみをはこびて詣で、よその人も聞き及びて、貴みあがめ奉るとなん。佛像をやぶりて修補する事大論の中には相好のためにやぶるは罪なくして福をうと云へり。よくなし奉る意樂(いぎょう)なるはくるしみなし。されば調達は血を出して阿鼻獄にをち、耆婆は血を出して忉利天に生る。血を出す事は同じけれども報をえる事はことなり、善悪は心のをもむきによるべし。

大智度論釋信謗品第四十一之餘 卷六十三「如調達出佛身血祇域亦出佛身血。雖同一名出血。心異故。一人得罪一人得福。如畫作佛像一人以像不好故破一人以惡心故破。以心不同故。一人得福一人得罪。」)

作業は定まりなし。生身すでに此の如く遺像なずらふべし。但したやすくはやぶるべからず。笠置(京都府相楽郡笠置町の笠置寺。平安・鎌倉時代には、末法思想の広がりにより、弥勒菩薩(摩崖仏)の霊場として、京の都からの「笠置詣で」が流行した)の弥勒はいろどり奉りて後、靈験御坐さずといへり。古き仏像は、ただそのままにて崇むる、一の様(やう)なり。ただし、形みにくく、かたはしきをば、律の中には、戸帳をかけよと言へり。見目悪(わろ)き姫君なんどは、隠れて見えねば心にくきやうに佛も、ただ心にくく思て、行者の信心をもよをさしむべきなり。佛心にこのごとくあるではなけれども此の方のこころむけによりて験も薄くあるべし。とにかくに佛心は大慈悲心是也(佛説觀無量壽佛經 「亦見佛心諸佛心者大慈悲是」)とあれば、彼方に善心ぞ悪心ぞと思想なきなり。畢竟此方の心地をきはめよと真心を以ていろどり荘厳し奉らんになどか感應なからんや。されば心、生滅無き故に延命と名け、心催破なきが故に地蔵と名け、 心邊際無き故に大菩薩と名け、心色相無きが故に 摩訶薩と名く、と經にも説かれたり(仏説延命地蔵菩薩経「心無生滅なるが故に名て延命とし、 心無催破なるが故に名て地蔵とし、 心無邊際なるが故に名て大菩薩とし、心無色相なるが故に名て 摩訶薩となす」)。龍樹の大智度論には、信力故に受、念力故に持つと釋し玉へり(大智度論・釋顧視品第三十卷五十六「若從佛若菩薩若餘説法人邊。聞般若波羅蜜。是十方三世諸佛法寶藏聞已。用信力故受。念力故持」)。能々經釋の心を得心して佛像をも修造し看経などもいたすべきことなり。彼等は二階堂真言院と申して今に現在す(神奈川県鎌倉市二階堂にあった永福寺と思われる)。

 

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