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地方自治体にも絶望的な少子化への責任、自己批判できるのか -「思い切った政策」を行わない自治体

2014-07-16 | いとすぎから見るこの社会-少子化問題
全国知事会議が「少子化非常事態宣言」を採択したとのことで、
それはそれで遅きに失したものではあるものの評価できる。

しかし、本当に「思い切った政策」が実行できるのかは甚だ疑問である。
これまでの地方自治体の「実績」から見て期待する方が間違っている。

そもそも地方自治体は、他所の優れた施策から学ぶ謙虚さが全くない。
もし本気で出生率を引き上げたければ、長野県下條に倣う筈である。
即ち、人件費と公共事業を徹底的に合理化し、育児世帯への現物給付を強化するのである。

既に素晴らしい結果を出している自治体の模倣すらできずに
「思い切った政策」など実行できるとでも言うのか。

また、横並びで新幹線や空港や箱ものを建設して赤字を拵えている間に
地方から都市部へ若年人口は流出し続けており、
その「戦犯」は間違いなく地方自治体である。
交通網を整備すると魅力の少ない地域からは人材が出ていくのだ

下條型の「人件費と公共事業費の育児分野への移転」ができなければ、
フランス・北欧型の「育児負担を分担して育児世帯に所得移転する」ことも有効だが、
国民の大多数は利己的で、負担増を拒否している。

事実、秋田県で「子育て新税」を導入しようと議論した際、
有権者の圧倒的多数が負担増に反対して導入は見送られた。
目先しか見ない住民にも今日の絶望的な少子化を招いた責任があるのだ。
(利権構造とコストを無視し認可保育所を使わせろとゴネる住民も同様だろう)

▽ 「子育て新税」の件はこちらを参照





『フランスの子育てが、日本よりも10倍楽な理由』(横田増生,洋泉社)


▽ 今週のダイヤモンドでは、世界最速で人口動態が劣化する日本の現状が分かる

『週刊ダイヤモンド』2014年7/19号


因にダイヤモンド今週号では、松谷明彦氏が終戦後の施策が少子化の遠因としているが
大きな誤りである。それでは90年代以降に出生率をV字回復させたフランスや北欧に対し
日本の出生率が一貫して低迷している問題を無視することになる。

日本の少子化の原因は「政策の失敗」と「シルバーデモクラシー」である。
それを直視しない限り、必ずコラテラル・ダメージの直撃を受けることになる。

「「奇跡の村」下條は、次元の低い「少子化白書」とは異なり、
 仕事と育児の両立や雇用改善の推進によって出生率急回復を実現したのではない。
 よく知られているように若年夫婦や育児世帯のための公営住宅を建設し、
 医療・保育・教育における現物給付を手厚くしたのである」

「日本における出生率の低迷と、下條村の見事な出生率V字回復を比較すれば、
 内閣府も、厚労省も、安倍政権もみな下條村より遥かに劣っていることが明白である。
 数値が全てを物語っている」

「しかも、こちらも有名な話であるが、下條村は職員数や公共事業費が極めて少なく、
 そうして確保した予算を育児世帯に予算移転しているのである」

「安倍政権は公共事業にカネをバラ撒き、行政改革をサボッている。
 全く逆の政策を行っているので、下條村にまたしても完敗するのは火を見るよりも明らかだ」

「下條村を見れば、行政コストを合理化して育児世帯への現物給付にすれば
 日本の出生率が急回復して2.00に迫るであろうことは容易に予想できる」

「日本の国家・地方公務員の総人件費は50兆円前後に達する。
 正規職員の賃金カーブを欧州レベルに合理化すれば、
 育児世帯に所得移転する莫大な予算が確保でき、甚大な効果が期待できる。
 (個人的には現預金を死蔵させている富裕高齢層への公費を全額カットすべきと考えるが)」

「既に我々の少子化との闘いは、大敗へと加速度的に進んでいる。
 太平洋戦争と同じく、戦力の逐次投入で自らを無駄に損耗しているのだ」

「山田昌弘教授は、若者に冷酷な高齢層に偏った社会保障のため
 高齢層の貧困率は改善されているが若年層は所得低下・貧困化が進んでおり、
 非婚・少子化の強力な要因になっていることを指摘している。
 しかも依然として「夫が家計を担うのが当然」という意識が強く、非婚・少子化は理の当然である」

日本の少子化は、「自己催眠」「自滅」と呼ぶに相応しい。

 ↓ 参考

「奇跡の村」下條の出生率回復は住宅等の現物給付が主因、行政改革でも卓越 - 低次元の安倍政権と大違い
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/08bd9d382dd2624bd567b845d473189

出生率の推移すら見ない「少子化社会対策白書」- 所得減少でも出生率は下がらず、いい加減に洗脳をやめよ
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/1bce64bf05507c14a879c29135bb6158‎‎

▽ 日本人の多くは自分の子には甘いが、他人の子に対しては冷酷である

『なぜ日本は若者に冷酷なのか: そして下降移動社会が到来する』(山田昌弘,東洋経済新報社)


少子化で「非常事態宣言」=対策の抜本強化を―全国知事会議(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_date1&k=2014071500645
”佐賀県唐津市で開かれている全国知事会議は15日午後、少子高齢化の急速な進展を背景とした人口減少問題について、この問題に詳しい増田寛也元総務相を招き、初めて集中的に議論した。深刻な状況を迎えつつあるとの認識を改めて共有。「少子化非常事態宣言」を採択し、国・地方を通じて少子化対策の抜本強化に取り組むべきだとの考えを打ち出した。
 宣言は現状に関し、「国家の基盤を危うくする重大な岐路に立たされていると言っても過言ではない」と強調。「今から直ちに取り組めば、将来の姿を変えていくことは十分に可能だ」とした上で、「今こそ思い切った政策を展開し、国・地方を通じたトータルプランに総力を挙げて取り組むべき時だ」と表明した。”

全国知事会では、少子化対策において劣等の自治体を厳しく批判することはできない。
有効な施策を自ら出せず、国に予算を要求する手段に堕してしまうであろう。


知事会が「少子化非常事態宣言」 国との連携訴え(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS1501S_V10C14A7EE8000/
”全国知事会は15日、佐賀県唐津市で開いた会議で「少子化非常事態宣言」を採択することを決めた。人口減少による地域経済の危機に対応し、国と地方が連携して早急に少子化対策の総合計画を作るよう訴える。地域の実情に応じた就労や結婚の支援、高齢者から若年世代への資産移転を促す税財政制度の創設も提言した。
 宣言は少子化対策を「国家的課題」と位置づけ「国と地方が総力を挙げて抜本強化」すると明記する。16日に正式決定する。
〔中略〕
 少子化対策を担当する高知県の尾崎正直知事は「いま取り組めば間に合う」と呼びかけた。
 会議には全国の市町村の半数が人口減少で「消滅の可能性がある」と5月に公表した増田寛也元総務相(元岩手県知事)も参加。安倍晋三首相をトップとする地方創生本部を創設する国の方針について「50年、60年後を見据えた国土戦略を議論していく必要がある」と述べ、国と地方が緊密に協力する必要があると強調した。”

日経新聞では「高齢者から若年世代への資産移転」という決定的な施策に言及されている。
退職金への税優遇を大幅に縮小すれば容易に予算が出てくるし、
地方税も若干引き上げて育児支援の現物給付に充当すれば確実に効果が出るが、
多くの横並びで凡庸、官公労からの圧力に弱い地方自治体には
そういった「思い切った政策」で率先垂範する能力が決定的に欠けている。
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