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『週刊エコノミスト』7月29日号 - 電力会社は中国より高価なガスを買っている、国富を損なう反日行為

2014-07-25 | 『週刊エコノミスト』より
今週の『週刊エコノミスト』は恒例の相続特集。
相続税の対象となる豊かな高齢層が増えているから売れるのだろう。
(彼らは自称庶民だが、資産額や可処分所得は一般庶民を明らかに上回る)

実用的なメイン特集も悪くないが、
更に良いのはP39のエコノミスト・レポートである。
岩間剛一氏が「LNGはスポットで買え」と題して、
日本の購入するガスがいかに割高かを明らかにしている。

「もはや、割高なガスを買っているのは日本だけ」だとか。
中国すら日本より四割安で買っているそうで、実に馬鹿馬鹿しい話である。

次元の低い安倍内閣は原発停止で燃料費がかさむかのように大嘘をついているが、
とんでもない話だ。事業者が原油価格連動型の長期契約に固執し、
バカ高い天然ガスを買っているからエネルギーコストが上昇しているのである。
そうした反社会的行為、あるいは反日的行為こそ糾弾されるべきである。

欧州国は何と、安いパイプラインのガスを日本に転売して儲けていると言う。
ガスの買い方が下手だからこのような無様な状況に陥るのだ。

価格が長期低迷している天然ガスを割高で買うのは、
原発再稼働の必要性をアピールするための策動とさえ考えられる。
(論より証拠、電力大手は原発が稼働していた時期にも割高なガスを買っていた)

コージェネレーションを全力で普及させ、ガス消費量を大幅カットするとともに、
スポット価格での購入を含め、ガス購入交渉を根本から見直す必要がある。

『週刊エコノミスト』2014年 7/29号


他にはP72の勝川俊雄・三重大准教授の論考をお薦めしたい。
「ウナギを日本人が食べ尽くす 食文化を守るために漁獲規制を」
と題された厳しい乱獲批判で、まっとうな主張である。
「今年は豊漁」などと言っている馬鹿メディアのいい加減さがよく分かる。

日本に注目されただけで熱帯ウナギが絶滅危惧種に指定されるのは世界の恥だ。
鮪もそうだが、食文化を守りたければ漁獲を規制し、食べるのを我慢すべきである。
安売り店で絶滅危惧種を買うなどとんでもない。
良識的な国民は栄養豊富な穴子で充分である。

    ◇     ◇     ◇     ◇

『週刊ダイヤモンド』サブ特集は期待通りだった。
「法人税減税の不都合な真実」が素晴らしい出来である。

日本の経済団体のプロパガンダは真っ赤な嘘で、
実質税負担が驚くほど低い大企業が幾らでもあることが分かる。
(P92の一覧を参考のこと)

武田薬品工業に見るようにはっきり言って意味の薄い研究開発減税や、
課税所得の海外移転・繰越欠損金・配当不算入といった恒例の節税策の解説もあり。

また、税率だけドイツ並みにすると言う政治家の程度の低さも理解できる。
こうして見るとドイツの課税ベース拡大はかなりよく練られていて賢い。
外形標準課税程度しか出てこない安倍政権はまだまだ稚拙だ。

『週刊ダイヤモンド』2014年7/26号


後半の「囚われた投資銀行」も傑作だった。
信用バブル時代には我が世の春を謳歌していたが、
レバレッジが規制されるとこんなに大人しくなっている。
所詮、実力ではなかったということである。

   ◇     ◇     ◇     ◇

『週刊東洋経済』はピケティの『21世紀の資本論』特集と称しているが、
はっきり言って「羊頭狗肉」と感じた者が多かっただろう。
編集部でも多くが継ぎはぎの内容に違和感を抱いていた筈だ。

日本で家計金融資産が高齢層に異常に偏っていること、
日本の経済成長率と人口減少率が先進国中で最悪であることから、
ピケティの理論ををそのまま日本に適用できないことは明白である。

▽ 日本での高齢層への巨額所得移転は、他の先進国には見られない異常な水準である

『社会保障亡国論』(鈴木亘,講談社)


大体、60歳でも働こうと思えば働けるパイロットが(LCCでは定年が延長されている)
まるで弱者のようにカンパを受け取っているのを一般庶民がどう思うか分かっているのか。
安易に情報源を労組に依存し過ぎる弊害が露骨に現れている。

セーフティーネットを強化したいのであれば税負担と社会保険料負担を高め、
積極的労働市場政策に公費を投入すべきである。
そうすれば癌に罹患しても相当安定した生活を送れるし、転職者も大いに助かる。

労組などの言い分は偽善的で、高負担のフランスや北欧の貧困率が
日本より遥かに低く平等性が高い事実を完全無視している。
所詮は、大竹文雄教授の指摘した「弱者と既得権層との政治同盟」でしかない。
(倒産リスクの殆どない大手労組幹部の賃金水準を見るがいい)

また、時代からどんどん遅れている池田信夫氏は
クリスティア・フリーランドを熟読してから口を開くべきである。

大成功したリスクテイカーの多くには汚い裏事情がある。
リターンを得る際に、政治と癒着しレントシーキングによって儲けるから問題なのだ。
(アメリカの金融業やフランスの原子力産業は、ロシアの成金と基本的に似ている)
実際にグローバル経済で起きている事実を見れば、能天気にリスクテイカーを賞賛することなどできない。

▽ 池田説など足元にも及ばない卓越した著書

『グローバル・スーパーリッチ: 超格差の時代』(クリスティア・フリーランド,早川書房)


フリーランドは、かつてリスクテイカーだったヴェネツィアの富裕層が
競争を恐れて新規参入者を排除し、自らの富と特権を守ろうとしたことが
ヴェネツィア没落の端緒だったと指摘している。

『週刊東洋経済』2014年 7/26号 「『21世紀の資本論』が問う 中間層への警告/人手不足の正体」


最も評価できるのは佐藤優氏の連載コラムである。
氏は、日本におけるリベラルの弱さを指摘し、
右派もしくは保守が実態以上の数の議員を国会に送り込んでいる
と指摘している。蓋し至言であろう。

これはリベラルの当事者能力の低さと論理の弱さに加えて、
過度に強い右派・保守層の権力欲と攻撃的性向のためと思われる。
彼らは声がでかくて異論を罵倒するから、大人しくて良識的な層が沈黙させられるのだ。
(日本が急速に破局へ向かっていった昭和初期の史実を見れば明白)

    ◇     ◇     ◇     ◇

次週もダイヤモンドに注目。日本経済低迷の責任は、矢張り日本企業そのものにもある。

▽ 「再雇用加速で無気力社員が急増」は全くその通りで、多くの職場で前から懸念されていた筈

『週刊ダイヤモンド』2014年8/2号特集1オジサン世代に増殖中! 職場のお荷物社員/深刻化する経営問題オジサン2500万人の現実/バブル世代のシニア化、再雇用加速で無気力社員が急増/大量採用とリストラを繰り返してきた人事部の「大罪」/特集2電力自由化の秘密兵器東電が導入するシリコンバレーの節電技術/レポート有力なのはどれだ?地銀再編の3大モデル/富士通事業再編に透ける国内半導体産業の泥沼/マクドナルド 中国産鶏肉問題で泣きっ面に蜂


▽ 恐らく広告を取るのが目的と思われる大学特集、「ルポ外国人労働」の方が面白そうだ

『週刊東洋経済』2014年 8/2号「親子で選ぶ大学/熱気なき低温株高/ルポ外国人労働」


▽ エコノミストも大学特集、東洋経済と比較したい

『週刊エコノミスト』2014年 8/5号

エコノミスト・レポート「米株高の正体は自社株買い」が最も重要かもしれない。
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