『週刊東洋経済』7月5日号 －「ドイツ並みの法人税率へ引き下げ」では外国人投資家は様子見に

今週の『週刊東洋経済』の年金特集は予想通りだった。
「逃げ切り世代」には向いているだろうが、
若年層はダイヤモンドのシビアな分析を熟読した方が良い。
（ダイヤモンドでは04年、09年の財政検証での予想が下振れしたと書いている）

メイン特集にあるように「給付水準の高低は人口要因が９割」なのだから、
この日本の破壊的な少子高齢化を放置してきた世代は
給付カット、公費投入カットが理の当然である。

1000兆円近い家計金融資産を積み上げておきながら
巨額の公費を貰って弱者を偽装している場合ではない。
暮らしに困らないのに生活保護を受給する不正と同類である。

マクロ経済スライドの欠陥は相当前から指摘されていたのに、
今更に泥縄で法改正を検討しているようでは話にならない。

座談会「主婦が年金もらって何が悪いですか？」もなかなか傑作で、
配偶者控除廃止反対が「エゴ」だと自ら認めている。
「主婦が日本の治安を守っている」と放言するに至ってはいい加減にしろと言いたい。
女性就業率と犯罪統計に全く相関性がないのは明らかだ。

	『週刊東洋経済』2014年 7/5号

それなのに東洋経済を先頭に持ってきたのは
巻末のパルナッソスの分析が素晴らしいからである。
（サブタイトルはこちらから取っている）

海外マクロ・ファンドに宮島氏がヒアリングしたところ、
29％への法人減税は17年3月と予想されており
「短期間に急速に日本株への投資を拡大しない」との回答が６割を超えたそうだ。

…これでは外部要因の影響の方が余程大きいのではと思われる。

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『週刊ダイヤモンド』はなかなかよく売れているようだ。
メイン特集では色々と小ネタが散りばめられている。

主婦は佐川よりヤマトの方がサービスが良いと考えているようだが、
全くその通りだと思う。

	『週刊ダイヤモンド』2014年7/5号

一方、サブ特集「100年もたない年金」は期待通り素晴らしい。
何か奥歯に挟まっている感じの歯切れの悪い東洋経済より遥かに鋭い。

○厚労省の財政検証の前提は毎回甘い
○全要素生産性や賃金上昇率が高過ぎる
○最悪シナリオですら楽観的

と厳しく批判している。
（このような緊張関係がなければメディアの存在価値がないので当たり前であるが）

尚、厚労省は「危機感が強い」とのことだが
まだまだその程度では甘い。自らの政治的責任を完全に忘れている。
日本の公的年金制度の持続性に対する国際評価が極めて低いのは「常識」だ。

日本の年金制度劣化の本質はＧＭに近い。
レガシーコスト、つまり手厚過ぎる退職者への給付がＧＭ本体を押し潰したのだ。
日本も、大して保険料を払っていない高齢層に大盤振る舞いを続けたらＧＭの二の舞になる。

▽ こちら参照

	『なぜGMは転落したのか―アメリカ年金制度の罠』（ロジャー・ローウェンスタイン，日本経済新聞出版社）

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『週刊エコノミスト』のメイン特集はグローバル経済分析よりも
日本経済分析の方が優れていたように思う。

アベ相場失速の理由として「今期は昨年のような大幅増益が望めない」
「日本の潜在成長率は1％未満で欧米に劣後」を挙げており、全く同意見である。

門田真一郎氏によれば、先月バークレイズが海外投資家を対象に行った調査では
「第三の矢」で最も重視するのが労働参加率引き上げ策と移民受け入れ。
外国人は日本の抱える人口動態劣化の問題に目を光らせているのだ。

また、Ｐ38でみずほの吉田健一郎氏がユーロ高局面の終わりが近いと警告している箇所、
Ｐ39で第一生命の田中理氏が英国の不動産市場過熱の現状を報告している箇所も読んでおきたい。

	『エコノミスト』2014年 7/8号

エコノミストレポート「米中間選挙は民主党惨敗が濃厚」も期待通りに良かった。
今年も中間選挙のアノマリーを警戒しなければなるまい。

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次週はエコノミストに注目、欧州経済分析にも目を通しておきたい。

▽ 日本社会には、こうした長期的な問題悪化を放置する通弊がある

	『エコノミスト』2014年 7/15号

▽ 東洋経済は恒例の「経済大予測」（この手の特集の市況予測はまず当たらないが）

	『週刊東洋経済』2014年 7/12号

▽ ダイヤモンドは最近ちょっと見直されているが低収益の日立を特集

	『週刊ダイヤモンド』2014年7/12号

サブ特集「国策メガバンクゆうちょ銀行の暗夜行路」が面白そうだ。