英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『魔術はささやく』 金曜プレステージ(9月9日)

2011-10-07 18:49:35 | ドラマ・映画
 思いっきり「今さら」です。

 原作は未読なので、言及するのは憚(はばか)られますが、ネットで原作を調べた限りでは、かなり原作とは違っていたようです。
 原作ではその弟が主人公で、事件の真相を追ううち、失踪した父親、恩人に関する真実などを知り、事件の犯人との対決や心の成長を描いた話だったようです。
 ドラマは、殺人のトリックや、父親の失踪の真相などはほぼ同じらしいですが、ドラマでのヒロイン高木和子(木村佳乃)仕様に改変されていたようです。原作では4人目の標的の女性に当たるみたいですが、主人公自体を標的とすることで、より緊迫感を高め、弟を守る愛をテーマに盛り込み、ヒロインに木村佳乃を起用することで、視聴率を上げる狙いがあったのかもしれません。(ところで、木村佳乃さん、演技力はどうなのでしょう?私は常々疑問を感じているのですが)
  この原作の小説が発表されたのは1989年と20年以上も前の作品(1990年に日本テレビ系の火曜サスペンス劇場で山口智子主演でドラマ化されている)なので、それを現代的にアレンジしなければいけないとは思いますが、例えば主人公をフォローする原作にない脇役を加えたり、性別を変更したりすることはあるようですが、ここまで改変していいものなのでしょうか?
 しかも、この改変は残念ながら失敗しているように感じました。原作者が心血を注いだ設定やストーリーを、無理やり作ったヒロインを絡めるため強引に改変したのが、付け焼刃的なものにしかなっていませんでした。
 そもそも後催眠やサブリミナル効果を利用した犯行は、やや現実離れした設定は、映像化するのには向いていないように思われます。
 多少設定やその世界観に無理があっても、小説を読む場合は、その文章を読んで読者が自分の創造力をもってその世界を再現(構築)していくのですから、作品に対して積極的に同意している訳です。
 しかし、映像の場合、分かりやすい反面、逆に第三者的な目で映像を見てしまうので、ストーリーや設定に矛盾を感じやすいと考えます。
 その上、今作品の場合は、先述したように、ドラマ設定を改変してあるので、余計に矛盾を感じてしまいました。
 想像ですが、宮部みゆきファンの方は、大いに落胆したのではないでしょうか。


 以下は、例によって、感じたことの羅列です。

①ヒロインは弟を捨てたという思いから、姉であるということを隠し通すが、両親がいなくなり施設に預けられた時には、まだ、ヒロインも高校生だったので、仕方がないと思われる。高校生になった弟(かなりしっかりしている)なら、話せばわかってくれると思われる。
 弟にとっても、肉親がいると分かった方が、心強く嬉しいはずだ。隠す必要があったのだろうか?

②殺人のトリックは、音によるサブリミナル効果だったのか、後催眠によるものかが良く分からなかった。

③サブリミナル効果にしても、後催眠にしても、逃げなければという強迫観念は与えられ、道路に飛び出させるくらいまでは可能だとしても、ホームから線路に飛び込んだり、窓から飛び降りたり、ガス栓を開けさせるのは、無理があり過ぎる。

④父親が役所の金を横領し失踪、育ての父親が交通事故で過失致死、両方とも、周囲がガラスを割ったり落書きしたり、特に後者の場合は、暴行される。ここまで、極端な行為に及ぶのだろうか?

⑤3人目の被害者(小池栄子)が、窓から飛び降りた時は、部屋にはヒロインしかいなかった。ご丁寧に、窓から落ちた現場を確認していた。しかも、結婚相手に顔を見られている。事情聴取を受けなかったのだろうか。この状況なら普通、重要参考人(容疑者)扱いだろう。

⑥飛び降りるのを呆然と見ているだけと言うのも変。(既に、仲間二人が不可解な死を遂げている)

⑦父親が横領し、施設に預けられていたという境遇で、過去に不本意ながら犯罪に手を貸しているヒロイン、それほど才覚があるように感じられないが、かなり大きな書店の店長を任せられている。

⑧父を轢き殺し山中に埋めた男に対し、弟が犯人にそそのかされて暗示の言葉をその男に発することを知ったヒロインが、阻止しようと現場に走るが、その走る姿に必死さが感じられなかった。女子マラソンの32キロ付近を走っているような走りだった。

⑨キャストには無駄に力が入っていた。物語の最初に出てきた高校時代のヒロイン役に谷村美月、爆死しただけの悪人に松重豊、単なる書店の店員に六角精児(同じ店員でも里田まいの方はやや活躍)

⑩「周りには悪人が多い」という真犯人の言葉、それを受けて、書店に設置したサブリミナル映像にほとんどの者が反応してしまったという『世にも奇妙な物語』風のオチを思い浮かべてしまった。
コメント
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