英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

女流王位戦第一局④

2008-10-31 23:45:09 | 将棋

 第5図は清水女流二冠が銀を二枚投入して肉薄したところ。
 先手が下手な対応をすれば、駒をボロボロ取られる展開になってしまう。石橋女流王位がそんな失敗をするはずもなく、▲4四歩。飛車を取られる間に、玉を追いつめれば良い。
 ▲4四歩以下、△同銀▲5四歩△2七銀成▲5三歩成(第6図)△同銀▲4五桂△4四銀▲3三桂成△同銀▲5四角△2二玉▲2一角成(第7図)△同玉▲3三角成と石橋女流王位の寄せが決まった。


 以下、いくばくもなく終局。石橋女流王位の快勝譜を残すことになってしまった。

 結局、投入した後手の2枚の銀が飛車を取るだけに留まってしまった。しかし、あまりにもあっさり土俵を割ってしまった感がある。第5図以降、どこか変化する余地はなかったのだろうか?

 まず、第5図よりの▲4四歩に手抜きして△2七銀成と飛車を取る手。以下、▲4三歩成△同金▲4四歩△同金▲5四歩△6六飛▲同歩(変化図①)。

駒の損得はなく、手番も後手だが、▲5三歩成が残っているし(△5四歩なら▲5三角(銀)がある)、駒の効率が違いすぎて、先手よし。
 次に、第5図より▲4四歩△同銀▲5四歩に本譜はここで手抜きしたが、これに△5四同歩(変化図②)と応じる手。

先手陣は飛車を打たれても、抵抗力があるので、丁寧に先手の攻めを受け止めた後、飛車を取ろうという考え方だ。
 しかし、これには▲4四角△同金に▲5三角(銀)があり、これは速度負け。

 さらに、第5図より▲4四歩△同銀▲5四歩△2七銀成▲5三歩成と進んだ第6図より、△6六飛と切る手はどうか。▲6六同歩で後手玉に詰めろが掛かるが、△2二玉と先逃げしておく。以下▲4二とにも△1三玉とひたすら逃げる。▲1六歩が気になるが、△3九飛(変化図③)▲8八玉△1九飛成で大丈夫。

▲6九飛と頑張っても、△6九同飛成▲同玉△3九飛で良い。

 この変化が有力な理由は、
①後手玉が投入した2枚の銀に近づくことで、その2枚の銀が働く
②先手の3七の桂馬を働かせない(変化図③では、若干入玉阻止に貢献しているが、実戦は4五に跳ねられ金と交換になった)
③働きの弱かった6二の飛車が、働きの強い6六の角と交換になった
 と、考えられる。

 本譜は、第6図で△5三同銀と利かされて▲4五桂と跳ねさせたことが致命傷になったと考えられる。 

 終盤、清水女流二冠が突き放されてしまったのは、序盤の変調による疲労と時間の消費によると思われ、惜しまれる。
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女流王位戦第一局③

2008-10-29 17:33:36 | 将棋

 角頭をカバーするため、第3図より清水女流二冠は△4三銀と上がる。が、この手は石橋女流王位が待ち構えていた手だった。

 そもそも、第3図の後手の金銀は逆形。序盤早々の△4二金がその因だ。その逆形の解消も兼ねて銀を上がったわけだが、この瞬間、後手陣の玉・角・金・銀は非常にバランスが悪い。そこを石橋女流王位にもろに突かれる事になる。清水女流二冠も欠陥に気づいていたのなら金を上がっただろう。金を上がった瞬間は、すそがスースーする感じがするが、6一の金を寄せていけばよい。

 さて、△4三銀に石橋女流王位、キラリと目が光らせて駒音高く銀を打ちつけた(かどうかは知らない)。この場合、駒音高くと言うより、「ズドーン」とか「グュアキッ」とか重量感のある響きかもしれない。
 ▲2四銀!(第4図)。

 歩頭の銀打!矢倉戦で歩頭の桂はよく見られるが、銀は珍しい。記憶は定かではないが、佐藤棋王×羽生名人戦において、3五の銀を後手の2三の歩と先手の2五の歩の間に出る変化が出たことはあるが、本局の場合は持ち駒の銀である。強烈な一着だ。
 △4三銀と上がったところなので、2三の地点が薄く受けにくい。清水女流二冠、苦慮に沈む。
 これまでの考慮時間が清水女流二冠の苦悩を物語っている。△5五銀に27分、△8五金に13分、予定変更の△4四歩に21分、さらに修正の△4三銀に6分と、苦心したにもかかわらず、ハンマーパンチを食らってしまい、この△3二玉に40分。本局最長の考慮時間を強いられ、△3二玉。以下▲3三銀成△同金と、角銀交換を甘受する。駒損の上、後手を引いての3三金型の悪形。被害を最小限にとどめるための辛抱だ。この精神力が清水女流二冠の清水女流二冠たる由縁だ。
 私なら第4図より△2四同銀▲同歩△4五歩▲2三歩成△4四角と意地を張って散るだろう。

 この辛抱が実を結び、直後の石橋女流王位の攻め急ぎを呼ぶ。角銀交換の△3三同金直後の▲4六歩がそれだ。この手では▲3五歩△同歩▲7七桂と金を追う方が手堅かったらしい(週刊将棋より)。
 この後、清水女流二冠が銀を二枚投入して肉薄したのが第5図。
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女流王位戦第一局②

2008-10-29 00:06:39 | 将棋

 △6五歩(第1図)に石橋女流王位は▲7八金と備え、△6六歩に▲同金と取り、△6五歩に力強く▲5五金と出る。ここは先手の布陣(5七銀・6七銀型)にもよるが、銀で取る手が多い。また、続いての△6五歩には、▲5五銀と出る手と▲7七銀と引く手がある。
 銀を引くのは守勢になりやすい気がする。5五に銀(金)を出て、5五で後手の攻めを受け止めたほうが受けやすいし、後手陣の弱点である5三の地点を突くことも可能だ。後手から5五の銀(金)を取れば先手の歩が5五に伸びる。また、先手から5四の銀を取れば、5三の地点に空間が生じる。
 本譜、金で応じた理由は、▲6七歩とがっちり受けておくためと考えられる。しかし、金銀交換はやや損。それに、▲6七歩は少し消極的な感がある。
 後手の清水女流二冠の△4二金は、2二の角を浮き駒にしないで5三の地点を補強したこの場合の形。玉を4一に移動できる利点もある(4二に上がるのは玉が不安定)。しかし、持久戦になった場合、進展性に乏しい。実際、後にハンマーパンチを食らうことになる。

 実戦は、にらみ合いの中、陣形整備が続いたが、清水女流二冠が突如金銀交換から△8五金(第2図)を放つ。

もちろん狙いは7六の歩。単純に▲7七金と守れば、△5五角が生じる。しかし、せっかくの金を8五に手放すのは、本筋ではない気がする。仮に、狙い通り▲7七金△5五角が実現しても、以下▲4六銀△3三角(△6四角は▲5五銀打がある)▲8六歩△8四金と金を僻地にやられると、一歩では元が取れないのではないだろうか。後手の角頭も不安だ。
 実戦は第2図で石橋女流王位は▲3七桂。この手は、△7六金に▲4五桂△4四角▲2四歩△同歩▲5四歩のカウンターを狙っている。
 これを警戒して△4四歩と角道を止めるのでは変調で、清水女流二冠も不本意だったはずだ。先手もこれに満足して▲7七金(銀)と受け、次に▲8六歩と金を追い返して充分と思うが、角道を止めるのが不満とだったのか、石橋女流王位は▲2六飛(第3図)と指す。

△7六金には▲7五歩と金取りと角頭攻めを見た手だ。
 そこで、清水女流二冠は△4三銀と角頭を守ったが……
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女流王位戦第一局(今更ですが)

2008-10-28 00:14:42 | 将棋
 基本的にこの二人は読み筋が合わないのだろう。二人の将棋は棋勢の傾きが大きく、揺り返しも大きい。師弟戦ということもあり、指しにくいのかもしれない。
 しかし、「疑問手連発の殴り合い」「女流王位の悪手に悪手で返す挑戦者」などと週刊将棋に書かれた昨年よりは揺れる回数が少ない。

 第一局は、逆転というわけではなく、一言で言えば、石橋女流王位の快勝。石橋の豪腕が冴えた一局だった。特に、歩頭に叩きつけた銀打ちは「グゥワギン」と音が聞こえるような一撃だった。

 この将棋、後手の清水女流二冠が右四間飛車を採用。この右四間飛車、攻撃力はあるが、狙いが単純なので、一気に攻め潰すのは難しい。相手を守勢にしておき、桂を参加させて、気を見て攻めるのがコツ。清水女流王位は割りと多用している。
 先手の対処法は、5七銀・6七銀と二枚並べるか、6七に銀の代わりに右金を持ってくることも多い。
 本局の石橋女流王位は6七金型を採用。清水女流二冠は居玉のまま△6五歩(第1図)と突っかける。【続く】
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反則について

2008-10-26 23:46:12 | 将棋
 本来なら、『将棋世界10月号②』の記事のコメント欄に記するべきかもしれませんが、訂正事項の内容がかなり大きいので、新たな記事とさせていただきます。

 実は、今更ながらでありますが、将棋連盟の対局規定を調べてみました。
 対局規定の第2章第8条反則の4に
「対局者以外の第三者も反則を指摘することができる」
とあります。
 この項によると、周囲が反則を指摘しても、あるいは周囲の声や雰囲気で対局者が察知しても問題はないと考えられます。
 なので、10月11日の「審判がいなくて、「投了優先」なのだから、観戦者や仲間が反則を指摘することが出来ない(助言になってしまう)。故意でなくとも、「あっ」と声を立ててしまう可能性はかなりある……」は、まったくなんだったのかとなってしまいます。反省。

 さて、ここで新たな疑問が。
 指摘することは問題はないのですが、指摘するかどうかは、その人の考え方によって変わるのではないでしょうか。

 「将棋にない手(反則)が指された以降は将棋として成立していない。反則が出た時点で負けとすべき」
 「反則に気づくかは、あくまで対局者の責任」

 その立場によっても、指摘するかどうかはちがってきます。団体戦で、反則したのがチームメイトか相手チームかで違ってきます。また、審判など運営者側だと指摘することが多いと思いますが、先の考え方の後者だったら、指摘しないのではないでしょうか。
 いっそのこと「反則に気がついた第三者は、これを指摘しなければならない」とした方がすっきりすると思います。
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自慢したかったの?

2008-10-23 22:50:13 | 時事
 秋田県の教育委員会が、全国学力試験のデータを、部分公開した。市町村別の平均正答率のデータだが、それがどの市町村なのかは特定できないようになっている。
 「各市町村は各自の点数は分かっているが、他の市町村がどういう状態にあるのか分かっていない。全体的な傾向を知ったうえで検討したほうが良い」というのが意図。
 今回、情報公開請求を受けて公開したが、部分公開にしたのは、文部科学省の指針に反するためとのこと。


 文部科学省は「学校間の序列化や過度な競争につながらないよう十分配慮すべき」として、都道府県ごとのデータのみ公表している。そして、市町村には学校ごとの個別データを公表しないように求めている。

 鳥取県の南部町の教育委員会では、「住民と連携して教育の向上に取り組むため、可能な限り情報を提供していく」として、住民の開示請求に応じ、学校別の正答率などを開示している。

 大阪府、橋下知事は「教育委員会は市町村別のデータが出なければ責任感は感じないと思う。市町村ごとのデータを住民と共有して課題解決に向かってもらうのは当ったり前の話」として、既に公表しないことを決めたり、結論の出ていない市町村を除く、市町村別の平均正答率のデータを公開することを決めている。


 私には、理解できない。

 学力テストの狙いは、
①児童や生徒の学力の把握。誤答の傾向をつかむことにより、今後の今日行く指針が立てられる。また、地域別の傾向もつかむことによって、地域別指導もできる(これは文部科学省だけでなく、各市町村の教育委員会においても言える)
②都道府県別データを公表することで、競争意識が生まれ、指導が熱心になる
③その他(私が思いつかない何か)

 と、考えられる。しかし、データを住民に開示することが、効果的かどうかは甚だ疑問である。

 学校を個人(児童・生徒)に置き換えて考えてみる(この方法が妥当かどうかは自信はない)。
 各学校のデータを公開するということは、個人の成績が公開されるということに置き換えられる。我が子は学校で120番の成績、隣の子は30番、友人の子どもは2番などなど、在校生の家族だけでなく、近所のおじさんや魚屋のおばさんまでが知り得ることとなる。
 これは必死に勉強する(勉強させる)ことにはなりそうだ。しかし、これではまともな生活が送れるとは思えない。

 個人のレベルで考えると極端なことになってしまうが、学校単位でデータが公開された場合、学力向上に関しては、競争意識が強くなると言うか、尻に火をつけられると言うか、児童や生徒本人はともかく、教師は必死になり、効果抜群かもしれない。
 橋下知事の考えもこういうことなのだろう。しかし、職員を信用していないよね、これでは。まあ、職員はともかく、競争意識や尻に火をつけられた状況の教育現場では、たとえ学力は得られても、それ以上に失うものが多いようのは間違いない。

 だいたい、「住民にデータを公開して、住民と連携して教育の向上に取り組む」って、そんなことが、一般住民に可能なの?
 住民にデータを公開することで、一般住民ができることは何か?真っ先に思いつくことは、学校の選択だ。あとは、学校や子どもの尻を叩くこと。

 そんな簡単にデータ公開をしてしまって(決めてしまって)、本当にいいの?

 そもそも、そのデータを鵜呑みにして良いのかも大きな疑問だ。秋田県の事情はよく分からないが、福井県の事情はこうだ。福井県は小学生2位、中学生1位を誇っているが、福井県には私立の小中学校はほとんどない。
 学力テストは公立学校と約半数の私立学校が実施したという。都会における私立学校は公立と比べて学力のある児童が通っているという傾向が強い。その私立学校が学力テストを受けていない都市部ほど、成績が実際とは目減りしていると考えられる。
 だから、田舎ほど先の学力テストの成績は差し引いて考えないといけない。秋田県は知らないが(本当は調べて書くべきなのだろうけれど)、福井県は手放しで喜ぶべきではないと思う。
 あと、採点基準が徹底されていたのかと言う疑問もある。それに、1回きりのデータを信じていいものか?


 秋田県がデータを部分公開にとどめたのは正解だと思う。しかし、部分公開の意義はあるのだろうか?開示請求を受けたからかもしれないが、「秋田県の小学生は優秀なんです」と自慢したかっただけのようにしか思えない。
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竜王戦第一局 卓越した大局観

2008-10-22 00:51:44 | 将棋
 リアルタイムでじっくり観戦できませんでした。仕事が忙しかったのが原因。もちろん、夜中に仕事をしていたわけではなく、物理的(時間的)には、可能でしたが、ネットに繋ぎながらウトウトしてしまいました。根性なしです。

 それはともかく、第一局の設営に関しては、いろいろ不満がある。
 まず、海外で第一局を行ったこと。普及の目的なのか、竜王戦では2年に一度、第一局を海外で行っている。普段は、他人事(羽生名人が対局者ではない)なので、それほど感じなかったが、海外で行うことは、国際的にはアピール度が高いが、国内では却って目立たない気がする。いろいろ事件が多いせいか、NHKの午後7時のニュースでは取り上げられなかった。終局が夜中ということもあるし、海外なので映像がすぐには手に入らないので、ニュースとして扱いにくいということがあるかもしれない。
 BSで中継もないし、永世竜王を懸け、しかも現在の第一人者と次世代を担うエースとの勝負という割には、世間的にはひっそり開幕してしまったという感がある。
 それに、対局場がチャチだった。海外普及と謳うのなら、和風の部屋を用意すべきで、部屋が無理なら畳だけでも調達すべきだ。あれでは意味がない。
 対局者も普段と雰囲気がちがうので、なかなかペースがつかめないのではないか。達人はそんなことに影響されないという考えもあるが、ずっと盤面を見ているわけではないので、あの違和感は少し影響があったのではないか。

 ネット中継は、梅田氏の観戦記は読み物として楽しめた。現代将棋(若手の将棋観)の弊害についての、佐藤棋王の見解は興味深かった。
「さすがに佐藤棋王、私の感じていることを代弁してくれている」なんて言うと、某会長みたいなジョークになってしまうなあ。
 また、感想戦をまとめて、▲2三角と打ち込んで居飛車穴熊側が二枚換えの駒得の上、飛車が成り込めれば優勢という大局観がこの将棋においては当てはまらず、羽生の大局観が卓越したものだったとし、渡辺竜王の「でも何回指しても、角打っちゃう(▲2三角)なあ」という呟きは、印象的で面白い。
 ただ、手の解説がもう少し欲しい。こういう手もあるこういう手もあるという手順の紹介に留まることが多く、これは先手良しとか、難解とか、解説が収束して欲しかった(これは梅田氏に求めているのではない)。
 △6四角と打たれて、竜王があれだけ悩んだのだから、後手が良いのだろうけれど、検討陣もこの局面をもう少し検証して欲しい。その後も、羽生名人が△8六角や△6七銀を繰り出し、順当に押し切った印象があるが、相当難解な将棋だったはずで、中継ではよく分からないまま、名人が勝ってしまったという印象が残る。
 せっかく佐藤棋王がいるのだから、佐藤棋王がムキになるくらい、いろいろ質問して解説させてもらいたかった。
 佐藤棋王の分析
「おそらく羽生さんは、ちょっと序盤で失敗したような感じも抱いているかもしれない。これで負けたらしょうがないという感じでやってるのかもしれませんけど…」
「羽生さんは、あんまりいいと思ってる感じもしないです」
等は、ちょっとまちがっているのではないか、と言うより、佐藤棋王が本気になっていないという気がする。

 さて、この将棋の勝敗を分けたポイントは、羽生名人の秀逸な大局観にあったのはまちがいがない。しかし、その大局観を構築する土台に、羽生名人の穴熊に対する正確な距離感があることを忘れてはいけない。
 ここの亀裂に楔を打ち込めば崩壊するとか、土台を揺す振れば倒れるとか、そのポイントが8七であったり、8八であったり、6七であったりするが、的確に捉えて突く(当然、穴熊の使い手としても一流で、多少ガタが来ても、見事に修復する)。穴熊のツボを熟知しているからこそ、二枚換えで飛車を成り込ませても充分という大局観が持てるのだ。

 この将棋、実はもう一つのポイントがある。それは時間の使い方。私の予想では、羽生名人の方が少しずつ先に消費していくと思ったが、渡辺竜王のほうが時間を使う、それもかなり多く使うという意外な展開。
 意識的に、時間を使わないようにしたとも考えられるが、名人の可能性を追求する将棋観からすると、それはないような気がする。
 もしかすると……、もしかすると、▲2三角の局面は研究の一局面、あるいは、練習将棋で経験したことがあったのかもしれない。それで、△6七歩成から△6九角と打って充分指せるという感触や経験があったのではないだろうか。というのは考え過ぎ?
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合唱コンクール

2008-10-14 19:24:32 | 趣味
 正しくは『NHK学校音楽コンクール』と言います。古くさ…、いえ、伝統を感じます。私が観たのは中学校の部でした。
 私、けっこう好きです(「けっこう好き」とか「割と好き」という言い方は失礼か)。制服(セーラー服)の女生徒がいっぱいですから……って、ちがいますって(いえ、少しは)。でも、一般的な今風の女子生徒ではなく、リボンやネクタイもきちんと結び、髪もしっかり結んで、一心に合唱する姿は、絶滅寸前の清く正しい純真な女子生徒そのものです(男子生徒も)。多分、その映像は20年ほど前のものとほとんど変わっていないのではないでしょうか。いいですなあ!(すっかりおじさんモード)
 でも、そこで歌われる曲って、なぜ、あんなにつまらないのでしょうね。退屈です。私だけかもしれませんが、聴いた事のない曲ばかりで、合唱の技術の高さを示すだけの歌のように思えます。彼女たちは、歌っていて楽しいのでしょうか?ラテン語の曲もあるんですよ。
 いや、多分、合唱部全体が一つになって合唱を高めていく喜びがあるはずで、余計なお世話かもしれません。まったく素人な意見で、合唱を愛する方にとっては、侮辱されたと感じるかもしれません。素人の素直な感想なのでお許しください。
 もしかしたら、そういう曲でないと優勝できないからかもしれません。あるいは、各校の指導者がそう思い込んでいるのかもしれません。普段は、もっとポピュラーな曲を楽しんでいるのかもしれません。
 冒頭にも書きましたが、服装も含めてこういったスタイルが続いていることはきっと素晴らしいことなのでしょう。でも、もっとポピュラーな曲が聞きたいなあと思うのです。セーラー服は残ってほしいですが。
 課題曲の傾向は、ここ数年変わってきている気がします。ちなみに、今年の中学校の部の課題曲は、アンジェラ・アキさんの『手紙』という素敵な曲でした。
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将棋世界10月号②

2008-10-11 23:04:28 | 将棋
 【全国高等学校将棋選手権、女子団体戦準決勝の三将戦で、8五の角を6八に成ってしまうというハプニングが起こった。しかし、相手も気づかず投了。回りから指摘され頭を抱える。投了優先の規定により、勝敗は投了した方の負け。】
 という出来事が起こったとのこと。

 最近、大会に出ていないので、現状はよく分からないが、一般的には「投了優先」が適応されているのではないだろうか?
 しかし、この「投了優先」という規定は、本当に適切なのだろうか?
 ドーピングの場合は、過去にさかのぼって記録抹消されるが、普通の反則とは次元が異なる。
 通常の場合、格闘競技やボールゲームが終了時が境界線になることが多い気がする。しかし、記録を争う競技の場合は、競技終了後に、コース侵害やバトンパスゾーンオーバーなどが確認されて失格になるのが普通である。
 また、ボールゲームでも「中東の笛」のハンドボールで大会そのものが無効になったり、メジャーリーグでもやり直し試合が行われたことがあったと記憶している。

 他の競技はさて置き、将棋の場合はどうなのだろう。
 プロ将棋の場合、記録係はつくが審判はいない。(タイトル戦でも、審判ではなく立会人がつく。立会人は審判の役みたいなものだが、判定と言うより裁量である)
 審判ではなく立会人であるので、対局の責任は対局者が負うことになる。つまり、相手の反則を見逃して負けになるのは、対局者の責任なのである。まあ、もちろん、プロだから反則を見逃すことはありえないので、実際問題、審判の有無は関係ない。(しかし、秒読みの時間切れという問題は存在する。これを記録係にゆだねるのは気の毒だ)
 アマチュア大会の場合、もしかしたら「審判(長)」という肩書きの人は存在するかもしれない。しかし、一局、一局に審判が付く事は多分ない。なので、対局は対局者の責任で行われているのではないだろうか。
 だから、投了後に反則が判明しても、後の祭りというのは妥当なように思える。
 しかし、反則と言うのは将棋に無い手を指したということなのだから、その時点で将棋が成立しなくなるのではないだろうか?私は「投了優先」の規定に、ずっと違和感を持ち続けている。しかし、これは、投了と将棋のルールをどちらを優先するかという問題で、どちらが正しいということはないのかもしれない。

 けれども、「投了優先」を、悪意を持って拡大解釈すると、「相手が気づかなければ、反則をしても良い。反則に気づかない方が悪い」ということになる。まあ、発覚すれば即負けだから、かなりリスクは大きい。でも、絶体絶命で逆転の見込みが無い場合、最後の手段として反則を犯すなんて選択する選手がいないとは言い切れない。特に泥仕合で時間切迫だと勝負手?(反則)が成功する可能性は高くなる。

 上記はモラルの問題だが、反則に関連した実践上のトラブルが起こる可能性がある。
 審判がいなくて、「投了優先」なのだから、観戦者や仲間が反則を指摘することが出来ない(助言になってしまう)。故意でなくとも、「あっ」と声を立ててしまう可能性はかなりある。この場合、どうなるのだろう。たいてい、反則をしたのだからと、負けを認めると思うが、必勝の方が反則を犯してしまい、周りの反応で対局相手が気づいてしまった場合、「投了優先」の規定を盾にして「助言だ」とごねた場合はどうなるのか?
 また、大会運営者(役員・係員)が、反則を目にした場合、これを指摘してはいけないのだろうか?

 こういった実践面や将棋の本質を考えると、「優先順位の問題」と先述したものの、ぶつぶつ文句を言いたくなるのである。
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将棋世界10月号(先月号)

2008-10-10 22:58:42 | 将棋
 実生活(仕事・雑用)が忙しいということもありますが、羽生名人の活躍のおかげで、ネタに困らないので、ついつい将棋世界の方はおろそかになってしまいます。(まあ、それが任務というわけではないのですが)

★勝又教授の最新戦法講義【番外編】
 9月号に続いて「羽生将棋の解析」。今回は受講者である私の専門?分野なので、勝又教授の分析力のすごさがいっそう感じられた。
 「なるほど」「うん、その通りだ」「そう考えるのか」など、頷く事ばかりだ。分析力もすごいが、それを伝える構成力や展開力や表現力もすごいと思う。

★王位戦第二局(深浦王位の自戦記)、第四局(上地隆蔵氏の観戦記)
 2局とも、深浦王位がリードし、羽生名人が追いかけるという展開で、深浦王位が競り勝ち勝利している。第2局は、羽生名人が完全に逆転していただけに、このシリーズの流れに大きな影響を与えた将棋だった気がする。
 この2局とも、深浦王位のリードはかなり大きいように思えたが、深浦王位は、それほどいいようには感じていなかったようだ。悲観派と言った方が良いように思えるほど慎重だと感じた。

★王座戦挑戦者決定戦
 最近、パッとしない谷川九段(ごめんなさい)。最近のA級等トップ棋士の将棋は、わずかなリードができればよい。そして、そのリードを一気に広げようとせず、じっくりじわじわ拡大するというようなつくりが多い。
 とにかく接近戦で、谷川九段の間合いにならない。キン、カンと火花が飛ぶような切り合いにならず、刀を合わせたままのつばぜり合いの押したり引いたりの中盤戦が続く。最後まで谷川九段の間合いにならないか、間合いになっても、消耗して切っ先がやや鈍ってしまうことが多いようだ。
 木村八段は、終盤ポカがあって、頭がクラクラしたはずだ。逆転には至っていなかったようだが、そこで踏みとどまれたのは、並みの棋士ではない。
 谷川九段は正攻法なのがアダになっている。妖刀を手にした谷川九段も見たいが、それを良しとしないだろうなあ。

★棋聖戦第五局
 飛銀両取りに対し、まさに一閃という表現がぴったりの△8六歩!
 形勢は難解だったらしいが、それに対する佐藤棋聖が応手を間違え、羽生名人が勝利。

★熱い学生将棋、夏の陣
 小・中・高とメンバーは替わるが、濃密なスケジュールだ。

7月30日    小・中学校団体戦 東日本大会(東京)
7月31日    小・中学校団体戦 西日本大会(大阪)
8月 2日    全国小学生倉敷王将戦(倉敷)
8月3、4日   全国中学生選抜将棋選手権(天童)
8月5、6日   中学生将棋名人戦(東京)
8月 6日    小学生姫駒名人戦(東京)
8月6、7日   全国高等学校将棋選手権(前橋)
8月11日    小・中学校団体戦 決勝大会(東京)
8月11、12日 中学生将棋王将戦(大阪)
8月12日    高校生将棋王将戦(大阪)

 すごい日程です。何とかならないものか。
 特に、中学生は過密。選抜(3、4日・天童)、名人(5、6日・東京)、王将(11、12日・大阪)、上位進出者しか分からない大会もあるので完全に確認できないが、少なくとも2大会に参加している中学生が10人以上いる。保護者も大変だ。(金銭面・体力面)

 将棋世界の記事(学生将棋関連)も何とかしてほしい。やたら字が多い。レイアウトに工夫の余地が多い。内容も、会報の報告レポートレベル。

 その中で、気になる出来事が一つ。(続く)
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