英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2016王座戦 第2局 その2「辛抱する羽生王座、快調な糸谷八段だが…」

2016-09-30 22:48:25 | 将棋
その1「えぇ~!藤井システムぅ?」の続きです。


 決戦の準備万端な先手に対し、後手は1手半ぐらい遅れているような第9図。

 図より羽生王座は△1五歩と突く。▲同歩とさせておけば、後に△1五飛の捌きを見た手筋の突き捨てである。
 こういう突き捨ては悩ましいが、プロ棋士の場合、形勢に自信があれば取ることが多い気がする。受けに自信がある棋士も取ることが多いようだ。
 本局の場合、上記の両方に当てはまり、1分の考慮で▲1五同歩と応じた。
 しかし、桂を取られるのにあと2手必要で、△1七歩成と桂を取られても、それまでに成果(飛車の成り込みや銀を捕獲)を上げれば、充分お釣りがもらえそうだ。
 具体的には、▲3四歩△4二角▲7七角が後手の飛角銀の形の悪さを咎めている。次に▲6五歩と突く手が非常に厳しく、後手の1筋攻めが全く間に合わない。

 本譜は▲1五同歩に△3五銀と出来て、▲3四歩に△4四角とかわす手が間に合った。
 と言っても、棋勢が好転したわけではなく、やはり▲4六歩(第10図)が厳しい。


 △4六同歩は▲4五歩で角が取られてしまうので、△4六同銀▲同銀△同歩▲4五歩△3五角▲4四銀に△3七歩成と勝負する手が有力と見られていたが、△5四歩▲4五歩△5三角。一手費やした上、歩を取られつつ先手の歩が伸び、角が撤退する……涙が出そうな辛抱だが、△4六同銀と決戦に出るより勝機があると考えたのだろう。
 また、第10図では、△5四銀と全軍上げて防戦に努める手もあるが、これ以上、陣形が上ずるのは危険と判断したのかもしれない。
 さらに、▲6五歩(第11図)と糸谷八段は追撃の手を緩めない(先に▲7七角と上がって次に▲6五歩を狙うのも有力)。

 第11図では、△1五香や△4二飛と動くても考えられたが、羽生三冠は△6五同歩と応じ、▲7七角に△1二飛とかわす。先手の言いなりのようにも見えるが、彼我の玉型の差もあり、捌き合いは避けたい。6五の歩は拠点になるし、6四かに角を出る手も可能にしている。また、△1二飛も先に突き捨てた△1五歩の意を継いでおり、自然体の対応とも言える。

 続く▲3三歩成(第12図)では▲2二歩の方が良かったらしい。

 次に▲2一歩成と桂を取って初めて一人前の▲2二歩(と金の位置も良くない)よりも、後手の左陣を支配すると金を作る▲3三歩成の方が自然のように感じる。しかし、▲3三歩成だと、本譜のように△6四角とされた時に、▲5五歩とすると△3三桂でせっかくのと金が外されてしまう。
 それで、△6四角に糸谷八段は▲3四とと、と金を活用。
 しかし、この手も自然に見えたが、良くなかった。

「その3」に続く
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『挑戦する女・弁護士七尾響子』(再放送)

2016-09-28 19:53:36 | ドラマ・映画
あまりにも酷いドラマだったので、備忘録として

『土曜ワイド劇場』枠で放送するために2002年撮影されたがお蔵入りし、長らく未放送となり、2006年に昼間の別の放送枠で初放送されたらしいが、『土曜ワイド劇場』の域にも達しておらず、延期、昼間放映は正解だったのではないだろうか。
 主演:一路 真輝、
 原 久美子、船越英一郎、清水由貴子、中島ひろ子、山崎 一、大橋 吾郎

「連続殺人!夫の心を奪った女…法廷で再現する空間5mの殺人トリック!」
・いかにも『土曜ワイド劇場』らしいサブタイトル……釣られて観てしまった未熟さを恥じたい
・殺人トリックも、ちゃち。
・犯人、被害者、被疑者らの性格や行動も有り得ないほど不合理。
・船越英一郎、山崎 一の無駄遣い。
・被疑者・北小路 妙のキャラ設定自体が意味不明だが、中島ひろ子の演技も破綻していた(ストーリー上、キャラ設定がご都合的過ぎて、彼女自身も役作りが確立できていなかった)

 その他、突っ込み始めたら、キリがないほどのどうしようもない出来。
 要注意脚本家……吉田 剛 (こう明記しておくと、後々役に立ちます)
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羽生三冠の最終局事情

2016-09-27 17:39:10 | 将棋
今日は王位戦の最終局(2日目)。
現段階(午後5時40分)で、かなりの優勢。
心中に安堵の拡がりを感じつつ、この記事を書いています。と言っても、投了の声を聴くまで、安心はできません。
(他にもたくさん書きたい記事があるのに、わざわざ増やしてどうするんだと、自分で突っ込みたくなります)



 昨日、心配で巷の声を拾っていたが、その中に「羽生三冠は最終局に部類の強さを発揮する」というものがあった。
 しかし、私は「最終局に強くはない」というイメージを持っている。竜王戦でのあの3連勝4連敗、深浦九段に王位戦で連続3勝4敗で敗退、森内九段にも名人戦で2度、3勝4敗の苦杯を喫している。一度目の七冠挑戦も、谷川王将に3勝4敗で退けられている。

 巷の声は正しいのか?……


★第1期……七冠達成まで(1989~1995年度)
 この間は、まさに破竹の勢い(でないと、七冠は達成できない)。
 タイトル戦の番勝負としての勝敗は、何と!25勝3敗(0.893)。7番勝負は9勝3敗、5番勝負は16勝0敗。
 1局単位では88勝39敗で、さすがに勝率は7割を切る0.693。 と言っても、タイトル戦で7割近くは脅威の高率。
 7割を切ると言っても、番勝負の星の流れも圧倒し、最終局までもつれ込んだのは、28シリーズのうち6シリーズのみで、最終局は5勝1敗。7番勝負では3勝1敗。5番勝負は2勝0敗。
 19シリーズは星を2つ以上離しての勝利(内10シリーズはストレート勝ち)。

★第2期……王位戦(深浦戦)直前まで(1996年度~2006年度)
 なぜ、ここで区切ったかというと、2007年度の最初のタイトル戦が第48期王位戦で、最終局までもつれ込み大熱戦の末、深浦八段(当時)に敗れたシリーズ。この後、最終局敗退のイメージが強くなった気がするからである。(この第2期までは、勝負強さを感じていた)

 七冠達成後は、羽生将棋も研究され、将棋界全体のレベルも高くなり、タイトル戦敗退も増えてきた。特に、森内九段にはかなり痛い目に遭っている。
 タイトル戦の番勝負は、41勝15敗、勝率0.732。7番勝負は22勝10敗、5番勝負は19勝5敗。相変わらずの強さ。特に1997年度の王位戦から2000年度の王座戦まで、出場したタイトル戦では連続15連続でタイトル戦勝利している。
 1局の勝敗としてカウントすると、171勝97敗、勝率0.638。
 最終局の成績は9勝5敗、0.642。物足りない気もするが、この間の全勝敗を少し上回っており、通常と変わりなしと言える。7番勝負では5勝2敗、5番勝負では5勝3敗。7番勝負で敗れる場合(失冠や挑戦失敗)は、1勝4敗や2勝4敗(0勝4敗も1度)が多く、“少なくとも最終局になれば勝つ”というイメージである。

★第3期……現在まで(2007年度~現在・2016年度棋聖戦)
 深浦八段との王位戦の後、“アンダー羽生世代”(深浦、久保)や若手(渡辺、広瀬)らが、タイトルに絡むようになってきた。
 と言っても、羽生三冠自体は、渡辺、森内以外には、ほとんど敗れていない(あとは久保、深浦)。

 この間の戦績は、タイトル戦の番勝負としては29勝14敗、勝率0.674。7番勝負は12勝11敗、5番勝負は17勝3敗。1局の勝敗としては126勝86敗、勝率0.594。これまでに比べて、率を落としているが(渡辺と森内のせい)、それでも大した数字である。
 最終局の成績は、9勝6敗、0.600。7番勝負では3勝5敗と負け越し、5番勝負では逆に6勝1敗と勝負強さを発揮している。以前の5番勝負(特に王座戦、棋聖戦)は、相手を圧倒するシリーズが多かったが、最近は若手の挑戦を苦労して退けている。7番勝負は最終局に限らず、(名人戦と竜王戦での敗退もあり、全般的に苦手にしているイメージがある。最近の王将戦も冴えない。最終局もその苦手を反映しているような成績である。

 そんなわけで、7番勝負の最終局に関しては、大きな不安を持っていた。
 でも、何とか勝ったようです!
 今日負けて王位を失うと、王座戦で糸谷八段に3連敗を喫して大逆転での王座失冠というイメージが一気に浮かび上がるところでした。


 全期間を通すと(今期の王位戦を加えて)、タイトル戦としては96勝32敗、勝率0.750(392勝225敗。0.635)。7番勝負は44勝24敗、5番勝負は52勝8敗。
 恐るべき戦績です。 
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【歳時メモ】 セイタカアワダチソウがその存在を示し始めました

2016-09-23 20:13:31 | 歳時メモ
「歳時メモ」と勝手に銘打っていますが、このカテゴリーの意味は、植物の様子や気候などをメモして、翌年以降に現記事を振り返ると、季節の進み具合が分かりやすいかなと思い、記事にしています。

まず、昨年の9月29日の歳時メモを再掲。
 蕎麦の花は今が最盛期。あちらこちらで、花が風に揺れて、一面白く泡立っているように見えます。
 コスモスもあちこちで揺れていますが、今年はあまり目立っていません。これからもっと咲くのでしょうか?
 ススキは、穂が開き始めました。
 セイタカアワダチソウは、にょきにょき伸びてきて、てっぺんが黄色く色づき始めました。


今日は9月23日で、上記より1週間ほど早いのですが、
 山あいのセイタカアワダチソウは、てっぺんが薄く黄色を加え始めて、セイタカアワダチソウの存在を示し始めていました。
 蕎麦畑は1週間ほど前にほぼ満開状態でした。
 コスモスはあちこちで咲き揃っています(昨年同様、あまり目立たない気もします)。
 ススキは帆が目立ち始めました。
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残念な蓮舫氏

2016-09-23 17:43:58 | 時事
「二重じゃ、ダメなんですか?」
と開き直ってほしかったというのは冗談だが、二重国籍については

日本の国籍法上、二重国籍者は認められていないが、外国籍の離脱は努力義務にとどまり、離脱していなくても罰則はなく、厳格な運用は行われていない
ということらしい。まあ、不適切な状態なのではあるが、放置してもあまり問題ではなく、実際に二重国籍状態の人は相当数いるそうだ。

 しかし、一般人ならともかく、これが公務員だと話が違ってくる。

外務公務員法第7条で「国籍を有しない者又は外国の国籍を有する者は、外務公務員となることができない」
と規定されているらしい。

 以上は、『現代ビジネス』髙橋 洋一氏(経済学者・嘉悦大学教授)の記事を参考にしています。
法務省のホームページでは「外国の国籍と日本の国籍を有する人は,22歳に達するまでにどちらかの国籍を選択する必要がある。選択しない場合は,日本の国籍を失うことがある」という旨が記されている。

 国会議員なら知っておくべき事項で、当然、台湾籍を放棄しておかなければならなかったはず。



 で、今回私が言いたいことは、二重国籍云々ではなく(もちろん、それについても追及すべきだ)、二重国籍問題発覚後の蓮舫氏の答弁とその後の処し方である。

 二重国籍について問われた時、蓮舫氏は9月3日のテレビ番組で、「(台湾)籍を抜いています。高校3年の18歳で日本人を選びましたので」
「籍抜いてます。高校3年(1985年)の18歳で日本人を選びましたので」と答えていた。

 この発言であるが、戸籍法には微妙な点があって
「日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言をすることによつてする」
とあり、蓮舫氏の「18歳で日本人を選びました」を外国の国籍を放棄する旨の宣言と解釈とできないこともない。
 これらの解釈については、『BLOGOS』の深沢明人が蓮舫氏寄りの記事を書いていて、「蓮舫氏が国籍法上解消すべき二重国籍の状態でもでも何でもないことに触れていない、誤解を招くものであり、残念に思う」と結んでいる。
 しかし、“問題なし”の拠り所がの『日本国籍選択の宣言』がいつ為されたかについては、深く考えていない。もし、9月3日のテレビ番組を宣言と考えるならば、国会議員になった時点では未宣言なので、大いに問題ありとなる。

 ああ、また、話がそれてしまった……

 で、この後の蓮舫氏の答弁が、「確認する(念のため、9月6日に再度、国籍放棄の書類を提出)」になり、台湾国籍を放棄していないことが明らかになると、「記憶違いだった」と過去の弁を翻した。
 仮に、国籍放棄手続きをしたと思い込んでいた、あるいは、実際に手続きをしたが、何らかの不手際で処理されなかったとしても、(9月6日の記者会見「代表処での父親の台湾語がわからなかったので、実際どういう作業が行われていたかわからなかった」)、国会議員を志した時点や国会議員となった以降に、確認すべきことではないだろうか?

 とにかく、「嘘をついた」、「とぼけた」、「勘違いをしていた」にせよ、また、『戸籍法』を好意的に解釈して“問題はない”としても、二重国籍疑惑に対する答弁が事実と異なっており、結果的に「嘘をついた」ことになってしまった。まあ、「嘘をついた」は決めつけすぎかもしれないので、「答弁した内容が事実と異なっていた」に表現をとどめておくべきかもしれない。しかし、国会議員となって以降、確認しなければならない作業を怠った結果の誤りであり、重大な問題である。
 私も、そして、おそらく世間も、蓮舫氏なので、追及も厳しくなるのであろう。


 他人の過ちに対して厳しい蓮舫氏、もし、氏が追及する側に居たら、どれほど恐ろしい形相、いえ、厳しい論調で糾弾するのではないだろうか?
 他人に厳しいのなら、自分にも厳しくしなければならない。
 それを実行して、台湾に国籍が残っていたと判明した時点で、国会議員を辞職、少なくとも、民進党党首立候補を取り下げた方が、世間の評価は高くなったのではないだろうか?
 さらに、そんな蓮舫氏を党首にしてしまった民進党は、信頼度を低下させたのではないだろうか?

 

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2016王座戦 第2局 その1「えぇ~!藤井システムぅ?」

2016-09-22 17:12:38 | 将棋
羽生ファンにとって、4~7月は悪夢だった。

 4月23日の名人戦第2局の大逆転負けから始まる6連敗。
 この間、名人戦では良いところなく負け星を3つ重ね失冠。棋聖戦も永瀬六段に第1局に敗れる。
 棋聖戦第2局(6月18日)に勝ち、ようやく連敗を止め、叡王戦の九段戦を勝ち上がり復調かと思えたが、名人復位を目指すA級順位戦初戦の深浦九段戦を落とし、棋聖戦第3局も敗れて追い込まれ、王位戦第1局も木村八段に敗れるという暗雲が立ち込める状況。「不調」「スランプ」どころか「衰えた」という声のボリュームも大きくなってしまった。
 その後、棋聖戦第4局、第5局に連勝、順位戦も森内九段に快勝するなど、立ち直りを感じさせたが、棋王戦トーナメント初戦(2回戦)で佐々木勇気五段に完敗(らしい?)、王位戦も2勝3敗とカド番に追い込まれ、日本シリーズ2回戦(初戦)も深浦九段に敗れるなど、不安を解消できないでいる。
 ただ、A級順位戦(対行方八段)、王座戦第1局(対糸谷八段)に勝利し、上昇機運にあると言ってよいだろう。


 本局の第2局を制し、優位を確保しておきたい。
 強弱のムラがあるとはいえ、糸谷八段の剛腕は脅威である。羽生王座も二年前の竜王位挑戦者決定三番勝負で苦杯を喫しており、糸谷八段が森内竜王から竜王位を奪ったシリーズでの破壊力、NHK杯戦で渡辺竜王が苦笑いするしかなかったシャットアウト力、NHK杯戦の対井上九段戦や順位戦の対鈴木大介八段戦で見せた逆転力はの凄まじさが脳裏をよぎる。



振り飛車?……しかも、“藤井システム”!………大丈夫なのか…………


 先手の糸谷八段は▲3六歩と突いて△6二玉を強要し、“急戦構えで牽制、機を見て穴熊”の戦術。
 そして、△6四歩に▲5五角と出て、△6三銀を強いる。
≪う~ん、この戦型、振り飛車が勝ったのを見た記憶が少ないなあ≫
 この後、角を3三方面に利かせたまま、▲3五歩の仕掛けを含みに進めるのも有力だが、糸谷八段は▲6六歩と突き、角を3七に引く持久戦(穴熊)指向。
 しかし、羽生王座は▲8八玉に対し△4五歩と、隙あらば△6五歩の構えを見せる。

 この手法は割と珍しいらしいが、事前の研究ではないだろうか。羽生王座自身「(△4五歩では)△3二飛がよく指されている形です」と説明していた。
 糸谷八段は▲6七金~▲7八銀と左美濃に組む。振飛車(藤井システム)から見ると、居飛車穴熊に囲わせなかった意義はあると言えるが、△6三銀と自陣の美濃囲いを崩しているのが不満。かと言って、△7二銀と戻すのは▲6四角と歩を取られてしまうし、2手損するのも立ち遅れる可能性もある。それらを避けて△7二金と締まるのも美濃囲いよりも弱い(このままでは将来▲6一銀の割打ちも残るし、玉頭も不安)。
 なので、この局面を主導した羽生王座には、何か思惑があると思われる。それが、△3五歩なのだろう。

 この△3五歩は△4四銀型四間飛車の狙い筋ではあるが、自らの角頭の歩を突くので、その反動を覚悟しなければならない。
 図で▲3五同歩と取ってくれれば△同銀と進出できて話が早いが、▲2六角とあらかじめ▲2六角とかわし、△3六歩に▲3八飛と迎え撃つのが常套の手筋。
 振飛車も△3二飛と対抗するが……


 この第6図、後手・振飛車の3三の角と4四の銀の組み合わせが重く、さらに3四の地点が空いており、いつでも▲3四歩を利かされるマイナスがある。そのうえ、後手玉の囲いに不備があり、不安がいっぱい。
 ちなみに、この△3二飛では△2四歩▲同歩△2二飛が有力とされていた。△2四歩▲同歩△2二飛に▲3六飛△3五歩▲3八飛の順は、実戦の△3二飛▲3六飛△3五歩▲3八飛△2四歩に▲同歩△2二飛と進めた時より、△3二飛と途中下車しない分、1手得だというのだ。ただ、この△2四歩▲同歩△2二飛は“欲張った手順”なので、どこかで破綻する危険性もある。具体的手順は分からないが、後手の囲いに不備があるので、欲張ると良くないことになるような気がする。
 ともあれ、実戦は△3二飛▲3六飛△3五歩▲3八飛△2四歩と進む。

 ここで「控室では▲2四同歩△2二飛に▲4六歩△2四飛▲2七歩△6五歩▲4五歩△同銀▲3五飛が検討されている。最後の▲3五飛で銀取りが受けにくく、後手はどこかで変化する必要があるようだ」と中継解説には記されていた。しかし、「最後の▲3五飛で銀取りが受けにくい」とされているが、△3四銀で持ちこたえているように思う。途中の△2四飛に▲2七歩と受ける手の交換は、かなり先手の損だろう。

 糸谷八段、29分の考慮で▲2八飛。
 △2五歩と角当たりで歩を取られ、▲5九角と引かされるので思考から除外しそうだが、以下△2二飛に▲1七桂と跳ね2筋逆襲を狙うのが巧い手順。
羽生王座も局後に「いやぁ、うまい手順でした」と感心の言葉。

 2五の歩を守れない後手は△3六歩に活路を求める(△1三桂と対抗しても▲1五歩△同歩▲1四歩で困る。▲1五歩に△同角も▲同角△同歩▲1四歩)。
 以下▲2五飛△2四歩(囲いの差で飛車交換はできない)に▲2七飛で第9図。


 先手の不満は、1七の端桂(桂頭の弱点と中央での活躍は不可能)と後手の3六歩の存在。
 しかし、後手の不安材料はもっと大きい。
 飛、角、銀が重い形の上、いつでも▲3四歩を利かされる爆弾を抱えている(このマイナスは“4四銀型△3五歩の仕掛け”の宿命)。更に、玉形の不備。(これら、何度も言ってきた気がする)

 この戦いに主導した羽生王座だが、私には≪失敗している≫としか思えなかった

「その2」に続く
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『とと姉ちゃん』  面白かった“公開商品試験”の不満なこと

2016-09-18 14:09:37 | ドラマ・映画
『とと姉ちゃん』に限らず、連続テレビ小説はほとんど観ていません。時間的に、と言うより、録画すれば可能ですが、物理的時間の余裕がなく、観てしまうと、ブログに書きたくなってしまうので。
それでも、「商品試験」に纏わるエピソードが興味深かったので、つい観てしまいました。



 『あなたの暮らし』の理念は「あなたの暮しに寄り添う」であるようで、そのため、広告で収入を得ない。スポンサーに気を使うこととなり、庶民目線の公正な視点と成り得ないからである(たまたま、そのシーンを視聴)。
 商品試験実施の際も、すべて自己資金で行う。試験する商品と関係のない善意の提供も受けないという徹底ぶり(将来、試験する際に関わってくることや、間接的なしがらみがあるかもしれない)。で、この回もたまたま視聴。公開商品試験での3~4話を視聴した他は、3話ぐらいしか観ていないので、偶然にしては出来すぎで、これは≪「公開商品試験」を観て、記事を書け≫という見えない意思が働いているのかもしれない(←うぬぼれ)。

 とにかく、崇高な理念と強い意志で、公正かつ厳正なテストと検証で、世間からの信頼も高かったようだ。
 となると、「商品試験」での評価が、商品の売れ行きに影響を持つこととなり、その被害者のアカバネ電機製造との確執が生じた(もちろん、粗悪品を製造販売したアカバネの自業自得)。
 買収、嫌がらせ、そして、週刊誌を利用して『あなたの暮らし』への中傷記事へとエスカレート。それを、新聞社が取り上げ、『あなたの暮らし』への信頼も陰りが見え始めたらしい。(商品試験開始から新聞社介入までは、ほとんど観ていません)


 公開商品試験では、各メーカーが独自で行う商品テストを披露(資料と口頭での説明)し、『あなたの暮らし』の商品試験ではどのように行われているかを検証。公開試験の目的は、『あなたの暮らし』が公正なものかを検証するものだったが、ドラマ的には≪『あなたの暮らし』対『アカバネ電機製造』≫の図式でもあった。
 おおよその流れは、各メーカーも厳しい耐久テストや検証作業を行っていたが、「机上の理論や実験室での検証」の枠内で、消費者目線での実践的検証には至っておらず、『あなたの暮らし』に懐疑的だった担当新聞記者も考えを改めるべきだと感じたようで、無茶な反論をするアカバネ社長に対しても、『あなたの暮らし』を支持する発言をした。

 アカバネも耐久テストは行っていたが、おざなり的なもので、低価格戦略での低質な製品ゆえ、『あなたの暮らし』の商品試験での粗悪品紹介の対象となってしまう。
 窮地に立ったアカバネ社長が開き直り、「低価格を望む消費者の要望を叶え、安価で製品を提供するのが何が悪いんだ。良いものが欲しいのなら金を出せ。安いものを選んだ消費者の責任だ」(←意訳)と主張する。
 これに対しヒロイン・常子(高畑充希)は「主婦を家事から解放する電化製品は“ささやかな幸せ”だ。そのささやかな幸せも壊すことは許さない」(意訳)と反論
 また、編集長・花山(唐沢寿明)も「低価格でも安全性に問題があるのは論外」と糾弾。

 さらに、花山がネジの偽装を立証した(鉄のネジをメッキし真鋳製に見せかけた。鉄は錆びやすく、錆びた鉄は伝導率が高くなり発火の原因となる)。
 ネジの偽装については、アカバネ社長は知らず、技術部長を怒鳴る。技術部長は「低コストの社長の厳命に従っただけだ」と主張。責任のなすり合い後、アカバネ一派は退場。


 『あなたの暮らし』の商品試験が、アカバネの偽装を見つけ出し、その厳正さを立証した。


 最後に決定的物証を示し、とどめを刺すという“サスペンスドラマ”のような決着で面白かったが、常子の≪庶民の“ささやかな願い”を守りたい≫という思いがアカバネ社長に通じ、アカバネ社長が改心するという展開にならなかったのは、個人的には不満だった。
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リオデジャネイロ五輪  ~笑顔が見たい~(柔道女子52kg級・中村美里)

2016-09-17 20:56:59 | スポーツ
柔道の女子軽量級、悲運な選手が何人も頭に浮かぶ。
   ………福見友子、浅見八瑠奈、山岸絵美、西田優香…………その中のひとりが中村美里。

「金以外は同じ」
北京五輪で銅メダル獲得後のことばがこれ。
インタビュアーが銅メダルを讃えても、ニコリともせず、悔しさいっぱいで絞り出した言葉だった。


 もともとは48kg級だったが、体格が良くなり減量も限界となり、52kg級に階級を上げた。この際、「谷良子を避けた」と思われるのが嫌で、階級アップをかなり拒んだというのが彼女らしい。
 それはともかく、52kg級に転向後は、減量を気にすることなく稽古に励め、強さがアップした。世界選手権や国内主要大会などテレビでの露出が多い大会では、彼女が敗れたシーンをほとんど観た記憶がない。ライバルの西田優香に敗れた記憶はあるが旗判定の微妙なものが多かった(対戦成績は中村の10勝5敗)。

 ロンドン五輪(2008年)では、順調に勝ち上がったが、準決勝で安琴愛に指導の差で敗れる。パワー負けで「何もさせてもらえなかった」と振り返っている。
 この安琴愛には、2010年のアジア大会では、“技あり”を先取されたのち“技あり”を奪い返し、ゴールデンスコアに持ち込み、最後は旗判定(3-0)で勝利している。また、2011年世界選手権でも対戦し、技ありを奪って勝利している。(世界選手権では金メダル3、銀メダル1)
 しかし、2012年のロンドン五輪では、初戦の2回戦で対戦。“技あり”を奪われた後、“技あり”を奪い返したが、それが“有効”に変更され、以降は“指導”2つを犠牲にして逃げ切られてしまった。安琴愛とは2勝2敗だが、何と大きい2敗なのだろう。安琴愛は北京五輪では銀メダル、ロンドン五輪では金メダルを獲得している。

 そして、3度目の五輪のリオデジャネイロ五輪
 順調に勝ち上がったが、マイリンダ・ケルメンディ(コソボ)に敗れた。序盤に“指導”を受け、そのまま逃げ切られての敗戦で、「如何に相手の“指導”をとらせるか」「“指導”を取られずに時間を消費するか」などの本来の柔道の本質とは関係のないテクニックの差であった。
 と言っても、ケルメンディは2013年、2014年の世界チャンピオンで、ヨーロッパ選手権の覇者でもあり、数多くのグランドスラム大会、グランプリ大会を制している実力者である。リオ五輪も決勝でオデッテ・ジュフリーダ(イタリア)に“有効”を奪って勝利し、金メダルに輝いており、「中村はケルメンディには総合力で敗れた」と記す必要はある。


「金以外は同じ」
…………北京五輪時の19歳中村にとっては“五輪の金メダルがすべてであった。

「いろんなことを経験して取った銅メダルなので、すごく重いです」
…………こう語る中村には笑顔はない。
 やはり、中村にとって金メダルは最も大きな存在なのだろう。インタビューや会見において、銅メダルに対する満足の気持ちは見ることは出来ない。
 流した涙については「両親に金メダルを掛けてあげたいなっていう気持ちが……涙であふれてきてしまいました(金メダルを掛けてあげたかったという気持ちが溢れてきて、涙がこぼれてきた)」と語った。
 また、翌日の会見では「改めてたくさんの人に応援とか、支えてもらってるんだなって、実感しました。やっぱり、北京から金メダルを目指してやってきて、金メダルを取れなかったのは悔しかったんですけど、銅メダルを獲得して周りのみんなが喜んでくれたのはよかったと思います」と、硬い表情で語っていた(一夜明けて、悔しさが増したように思える様子だった)。
 北京の時は、先述した「金以外は同じ(3位も1回戦負けも同じ。嬉しくない)が強烈な印象で他のことは覚えていないが、今回は周囲に対する心配りが窺えた。でも、「"銅メダル獲得でみんなが喜んでくれたこと”は良かった(中村自身は嬉しくない)」という気持ちがビシビシ伝わってきた。
 それにしても、この記者会見(『You Tube』を見る限り、約13分間)立派な席を設けた割には、実のない質問が多かった。「観光したところはあるのか?」「今、一番したいことは何か?」……もっと、核心に迫る質問や、選手が語りたいことを聞いてやれないものだろうか?
 訊くのは酷だと思うが、「準決勝の敗因は何か?」とか「"指導”のジャッジは適切だと思うか?」など突っ込んだ質問は出来ないのだろうか?こういう手の質問は、タブーなのだろうか?
 会見終了後、「写真を撮ります」という声が掛かり、いすなどを片付け始めたが、写真を撮るって……


 これまでの辛い稽古や悔しさ、周囲の支えや期待などを背負って望む五輪。だからこそ、金メダルを獲りたい。
 その気持ちはよく分かる(私ごときが「分かる」というのも失礼な気がする)。小学3年の時から柔道を始めたそうだ。いつのころから五輪を意識するようになったかは不明だが、金メダルを目指して厳しい稽古を積み重ねてきたはずで、「柔道=金メダル」という図式が定着するのは当然であろう。
 ただ、金メダルに固執するあまり、「柔道をする」という本来の目的(楽しさ、おもしろさ)を忘れてしまっては、何も残らない。金メダルを獲れば、その後の収入を含めた実生活も大きくプラスにはなるが、金メダルを獲ったとしても、金メダルに固執してしまえば、人生において残るものは少ないように思う。

 20年弱柔道に浸かってきたことになるが、「金メダル以外は(何もないのと)同じ」だとすると、あまりに悲しい。(私が言うまでもないが)、これまでに柔道で得たものは、非常に多く、素晴らしいものであるはずだ。
 中村選手は27歳。今後、柔道を続けるかどうかは知らないが、あと50年以上は人生が残っている。きっと、キミなら素晴らしい人生を歩めるはずだ。

 「いろんなことを経験して取った銅メダルなので、すごく重いです」……この言葉には、中村の人間として深みが感じられる。
 両親には金メダルを掛けられなかった。中村の笑顔を見せられなかった。
 でも、いつの日か、ご両親には笑顔を見せてほしい。両親は金メダルよりも、中村の幸せな笑顔を見たいはずだ。



 なんだか、くさい記事になってしまった………
 ちなみに、『Wikipedia』には、
「一般的には「笑わない柔道家」と見なされており、実際、柔道ではオリンピックで金メダルを取った時以外は笑わないことに決めているが、素顔はお笑い好きである(日本テレビスッキリ!!出演時の発言)。特にCOWCOWがお気に入りだという。また、R-1ぐらんぷりなどのお笑い番組をコマめにチェックしており、無名に近い芸人のこともよく知っている」
という記述がある。
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リオデジャネイロ五輪  ~壮絶な初戦敗退~(卓球女子シングルス3回戦・石川佳純)

2016-09-10 15:10:03 | スポーツ
 私がこの試合を観たのは第3ゲームの3-3から。
 石川が強振し、相手選手が受けているシーン。
 ここまで2ゲーム連取しているようだが、“快調”というムードではなく、≪石川が必死に攻めている≫という緊張感が場を占めていた。
 相手は…北朝鮮の選手。北朝鮮は強敵だ。しかし、どうやらエースのリ・ミョンスンではなく、キム・ソンイ。世界ランクは50位(五輪時)。
 この世界ランキング、「レーティングポイント」、「ボーナスポイント」、「ペナルティーポイント」が関係し、出場大会の格付けや対戦相手の強弱によってその増減も異なるが、実力は高くても国際級の大会への出場が少ないとランキングは低くなる傾向が強い。だから、実力者がひしめく中国や、国際大会への参加が少ない北朝鮮の選手は過小評価となる。世界ランク50位は度外視したほうが良い。ちなみに、石川選手の世界ランクは6位、福原選手は8位、伊藤選手は9位。

 このゲームの中盤では、まだ、互いに球筋を掴めていないのか、ラリーにはならず、早めにスマッシュが決まるか、返球ミスで終わることが多かった。
 しかし、このゲームの中盤以降、石川の強打を捌くようになり、打っても打ってもカットで返してくる。徐々に、キム・ソンイが石川の球筋に慣れてきているという感がある。
 キム・ソンイは“カットマン”タイプ。
 強力なスライス回転に対して、強打で(特にフラット)の返球は難しく、擦り上げるようにして返すのが通常の対処だが(“持ち上げる”と言うらしい)、それだけではポイントを上げることはできず、どこかで強打をしなければならない。石川選手の強打は相当なスピードがあるが、キム・ソンイはきっちり返してくる。しかも、強打を織り交ぜて。
 さらに、通常のカットマンに比べて、いきなり強打を仕掛けてくる率が高い。しかも、厄介なことに、攻撃型の選手にひけを取らない強打の持ち主だ。



 石川もその強打によく反応し、ラリーが続く。ぎりぎりの応酬で、どちらかが競り勝ち、ポイントを上げるという一進一退のゲーム展開。
 しかし、7-7から激しいラリーを石川が制し、9-7とリード。このゲームを取れば石川の3-0となり大きく優位に立てる。
 ここで、キム陣営がタイムアウト(1試合に1度だけ取ることができる)。そして、その直後のサーブを石川がレシーブミス。おそらく、この試合始めて繰り出したサーブであろう。
 その後も、プレーの組み立てを変えたのだろう。石川が対応しきれない感じで、このゲーム、9-11で落とす。

 第4ゲーム、序盤リードされたが、石川がキムの球筋や戦術に対応し反撃。9-7とリード。
 しかし、石川のサーブに対し、巧妙なレシーブ(返球コースが絶妙)で石川の体勢を崩し、2点連取。
 さらに、キムのサーブをレシーブミスし、9-10。最後もサーブで崩されて失点。9-11でゲームを落とす。

 第5ゲーム、序盤リードした石川だが、中盤ミスが増え、8-8のタイスコアで終盤へ。
 キムのサーブで始まった第17ポイント目、カット戦から7球目に突如、キムが強打。石川、これをブロックで受け止め、再び、間合いを測るラリーへ。
 14球目、こんどは石川がクロスへ強打。キムが何とかバックハンドでレシーブするが、やや浮き球となり、石川のチャンスボールに。そこで、後方に下がり、石川のスマッシュに備えるキム。
 石川、構わずクロスへ強打。キムはバックハンドでロビングで返す。浮いた球、後方に下がったキムを見て、石川は前に落とそうとするが、ネットに掛けてしまう。
 石川も打つか落とすか迷ったのだろう。その上、おそらく、前に落とすのは相当高度なテクニックが必要なはずで、凡ミスとは言えない。しかし、試合の流れとしては相当痛い失点だ。
 しかし、石川、次のプレーでは、しっかり打ち抜き、ポイント。9-9。
 さらにしっかりとしたスイングで、ラリーを制し、10-9。
 ゲームポイントも、ラリー中から威力十分のスマッシュ。キムが受けきれず、11-9で第5ゲームを奪う。

 第6ゲーム、時折、攻勢を見せるが、守備に専念するキム・ソンイで、石川が攻め切るか、キムが受け切るかの展開。
 4-4から攻防は見事だった。石川の強打を体を捻じってカットで返すかと思えば、一転、強打で反撃、これに、石川がブロックで対応。攻守を変えながら、息詰まるラリー。44本目についに、キムがネットに掛け、石川が5-4とリード。
 しかし、このプレーの後、石川が足を気にする素振り。続くポイントも取り、6-4とするが、やはり、足を気にしている。テレビカメラも、石川の異変に気づき、足をクローズアップする。
 長いラリーを競り負けたキムだが、少しもめげず、7-7と盛り返す。
 石川の攻勢に対し、カットで応戦。ラリーが続く中、石川が身体を開いてフォアで返した際、やや、位置取りが左に寄ったのを見て、キムがストレートに強打。テニスで言えば、“ダウンザライン”だ。7-8。
 この後、早めの勝負を懸ける石川だが、ミスが相次ぎ、7-10とゲームポイントを握られる。
 しかし、石川も踏ん張り、9-10と迫る。特に、直前の9点目のラリーは、41本に及ぶラリーだった。ほとんど、石川の攻め、キムの守りだったが、辛抱強く打ち続けた。
 キムのサーブ、3球目、キムはバックで突っつき、その返球を、逆クロスに強打。これが決まり、9-11でキムがこのゲームを奪い、最終ゲームへ。

 最終ゲーム。
 石川の攻め、キムの守りという図式は変わらない。時折、素晴らしいプレーでポイントを上げるが、戦術的な打開策も見いだせず、石川がキムの守備を突き破れない。4-7と劣勢。
 しかも、ここで足が痙攣したらしく、審判に治療タイムを要求するが認められない(はっきりとした外相があれば認められるが、痙攣などは“疲労の延長”と見なされる)。それでも、審判団の協議で、多少の時が流れ、足の回復が期待される。
 足を気にしつつ、試合再開。ラリーで競り負け、2連続失点で、4-9と窮地に。
 追い込まれて、石川も反撃。2点連取して、6-9。
 次のプレー、ラリー中からキムが強打。これをブロックで対応。続く、キムのスマッシュにもブロックで強く逆襲。好守が変わり、石川の連続強打に、キムが堪えきれず、ミス。7-9。
 続くプレーも、キムの攻勢に、ブロックで反撃。石川の反撃のスマッシュをキムが受けきれず、8-9と1点差!
 しかし、ここでキムのサーブを、石川がミス。解説者曰く、初めて打ったサーブ。
 マッチポイントを握られた石川のサーブ。厳しいサーブだ。これをキムが何とか返球。これがネットに触れ、石川、何とか対応したが、がら空きとなった代の右側に返され、跳びついて返すもネット!……ゲームセット。


「石川、まさかの初戦敗退」
 という見出しが飛び交ったが、これは違う。

 鉄壁な守備、攻撃型に引けを取らないスマッシュ力、多彩なサーブ、戦術(プレー・技)の豊富さ、スタミナ……キム・ソンイは強かった

 解説の宮崎氏
「なかなか国際舞台に出てこない北朝鮮、実力がありますね。びっくりしましたねえ
 いやいや、これも違うだろう。キムが強いのは間違いないが、このキム・ソンイ、この記事を書く際に分かったが、2016年2月末~3月上旬に行われた世界卓球(世界選手権)の団体戦の準決勝で伊藤美誠がキム・ソンイに0-3で完敗を喫している。“びっくりした”はないだろう。
 対戦が決まった後、「戦ったことのない相手。しっかり、カットマン対策を立てる」というコメントがあったが、警戒しているようにも受け取れるし、深刻に考えていないようにも解釈できる。半年前の世界卓球を考えると、「嫌な相手」と思ったはずだが、口に出すわけにはいかなかったのだろう。
 石川の調子は悪くなく、力を存分に出し切った。3回戦ではあるが、準決勝でも全く不思議ではない高レベルの内容だった。とにかく、この試合においては、キムが素晴らしかった。石川にとって、不運だったのは、この試合が初戦だったこと。五輪や会場の雰囲気になじまないうちに、キムとの対戦は厳しかった。準々決勝ぐらいで対戦すれば、キムの技量ももっと把握でき、もっと的確な戦略も立てられたはずだ。ラリーなど試合内容は石川の方が上に感じた。それだけに、初戦で対戦したのは不運だった。


「石川、足を痛める不運」
 という表現も時折なされたが、これも違う。

 「カット」対「持ち上げ+スマッシュ」のラリーが続いたが、「持ち上げ+スマッシュ」の方が消耗が大きい。
 フルセットにもつれ込み、石川の筋肉が耐えられなくなったのだ。
 練習量豊富な石川にとって、足が攣るなど有り得ないが、このゲームでは、そこまで消耗させられてしまった。
 中継の解説によると、「第3ゲームから、人が変わったように攻め始めた」ようだ。言い換えると、「第2ゲームまでは全く攻めてこなかった」となる。
 つまり、「ひたすら粘って、石川の消耗を誘った」のだ。

 足が攣ったのは「不運」ではなく、攣ったことが「敗北」だったのだ。


 キム・ソンイはこの後も勝ち進み、準決勝で丁寧(中国)と対戦。
 1-4で敗れた。ネットでのハイライトでしか見られなかったのは残念だが、勝利を決めた時の丁寧の表情からは、スコア以上に大変な試合だったのだろう。
 3位決定戦では、福原に4-1で勝利し、銅メダルに輝いた。
 福原も今大会、充実しており、準々決勝までの3試合は1ゲームも落とさなかった。準々決勝の馮 天薇(フォンティエンウエイ)にも快勝していた。
 しかし、バックハンドが武器で、スマッシュ力がそれほどではない福原にとって、キムは相性が悪く、勝機がなかった。
 
コメント (4)
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『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』 総括

2016-09-09 10:40:55 | ドラマ・映画
主人公のキャラクターを変容させるのは是認できないが、異常性を持つヒロインの心象ドラマとしては面白かった。
捻りはなかったが、藤堂比奈子(波留)、東海林(横山裕)、中島(林遣都)、真壁永久(芦名星)のそれぞれの落としどころも良かったのではないだろうか。

ただ、このドラマの大きなテーマと思われる「人は誰でも殺人を犯し得る」については、ドラマで横行した猟奇殺人と、横山の過度な暴行衝動を例とする怒りによる殺人とは一線を画するもので、猟奇殺人ばかりが先行してしまった感があるのは否めない。

このドラマで、比奈子の心象ドラマを加えたのは、猟奇殺人のみに走らずに、内容に厚みを加えたかったのだろう。
未読だが、原作は猟奇殺人だけのものかと言うとそうではなく、事件を通じて“異常犯罪捜査”のメンバーが成長していくものであるらしい。


真壁永久(芦名星)について
・「久しぶりぃ~」と言われても、視聴者には“初見”だし……
・カラーコンタクトは不気味だったが、芦名さんにはカラコンなしで演じさせてあげたかった(女優として)


【最終話ストーリー】番組サイトより
 東海林(横山裕)に異常性を暴かれたことで辞職を決意した比奈子(波瑠)。ところがその矢先、比奈子に強い執着を抱く佐藤都夜(佐々木希)が脱走し、命を狙われる危険性の高い比奈子は東海林の警護の元、ホテル住まいすることに。
 しかし、そんな警察の計画をあざ笑うかのように、都夜は比奈子の居場所を突き止める。一方、警視庁・片岡(高橋努)は都夜を追跡し、追い詰める間際で、突然現れた女性に切り付けられる。その女性こそ、高校生だった比奈子にナイフを渡し、「自分らしく人を殺せばいい」と進言した真壁永久(芦名星)だった!ぼう然とする比奈子に何事かを語りかけ、永久は再び姿を消す……。
 一方、ホテルから行方をくらませた東海林は永久に拉致・監禁されていた。彼女の恐るべき計画に恐れ戦く東海林……。永久に翻弄(ほんろう)され、最悪の窮地に陥る比奈子は、かつての進言通り、殺人者になってしまうのか―!?

これまで殺人者への強い探究心で犯罪者と対峙(たいじ)し、「人を殺す者と殺さない者の境界線」に立ってきた比奈子は、最恐かつ因縁の女性・永久との再会をきっかけに、どんな答えを見出すのか?闇を抱える女刑事の物語が、衝撃のクライマックスを迎える。


脚本:古家和尚
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