英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

遺留捜査 第5シリーズ 第6話「5億円遺産争い!! お取り寄せの石と疑惑の鬼嫁の正体」

2018-09-04 10:30:07 | 将棋
(気が向いた時しか書かない『遺留捜査』ですが、今回、書いたのは……)

被害者……平安時代から続く名家である“鴻上家”で、亡き当主の妻・美沙子(銀粉蝶)
 ずけずけとモノを言う性格で、“お節介”タイプ。息子(既に死亡)の嫁・紀香(櫻井淳子)とも口喧嘩が絶えなかったようだ。(≪一見仲が悪い二人が、実は心が通じていた≫という割とあるパターン)
 今回は“お節介”が行き過ぎて、殺害されてしまったという真相だった。

 息子の親友を思っての行為だったが、その妻・杏里(松本まりか)の浮気を諌めるのは良いとしても、それを夫に知らせなくても良かった。上辺だけかもしれないが、杏里も反省して、知らせないようお願いしていたのだから、様子を見るのが年長者の懐の深さであろう。もっとも、美沙子は直情型だったので、無理かも。

 結局、鴻上一族の面々は、表面はともかく、基本的には“良い人”だったようで、殺害されなければ、ほのぼの、しみじみの人情話だった。(殺害が起こっても、『遺留捜査』の糸村(上川隆也)は人情話にしてしまうが)

 さて、今回レビューを書いたのは、脚本が真部千晶氏だったから。
 真部氏については、私の評価は低かった。ちょっとした突っ込み所はあったが、今回の人情話は面白かった。
 評価を少し上方修正という備忘録も兼ねてのアップです。


【ちょっとした突っ込み処】
・素直じゃなくて、言動が滅裂気味という美沙子だが、「嫁が家をマンションに建て替えるのは許せない」と漏らしていたのは、流石に矛盾が大きい。
・護身用に脇差しというのはさすがに突飛過ぎ
・高価そうに見えたお椀は贋作だった。それがなくなっているのに気づき、惜しんでいた鴻上利勝(モト冬樹)の目利きは大したことない
・美沙子のお節介に辟易していたうえ、浮気を告げ口を阻止したいという切羽詰まった気持ちがあったとは言え、砥石(かなり大きめ)で殴るものなのだろうか
・動くものを察知して撮影録画する車載カメラ装着の車が駐車場に長時間駐車していたというのは、都合が良すぎかも

 
【ストーリー】番組サイトより
 平安時代から続く名家である“鴻上家”で、亡き当主の妻・美沙子(銀粉蝶)が遺体となって見つかった。美沙子は10年前に夫を亡くして以来、広大な屋敷でひとり暮らしを送っていた。
 第一発見者は息子の妻・紀香(櫻井淳子)で、彼女もまた、5年前に夫を事故で亡くしていたが、現在も亡き夫との約束を守って、週に一度、姑である美沙子の様子を見に来ていたという。
 凶器は遺体の傍らにあった石と思われたが、その石は奇妙なことに片面だけが平らでツルツルしており、糸村聡(上川隆也)はそこに興味を抱く。

 事件を聞きつけた美沙子の妹・香取夏江(久世星佳)、甥・香取清(石田佳央)、義弟・鴻上利勝(モト冬樹)ら親族が押しかけてくるが、その矢先、床の間に飾ってあったはずの骨董茶碗がなくなっていることが発覚。相続権を持つ夏江と清の2人がそれぞれ金銭的に困窮していたことから、特別捜査対策室では遺産目当ての犯行と考えはじめる。
 ところが、調べを進めるうちに、紀香と生前の美沙子は激しくいがみ合っていた事実が浮上。遺産目当ての2人のどちらかによる犯行か、それとも被害者と感情的に対立していた紀香による殺人なのか…。佐倉路花(戸田恵子)は3人の動向を徹底的にマークするよう、特対メンバーに命じる。
 そんなとき、科捜研研究員・村木繁(甲本雅裕)の調べで、凶器の石が京都名産の高級品であることが判明して…!?
  
脚本:真部千晶
監督:匂坂力祥
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2018棋聖戦第5局 ~豊島八段、初タイトル!~

2018-07-18 00:29:08 | 将棋
【“産経ニュース”より引用】
 羽生善治(はぶ・よしはる)棋聖(47)=竜王=に豊島将之(とよしま・まさゆき)八段(28)が挑戦した産経新聞社主催の将棋のタイトル戦「第89期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負」の第5局が17日午前9時から、東京都千代田区の都市センターホテルで指され、午後6時25分、108手で後手の豊島八段が勝ち、対戦成績3勝2敗で初タイトルの棋聖位を獲得した。持ち時間各4時間で、残りは羽生棋聖23分、豊島八段15分。

 豊島新棋聖は5度目の挑戦で初めてタイトルを獲得。注目の今シリーズは、豊島新棋聖が第3局を終えて2勝1敗に。第4局は惜しくも敗れたが、最終第5局の熱戦を制し念願の初戴冠を成し遂げた。
 羽生前棋聖の11連覇、前人未到のタイトル獲得通算100期はならなかった。羽生前棋聖が竜王のみに後退したことで、将棋界は八大タイトルを8人が分け合う。1人1タイトルずつは31年ぶり。

豊島新棋聖の話
 「終わったばかりで実感はありませんが、タイトルはずっと目標にしていたので良かったです」



 今回の棋聖戦、羽生竜王は≪積極的に指す≫ことを心がけていたようだ。
 しかし、それは、≪どこか急かされて前のめりになっていた≫ように感じた。

 ここ数年、羽生竜王は苦戦を強いられているが、その要因の一つが対局相手の綿密な研究。この綿密な研究は、将棋ソフトの研究への活用に因るところが大きい。将棋ソフトが100%正しいという訳ではなく、棋士の研究もすべて将棋ソフトに頼っているわけではないが、研究手順の検証や新手の発見、局面の形勢の確認に活用されている。
 これによって、研究が効率的に行われ、より詳細に系統立った研究が可能になってきている。これが棋士個人の棋力・実力と言えるかどうか、疑問の余地があるが、こういった研究に因って、羽生竜王が苦戦に陥ってしまうことが多々あるように思われる。

 もちろん、上記は私の想像の域を超えていないが、羽生竜王が、≪まだ駒組み段階≫と考えている局面で仕掛けられ守勢を強いられ、相手に主導権を握られてしまうことが多い気がする。


 例えば、今期王位戦の挑戦者決定リーグの対木村九段戦

 図は羽生竜王が△2三銀と2二の銀を上がり壁銀を解消し銀冠に陣形を整えたところで、意識としては序盤だったと考えられる。
 しかし、ここで木村九段は▲4五桂と跳ね、△4四角▲2二歩△同角▲6五桂(参考図2)

 “いきなり跳び蹴り”のような仕掛けで、少し前なら“無理攻め”ぽいので深く考えないところだが、ソフトによる可否の確認が容易なので、掘り下げて≪充分成立していそう≫という見込みが立っていたのかもしれない。
 以下△4四歩▲5三桂右成△同銀▲同桂成△同玉▲8四歩(参考図3)まで進むと、充分仕掛けが成立、先手が主導権を握っていると言って良いようだ。

 ▲6五桂(参考図2)と歩頭に跳ねた桂を取れないのは悔しいし、そもそも、△2三銀と上がった手が先手の角の利きを1一まで利かせてしまい逆用された感もある。
 その後、局面を複雑にさせた羽生竜王が、一旦、逆転したが、将棋の方向を誤り、再逆転負け。
 このように、先に仕掛けられ守勢を強いられてしまう将棋がよく見られる。
 そういう経験を踏まえたのかどうかは不明だが、最近の羽生将棋は“積極果敢さ”が感じられる。

 しかし、第1局の前のめり過ぎ名人戦第6局の“7四歩取らせ戦法”、名人戦第6局を改良した棋聖戦第4局の“袖飛車戦法”など、積極果敢さがうまくいっているとは思えない

 棋聖戦最終局の本局は角換わり腰掛け銀から▲4七角(第1図)の新手を放った。

 ▲4七角は次に▲7五歩と突き、△6三銀なら▲7四歩△同銀▲4五銀が狙い。
 ▲4七角に対し、豊島八段は△4一飛と引き、▲7五歩△6三金▲7四歩△同金▲4五桂△4四銀(第2図)と迎え撃つ。


 図より羽生竜王は▲2四歩△同歩▲5五銀と過激な順を選ぶ。しかし、本来の羽生将棋は第2図では善悪はともかく、▲4六歩と一旦、溜めを作るのではないだろうか?最近の羽生竜王は余裕がなく、泰然としたところが感じられない。
 実戦の順は▲5五銀に△6五歩▲4四銀△同飛▲4六歩(第3図)と進む。(▲4四銀では▲5四銀の方が良かったらしい)


 期待した4七の角の利きによる桂頭攻めも△6五歩と遮られると効果は薄く、結局▲4六歩と手を戻すこととなってしまった。
 局後の感想戦で羽生棋聖も「(第2図での▲2四歩に)代えて▲4六歩とゆっくりする順もあったか」と述べている。


 手は進み形勢はよく分からないが、後手から有効な手が多そう。先手は▲3五歩~▲3四歩と手掛かりを作ったが、▲6五歩と6筋から動いた方が▲4七角の意図を継承できたように思う。

 ▲3三銀で後手玉に迫っているように見えるが、実はそれほど脅威となっておらず、2一の桂を持駒の銀に昇格させた罪の方が大きい。


 △8八銀(第5図)以降は、難しいところはあったようだが、後手の持ち駒は豊富なので、後手の攻めを振りほどくのは至難の業で、寄せられるまでの手数を稼いで、後手玉に迫るのも難しかったようだ。

 第6図では▲7八金や▲8七金の方が難しかったかもしれないが、やはり、先手を持って勝つ気はしない。
 投了図の3三のと金が悲しい…


 読みの精度や研究云々より、将棋そのものを立て直した方がいいような気がする。将棋の泰然さを取り戻してほしい。
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2018名人戦 第6局 (どなたか慰めてください)

2018-06-20 23:53:11 | 将棋
ずっと辛抱を重ね、ようやく逆転したかと思えた2日目の夜、羽生竜王が決めに出た△7七とを放置しての▲1三歩成が鮮烈だった……



“7四歩取らせ戦法”……飛車で歩を取らせその間に陣形的優位を築く
 しかし、持久戦模様となり単なる1歩損に終わりそうな気配で、秘策が空を切った感が………

 普通に指していたのでは、1歩得の歩を活かして攻め込まれるか、1歩足らない弱点を突かれて盛り上がられ“中押し負け”となってしまうか……1日目からずっと指しにくさを抱えていた羽生竜王が、普通に指し続けるという我慢を重ね、ビハインドを拡大させず維持し続けた。(先手の攻め筋を考えながら陣形を固め、中押し負けにならないように十数手先の僅かな反撃の筋を残して、8筋の歩を伸ばしつつ飛車銀を繰りかえる)
 その辛抱に、佐藤名人は先制攻撃をせざるを得なくなった。それは無理な仕掛けではなく、有効な仕掛けで4四に歩の楔を打ち込めたのは大きそう。それでも、羽生竜王が丁寧に対応し、ダメージを最小に留め、反撃のチャンスも出てきた。少なくとも、一方的に攻められたり、中押し負けはなくなった。
 その後も巧みに切り換えし、4四の楔を除去し、2筋の玉頭の攻めも緩和して、逆に中央を制圧する気配も出てきて、逆転ムード。
 ≪頃は良し≫と寄せに行ったのが△7八歩成~△7七とだった。

 ………しかし、△7七とを放置しての▲1三歩成が鮮烈だった。
 これが厳しさの点では△7七とを上回り、守勢に回らざるを得なくなってしまった。



 おそらく、図の▲1三香成を△同玉と取っておけば、形勢はまだ羽生竜王が僅かに良かったのだろうが、意に反して攻め込まれ、時間切迫、辛抱し続けた疲労の中では、勝つのは困難だった。(△1三同玉には▲2三歩成△同金▲1四歩△同玉▲1五歩△1三玉▲1四銀と先手の猛攻を受け続けなければならない)



 二日間耐え続けた疲労感、敗北の残念さ、名人位奪回ならずの虚脱感の腹いせ?ではないけれど、勝敗の分岐点として図を挙げさせていただく。

 ここで羽生竜王は△7八歩成としたが、△5六歩と取り込んだ方が良かったように思う。
 一見、角筋を通すと▲4四角と角交換され、先手の攻めに威力を与えてしまいそうだが、▲4四角の瞬間、△5七歩成▲同金△同桂成が利き、▲同玉に△4四金と手を戻せば、先手玉の危険度が半端ない。
 なので、△5六歩には▲同銀右と取ることになるが、そこで△5五歩と蓋をし、▲4七銀と下がらせる。一見無意味に思えるが、手順に先手の攻めのとっかかりである5六の歩を除去し4四の角が安定させておいて、△1五歩と手を戻しておけば、後手の勝ちやすい将棋だったはず……


 本局は名局と言ってよいのではないだろうか。
 名人位復位はならなかったのは非常に残念だが、フラストレーションがMAXの第4局、第5局のような敗局でなく、ここまで指して負けたのなら、仕方がない
 棋聖位防衛に向けての足掛かりになると思いたい。
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2018名人戦 第6局 1日目

2018-06-19 23:29:41 | 将棋
 今日は名人戦第6局の一日目。

 封じ手の局面では先手の佐藤天名人が指しやすいのではないかと言われている。“封じ手の局面”と言うより、“序盤早々”から佐藤名人名人の方が指しやすいと言われていた。8五にいる佐藤名人の飛車(歩越し飛車で窮屈)を捕まえに行く△2四歩を見送ったが、羽生竜王に誤算があったのではと見られている。


 2手目、羽生竜王が△6二銀と“注文を付けた”。さらに、△7四歩と突いて力戦に持ち込もうとした。

 この指し方は山崎八段や糸谷八段が良く指しており、先日もNHK杯戦で糸谷八段が採用していた。また、山崎八段も昨年度のJT杯準決勝で羽生棋聖(王座を失冠し一冠となっていた)にこの戦法を駆使して勝利していた。
 また、2手目△6二銀は羽生竜王も数局採用している(谷川名人相手のタイトル戦でも採用。王座戦だったと記憶しているが、自信なし)。

 問題の局面は第2図。

 ここで先手の8五の飛車を2筋に戻らせない△2四歩はなかったのだろうか?
 控室の研究や前例では、≪後手(羽生竜王)も指せる≫という見立てだったし、注文を付けた羽生竜王が、注文を取り下げてしまったように感じる。

 指し掛けの局面は、まだまだこれからの将棋だが、1歩損が大きい気がする。持ち歩が0対1というのが大きい。同じ1歩損でも、持ち歩が1対2に比べると、1歩の差が非常に大きい。
 横歩取りと同様に本局の“7四歩取らせ戦法”は、≪先手が歩を取るのに手数を費やし、その間に攻撃布陣を先に整え、主導権を握る≫のが主張点。
 なので、先手が飛車の動きに手を費やしている間に、金銀を盛り上げ飛車を圧迫していくのが、この戦法を採用した趣旨に沿っている。
 もちろん、佐藤名人も目算を立てて8五に飛車を移動させたと考えられ、▲6五歩の決戦策が見えている局面で角頭の歩を突くのは怖いところではある。
 それでも、△2四歩は突くべきだったのでは?と思ったが、△2四歩以下▲6五歩△7三銀に▲7五歩が好手で先手が少し良いようだ。
 指し掛け図は争点がなく、持ち歩のない後手からは仕掛けて行くのが難しい。局面がゆっくりになると、≪手が進んでいる≫という主張点がどんどん小さくなっていく。

 飛車の捕獲のような細かく際どい読みを要する特異な戦いは羽生竜王の土俵と言えるが、本局の進行のように駒の効率を活かして陣形を整えていくのは佐藤名人の得意とするところだ。佐藤名人ペースだ…… 
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第76期名人戦(2018年)第1局 その5

2018-06-12 21:01:40 | 将棋
サボっているつもりはなく、割りと真面目に記事をアップしているのですが、また、前回から間が空いてしまいました。
(羽生竜王に関して、芳しくない記事を書かねばならないのが、辛いところです)

「その1」「その2」「その3」「その4」 の続きです。


 先手陣の6筋の歩を取ると▲6四歩と絡まれる手が生じることを承知で、佐藤天名人が△6七角成▲6四歩△2七歩▲同銀△6五桂と踏み込んだ第7図。
 先手は△5七桂成▲3八玉△4九馬以下の詰めろが掛かっており、それを受けるには、①▲5八銀と②▲3八玉の2手段が考えられる。
 ①の▲5八銀は手堅い受けだが、金や銀を使って受けるのは小駒で攻められた場合は損なことが多い。交換になった場合に駒損になるし、清算(交換)されなくても、受けに駒を使った分だけ、攻め駒不足になる。
 なので、先手としては②の▲3八玉を選択したい。持駒を消費しなくて済むし、敵の攻め駒から遠ざかる利が大きい。例えば、5七の地点を突破するのに3枚の小駒を集中させた場合、受け側が5七に拘らず玉を逃がすと、5七の地点を突破したとしても、突破した駒以外の2枚の攻め駒が置いてけぼりになってしまう。(ただし、攻め駒が大駒の場合は機動力があるので、この限りではない)

 羽生竜王は▲3八玉!

 大丈夫なのか?………本局の場合、上記の但し書きの“攻め駒が大駒の場合”に該当する。
 ▲3八玉には△4九馬▲同玉△6七馬の攻め筋がある。△4九馬と切ることによって、先手玉を4九に引き戻し、せっかくの▲3八玉の1手を無効にできるのだ。

 実際、中継サイトの解説欄には
『驚きの声が挙がる。控室は▲5八銀が手堅いと見ていた。△4九馬▲同玉△6七馬▲5八合(▲3八玉は△4八金▲同玉△5七桂成で詰み)△5七桂成で先手が受けにくくなる。△5七桂成に後手玉に詰みがないとまずいが、まだ控室では見つかっていない。「いきなり終わるんじゃないか」という意見も出た』

 不安を抱えて見ていると、解説欄に
『検討の結果、どうやら途中の△6七馬に合駒するのが銀と桂どちらであっても、△5七桂成に後手玉に詰みはないようだ。しかし、△6七馬に▲5八桂△5七桂成▲6三歩成△同玉▲7五桂△6二玉▲6三歩△5一玉▲2四角△3三歩▲6二銀△4二玉▲5三銀成△同玉▲5七角△同馬▲5五飛△5四銀▲5七飛と、後手玉を追い回し、角と飛車を使って成桂と馬を抜く筋があるという。▲5七飛まで進めば「第2ラウンドです」と広瀬八段。』
 が加えられた。

 △4九馬▲同玉△6七馬とされると全く見込みがないという訳ではなさそうだ。しかし、後手に分があるような展開になりそうだ。やはり、手堅く▲5八銀とすべきだったのでは…
 局後の感想(中継サイト)では
『▲3八玉に代えて▲5八銀は△4五馬▲6三歩成△同玉▲6四歩△5二玉で、「何かありそうだけど、具体的な手が……」と羽生。』
とあるが、『将棋世界』の観戦記(小暮克洋氏)によると、後日の取材に対して
『「▲5八銀には△2八金▲5五桂△6四歩のときに、ヘタな手を指すと△5七桂成から詰まされてしまうのでダメだと対局中は思いました。あとから考えると、△2八金には▲6三歩成△同玉▲7五桂から王手を続ければ先手がよさそうですね」』とある。

 ちょっとした錯覚で▲5八銀を選択肢から外したのだが、『それにしてもこんな危なそうな玉寄りをわずか26分の小考で指せるとは……』と小暮氏が感嘆していたが、まったく同感。
 思うに、羽生竜王は▲5八銀のような手はあまり好きではないのかもしれない。

 対して佐藤名人は▲5八銀を予想していた。
『佐藤も(控室と同様)▲5八銀を予想していた。「▲5八銀以下、△4五馬▲6三歩成△同玉▲6四歩△5二玉▲3六銀に△5四馬と引いてうまく立ち回れれば、と。……(中略)……形勢は厳密には悪くても、先手の具体的な指し手も難しいと思いました」』(観戦記)


 佐藤名人は延々と考え続けている。何しろ▲3八玉は26分の小考だったのだ。
 ≪危険な玉寄りで変化も多いはずなのに、26分で指せるものなのか?……よほど自信があるのか?それとも、自分が見落としている変化があるのか……≫(勝手に想像)

『 15時、おやつが出された。佐藤はショートケーキ、アップルジュース。羽生はフルーツ盛り合わせ、ホットコーヒー、佐藤は席を外した。羽生はおやつにすぐ手をつける。戻ってきた佐藤、頭を座布団につけるほど前傾姿勢。15時11分、佐藤が起き上がり、ショートケーキを食べ始めた。羽生は席を外している。時折、佐藤はケーキを食べる手を止めて、小さくうなずく。15時16分、羽生がゆっくり座る。「いやぁ」と佐藤。15時19分、佐藤が考慮時間と残り時間を尋ねた。佐藤は現局面に41分考えており、残り時間は2時間15分。
 15時34分、佐藤の考慮時間は56分を超え、残り2時間を切った。名人が苦しんでいるのが伝わってくる。15時39分、佐藤はリップクリームを塗ってから、グラスにストローを挿し、アップルジュースをひと口飲んだ。「△4九馬以外の手は思い浮かびません」と阿久津八段。
15時56分、佐藤がまた時間を尋ねた。現局面の考慮時間が1時間17分、残り時間が1時間39分であることを告げられると、「そっかー」とつぶやく。羽生はいない。16時0分、佐藤はアップルジュースを飲みきった。数分して、羽生が対局室に戻る。今度は佐藤が席を外した。』
(中継サイト解説より)
 ちなみに羽生竜王の▲3八玉は14時38分の着手。

 阿久津八段が言うように、△4九馬以外の手はないように思える。
 渡辺棋王だったら、≪ここは“△4九馬の一手”。ざっと考え悪くはなさそうだが、変化が多すぎて読み切れない。ここで脳力と時間を消費するのは無駄。他に手はなさそうだし、そもそも、△4九馬▲同玉△6七馬の時、桂合いか銀合いかも難しい。ここはサッサと指して、相手に答えを出してもらおう≫と30分ぐらいで着手するのではないだろうか。


 さらに解説が付け加えられた。
『△6五桂の顔を立てるためには△4九馬の変化に飛び込みたい。だが、変化は膨大のようだ。例えば、△4九馬▲同玉△6七馬▲5八桂△5七桂成▲6三歩成△同玉▲7五桂に、△5二玉は▲6三角△4二玉▲5二飛△3三玉▲3二飛成(▲2四銀は△2二玉で詰まない)△同玉▲4一銀△3三玉▲2四金△4四玉▲4六竜から詰み。阿久津八段はこの詰み筋になかなか気がつかなかったという。また、途中の△5二玉に代えて△6二玉▲6三歩△5一玉▲2四角に△3三歩と△3三銀打、また仮に△3三歩として以下▲6二銀△4二玉に、例の成桂と馬を抜く筋を決行するにしても、▲5七角と▲5三銀成どちらを先に入れるか、比較が難しいという。』

 とにかく変化が膨大。佐藤名人がなかなか指さないのは読み切れないからなのだろう。勝負の行方はまだまだ分からないと考えよう。
 

 16時15分、△4九馬!
 1時間37分の考慮だった。
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「羽生くん、少し怒っていいよ」 2018棋聖戦第1局

2018-06-10 00:09:00 | 将棋
“羽生くん”と馴れ馴れしく声を掛けてしまったが、豊島八段の収束手順を観て、こんなセリフが浮かんでしまった……


 図の羽生棋聖の△3九飛は形作りの一着。
 残り時間5分の豊島八段だったが、4分の考慮……1分将棋になるまで考えて5三に金を打った。
 詰めろ。しかも必至だ。羽生棋聖の△6二金は“受けてみただけの手”で、▲5二角成△同銀▲4二金打の筋は防いでいるが、▲4二金打以下の詰みは逃れていない。
 △6二金を指さずに投了もあったが、とどめを刺してもらおう(詰めてもらおう)と首を差し出したのだ。

 △6二金に▲4二金打△同銀と進み、

……………▲6二金!

 詰まさなかった。
 持時間を全部使った疲労の上、1分将棋ということもあるとはいえ、豊島八段なら容易な詰みである。それに、直前の▲5三金の時に読みを入れているのである。
 複雑なところがあるのならともかく、これでは、差し出した首を斬らず、刀を握っている腕を切り落としたような指し手だ。

 もちろん、大事な一局、“石橋をたたいて渡る”慎重さは理解できるし、否定も非難もするべきではない。しかし…………………

 で、記事タイトルの「羽生くん、少し怒っていいよ」となったわけである。
 あくまで怒るのは“少し”。(他の方は分からないが、私は“少し”怒っているときの方がよく読めるような気がする。怖い変化も踏み込めるし。もちろん、“頭に血が上る”ほど熱くなっては駄目なのは言うまでもない)
 

 将棋を振り返ろう。
 角交換相腰掛け銀で今流行の「2九飛・4八金型(8一飛・6二金型)から、先手番の豊島八段の▲6六歩型に、羽生棋聖が△4四歩と追従せず△6五歩と先攻し、豊島八段が▲6五同歩△同銀に▲5八玉と柔軟に対応、以下△3五歩▲同歩△4四銀(第0図)と積極的に動いた。

 しかし、“前のめり”気味。
 以下▲4五桂△8六歩▲同歩△5六銀▲同歩△6五桂▲6六銀△4五銀▲同歩△3六桂と先手陣に斬り掛かるが、ますます“前のめり”感が強くなった。
 これに対し、豊島八段は素直に応じる。そして、△3六桂に手抜きで▲6三歩!(第1図)

 △3六桂は金取りなので、金を躱しておきたいところだが、放置して手裏剣を飛ばす。これが絶好のタイミング。“一閃”という言葉がぴったり当てはまりそうな▲6三歩だった(△6三同金は▲7二角がある)。
 △3六桂も▲6三歩も同じ金取りで、先に打った△3六桂に優先権があり、しかも王手になるので優位性がありそうだ。≪△4八桂成▲同玉≫と≪▲6二歩成≫と進んだ時の厳しさは後者の方が強い。駒の損得は後者に利があり、何よりと金が残るのが大きい。
 なので、△4八桂成と金を取っても、自陣の金取りに手を戻さなければならない。それなら、先に▲6三歩に対処し、△4八桂成と形を決めずに金取りを残しておいた方が先手も対応しにくい。
 そこで羽生棋聖は△5二玉と躱したのだが、さらに手抜きの▲7三角が攻守に睨みを利かす絶大な存在となった。6二のと金造りを見せると同時に、4六、3七の地点をカバーしている。
 △6三金と角当たりで先手を取りつつ、と金づくりを防ぐことは出来るが、▲4六角成で馬の存在が大きすぎる。そこで、羽生棋聖は△4八桂成▲同玉に△3六歩と垂らす。次に△3七角と打って7三の角を消す狙いだ。
 しかし、またこの瞬間に▲3四桂を利かされてしまった。

 △3一玉と逃げたいが、▲6二歩成△3七角に▲5八玉△7三角成▲5二とが痛すぎる。そこで、▲6二歩成に△3七角が利くように△4一玉と逃げる(▲5八玉△7三角成▲5二とに△同玉と取れる。とは言え、▲3四桂と楔(くさび)を打ち込まれた上、4一に玉を躱さなければならないのは辛すぎる。

 戻って、▲7三角には△9三角▲7五歩△8二角の方が、まだ良かったらしい。
 「7筋の歩を突かせたほうが、後手が飛車を使うときには利いてきそうです。以下▲同角成△同飛▲5五角(と金づくりを見て▲7三角もあるが△8六飛が6六の銀当たりになる)△8六飛▲8七歩に△8五角で歩合いが利かないといってどうか。しかし桂が先手に渡ると▲3四桂が厳しすぎますからね」(斎藤慎七段)【中継解説より】

 とにかく、前のめりの仕掛けの反動が大きかった。

 この後、豊島八段の▲4六銀が手厚さを求めすぎてやや変調で、△6三金に▲5五角成(4六に銀がいて深く引けない)に、

馬当たりで△5四金と出られて(手順に▲7二銀の両取りを回避)一瞬難しくなったか思われたが、▲5四同馬△同歩▲5三銀が3四の桂と連動して厳し過ぎた。


 感想戦では
「金を出てからはダメですね」(羽生)
代えて△3七銀▲同銀△同歩成▲同馬△3三桂(変化図)がまさった。

以下(A)▲4六銀△5四金▲3六馬に△3七歩で、▲6九飛という手はあるものの「こちらもかなり嫌な変化ですよね」と豊島。また(B)▲3六銀とひとつ隣から打つのは、△5四金▲2四歩△同歩▲2三歩△4五桂▲同銀△同金▲4二歩△5二玉が一例。
「このほうがよかったですね。△3七銀と打って勝負すべきでした」(羽生)

 とあるが、変化図以下の変化では後手に勝機があるとは思えない。
 繰り返しになるが、後手の仕掛けが前のめり過ぎた将棋だった。

※局後の感想※
「正確に指せれば、という局面が続いた将棋でした」(豊島)
「元々の仕掛けがやりすぎていたのかもしれません」(羽生)


 名人戦第4局(対佐藤天名人)、王座戦決勝トーナメント1回戦(対深浦九段)、名人戦第5局(対佐藤名人)、王位戦挑戦者決定戦(対豊島八段)、棋聖戦第1局(対豊島八段)と5連敗。内容も良くない。
 ここ数年、時折見られる“低迷期”に入ったのかもしれない。永世7冠を達成した安堵感もによるものかもしれない。でも、5連敗もしたのだから、そろそろ終息すると期待したい。
 この将棋の収束に少しだけ怒って、復活して欲しいものだ。
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2018王位戦挑戦者決定戦 (「まだまだっ! これからっ!」) の【補足】 

2018-06-07 17:16:22 | 将棋
「まだまだっ! これからっ! (2018王位戦挑戦者決定戦)」の補足です。


 第7図以降、豊島八段が攻めを繋いで羽生玉を追い詰め、100手過ぎには勝勢を築いた。終盤ややもたついた感はあったが、大勢に影響はないだろうとスルーしたのですが、実は、羽生竜王にチャンスが巡っていたらしい。
 問題の局面は第8図。


 実戦は▲5四飛寄(一応、5七に利かせて先手玉の詰みを防いだ攻防の一着)だったが、ここで▲6六角(変化図1)と打つ手があったらしい。

 この手も▲5四飛寄と同じく、5七に利かせた攻防の一着だが、より後手玉に迫っている。
 豊島八段は、「▲6六角には以下△3三桂▲7一飛上成(詰めろ)に△6一歩(変化図2)で大丈夫と見ていたが

 変化図2以下、▲6二竜△同歩▲3四桂という順がある。


 ▲3四桂を△同金は▲2三歩からの即詰み。また▲3四桂に△1三玉は▲1一飛成△1二金(△1二銀合は▲2二銀以下詰み)▲同竜△同玉▲1一金(変化図4)の捨て駒から後手玉が詰む。


 変化図4以下は、△1一同玉▲3三角成以下詰み。(以上の変化は、中継解説より)


 ▲6六角と打った局面(変化図1)は、先手が勝ちのような気がする。▲6六角に対して△5五銀は、持駒の銀を一枚使い先手玉の危険度が減る上、△6六銀と角を取る手は回りそうにない(逆に質駒にもなっている)。
 おそらく、第8図の3手前の△3五銀が問題の一着(△3五銀に▲5一飛△2二玉で第8図)。3四に空間を作ったことにより、▲3四桂が生じてしまった。
 また、変化図1以降の変化(▲6六角~▲7一飛上成)が悪いとしたら、▲5一飛には先手玉の詰めろが消えるので打ちたくはない金ではあるが、△4一金とすべきだったのかもしれない。
 今になって考えると、7九角&6八金の形も効率が悪すぎる。

 もし、変化図1が先手勝ちなら、羽生竜王は大逆転勝利を逃したことになる。
 誰か真相をご教授願います。


 それにしても、変化図1の▲6六角は王手の攻防手なので、取りあえず打ちそうなのになあ……
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まだまだっ! これからっ! (2018王位戦挑戦者決定戦)

2018-06-04 23:45:53 | 将棋
王位戦挑戦者決定戦、羽生竜王対豊島八段は豊島八段が制して、菅井竜也王位への挑戦権を獲得。

 仕掛け後に、羽生竜王の指し手が変調で形勢を損ねたが、羽生竜王の強気と辛抱を織り交ぜた指し手に対し、豊島八段が大事を取った指し方をしたため、羽生竜王が持ち直し混戦に。
 勝負の流れは羽生竜王かと思われたが、豊島八段が辛抱した後、羽生陣に斬り込む勝負手を繰り出し、羽生陣に襲い掛かり、攻めを繋ぎ続け、押し切った。



 羽生名人としては、豊島八段の斬り込みに対して、一歩も引かずに攻め合いを選んだが、彼我の玉の危険度を読み違えた感がある。

 第5図辺りで控室では、羽生優勢と見ており、≪豊島八段の△7四桂に対してどのように決めに行くか≫という方向で検討をしていたようだ。おそらく、羽生竜王も自分に利がありと見て、≪自然に応じれば勝利に近づける≫という方針で指し手を読んでいたのではないだろうか?
 第5図より、▲7五銀△8五飛▲7四銀と指し進めた。先手の8五の桂と後手の7四の桂との交換だが、僻地(8五)に跳ねさせられた感のある盤上の桂と、後手が敢えて打った桂との交換は先手に得があるように思え、さらに▲7四銀は飛車当たりの先手である。自然で最強の応手と思えた。

 しかし、▲7四銀に対し△7五飛と切り返された第6図は、容易ならざる局面だった。

 第6図で、羽生竜王は▲6四飛と、更に自然、且つ最強の応手を続けるが、豊島八段の△7七歩が思いの外、厳しかった。

 第6図では▲8五銀打と持たれて指した方が良かったかもしれない(以下△9三桂なら▲4四角や▲8四角)。第5図でも、他の指し方があったかもしれない。


 劣勢から互角以上に盛り返した終盤の入り口。この棋勢の好転の度合いが大きかったため、実際の形勢よりプラスに形勢を判断したのではないだろうか?
 第5図より少し前の局面に遡ろう。



 第1図の少し前の羽生竜王の指し手が変調で(おそらく▲2二歩と打った周辺)、図の▲5八金は劣勢を自覚して、≪4五の桂は取られても仕方がない≫と辛抱した一手だった。
 それが第2図では、先手の4五の桂と後手の8五の桂が振り替わった形となり、さらに▲7六歩と自陣の修復も果たし、何とか持ちこたえることができた。

 打った7六の歩はタダだが、△7六同飛と取ると▲7七銀で飛車の逃げ場所が悩ましいと思われていた。


 △7二飛は▲7三歩がある。△7一飛は▲6四飛△6三歩▲8四飛と回れる。△7四飛には▲6六桂の飛車銀両取りが掛かる。
 しかし、豊島八段は△7六同飛!
 以下、▲7七銀△7四飛▲6六桂△8四飛▲5四桂△同歩と、こう進めば先手がいいのではないかという手順が展開された。
 更に、▲4五歩と歩を補充し拠点を作った手に対し、△4二歩!

 歩を取られた手に対し、4二に歩を謝る……これは“出入り”が無茶苦茶大きいと思えた。
 第4図からの▲8六銀も何となく気分の良い手で、以下△8八角成▲同玉に△7四桂と打ったのが冒頭の第5図。
 
 第1図から第5図まで望外の展開で、気分の良い指し手が続いた。羽生竜王が形勢判断を誤ったのも無理はないだろう。

 第7図となっては先手がまずそうだが、▲7九金と耐える手はないのだろうか?(▲3二歩を利かしてから▲7九金かも)



 名人戦は先手番を落としての2勝3敗。
 王座戦は本戦(挑戦者決定トーナメント)1回戦で深浦九段に敗れ、敗退。
 そして王位戦。タイトル復位を目指していたが、挑戦者決定戦の大きな一番で敗れる……


 流れも内容も良くない……
 しかし、≪まだまだっ! これからっ!≫

 2004~05年に掛けて、対森内戦で、竜王戦、王将戦、名人戦と3連続失冠。
 2008年、3連勝後4連敗で渡辺竜王に敗退。
 2011-13年、森内名人に3期連続敗退……などなど苦境は何度もあったじゃないか!

 まだまだ、これからである。
 
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第76期名人戦(2018年)第1局 その4

2018-06-01 20:00:57 | 将棋
亀の歩みのような更新をしているうちに、3敗目を喫し(しかも先手番を落とす)、追い込まれてしまいました。
幸いなことに、次局は6月19日、20日で、立て直す余裕があります。(追い込まれた状況で3週間過ごすのは気分は重いのですが)

「その1」「その2」「その3」 の続きです。


(『将棋世界』誌の小暮氏の観戦記と『名人戦棋譜速報』の解説を参考に書かせていただいていますが、この記事に関しては小暮氏の記述内容が中心です)


 第4図以降も▲8二歩△8三歩▲8一歩成△8四歩▲7一と△同金▲4八玉△3八歩(第5図)と進む。
 ▲4八玉は△4六桂(▲同玉なら△6九角)を避けつつ後手の馬から遠ざかった手。
 第5図の△3八歩は封じ手だったが、△6七馬、△3六歩、△3八歩、△2六歩、△1二角など候補手が多く、佐藤天名人も相当悩んだようだ(後続手段で△6七馬と△6八馬の2手段があり、この選択も難しい)。
 先手の羽生竜王にしても、△3八とに対して、▲同銀(本譜)と▲同玉の選択も悩ましいし、手抜きで▲4一銀と攻め合う手も有力だった(以下△4二金打▲3二銀成△3九歩成▲3九龍という恐るべき踏み込みで先手有望という説もあり)。

 実戦は△3八歩▲同銀△1二角(第6図)と進む。

 △1二角への応手も難しい、龍の引き場所が2五と2六の2か所があり、▲1一龍と香を取る手も考えたい。さらに、羽生竜王自身は考えなかったそうだが、▲8三桂△6一金▲4一飛△5一金打▲3一龍△同金▲同飛成と攻め込む手順も有力だったようだ。
 羽生竜王は▲2六龍を選択。以下△6七角成▲6四歩△2七歩▲同銀△6五桂(第7図)。


 第7図に至る手順の△6七角成は決断の一手。6筋の歩を取ったことで、▲6四歩が生じた。この▲6四歩によって後手玉の危険度が一気に増大している。かと言って、この歩を取るのも▲6三歩と叩かれる手が相当うるさい(らしい)。
 なので、佐藤名人は△2七歩▲同銀△6五桂と先手玉に迫る。

 “第7図……本局のハイライトシーン(その1)”と書こうとしたら、小暮氏も「図が本局第1のハイライトシーン」と記していた。
 羽生竜王の次の一手に「控室の検討陣十数名から驚きの声が上がった」(観戦記)
 私は悲嘆の声を漏らしてしまった。
コメント

第76期名人戦(2018年)第1局 その3

2018-05-23 08:59:07 | 将棋
「その1」「その2」の続きです。

少し間が空いてしまったので、復習です。

 ≪超急戦辞さず≫と▲2六飛と寄った羽生竜王に対し、
 ≪じゃあ、行きますよ≫と佐藤天名人誘いに応じ、角交換から△4四角と打った第2図。
 「▲2一飛成は△8八角成▲同金△同飛成で先手が悪い」と見られていたが、△8八角成に▲9五角が際どい返し技で、以下△8九馬▲8四角△7八馬(第4図)と進み、一応一段落(▲2一飛成では▲2四飛と婉曲的に指すのも有力)。

 激しい振り替わりだったが、▲飛歩対△金銀と駒の損得は微妙。一般的には「“大駒1枚”と“金駒2枚”は金駒2枚の方が方が価値が高い」とされているが、既に終盤で敵陣への飛車の打ち込む筋が見えるので、一概に後手の駒得とは言えない。
 手番は先手だが、玉の危険度は先手が高いので、0.5手分の先攻権があるかどうか……総じて、優劣不明の局面と言って良い…だろう……たぶん。≪復習、終わり≫


 第4図では▲2四桂が考えられる。図の2手前の中継解説では「▲8四角△7八馬まで変化の余地がない。先手が手番を生かしてどう迫るか。▲2四桂で金が取れるものの、△4一金が粘り強いので難しい」とあった。
 さらに、局後の感想として「▲2四桂は、△4一金▲6六角△4二金寄▲1一角成△3三歩▲1二馬が並べられた。「これも考えたほうがよかった」と羽生」と紹介されている。
 また、『将棋世界6月号』の観戦記(小暮克洋氏)には、▲2四桂に対して
「①△6八金は▲4八玉△6九馬▲3二桂成△3五桂▲3八銀△5八銀▲3一成桂△4九銀成▲同玉△5八馬▲3九玉△4八金▲2八玉△3八金▲1八玉△2七歩に▲3九銀が好手で先手に分がありそう
 ②△2二金打▲1一龍△5五桂や③△4一金▲6六角△2七桂といった進行が一例で、先後どちらが有利なのか難しい」
とある。

 実戦では▲8二歩△8三歩と進む。
 この2手に関する両対局者の思惑が観戦記には記されていて、その内容が実に興味深い。
≪ ▲8二歩は△同銀なら、▲7四桂△7二玉▲8二桂成△同玉▲8三歩△同玉▲7五角で玉の安全度の違いを主張する腹積もり。
 そもそも羽生は事前準備の段階で、△8四飛に▲2六飛以下の順(本譜の激しい展開)はこの▲8二歩がなかなかの手でやれると踏んでいたそうだ。だから▲2一飛成に代えて▲2四飛も、手としてはあり得ると認識していたものの食指が動く対象ではなかったということなのである。
 ちなみに▲2四桂との善悪については「後手玉が5二玉型ならこの桂打ちが有効だと思いますが、6二玉型なので▲8二歩が自然だと思います」……。
1マス遠い玉に対しては、▲2四桂は本筋ではないとの見解だった≫

 さらに
≪ ▲8二歩に対する△8三歩は自玉を狭めてやや違和感がある手ではあっても、背に腹は代えられない。
 「十分な精査は出来ていなかったものの、一連の手順は▲2六飛からの読み筋だった」と佐藤は明かす。
 羽生も佐藤も、△8三歩の局面が激流の先の共通のテーマとして意識されていたことになる


 両者とも第4図は想定内で、▲8三歩以下の進行も≪指せる≫または≪指せないことはない≫であったようだ。

 △8三歩に▲7五角と引く手も有力だったが、羽生竜王は▲8一歩成と踏み込み、激しい流れは留まらない。
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