英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

不調なのか、それとも、衰えたのか……「その5・一昨年の王位戦を振り返るⅣ」

2016-06-29 00:24:38 | 将棋
「その1」「その2」「その3」「その4」の続きです。

 第6局も前局に続いての角換わり腰掛け銀(当然ながら手番は逆)。

 羽生王位の△3五歩は新手。先手が通常の矢倉(右金が6七)の形では、これ以前に3局あるが、羽生王位は先手番で1局、後手番で2局戦い、3局とも勝っているとのこと。
 第1図以下、▲3五同歩△2四銀▲3四歩△2七角▲4七銀△3五銀▲2七飛△4九角成▲5八金と進む。

 図の▲5八金は6八金型を活かした指し手で、後手の馬の動きに制約を与えており、次に▲2九飛で馬が詰む。さらに、後手の3五の銀も心もとない状況。
 羽生王位は△3九馬▲2七飛で馬の安全を確保し、△4三金左と援軍を向かわせる。

 △4三金左では△4三金直が自然だが、3四に進出した際に5三の利きがなくなり、▲7一角が生じてしまう。
 △4三金左以下、▲2五歩(次に3三に歩を成り捨て▲3六歩で銀を捕獲する狙い)△5五銀(△4六銀右を可能にする)▲6三角△3四金▲5六歩と3筋の制空権を巡る指し手が続くが、後手としては金銀3枚がおびき出され、玉が寂しくなってしまった。

 ▲5六歩と動きを強要された第4図は、後手の“前のめり感”が半端ではない。
 第4図から△6六銀(△4六銀もあった)▲3六歩△7七銀成▲同金△2六銀打(第5図)▲3五歩△2七銀成▲同角成△3五金▲2四歩△同歩▲6三馬で第6図。

 大きく駒が振り替わったが、「先手・銀2枚」対「後手・飛車」の二枚替えで先手の得。さらに、6三に再び侵入した馬の存在が大きく、後手の8二の飛車は心もとない。さらに、後手玉の守備駒は金1枚のみで、しかも離れている。
 ここで、塚田九段説の△4九馬(▲6四馬に△5八馬▲同銀△6八飛を用意)が検討されていて▲7八銀でどうかと言われていた。また、△7五歩と嫌味を付けつつ▲6四馬に備える手(▲6四馬△7六歩▲同金△7三歩)もあるかもしれない。
 羽生王位の指し手は△6九飛だった。

 好守に利かせた手だが、手順に▲7八銀と固められ、△4九飛成と逃げることとなり、結局、▲6四馬を実現させてしまう。後手の龍と馬も働きが弱い。冴えない手だなあと思っていた。

 ▲7八銀△4九飛成▲6四馬と歩を補充されつつ飛車当たり。
 ≪飛車って強い駒だけど、こうやって追われると弱いよなあ≫
 強い駒だけに相手に渡したくないが、行動範囲が広い馬に追われると、歩などを拾われながらドンドン追い込まれてしまう。
 しかし、羽生王位はこういった飛車の逃げ方や見切りが実にうまい(そう言えば、今年の王将戦第2局も巧みだった)
 一旦、△6二飛として▲6三歩を打たせてから△9二飛と逃げ、▲7四馬(第8図)の追撃にも

△8二飛とかわす(9二での飛車馬交換を許容する人も多いのではないだろうか)。先手は飛車取りを掛けながら2歩を得たが、△8二飛の局面は意外に難しい。
 ここで木村八段は▲6五馬としたが、△3六歩と上部開拓を目指されてみると、次の△3七歩成が大きく、それを上回る先手の手段が見当たらないように思えた。
 実戦は▲2三歩△同玉▲2一馬△3七歩成と進んだが、上部に追い出す寄せで△3七歩成が実現しては後手有望に思えてきた。
 しかし、次の▲4三銀が絶好。

 指されてみると、後手玉の上部脱出が意外に、しかも、相当難しいことが分かった。

「その6」に続く……   終われないなあ……
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不調なのか、それとも、衰えたのか……「その4・一昨年の王位戦を振り返るⅢ」

2016-06-28 00:11:02 | 将棋
「その1」「その2」「その3」の続きです。

 第5局は、第3局に続いて角換わり腰掛け銀(手番も同じ)。

 ▲3七角に木村八段は強く△7五歩と応じた局面。
 以下▲6四角△9二飛▲7五歩△9五歩▲同歩△8六歩▲同歩に△9六歩で第12図。

 △9六歩に▲同香と取るのは、4五の桂と9六の香の両取りの△6三角と打たれて、先手が思わしくないとみられていた。
淡路九段藤原七段は(1)▲3五歩(△9五飛に▲9八歩と受ける変化と▲3四歩と突っ込む変化がある)、千田四段は(2)▲2四歩(△同歩▲2五歩△同歩▲1五歩△同歩▲2四歩で後手の玉頭に拠点を作るが、代わりに歩を与える)を予想している』というのが中継サイトの解説。
 ところが、羽生王位は堂々と▲9六同香。
 面白かったのは、この後。
 ▲9六同香が指されて、急遽、検討陣も調べ始めるが、先手が指せる変化が見い出せない。羽生名人の意図を掴めず、△6三角に素直に香取りを受けるだけの▲8七金にも意表を突かれる。
 しかし、実際に▲8七金以下△4五銀右▲同銀△同角と木村八段の思惑通り進んだものの、▲8三銀と打たれてみると……

 ……≪先手の方が良さそうだ≫という声が多くなった。

 けれども、そんな単純な将棋ではなく、△9三飛▲9四銀成(▲8二飛成のほうが良かったという説もある)△7三飛▲8四成銀(第14図)の時に

 △7二桂と打てば、結論がはっきり出ない非常に難解な将棋になっていたと言う。
 ▲4五飛△同銀▲5五角△3三桂▲7三成銀△5四銀(変化図)は角の逃げ場が難しく先手大変とのこと。

 以下▲4六角に(A)△4九飛▲4七歩△7三桂▲同角成△6九飛成▲5九飛△7九銀▲9七玉△5九竜▲同金△7八銀▲9八角△9九飛▲8八金……形勢不明(“互角”という意ではなく、“分からない”という意味)また、(B)△4五銀▲5五角△5四銀▲4六角△4五銀の道もあるらしい(中継解説による)。


 実戦は、第14図で△7一飛だったので、棋勢が先手に傾いた。
 以下、▲9一角成△3六角▲3七馬△3五銀▲3九香

 △3三金右▲3六馬△同銀▲同香△3七角▲3八飛△1九角成▲3五歩と進む。


 この▲3五歩が精密な指し手。
 この手で普通に▲3五香△3四歩▲同香△同金▲同飛と進めると△3三香と打たれ飛車が取られてしまう(それでも先手が良さそう)。


 しかし、▲3五歩(第17図)△同歩▲3四歩△同金を入れて▲3五香と香を走れば、△3五同金▲同飛となり((本譜は△3五同金とせず△4六桂)

 飛車は無事である。


 以後は羽生王位が着実に勝ち切っている。


 木村八段を含め、皆が読みを打ち切ったその先を読み、木村八段の思惑に乗って勝つ……王道の将棋を見せた。
 一か所難解な変化もあったが、精密な指し手が光った一局だった。


「その5」に続く
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不調なのか、それとも、衰えたのか……「その3・一昨年の王位戦を振り返るⅡ」

2016-06-26 13:09:15 | 将棋
「その1」「その2」の続きです。


 第4局は、難解な攻め合いの矢倉戦となった。

 この△6四歩は皆が驚いた手。
畠山鎮七段「私がやったら、阿部先生に叱られてしまいそうなくらい怖い手です。ただでさえ先手が攻めてきそうなところなのに、角道を止めてしまうわけですから。いろいろ怖い筋がありますよ。羽生王位はとことんやってこいと言ってますね」
阿部隆八段「△6四歩??? ちょっと驚きましたね! 浮かびも想像もつかない。若者の言葉でいうと神の一手ですね。意味を理解するため長考します(笑)。失礼を承知で言うとPCのバグかと思いました。先攻するのが一目。▲3五歩△同銀▲同銀△同歩▲1五歩△同歩▲2五桂と。そこで△2四歩は▲1五香△同香△3三歩とバンバン攻める。△2四歩で△3四銀の受けなら▲9六歩から香を入手する。
木村八段、やはり長考ですね。攻める手以外は難しい。かといって腰が入った攻めとは言えない、切らされる心配があります。まあそうじゃなければ羽生さんが△6四歩という凡手に見える手を指す訳ないでしょうから」
飯島七段「△6四歩がびっくりの工夫でした。先手が攻めてこようとしているのに、けん制している角の利きを止めたですからね。木村八段もつぎの▲2五桂に1時間9分考えていますし、やはり驚かれたと思います」

 この後、激しく難解な攻め合いとなった。




 局面図を挙げるのみにさせていただくが、5五に出るかと思われていた銀を桂の利いている3三に引いたり、角を切ったりと緩急織り交ぜる羽生王位。それに応じながらも反撃の手を繰り出す木村八段。
 非常に難解な攻め合いだが、このような駒への当たりが多く複雑な局面は、羽生三冠の最も得意とするところ。特に、4~5筋に垂らした歩の使い方が絶妙で、終始、主導権を握っていたように思う。
 木村八段の飛車・歩の玉頭への圧力と2枚角の利きをうまくかわし、5、6筋の優位を最大限に発揮して(第9図の桂は5四から跳ねたもので、後の10図の△5八歩成に寄与している)の勝利は会心譜と言える。

「その4」に続く
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不調なのか、それとも、衰えたのか……「その2・一昨年の王位戦を振り返るⅠ」

2016-06-24 22:58:35 | 将棋
「その1」の続きです。

 直前まで3回連続名人戦の舞台で敗れていた森内名人を4-0で破り、名人位に復位した後、さらに、棋聖戦でも森内竜王の挑戦を3勝0敗で退けた。

 直後の王位戦でも木村八段を4勝2敗(1持将棋)で防衛を果たした。しかし、この王位戦が“違和感”の走りだった。
 最初は1局ごとの短評を並べるだけにしようと思いましたが、局面図を挿入した方が思い出しやすいと思い、並べ返しているうちに、あの図この図もと絞れず、結局、いつもの如く、簡潔にまとめることは出来なさそうです。
 奇しくも、今季の王位挑戦者はこの時と同じ木村八段。復習を兼ねて、思うままに書き連ねようと思います。

 第1局は矢倉戦。

 後手の香が9五にいるのは、△9五歩▲同歩△同香に▲9七歩と先手の羽生名人が局面を治めたからである。一見、後手の言い分を通した形だが、好きな時に▲9六歩として先に香を手にする権利を持っていると考えることもできる。
 ▲3七銀は2六から引いたもの。この後も、銀を上げ下げ、歩を交換するなど、互いに間合いを計り合いが続いたが、木村八段の△5八歩が巧手だった。

 これに対し、強く▲同飛と取り、△6九銀と割り打ちを掛けさせる手もあったが、▲4九飛と我慢した。しかし、譲歩した分だけ木村八段に先行(先攻)を許してしまったようだ。


 第3図は、羽生王位は2筋の継ぎ歩から▲2四歩の垂らしに期待したが、それは大したことないと見切った木村八段が強く△2五同歩と取った局面。
 以下、▲4五飛△4四金▲5五飛△同金▲2四歩△4九飛(第4図)と進む。

 図の△4九飛が▲2四歩の垂れ歩よりも厳しい。
 9筋の飛香の存在も大きく、△5九歩成からのと金攻めも見える。
 先手は結局、▲9六歩を時期を逸してしまった。
 この後、9二の飛車も4筋から成り込み(第3図から第4図に至る手順で、▲4五飛に対し△4四金と金で応じたのも飛車の展開を可能にした好手だった)、二枚龍で寄せ切った。木村八段が先勝。


 第2局も矢倉戦で、先手の木村八段が攻め込み、羽生王位が受け止め反撃する展開。(実は、この将棋、当時、一日目の将棋を記事にしていますが、2日目を書かずに済ませていました)


 この後もギリギリの攻防が続いたが、第7図の羽生王位の△3三玉が失着だった。

 目障りな歩を払い、玉を安定させる大きな一手だが(対局中はこの第7図の△3三玉で後手玉の危険度が薄れ、次の△6五香が厳しく後手有利というのが、大方の形勢判断だった)、△6五香▲5七金を決めてから△3三玉と指すべきだったという。
 なぜなら図での▲7五歩が好手で後手の桂頭を攻めると同時に、△6五香に▲7六金を可能にしている(ちなみに、第7図の△3三玉の手で△6五香▲5七金を利かして△3三玉としたとしても、以下▲7一角△9二飛▲6二角成△6六歩▲同銀△同香▲同金△5三銀打▲同角成△同桂▲7三馬で難しい形勢だったらしい…棋譜中継の解説)

 第7図以下、▲7五歩△2六歩▲2八飛△6五香▲7六金△6七香成▲7四金△8四飛▲7五金△9四飛▲7六銀△6六歩(第8図)と進む。

 図では、後手の香(成香)が空振りに終わり、その上、成香取りを受ける△6六歩を打たされるのも辛い。さらに、後手の飛車も9筋に追いやられてしまったのも痛い。
 後手の6一の桂は7三桂に紐を付ける為に打った桂だが、この桂も8一から打つべきだったらしい。6一から打った方が5三にも利いて働きは強いが、6一から打ったため取られる運命となってしまった。この桂打ちの小ミスは、後の第6局の桂打ちの前兆だったのかもしれない。

 このあと木村八段が優勢に進め、5一と金を4一に捨てたところ。

 以下、△同金▲4五桂△同歩▲5三角成と銀を取って角を成り込んで技が決まったかに見えたが、△5二金と受けられて見ると、後手玉の危険度が増したとは言えず、駒の損得も銀と桂の駒得ではあるが、と金を捨てているのでほとんど得はしておらず、馬当たりにもなっている。
 それで、▲4四銀△同銀▲5二馬と攻めを継続させるが、△2四玉とかわされてみると、先手の馬が置き去りにされた感があり、逆転模様。以後、羽生王位が勝ち切り、1勝1敗のタイとした


 
 第3局は角換わり腰掛け銀。後手の木村八段が馬の力と力強い防手を見せる。


 しかし、あの手この手で突破の糸口を掴もうとする羽生王位。

 これに丁寧に力強い防手で、羽生名人の攻めを切らしにかかる木村八段。

 長い長い攻防が続き、羽生王位の攻めが息切れ気味になってきたが……

 第15図の▲8三銀に△同馬と応じたのがミス。
 以下▲5四飛成△5三銀打▲4四金(第16図)△同銀▲6三龍で馬が盤上から消えることとなってしまった(先に金を捨てているので、角金(馬金)交換)。

 木村八段は▲4四金を見落としていたという。

 うっかりミスでぐらりとした木村八段だったが、容易に倒れない。

 金をベタベタと打ち、先手の飛車を捕獲し、入玉に望みを懸ける。

 羽生王位も技を繰り出し勝利を目指す。

 図以下、△2七同馬▲4六角(王手飛車)△2五玉▲1九角△2八銀と必死の攻防。

 しかし、将棋の流れは羽生王位にあったらしく、

 ここで▲2二竜と指せば、以下△4八角▲1九歩△同馬▲2三竜寄△2六歩▲1六銀△2八玉▲2六竜(変化図)△3九玉▲2七銀で、このあと馬を取るのが確実となり、先手の勝勢だったという。


 また、▲2二龍では▲1二龍も有力で△1六歩▲2三龍寄△2六歩▲1五龍△5九角▲2九歩△同馬▲1四龍引△2八玉▲1六龍△1五歩▲同龍引△2七歩成▲1九金で馬が取れ、先手の勝ち。
 羽生王位は「寄せにいって寄らなければ負けてしまいます。寄るかどうかも微妙という判断でした」(後日談)
 この辺の記述は、大川慎太郎著『将棋・名局の記録』(マイナビ)による。

 さらに、駒数で勝利しそうな棋勢であったが、無理をせず入玉を確保し、持将棋に。
 第20図の▲9五歩は、単に▲8六玉だと△8三香が嫌味なので、▲9五歩△同歩を入れておけば、△8三香には▲9五玉ができるという仕組み。
 しかし、この1歩の突き捨てによって、木村八段の駒数不足による持将棋不成立(負け)の可能性が低くなり、そのまま持将棋が成立した。

 寄せに行かず入玉を目指したことと言い、安全運転で持将棋にしたことと言い、若干、不満の残るが、激闘による疲労もあり、危険を回避したのは責められない。

 第三局まで終了して、1勝1敗1持将棋の互角。しかし、内容は押されっぱなしだったので、1勝1敗は上出来と考えるべきだろう。今後の戦いに不安は残るが、内容は上昇気配なので大きな不安は感じなかった。

「その3」に続く
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不調なのか、それとも、衰えたのか……「その1」

2016-06-22 20:38:57 | 将棋
 名人を失冠して20日余り経った。
 棋聖戦第1局でも永瀬六段に敗れ6連敗(対永瀬戦も4戦全敗)。
 内容もよくない……「衰えたか」という声もあちこちで聞こえてきた。
 きっぱりと反論したいが、反論できる材料に乏しい。しかし、棋聖戦第2局で勝利し、明るい兆しも見えてきた。
 羽生将棋について、ここ数年感じていたこと、そして、現在の状況を整理して考察してみたい。
 

 まず、ここ5年の羽生三冠のタイトル戦を振り返る。(左側がタイトル保持者、右側が挑戦者、青が勝者)
2011年度
 名人戦 羽生三冠3-4森内九段 失冠
 棋聖戦 羽生二冠3-0深浦九段 防衛
 王位戦 広瀬王位3-4羽生二冠 奪取
 王座戦 羽生三冠0-3渡辺竜王 失冠
   タイトル戦としては2勝2敗(10勝10敗) 年度成績44勝19敗 0.6984

2012年度
 名人戦 森内名人4-2羽生二冠 挑戦失敗
 棋聖戦 羽生二冠3-0中村太六段 防衛
 王位戦 羽生二冠4-1藤井九段 防衛
 王座戦 羽生二冠3-1渡辺二冠 奪取
   タイトル戦としては3勝1敗(12勝6敗)  年度成績51勝17敗 0.7500

2013年度
 名人戦 森内名人4-1羽生二冠 挑戦失敗
 棋聖戦 羽生三冠3-1渡辺三冠 防衛
 王位戦 羽生三冠4-1行方八段 防衛
 王座戦 羽生三冠3-2中村太六段 防衛
 王将戦 渡辺二冠4-3羽生三冠 挑戦失敗
   タイトル戦としては3勝2敗(14勝12敗)  年度成績42勝20敗 0.6774

2014年度
 名人戦 森内二冠0-4羽生三冠 奪取
 棋聖戦 羽生四冠3-0森内竜王 防衛
 王位戦 羽生四冠4-2木村八段(1持将棋) 防衛
 王座戦 羽生四冠3-2豊島七段 防衛
 棋王戦 渡辺二冠3-0羽生四冠 挑戦失敗
   タイトル戦としては4勝1敗(14勝7敗)   年度成績39勝15敗 0.7222

2015年度
 名人戦 羽生四冠4-1行方八段 防衛
 棋聖戦 羽生四冠3-1豊島七段 防衛
 王位戦 羽生四冠4-1広瀬八段 防衛
 王座戦 羽生四冠3-2佐藤天八段 防衛
 王将戦 郷田王将4-2羽生四冠 挑戦失敗
   タイトル戦としては4勝1敗(16勝9敗)   年度成績30勝17敗 0.6383

2016年度
 名人戦 羽生四冠1-4佐藤天八段 失冠
 棋聖戦 羽生三冠1-1永瀬六段 タイトル戦中
   タイトル戦としては0勝1敗(2勝5敗)    年度成績3勝6敗 0.3333

 「5年間+今年度」の通算では、タイトル戦としては16勝(防衛13、奪取3)8敗(失冠3、挑戦失敗5)。防衛戦は13勝3敗、挑戦は3勝5敗。
 2011年度、名人、王座を失冠したものの王位を奪取し二冠を死守した後は、防衛を重ねながら三冠、そして四冠とタイトルを増やす。特に2013年度~2015年度は3年連続タイトル戦登場数が5。この間、挑戦失敗が4回あり、それをマイナス材料と捉える向きもあるが、タイトル挑戦すること自体が困難なので、圧倒的な実績と考えるのが妥当だ。(挑戦失敗の多さは、私としては不満だが)
 特に、名人位に返り咲いた2014年度は朝日杯優勝、日本シリーズ準優勝、年度成績39勝15敗(0.7222)と申し分のない成績である。あの森内名人を4勝0敗で破って復位したことも素晴らしいが、何より、将棋の内容が素晴らしかった。
 “ピーク”という考え方は好みではないが、この名人戦をひとつのピークと考えてよいだろう。


「その2」に続く
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『99.9-刑事専門弁護士-』 第10話(最終話)

2016-06-20 17:57:44 | ドラマ・映画
「僕にとっては依頼人の利益よりも事実を明らかにする方が大事です」
これは全編を通じての深山の信条(第1話で深山が語っていたらしいが、私は第3回より視聴。最終回でも同様なセリフがあった)
さらに、
「正義とか真実とかっていう、100人いたら100通りの考えがあるようなものを……僕は信じないですよ」
「あなたはあなたの正義というものを貫くというのであれば、僕は事実だけを信じてあなたの前に立ち続けますよ!」


 よくこういったドラマで「真実」と「事実」を対比して語ることが多く、大概の場合は
「真実」>「事実」……事実は表向きの現象で、大切なのは“真相”(真実)。(名探偵コナンの決め台詞「真実は一つ」に相通じる)
 といった図式が多い。
 また、今回、依頼人の無実を証明する(依頼人の利益)ために「依頼人のアリバイを立証する」方針を立てた佐田に対し、深山は冒頭の「僕にとっては依頼人の利益よりも事実を明らかにする方が大事です」と述べ独自の行動をとったが、今回は“依頼人の利益”=“事実を明らかにする”なので、観ていて抵抗を感じた。
 これが、罪を犯した依頼人が「無罪を勝ち取ってほしい」という要求(利益)に対して主張したのなら、素直に受け入れられたのだが。


 この辺りの言い回しに違和感を感じたが、それはさておき、
 このドラマの検察(警察)は、「犯人を逮捕、起訴し、罪を確定させる」のが正義で、
 そのためには、犯行時間や証言を歪めたり、自白を強要させても構わない。
 事実(真実)の追及など、どうでもいいのである


 タイトルの『99.9』は、そういった実情への批判が込められている。(上記の検察の姿勢が、実態に合っているかは不明)
 ただ、私がもう一つ問題に感じるのは、『99.9』の数字の裏には、“勝てる見込みが得られなければ、不起訴”という実情もあるということ。
 たとえ、限りなくクロに思われる被疑者でも、立件・勝訴できる材料(証拠)がなければ、起訴しないという実態。
 この場合も、深山の信条である「事実を明らかにするのが大事」に反している。

 なので、深山の信条を貫くのなら、彼は弁護士ではなく検事にならなければならなかった。
 彼の父親が無実の罪に陥れられたという過去から「冤罪を失くす」という心情を持ったのなら、弁護士で良いのだが
……


 もちろん、ドラマの主題には共感できる部分も多いのだが、
 そういう訳で、最終話は“モヤモヤ”したものを感じて視聴していた。
 このドラマ、ギャグや小ネタも楽しめた(楽しめないモノも多かった)が、その分、ドラマの芯の部分の精密さを欠いたモノになっていたように思う。


★最終話の事件について
・捜査がずさん過ぎた
 「殺害現場に毛髪と血痕が残されていたこと」は、かなりの有力な証拠には違いないが、周囲の証言や動機、そして、自白などは、歪められたか強要されたもの。
 被疑者が主張するアリバイの検証はせず、動機もあやふや(被害者と被疑者の関係)、凶器の発見、指紋、目撃証言などについては、何の言及もなかった。

・真犯人の犯行も、その設定が不自然
 脚本サイドの犯人の条件は、「被疑者(誰でもいい)の血液と毛髪を手に入れることが可能なこと」、「何の関係もないと思われる4人と関わりがあったこと」。
 それに合致したのが、医師であり、都知事(被害者に脅迫される脚本的必要性があった)で、逆算的に設定されたと思われる。
 そのため、3人を殺害するにしては、「患者に悪戯したという過去の隠ぺい」という弱すぎる動機になってしまった。金で解決する方がリスクは少ない。(得意の?政治資金を運用すれば良い)
 殺害するにしても、脅迫していた本人だけで良い。普通は、それだと被害者の関係者である知事が疑われるが、今回は血液と毛髪の決定的な証拠を捏造できる。他の二人を殺害する方がはるかにリスク(目撃や犯行痕跡)が大きい。

・お助けマン(週刊誌記者)登場の強引さ
 たまたま、事務所に置いてあった、静岡の事件記事に目が止まった。
 そもそも、この記者、何をテーマで書きたかったのだろうか?詳細に調べたが、犯行状況などにさしたる疑問も持っていなかったようだし。
 単なる“お助けマン”としての存在だった。

【ストーリー】番組サイトより
 深山 (松本潤) は、連続殺人事件の容疑者として逮捕された石川の弁護を担当することになる。
 石川は、殺害現場に毛髪と血痕が残されていたことで逮捕され、取り調べで犯行事実を認めていた。

 だが、検察の 丸川 (青木崇高) から毎日、深夜まで取り調べられ、意識が朦朧としている中で調書にサインをしてしまったと明かす。
 そんな状況の中、深山は 佐田 (香川照之) や 彩乃 (榮倉奈々) らと捜査を始めるが、週刊誌のある記事を目にして、再び、皆の前から消えてしまい…。

深山と検察の最終決戦が今、始まる!
そして、ついに天敵・大友検事正 (奥田瑛二) と対峙する!
全ての謎が明らかになる !!

脚本:宇田 学
コメント (2)
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2015~16 順位戦C級1組最終局 ……≪この投了図は、ないんじゃない?≫と思ったが…「その10(終)」

2016-06-18 18:03:12 | 将棋
「その1」「その2」「その3」「その4」「その5」「その6」「その7」「その8」「その9」の続きです。

 全10局の終局時刻と消費時間は次の通り。
第1戦 対金井恒太五段戦
 終局時刻は0時49分。消費時間は▲金井五段5時間58分、△浦野八段5時間59分
第2戦 対小林裕士七段戦
 終局時刻は22時12分。消費時間は▲浦野八段5時間54分、△小林七段3時間45分
第3戦 対高野秀行六段戦
 終局時刻は22時53分。消費時間は▲高野六段4時間53分、△浦野八段5時間28分
第4戦 対阪口悟五段戦
 終局時刻は20時08分。消費時間は▲浦野八段4時間32分、△阪口五段3時間18分
第5戦 対片上大輔六段戦
 終了時間は22時7分。消費時間は▲片上六段4時間15分、△浦野八段5時間42分
第6戦 対大平武洋五段戦
 終局時刻は20時30分。消費時間は▲浦野八段5時間59分、△大平五段2時間3分
第7戦 対神谷広志八段戦
 終局時刻は21時20分。消費時間は▲神谷八段4時間3分、△浦野八段4時間54分
第8戦 対横山泰明六段戦
 終局時刻は2時1分。消費時間は▲横山六段5時間40分、△浦野八段5時間48分(千日手局を含めると実考慮時間は6時間14分)
第9戦 対阿部健治郎六段戦
 終局時刻は17時18分。消費時間は▲阿部六段2時間0分、△浦野八段4時間5分
第10戦 対中村太地六段戦
 終局時刻は20時7分。消費時間は▲浦野八段5時間4分、△中村六段3時間2分

 対戦相手が早指し棋士が比較的多く、中押し負けの将棋もあったので、終局時刻は早めであったが、殆どの対局で残り時間がわずかになるほど考えている。
 作戦負けから押し切られるというパターンは考慮していても辛いはずだが、それでも苦慮を重ねている。
 角交換振り飛車穴熊など作戦的に損なのではないかと思うし、研究を重ねて独自の指し方を練り上げたという節もあまり感じられないが、独自の感覚を武器に、盤を前に目一杯考え続ける姿勢には感銘を受けた。将棋の内容も面白かった。

 残念ながら2勝8敗でC級2組に降級してしまいましたが、今年度も頑張っていただきたいです。
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『99.9-刑事専門弁護士-』 第9話

2016-06-18 15:03:14 | ドラマ・映画
≪皐月 (国仲涼子) が犯行を自供≫、≪家族全員の証言≫などから、皐月の罪を情状酌量で軽減する方針となるところであるが、
「朱色のネクタイを手に呆然と立ち尽くしていた」という証言が一致しすぎており、違和感が半端ではない……

 ………例によって、実験(状況再現)など検証をすると、長男の犯行を、皐月が罪をかぶるのを家族全員で後押ししていたことが判明。
 さらに、『自ら罪をかぶった皐月が、一致証言で家族ぐるみの犯人隠匿が判明するよう誘導していた』のだった。

 まあ、『皐月が罪をかぶって家族ぐるみで犯人隠匿』というのは見え見えであるのは、制作側も織り込み済みで、
 この話のミソは『遺産相続者に犯人隠匿罪を犯させることによって、遺産相続人が皐月のお腹の中にいる胎児のみとなり、すべて相続する』ということであった。


 そもそも、救急や警察より、弁護士を呼んだことに違和感が強いが、これは深山が現場を検証し、ワインがこぼれた状態(皐月の服や絨毯)などを把握するためとスルーすることにするが、≪カッとなったのに、引き出しのネクタイを取り出して絞殺≫というのは不自然極まりない。
 上記の家族の証言や、再現実験による矛盾なども自明過ぎて、面白みに欠けた。

 しかし、そんなことより、もっと気にかかることがあった。
相続欠格がテーマ(狙い)であったが
調べてみると、けっこう条件が緩やかなようだ。
 ウィキペディアによると
「相続欠格の該当者は、故意に被相続人、先順位・同順位の相続人を死亡するに至らせ、または至らせようとしたために刑に処せられた者」(民法891条1号)
※「故意」とは、殺人の故意を指す。殺人の故意が認められない致死等の場合は該当しないので、相続人となることができる。「刑に処せられた者」が要件であるため、執行猶予付きの有罪判決において執行猶予が満了した場合や実刑判決が確定する前に死亡した場合は欠格事由にあたらない。

 過失致死や傷害致死 は欠格に当たらないらしい。

さらに、犯人隠匿証拠隠滅において
「親族間の犯罪に関する特例があり、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる」(刑法105条)
となっている。

 皐月のお腹の子には相続権があるのは確実だけど、今回の犯人隠匿劇は意味がなかったように思える。
 仮に親族においても犯人隠匿罪が適応されるとしたら、隠匿罪においては皐月が首謀者なので一番罪が重そうであるし……



【ストーリー】番組サイトより
 深山 (松本潤) は 佐田 (香川照之) から指示を受け、彩乃 (榮倉奈々) らとともに山城鉄道の会長の自宅を訪ねる。するとそこには殺害された会長の遺体と、それを取り囲む家族らが。
 状況を聞くと、三男の嫁である 皐月 (国仲涼子) が犯行を自供。脳梗塞を患った義父を懸命に介護したが、満足してもらえないまま罵倒される日々が重なり、耐えられなくなっての犯行だという。
 さらに事件当時、自宅で一緒に暮らしていた家族たちも全員、皐月の犯行を認める供述をし、すぐに解決するかに見えた事件であった。

 しかし深山はある違和感を嗅ぎ取る。 皆の証言を深く掘り下げてゆくと、それはまるで “無理につじつまを合わせたかのように一致” しており…。

脚本:宇田 学
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2015~16 順位戦C級1組最終局 ……≪この投了図は、ないんじゃない?≫と思ったが…「その9」

2016-06-17 23:39:47 | 将棋

………すべては、この投了図から始まった(こんなに長くなるとは思いませんでした)。

「その1」「その2」「その3」「その4」「その5」「その6」「その7」「その8」の続きです。

「その1」からの引用】
 最終局を前に、昇級争いは8勝1敗の中村太地六段(2位)、斎藤慎太郎六段(9位)、北島忠雄七段(31位)と7勝2敗の船江恒平五段(6位)の4棋士に絞られていた。記述した順に有力で、50歳の北島七段がここまで8勝1敗は“大健闘”だが、中村六段と斎藤六段の両棋士に勝たれてしまうと、北島七段は勝っても昇級ならずという状況であった。
 しかし、午後8時7分という早い時刻の決着で、昇級枠のひとつがあっさりと決定してしまった。
 早い投了時刻もさることながら、本格的な戦いが繰り広げられることもなく、銀桂両取りの飛車打ちが炸裂しての42手の投了は、あまりにも不甲斐ないと感じた。これでは、天運を信じて必死に戦っている北島七段が気の毒だ……
 そういう怒りに近い感情で記事を書き始めたが、そんな短絡的なものではなかった。
【引用終わり】


 これが、このシリーズを書き始めた動機であった。
 全局通してのまとめをする必要があるが、その前に、最終局については、「その1」で簡単にしか触れていないので、もう少し詳しく観てみよう。

 ▲9七角と浦野八段が趣向を見せた第1図。

 『将棋世界』2016年5月号の順位戦レポート記事(国沢健一氏)によると、この趣向は過去に4局あって、そのうち3局は桐山九段で、残りの1局は浦野八段とのこと。
 これに対する中村太六段△4二玉が妥協しない最強の応手だ。

 玉が先手の角筋に入り怖いので、前例は△4二銀が多いとのこと。ただ、中継サイトの解説によると、「2005年の第64期順位戦B級2組8回戦、▲桐山清澄九段-△佐藤秀司六段戦(段位は対局当時)で、佐藤六段が△4二玉を指しており、以下は▲3八銀△3四歩▲3六飛△3三金▲2七銀△1四歩▲2六飛△9四歩▲1六銀△3二銀▲2五銀△1三角(参考図)と進んでいる」とある。

 この局面についての解説はなかったので私なりに考えてみた。
 すぐに▲1四銀は△3五角があるので、▲5六飛として△5二金と受けさせて▲1四銀とする手はありそうだ。しかし、以下△2二角▲2五銀△2四歩▲3六銀が想定されるが、先手は歩をせしめたものの、手損が大きく先手の飛車は窮屈で、角頭も飛車がいなくなると攻められてしまう。先手に苦労が多そうな将棋であろう。

 さて、△4二玉(第2図)で最も警戒を要するのは▲5六歩。
(以下は上述の『将棋世界』の記事を参考)
 ▲5六歩以下、△3四歩▲5五歩△同角に▲5四歩が嫌味だ。

 「以下、△4四角が5三を受けながら飛車取りで味よく見えるが、▲5六飛の切り返しが厳しく、△5二金と受けても▲5三歩成△同金▲同角成△同角▲同飛成△同玉▲7一角の王手飛車でそれまで」(『将棋世界』より)

 「変化図で正しい受けは△6四角。以下▲同角△同歩▲5五角△4四角▲同角△同歩▲5五角△4三玉と進めば、▲6四角には△5四玉!で凌ぎきれる」(『将棋世界』より)

 また、△4二玉(第2図)に、▲5六歩△3四歩の時、▲3六飛と変化する手もあるとのこと。
 「以下、△3三金▲5五歩△4四金▲5四歩△同金▲3四飛△6四歩▲2四歩△同歩▲5四飛△同歩▲6四角△3二玉▲5三角成△8六歩が一例だが、これも後手が指せそう」(『将棋世界』より)


 昼食休憩を挟んで1時間14分(実時間は約2時間)の考慮で、浦野八段は▲6八銀と着手。
 しかし、中村六段の次の手を見て後悔することになった。

 △9四歩!
 この手によって先手の動きが難しくなってしまった。飛車の横利きが消えると、△9五歩と突かれてしまう。

 第1図(13手目)の▲9七角に1時間6分、△4二玉に対する▲6八銀(15手目)に1時間14分の考慮を費やしての苦境。経験のある形で成算を持って挑んだはずだが……
 「もしかすると(△4二玉の局面が)すでにおかしいのかもしれない。もう少しなんとかなると思ったんやけど……」(『将棋世界』記事の浦野八段の弁)

 ………う~ん、少し情けないかなぁ(特に△4二玉を軽視していた点)。しかし、浦野八段の指し手などを見ると、それだけで氏を責める気にはなれない(特に、順位戦一年間の浦野八段の将棋を振り返った現在は)。
 浦野八段は既に降級が決定しているが、昇級を争っている中村八段に対して、プライドを持って対峙し、用意の作戦をぶつけたのではないだろうか?
 しかし、20分の考慮で指された△4二玉。……王道の一手。浦野八段はいろいろ読んで感心してしまった。相手の指した手を客観的に認める(感心)するのは悪いことではない。しかし、浦野八段は、感心し過ぎてしまった。そして……▲6八銀を指してしまった。

 ▲6八銀の後も、浦野八段の闘志は衰えず、苦慮を重ね、苦心の陣立てを組む。
 しかし、それを打ち砕く中村六段の指し手。

 △5四歩▲同歩△同金▲5五歩△6四金。
 4三の守りの金を6四の前線に繰り出す。

 狙いは飛車の圧迫(捕獲)。(△5四歩に▲同歩が素直すぎたかもしれない)
 浦野八段は▲9七角と耐えるが、中村六段は構わず△8六歩。(△4三銀~△3一角から△7五銀を狙う手もある)

 ▲8六同歩は△7五銀、また、▲8六同角には△8八歩があるので、▲8六同飛と取るが、△8六同飛▲同歩に△2六飛が銀桂両取りが掛かって、浦野八段、投了。


 終局時刻は20時7分。消費時間は▲浦野5時間4分、△中村3時間2分。
 △4二玉~△9四歩~△5四歩~△8六歩と王道の手で勝利を掴んだ中村六段がB級2組へ昇級を決めた。

「その10」に続く。
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都知事を辞めればいいというものではない

2016-06-16 16:43:05 | 時事
舛添都知事の「せこさ」が問題となり辞職に至ったが、その応答ぶりがあまりに酷く、政治家としての素養、否、人格そのものに、欠陥があった。

「ルールに従っているので、全く問題ない」………ルール(法律)内なら、何をしても良い

「トップの人が二流のホテルに泊まりますか?恥ずかしいでしょう」………特権意識を丸出し

「精査する」………きちんとした説明ができないので、先送り

「第三者の厳しい目」………“精査する”をパワーアップして先送りしたうえ、大甘の基準で他人に“違法性なし”と判定させ、自分では釈明せず

「辞職するにせよ解散するにせよ、都政が停滞することになる」………解散をちらつかせ、不信任案提出を牽制(脅迫)

「私利私欲は全くない、東京の為」………私利私欲そのもの

「与党の公明党に裏切られた」………都知事の懇願に、自民党と民進党が≪9月まで待ってもいいかな≫とほだされかけたらしいが、最後まで執着し、悪口を叩く


 人に厳しく自分に甘く、他人の意見を無視して独断で物事を進める自分勝手な人物だったらしい。
 「違法でないので、悪いことをしていない」と理論武装していたが、最後の最後まで貫いていたので、もしかすると本当に悪いと思っていないのかもしれない。
 良くない行為を数多くしても、「以後、気をつけます」でやり過ごそうとし、自分の言葉で釈明せず、大甘な“第三者の厳しい目”で他人の判断に転化した。
 あれだけグレーなことをしておいて、自分が都政のトップで指揮を執る資格はないという自覚は全くなし。
 「“東大卒”=“エリート”」と言い切っていたが、悪知恵とプライドを身につけただけで、教養や人徳は置き去りにしたらしい。

 今回、後ろ盾の自民党からも見放され、四面楚歌の状況で、執拗な説得にようやく辞職を決断したが、これまで、全く責任説明を果たしていない。
 知事の辞職願を出した後は、まったく会見を行わない。
 ≪知事を辞めたので、説明をする必要はない≫
と考えているのだろうが、グレーなことをした事実は知事を辞めたからと言って消えるわけではなく、追及されるべきである。


“ザル法”の政治資金規正法、“選挙に勝つのが最優先の正義”……政治の腐敗ぶりが根本的な問題

 舛添都知事が辞職して、都議会解散がなくなり議員も安ど感が漂う。百条委員会設置については共産党以外は反対し秘訣。定例会見は中止、第2回の集中審議もなくなる見込み。
 ≪辞職して責任を取ったから、終わりにしよう≫という空気が自民党議員を中心に蔓延している。
 それを端的に表したのが、野村都議(自民党)の言葉。
「打ち首では気の毒だ。名誉ある切腹のほうがいいでしょう。そう思って、許してやってあげましょう」
 これに対し、前宮城県知事・浅野史郎氏が面白い見解を
「舛添氏は自分に非がないと思っている(思い込んでいる)。辞任するということは非を認めることになってしまう。なので、切腹(辞任)より打ち首(不信任)のほうが本望なはず」

 それはともかく、舛添氏は、自民党が野党になった時に、自民党を出て行った人物。そんな舛添氏を、前都知事の猪瀬氏辞任に伴う選挙で、自民党は支援した。
 “選挙に勝つのが正義”……タレント(著名人)議員(藤原あき氏が走りと言われている。その他、宮田輝氏、谷良子など数限りない)で議席を確保する自民党のモットーと言ってよい。
 舛添氏も政治学者であるがテレビへの露出も多く知名度は高かった。1999年東京都知事選挙で落選(3位・84万票を獲得)したものの、2001年第19回参議院議員通常選挙に比例区から自民党候補として立候補し、158万8862票を獲得してトップ当選(次の選挙でもトップ当選)を果たし、発言力も強く、第1次安倍改造内閣、福田康夫内閣、麻生内閣において、厚生労働大臣に就いている。
 そんな氏が、2009年の第45回衆議院総選挙で自民党が歴史的な大惨敗、政権を民主党に奪われたころから、自民党内で浮きだし(執行部批判を繰り返したらしい)、ついには離党、“新党改革”へ。
 “改革”時代も人の意見を聞かず自分勝手な行動が多かったようだ。離党のいきさつや、氏の人物像を把握しているはずだが舛添氏を支援して都知事を任せた自民党の責任は大きい。

 しかし、今回の自民党の対処も、東京都や都民のことを考えたものではなかった。
 「舛添氏を押したメンツがある」「この時期に都知事が交代するのは、五輪の日程からも都合が悪い」として、舛添知事を批判はするものの、“知事続投”の方針だった。
 だが、舛添氏への対応の緩さが、世論から自民党への不満となり、間近に迫った参議院選挙に飛び火すると考え、不信任案を提出する動きとなっただけのことで、舛添氏を知事不適格者と判断したのが不信任案提出の主因ではない。不信任案決議ではなく辞職するよう説得したのも、その方が自民党の傷が浅いからであろう。

 なので、舛添氏の辞任が決まれば、一件落着。今後も舛添氏への追及を続ければ、舛添氏を擁立した責任で、選挙の逆風が強まるので、舛添知事問題は終結させたい。そんな思惑が見え見えの自民党の空気だった。


 舛添氏の件は今後も追及すべきである(特に、千葉県ホテルの宿泊代の会議費計上の件)。
 でないと、これまで続いてきた「辞任して問題終結」の流れは止まらない。同時に、ザル法である『政治資金規正法』の改正もすべきだ。

 弁護士の先生たちも、“一票の格差”だけに目くじらを立てるのではなく、それよりも、重要な法の不備の改正をすべきである。
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