英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『相棒season12』 第3話「原因菌」

2013-10-31 21:24:34 | ドラマ・映画
「張りつめた糸は切れやすい」
 そんな言葉が頭に浮かぶ話であった。若干、内容とずれていて、言うならば
「張りつめた糸は緩みたがる」
であろうか。

 今回の食中毒の誘発した原因は
①ドレッシングの原料に生食用ホタテでなく加熱用ホタテを使用したこと
 食品加工会社のミヤ食品加工が経費削減のために誤魔化した
②食品加工機械のメンテナンスが疎かだった
 食品加工機械のメーカーのウラカワ機械が、上海進出のゴタゴタにかまけて、手を抜いた
③レストランが保健所の検査を受けなかったこと
 レストラン・アプリティーボが、忙しいことを理由に検査を拒んだ(営業ができない)
③'保健所が検査を完遂しなかった(③に連動しているので③’とした)
 保健所は営業時間後(深夜)の検査は無理。強硬措置(検査を強行・営業停止)も取らなかった。

 ①②が直接の原因、③③'が間接原因。こうやって原因の要素を書き出せば、利潤追求や職務の怠慢によって引き起こされた食中毒という図式である。
 しかし、今回の件は、「いっぱいいっぱいの(張りつめた)」現代の社会情勢が生み出した食中毒に思えてならない。

 ①のミヤ食品加工の社長は「味がおかしい」とスープトップを分解して調べるような真面目さを持っており、②のウラカワ機械の社長も、「“おいしい”とお客が言ってくれるのが嬉しかった」と、仕事に誇りを持っていた。
 ③のアプリティーボも余ったソース(おそらく食材も)は廃棄し、容器や食器もしっかり洗浄するなど衛生面に気を配っていた。食材にもこだわりを持っていた。(加工品ばかりというのは、どうかと思うけれど)
 ③'の保健所所員も多忙(人員不足)だった。

 どこかの「誤表示」と言い張っているホテルよりはマシだと思う。

右京「要因3つのうち、どこか一つでも機能していれば、食中毒は起きなかったのかもしれませんねえ」
幸子「運が悪かったということですか」
享「運が悪かったじゃ済まない話ですよ」
幸子「みんな目先の利益に拘って、一番大切なお客様のことを忘れてしまったのかもしれませんねえ」
右京「明らかな人災です」
 確かにそうだが、味、食材、利益(単価)、忙しさがギリギリの状態で余裕をなくしていたのが一番の「原因菌」ではないだろうか?このような危うさは、そこらじゅうに存在している。私も他人事ではない。
 最近は雑用を押し付けられることも少なく、自由に(勝手に)捜査していて、「花の里」でくつろいでいる特命係(特に享)には言われたくない気もする。


★今回、刑事ドラマとしては……
 今回は上記のような問題提起で、関係者の事情を描いたため、視聴者が(少なくとも私は)右京の動きに振り回され、置いてけぼりにされてしまった。
 これが、亀山なら右京に疑問点を尋ねるし、尊なら自分なりの解釈を挟むが、今回の相棒は「助手」なので、したり顔でついていくだけだったり、助手なので右京の考えをくみ取り、質問を引き継いだり行動したりするので、ストーリーの進行はスムーズで(脚本家も話を進行させやすい)、更に視聴者は追いつけなくなる。

 享のしたり顔や関係者を糾弾したりするのは、虎の威を借る狐の感があり、良い感じがしない。相棒の先輩のふたりに言わせれば「10年早い」であろう。
 今回、偶然に食中毒の被害者に遭遇し病院に付き添った享だが、必要以上にその被害者親子に関与しすぎたように思う。確かに、そのおかげで、食中毒の原因がドレッシングであることに行きつくのだが、もっと軽症の患者から聴取し分析すれば、その過程に到着できるはずだ。
 まして、患者が1人死亡したと報じられ、病院に急行し、違う被害者と知り「よかった」と呟くのはどうかと思う。呟いたことも酷いが、捜査を放り投げて病院に行くのも感心できない。


☆ちょっと疑問のミヤ食品加工と食品卸商社・丸徳フーズの関係
 丸徳フーズがミヤ食品加工をアプリティーボに紹介してはいるが、ミヤへの発注元というわけではなく、実際は丸徳がミヤに食材を販売しており、丸徳フーズとミヤ食品加工の関係は、ミヤがお客の立場である。
 この複雑な関係が、余計に話が分かりにくくなっている。おそらく、丸徳がミヤに食材を卸していなければ、ミヤが「生食用ホタテ」を使わず「加熱用ホタテ」を使用していることに気づけないからであろう。

☆捜査一課コンビ(ちょっと寂しい呼称だ)の存在価値
 伊丹を静める役目の三浦さんが退職してしまい、伊丹が暴走気味。
 暴走するのは構わないが、相棒が独自のアプローチで真相に迫るのに対し、被害者の足取りや対人関係を調べるなど捜査をして欲しかった。

【その他、気になること】
・食中毒の被害者たちが急激に過激に倒れすぎる。特に享が関わった女性は演技が上手すぎるのか、即効性のウィルスにでも犯されたかのよう。冒頭、、意味なくヘリは飛んでいるし、ビル街の映し方も俯角、仰角などやや不穏な感じ(テロを匂わせる)。
・「あのぅ、忙しいんです。帰ってもらっていいですか?」(保健所所員)
文法というか、使用法が変。とにかく、失礼な言い回しだ。
・被害者・岡谷望の死亡時、むちゃくちゃ痛そう…

【ストーリー】番組サイトより
 「アプリティーボ」というレストランチェーンで食事をした人が、次々と倒れるという事件が発生した。どうやら食中毒の可能性が高いが、そんな騒動の最中、食品卸売商社社員・岡谷望(澤山薫)の他殺体が発見される。

 偶然、食中毒の被害者を助けた享(成宮寛貴)は原因菌の捜査に動き始めるが、右京(水谷豊)は殺人事件の捜査へ。鑑識の米沢(六角精児)によると、望の遺体の首には特徴的な傷があるという。致命傷ではないようだが、何によってついた傷なのか。

 食中毒の原因菌の捜査をする「アプリティーボ」へやってきた享は、そこで何かを探す右京とばったり遭遇する。やはり食中毒事件と殺人事件は関係があるのだろうか? 合流した二人は、「アプリティーボ」が調理済みの食品のみを使っていることを知ると、その加工会社「ミヤ食品加工」へと向かう。

 「ミヤ食品加工」の社長・円(赤塚真人)によると、「アプリティーボ」の料理に使う材料は望の会社から仕入れており、営業の担当は望だった。事件当夜、望が会社に来ることはなかったという円だが、右京はそこでスープやソースを作る「スープトップ」という機械に興味を示すのだが…。

 ほぼ同時に起こった食中毒事件と殺人事件は関連があるのだろうか? 被害者についていた謎の傷跡と料理の味のわずかな変化から浮かび上がってきた二つの事件の犯人とは?

ゲスト:赤塚真人、朝倉伸二、於保佐代子、吉永秀平

脚本:櫻井武晴
監督:和泉聖治
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『安堂ロイド』 ~今さらですが、第1話です~

2013-10-28 21:10:20 | ドラマ・映画
ようやく、第1話を観ました。
SFは好きなので、楽しめるドラマだと思う。が、好きなだけに、気になるところも多かった。

気になった点 
・興味深いストーリーだが、これで10話?続けるのは辛いかも。
・アンドロイド同士の格闘は興味がないので、観るのもこれが10話続くのは……
・沫嶋黎士と安堂麻陽のカップルは魅力的で、もっと見たい気がする
・沫島が謎の敵と戦うのをもっと見たかった(天才が、いかに未来の敵と戦うのかを観たい)
・「未来を変えてはいけない」というのに、沫島を殺害するのに、旅客機を墜落させるのはおかしい(死者大多数で、未来が変わる危険性大。沫島が飛行機事故の運命にあったわけではない)
・アンドロイドが銃を使うのは変
・敵のアンドロイドの女優が不適格(100年後のアンドロイドの造形に見えない)
・ドラえもんか?(引き出しから登場)
・謎の少女のキャラはかなり不快
・修理ロボ・サプリも微妙(不快)。滑舌が悪いので状況説明が分かりにくい
・「使い捨て」と言ってた割りには、修復するんだ
・アンドロイドでも「俺」なんだ
・ネット将棋対局の画面で、持ち駒表示がないのは変
・対局の局面がいい加減
・「コンピュータが過去のデータを超える創造力のある手を指さない」というのは誤認識
・将棋盤の上に物を置くな!テーブル代わりにして食事をするな!

 上でも書いたが、もう少し沫島の頭脳と未来のアンドロイドや謎の組織との戦いが見たかった。それに、「死んでいない。殺されたんだ」に深い意味があるのだろうか。さらに、沫島が麻陽に告げた「僕と君は殺される。君の命は、僕が殺されても絶対に護る。100年先もずっと、ずっと護るから」の真意は……沫島が何か対抗策(装置)を残してあるのだろうか?沫島自身がタイムトラベルができ、空港で殺される前に、未来であれこれ活動するのだろうか?
 今のところ、無機質な「安堂ロイド?」だが、人間性(感情)を持ち、麻陽と心を通わせるのが王道だが、はたして……
 あと、『南極大陸』のように、キムタクを格好良く描くのが最優先にならなければいいと思う。
(『PRICELESS〜あるわけねぇだろ、んなもん!〜』は面白かったと思う)

【ストーリー】番組サイトより
東京帝國大学次元物理学部の教授で宇宙理論学の教鞭をとる沫嶋黎士(木村拓哉)は、髪はボサボサであまり外見にこだわらず、人と接することが苦手。学生たちの間では“いちいち残念”と言われているが、学者としてはその世界で広く認められる頭脳を持つ天才でワームホール理論の最先端の研究者だ。

そんな黎士はある日、自身の導き出した理論から自分自身が100%の確率で数時間後に殺され、更にその数十時間後には自分の婚約者で大手IT会社に勤める安堂麻陽(柴咲コウ)も殺されると悟る。

「僕と君は殺される。君の命は、僕が殺されても絶対に護る。100年先もずっと、ずっと護るから」

黎士の告げた言葉を最初は冗談かと思う麻陽。だがその後、黎士が姿を消してしまったと連絡を受け、その行方を心配する。

そんな矢先、黎士が成田空港から国際線に搭乗していることが判明するのだが、なんとその飛行機が爆発事故で墜落したとのニュースが入り、麻陽は黎士の死に愕然となる。

受け入れ難い黎士の死に憔悴する麻陽だったが彼女にも暗殺者の魔の手が襲い掛かる。そんな麻陽の目の前になんと黎士と容姿がそっくりな謎の男・ロイド(木村拓哉/二役)が突然現れる—。ロイドは麻陽の命をあらゆる危険から護るようクライアントから依頼されていると告げるが…。
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『八重の桜』 第43話 「鹿鳴館の華」

2013-10-27 21:51:30 | ドラマ・映画
「吉本新喜劇」か?~八重と巌の腕相撲~

「おふたりとも、これは捨松さんの縁談ではねえのですか?
理屈ばっかりで埒が明かねえなし……
……腕相撲で決着をつけんべ!」


 山川浩と大山巌が、捨松の縁談を巡って、政治の見識の理屈から、会津と薩摩の感情論となり、八重が仲裁かと思いきや、理屈でも感情でもなく、なんと腕力で決着を付けようという八重。
 吉本新喜劇なら、一斉にコケルところだ。
「そんな…力ずくはいけません」
と襄が諌める(突っ込む)が、無視して捨松に
「どうですか?捨松さん」
「はい、どうぞ」
新喜劇なら、重ねてコケルところだ。

「おなご相手に、腕相撲なんて出来もぅか」
と、勝負を避けようとしたが
「また私に負けるのが怖えのですか?部下に命令してばっかりで体がなまってんのでは?」
と挑発。
「八重さん…」
揉め事の張本人(浩)が止めに入るのも、新喜劇パターン。
「兄上!この勝負、薩摩の陸軍中将が立場の弱い会津ものの家に嫁取りに来っとは、まさに、女相手に腕相撲を取るようなもの。今度こそ会津は負らんねえ。八重さんに託しましょう」
 黙して状況を冷静に見守っていた東大教授のインテリ・健次郎までもが、八重に同調。(いや、きっと、冷静な計算のもとの言葉であろう)

レフェリーを任されたジョー樋口(襄)の
「大山さん、後悔するかもしれませんよ………レディ、郷ゥ!」
の合図で激闘が始まった。

 八重が押し気味に進めるが、大山も踏ん張る。
「押せ、押せぇ」(浩)
「行け、行けぇ!」(健次郎)
「押し返せぇ」(浩)
「会津は負けねえ」(八重)
「行け、行け行け行けぇ!」(浩、健次郎)
「撃てぇ!」(浩)
「行けぇ!」(健次郎)
「薩長を、倒せぇ!」(浩)
「行け、行け行けぇ!」(健次郎)
「撃てぇぇ!」(浩)
「行け、行け行けぇ!」(健次郎)
「撃てぇぇ!」(浩)
「負けるな!」(健次郎)
「撃てぇぇ!」(浩)
「行け行けぇ!撃てぇぇぇ!」(浩、健次郎)

策略どころか、見識も、そして、もはや縁談も、捨松の事も忘れ去り、薩摩憎しの感情だけ。
「大山様っ!」
捨松の一言で、停止……
勝負再開後、八重は力が入らず、大山の勝利。

 捨松の本心を知り、
浩も大山も顔を見合わせ笑い合う。
「戦は……終わったのぉ、山川」
「この屋根の下では、“兄上”と呼んでもらおうか」

          ………………大団円。
 『山川』と呼びかけるのは不自然だが、うまくまとめた(見え見えの展開ではあったが)。
 山川家と大山巌の「会津⇔薩摩」の敵対心は昇華できたが、今後、「妹を犠牲に出世した山川浩」という会津人の罵倒を浴びるだろうなあ。

 八重と大山、会津城籠城戦で大岩の足を撃った八重。因縁のふたり。
 襄と出会い、キリスト教を信心した八重なので、戦当時や直後の≪薩摩憎し≫の激しい憎悪は消えているのは当然だが、捨松の縁談、大山に対面して、≪薩摩には負けねえ≫という思いが強くなり腕相撲となった点は、脚本家の都合を感じた。


【ストーリー】番組サイトより
 襄(オダギリジョー) は八重(綾瀬はるか)と共に、同志社大学の設立を陳情するため東京の勝海舟(生瀬勝久)のもとを訪ねた。
 そして、2人はその帰りに山川家に立ち寄る。山川家には、旧薩摩藩士の陸軍中将・大山巌(反町隆史)が、長期留学から帰国したばかりの山川家の末娘・捨松(水原希子)を嫁にほしいと日参していた。旧薩摩藩士との結婚に怒りを抑えきれない長兄の浩(玉山鉄二)と、迷いを捨てきれない妹の捨松。その様子を見かねた八重は一計を案じるが…。
コメント (3)
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竜王戦第1局を観て

2013-10-26 22:45:22 | 将棋
ssayさん記事にコメントしようと思ったのですが、長くなりそうなので記事にします)
 竜王戦第1局は森内名人が先勝、10期ぶりの返り咲きと2大タイトル制覇に向けて好発進した。
 が、渡辺竜王も後手番を落としただけなので、先手後手で1セットと考えれば想定内の敗戦で、勝負は第2局以降と考えられる。

 第1局は2日目午前中、森内名人が先手番ながら≪千日手も仕方なし≫の自重手順を選択した。その数手前の▲3八飛は△2六銀(封じ手・第2図)を誘い、

▲7五銀△7四歩の時に▲4六角を可能にしている。▲4六角がないと▲7五銀△7四歩に▲同銀と取れない(△7三歩で銀が死ぬ)。
 封じ手の△2六銀は有力手だったので、森内名人も前夜、充分対策を練ったはずだが、誤算があったのだろうか?
 後手番の渡辺竜王は残り時間も多く、指し直し局は先手番になるので千日手歓迎かと思えた。
 この辺りの思惑は、『渡辺明ブログ』によると「2日目は朝から千日手の権利が生じました。歩得なので行けるような気がしましたが、千日手を打開するほどの手順ではありませんでした。以降は苦しくしてしまい、チャンスがほとんどない将棋でした」とある。
 また、中継の解説では「渡辺は封じ手の場面でも△5三金を考えていたそうで、ここで金を上がれて(第3図)得したと感じたという」とあり、自信の打開だったようだ。

 この金は4四、4五と進出した。渡辺竜王は「玉の堅さ優先」というイメージが強いが、玉頭の厚みも割と好きなように思われる。そして、このような金の中段への進出も好きなように感じる。
 その後、渡辺竜王らしくない(弱気な?)金引き(第4図)で、森内名人ペースとなった。


 森内名人の強気の受け、その鋼鉄の城門をこじ開けようとする竜王執拗な攻めの攻防が続き、名人に小ミスがあり、一瞬あわやという局面まで迫ったがそこで竜王も誤り、森内名人が押し切った。


 一局を通して見ると、お互いの特長が出た将棋で、調子はまずまずのように思われる。ただ、若干のミスが出ているので絶好調とは言えない。特に、森内名人は名人戦で「勝つ気がしない」と羽生ファンを意気消沈させた時ほどの強さは感じられない。
 王座戦では苦戦したが、その他の棋戦では圧倒的な強さを示している羽生三冠がああまで叩きのめされたのは今でも信じられない。悪夢である。(対森内、対中村戦を除くと20勝4敗 .833)

 ここで注目したいのは、

後手番の渡辺竜王が取った矢倉△5三銀右急戦は、あの3連敗4連勝の竜王戦大逆転の原動力となった戦法で、その竜王戦を含めて7勝2敗という好成績。後手番であることを考慮すると、渡辺竜王の後手番での「切り札」と言えよう。
 その切り札を第1局から切った。これは何を意味するのだろうか?
 ひとつの解釈として、「調子がイマイチなので、後手番の第1局を是が非でも勝って優位にシリーズを戦いたい」という思惑。
 もう一つは、「矢倉△5三銀右急戦は森内名人に対策を練られていると考えられるので、もはや切り札とは言えない。ここは、まず、矢倉△5三銀右急戦で森内名人の対策や強さの感触を確かめよう」
 竜王戦7番勝負開幕前の竜王の負けの多さは、「手の内を隠す」とまでは言えないが、竜王位防衛を第一と考えた影響なのではないだろうか。となると、竜王は「新切り札」を複数用意しているとも考えられる。

 王座防衛も果たし三冠を堅持、順位戦も快調、冬のタイトル挑戦も視野に入ってきた。竜王戦に出ないのは寂しく悔しいが、気楽に観戦でき、高みの見物。好勝負が期待され、楽しみな将棋の秋である。
コメント (8)
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『ダンダリン 労働基準監督官』 第4話

2013-10-25 17:25:15 | ドラマ・映画
今回は「内定取り消し(内定者切り)」に関する話
 内定者は、内定通知をした時点で社員と見なされ、「内定取り消し」=「解雇」と認識されるので、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当として是認される」必要があり、容易に取り消しができない。違法行為、書類の虚偽事項、留年、健康状態悪化などが判明したなどが具体的な理由となる。
 企業側の事由として、採用者の見込み違いによる定員超過、経営状態の悪化などが挙げられる。今回の場合、ベトナム工場が洪水被害に遭い、3億超の損害が出たので、「経営状態の悪化」に該当するが、人員削減は社員全体で行わなければならず、内定者のみに行うのは違法であるらしい。
 大鷹スポーツは優秀な社員を失わず、法に触れずに内定者を切る方法を、社会労務士の胡桃沢(風間俊介)からアドバイスを受ける。
 企業から解雇(内定取り消し)をするのは違法だが、内定者から自発的に内定を辞退させればよい。そのために、過酷な内定者研修を行い入社を断念させようとした。→ダンダリン、怒る!

 胡桃沢の用意周到な会社内の打ち合わせや、「より優秀な人材を見極めるための、厳しい社員研修である」という理屈に、凛たちは苦戦する。
 そこで、過去の内定者研修と比べて極端な差があれば不法行為と認定できるとして、退職者に聞き取り調査を行った(社員は口を開かないだろう)。
 大変な手間だが、凛は「良い戦術がある」と。南三条は凛の考えを察知した……でも、「人海戦術」って、いつもと一緒じゃん。絶対、通常業務に支障が出そう。まあ、ドラマだから…。

 企業と社労士の壁を、凛たちが突き破り、結局、人事部長がひとりで責任を負うこととなった。
 「人事部長も労働者、彼を守ることができなかった」と涙を流す凛。辛い過去(……おそらく、凛が正義を貫いた結果、誰かが命を絶った)があるせいだろうが、この凛の姿勢に心を打たれた。(若い学生の夢を犠牲にしてはいけないという気持ちにも共感した)

 もう一つのテーマとなったのが
「労働基準法104条2項違反の疑いがあります。自主的に内定辞退するよう、入社後の配属について真田さんの夢を壊すような発言を人事部長がしています」
「監督官に申告した労働者を不利益に取り扱うことを禁止した104条2項違反は絶対に許せません。
 これを黙認していると、労働者は監督官に助けを求めることができなくなります

 うん、これは譲ってはいけない。

今回は脇役二人も活躍。
「夢は捨てたくないです」
縁談を進める署長に瑠璃子をあきらめるよう諭された田中が、内定者の佑美の「夢」という言葉に反応して、会議で号泣。
 田中号泣の真相を知る署長が切れてGOサイン(ボランティアでやれ)。他の監督官もわけが分からず流れに乗ってしまう。
 個人的には、田中には泣かないで署長を押し切ってほしかった。

「全く酔えません」
 酔っ払って暴走する土手山に同調する恩田だが、実に見事な酔っ払いの振り。徹底した上役のゴマすりは見上げたものだ。
 南三条の浴室への二人の突撃は笑えた。翌日の南三条の不機嫌ぶりも面白かった。


署長を始め、評価の高い瑠璃子だが
 過去にセクハラを受けたことは気の毒だと思うが、自分を可愛いと思っているせいか(不確実だが)、前回で南三条を強引に食事に誘う(もともとは胡桃沢と瑠璃子の会食だった)など、恋愛に関しては強気。単に、積極的でオープンなだけかもしれないが。

そして、今回、全くいいところがなかったのが土手山
 離婚した妻や息子とうまくいかないから、それを部下に八つ当たり、また、気分によって付加への対応、仕事ぶりも変化するのは、上司として人間として大いに問題あり。


 今回は土手山が残念だったが、「内定者切り」というテーマを上手く展開させ、労働者を守ろうという凛の意志がストレートに感じられ、非常に面白かった。(第2話、第3話も良かった)

【ストーリー】
スポーツ用品メーカーの「大鷹スポーツ」は、業績不振のために「内定切り」が避けられないほどに追い込まれていた。人事部がやむにやまれず数名の学生に内定取り消しを通知したと知った社会労務士の胡桃沢(風間俊介)は、このままでは法律違反になってしまうと指摘。学生たちに理不尽な内定者研修を課して、自主的な内定辞退を促すという手段に出ることに。

数日後、凛(竹内結子)と南三条(松坂桃李)は、内定者研修中の佑美(志田未来)たちを偶然目撃。彼女たちが重いノルマを課せられ、研修の内容について会社に抗議した途端、内定を取り消されている学生がいると知り、凛は「内定切り」の疑いがあると課長の土手山(北村一輝)に報告する。息子の運動会の日程を元妻のみどり(西田尚美)が教えてくれないことにイライラし通しの土手山は、当然のように凛の報告をなかったものにするが、「ブラック企業を摘発すればスッキリする」という瑠璃子(トリンドル玲奈)のひと言で、気持ちが一転。自ら、「大鷹スポーツ」に乗り込むことになった。

しかし、胡桃沢から事前に指導を受けていた「大鷹スポーツ」での調査は空振り、法違反は見当たらない。一方、佑美から詳しい話を聞いた凛は違法な「内定切り」を確信するが、情報漏えいを疑われた佑美は人事部から希望の部署に配属できないと圧力をかけられてしまった。

確かに会社が潰れては元も子もないが、このままでは企業のために1人の学生の夢が犠牲になってしまう。思い悩む凛だったが、内定者も労働者、労働者を守るためさらなる調査を土手山と真鍋(佐野史郎)に申し入れることに。
コメント (4)
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『相棒season12』 第2話「殺人の定理」

2013-10-24 21:40:18 | ドラマ・映画
ダイイング・メッセージ、紙1枚で月に行く方法(紙を42回折る)、4桁の数字の意味(株式のコード番号)、謎の女性の正体(東国の大使館員)、誰がファーガスの定理を証明したのか、肥後教授が休職していた空白の3年間など、通常の「誰が犯人でどうやって犯行を実行したのか?」とは別の謎が提示されるという私の好きなパターンだった。

ダイイング・メッセージ
 ダイイング・メッセージは実際は成立が微妙な事象である。
★死に際に犯人がいる場合
 犯人にメッセージに気づかれてはならない。気づかれないように残すのは難しい。
 ただ、メッセージに気づかれてもダイイング・メッセージと悟られなければよい、または、気づかれても消すことはできない、無理に消すと不自然になるという抜け道がある。
 犯人にもダイイング・メッセージを改ざんするという手段もある。
★犯人が去った後にメッセージを残す場合
 これは直接犯人の名を書けばよい。となると、推理ドラマとしては推理するまでもなく犯人が分かってしまうことになる。
 ただ、作者がこれを逆手に取り、被害者が途中で力尽き、それによりミスリードが成される。
 今回の場合、被害者は直接犯人を書けばよかったと思うが、それだと『相棒』が成り立たなくなってしまう。数学に人生を捧げた者のプライドが暗号で残させたと考える。
 それにしても、今回に限らずダイイング・メッセージ(暗号)を死に際に残すって凄いなあ。

 本人がメッセージを残すのではなく、犯人が捜査をかく乱する為や、犯行の目的の示唆が目的と言う場合もある。

「a drink」の文字を丸で囲ったメッセージ
 囲った丸→円周率→円周率を覚えるための語呂合わせ→英語の覚え方の「a drink」に対応する日本の覚え方の語句は?→肥後
 さすが数学者と言うべきか?あるいは、日頃からよほど肥後を意識していたのだろう。
 今回はこれを右京が解いたのではなく、肥後自身に解かせたという点が面白かった。

背理法……ハイリ、ハイリフレ、ハイリホ~♪、はりはりふれっほっほ~♪
 肥後が自分を犯人だと仮定して、矛盾を導き出して、仮定が間違い、即ち、「自分が犯人ではない」ことを証明したが、ちょっと説得力に弱い証明だった。
 あっ、「背理法が証明として弱い」という意味ではない。私自身、この背理法を数学で知った時、「なんて愉快な証明方法なんだ」と感心したことを鮮烈に覚えている。
 しかし、今回の証明は、『「どちらが証明を果たしたか」、または、「どちらが先に証明したか」の証拠がなく、世間的に自分の方が大倉より信用があるので、リスクの大きい殺人を犯す理由がない』というものだったが、自分が証明を完成させたという決定的な証拠を大倉が持っていて、それを奪うために大倉を殺害したという可能性だってある。
 それに、わざわざ背理法を用いなくても済むような肥後の言い分だった。背理法を使うのなら、「肥後は数学が苦手である」ぐらいの矛盾点を導き出してほしかった。

数学者の性(さが)を考えると納得できない
 天才と準天才のキャラ設定が中途半端。
準天才・大倉いい人なのか狂人(数学者)なのか小悪党なのか、はっきりしない
 会社の上司は「まじめで人と諍いは起こさない」、恩師の評価も高く肥後に匹敵する才能、数学専門誌の評価も高い。
 肥後を心配するなど良き友人・ライバルであったらしいが、ハッキング(暗号解読)で悪銭を手にしていた。肥後に劣らない才能なら、数学の道を究めればいいのに。
 で、肥後の研究を盗んだが、その偉業を純粋に喜び公表しようとした……キャラが安定していないよね

天才・肥後…数学者らしくない
 『リーマン予想』どころか『素数の解明』を果たしてしまった大天才。
 そもそも天才は≪世間の事なんか知ったことじゃない≫という人種、あるいは、天才になるのは≪世俗を捨てなければならない≫というイメージがある。(ノーベル賞の山中教授は人格者だと思います)
 今回の偉業も「発表せずにはいられない」というのが数学者の性(さが)であろう。肥後は世の中の為に、偉業を抹消するために殺人まで犯したが、偉業を達成する(数学の真理を求める)のに殺人をも厭わないという方が天才数学者っぽいのである。


【その他の感想】
・やっぱり、三浦さんがいないんだなあ…
・教授の助手の女性の話し方が気になる。

【ストーリー】番組サイトより
 会社員・大倉(山本剛史)の遺体が自宅アパートで発見された。遺体のそばの壁には、血で「a drink」の文字を丸で囲うメッセージのようなものが。被害者が遺したダイイング・メッセージなのか? 右京(水谷豊)は、さっそく享(成宮寛貴)と捜査を開始。

 現場の大倉の部屋へ来てみると、数学関係の本がズラリ。どうやら大倉は数学を趣味にしていたようだ。だととすると、ダイイング・メッセージも数学に関係したものなのだろうか?
 また大倉は数学の7つの未解決問題の一つで100年間も解けなかったファーガスの定理を研究していたことがわかった。しかし、そのファーガスの定理は、最近になって数学者の肥後教授(岡田義徳)が証明に成功したと話題になったばかり。右京と享はさっそく肥後教授のもとへと向かう。
 ダイイング・メッセージは何を意味するのか?右京と享は事件の難問を解くことができるのか?!

ゲスト:岡田義徳、山本剛史
脚本:金井寛
監督:和泉聖治
コメント (7)
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『八重の桜』 第42話 「襄と行く会津」

2013-10-23 12:50:45 | ドラマ・映画
43話の記事を書いていて、42話に上書きしてアップしてしまい消えてしまいました。
さすがに、もう一度書く気力も時間もないので、おぼろげな記憶から、どういうことを書いたのかだけ書きます。


・回想シーンは懐かしかったが、ここに時間を割かずに他の出来事を丁寧に描いてほしい。
・お吉と徳造と再会し、二人が結婚したことを喜ぶ八重だが、登場時から夫婦だったと思っていたので驚いた
・うらと再会。うらは心から、みねが結婚したことを喜ぶ。前話でみねと覚馬のわだかまりが解消したあと、今回の再会の方が話は進めやすいが、娘としては母親に婚礼に来てほしい、せめて婚約を告げてから結婚したいと思うのが筋だ
・捨松登場(再登場)!久しぶりの故郷、家族との再会に、土足で上がり、ハグするアメリカ人振り。英語で話すが、本人は日本語(会津ことば)を話しているつもりという天然?

【ストーリー】番組サイトより
襄(オダギリジョー)と八重(綾瀬はるか)は、新婚のみね(三根梓)と伊勢(黄川田将也)を連れ立って、会津への伝道旅行に出かけることにした。みねを連れて行くことにしたのは、生き別れたみねの母・うら(長谷川京子)に再会できるかもしれないという淡い期待があったからだ。
 そして、八重たちはついに懐かしい故郷の土を踏みしめる。山本家が建っていた場所は長屋に変わっていたが、かすかに角場の遺構を見つけて思い出に浸る八重とみね。すると、そこへ山本家の下女だったお吉(山野海)が現れ、うらの消息について重い口を開く。八重とみねはその情報を頼りに、うらのもとを訪れ、再会を果たす。うらは立派に育った娘の姿に涙するのだった。
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手強い相手だった

2013-10-21 21:55:05 | 将棋
 ふぅ~…手強い相手だった。
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『ダンダリン 労働基準監督官』 第3話

2013-10-20 12:14:35 | ドラマ・映画
 初回よりは前回、前回よりは今回と、面白くなってきたと思う。凛のキャラに慣れてきたということもあるかもしれないが、凛の言動が初回ほど極端でなくなってきたように思う。
 今回は、工務店の不正行為が転落事故によって明るみになろうとした。この時、署員が監督官としてどう対処するか議論した。それぞれの主張に一理あり、考えさせられた。

小宮
「事故が起きたことだけで、相島工務店は大きなダメージを受けている。その上、違反で書類送検となると倒産の可能性が強い。
 自分たちの仕事は、労働者を守ること。悪意のある違反なら摘発するべきだが、今回のケースでは、その労働者の職場を奪ってしまう所までは踏み込まなくてよい」



「今回の違反を見逃せば、また事故が起きる。もっと大きな事故が起こる可能性もある」

南三条
「潰れる会社は潰れればよい。会社をつぶさないために頑張るということが、そんなに価値があることなのか?
 会社を守ることが第一になると、人の本分を失うことになる。嘘や人を騙すようになり、暴力さえふるうケースさえある。
 そこまでして、会社を守る必要はない。自分たちはきちんとルールに沿って仕事をすればよい。それで会社が潰れる会社は、所詮そこまでの会社だったということだ」


 それぞれの意見に頷きたくなるところがある。
 ただ、自分が当事者となった場合、監督官によって処分(対処)が大きく異なるのは、不公平と感じる。
 なので、ルールに則るのが原則(機械的に対処する)であるべきだと思う。ただ、ケースバイケースで事情を考慮した逸脱しない程度の幅を以って判断して欲しい。

結局、再調査を行うことになった。

 現場の者の証言は、相島社長が事故発生時に現場にいたと一致し、その時間、銀行などにいた事実も出てこなかった。
 「不正はなかった」と土手山が結論を出しかけた時、ヤミ金業者が取り立て手に来て、事故発生時にヤミ金融にいたことが判明。

土手山
「俺たちは、そこまでしなければいけないか?(ルールに則らなければならないのか?)」

「私たちは監督官なんです。私たちは法律であり、ルールです」
 そこまで言い切られるのも、何だかなあ~…

 相島がすべてを告白し、あの時現場にいたら、工員の体調が悪いことに気づき、事故は防げたかもしれないと悔いる。


「相島さんは愛されている社長さんです。社員の皆さんは、一致団結してあなたの会社を守るために努力しました。誰一人、あなたを裏切りませんでした」
 社員は社長を守るためではなく、自分の職場を確保したかっただけかもしれない。凜も、そう思ったのかもしれないが、敢えて、相島をフォローしたのかもしれない。

【その他のツッコミなど】
・やはり、トリンドル玲奈は小宮のキャラとは合っていない
・署員の太田と温田はもっとしっかりして欲しい
・署長の「“や”から始まる三文字の人」の言い回しは、笑えた
・息子へのプレゼントのグローブを送り返され、そんなものより「養育費をもっとよこせ」と言われたのは悲し過ぎる

【ストーリー】
 工務店の作業現場で作業員の墜落事故が発生したと、消防署から西東京労働基準監督署に連絡が入る。電話を受けた段田凛(竹内結子)は、土手山と共に現場に向かうことに。事故のあったのは、課長・土手山(北村一輝)の大学時代からの親友・相島(マギー)が経営する工務店で、落下した作業員は貧血でバランスを崩したらしいという報告。単なる事故で片付けようとするが、凛は墜落から119番通報までの空白の20分間を疑問視、「法律違反」をかぎつける。
 そんな中、凛と残業をしていた帰りに南三条(松坂桃李)が暴力事件を起こしていたことが発覚。南三条は署長の真鍋(佐野史郎)から厳重注意を受けるが、どうやら何か言い分があるらしい。
 一方、凛が、相島の現場で不正がある可能性を指摘し、プライベートでは息子への誕生日プレゼントを元妻のみどり(西田尚美)から突き返されたことで、土手山は不機嫌極まりない。職場はピリピリムードに。
 そんな中、成り行きで胡桃沢(風間俊介)も一緒に凛の歓迎会を兼ねた食事をすることになるのだが、その店に胡桃沢の上司・相葉(賀来千香子)が現れ、相葉から初対面ではないと言われ、戸惑う凛。
 一方、一人で冷静になった土手山は、真相を確かめるために相島のもとへ向かうことに…。
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異空間の将棋 ~ずれる感覚~ (王座戦第1局 その2)

2013-10-19 20:43:31 | 将棋
 竜王戦が始まりました。
 模様の張り合いから、斬り合いになるかと思われたが、渡辺竜王に誤算があったのか、一旦振り上げた刀を下ろさざるを得なくなり、その一拍の遅れが、森内名人から圧力を掛けられ、急かされるように攻めかかったが、切っ先をすべて受けられてしまった。森内名人が先手番をキープ。
 森内名人が強さを発揮したが、竜王が不調なのかも仕入れない。

 昨年度後期に勝ちまくり、羽生三冠を抜きさって将棋大賞を受賞した渡辺竜王・棋王・王将、最強挑戦者・羽生王位・王座・棋聖(最強は渡辺竜王という説も否定できないが、A級順位戦の実績…ここ2年で17勝1敗…を重視)を圧倒した森内名人。
 この両者の戦いを、高みの見物するつもりであったが、王座戦で大苦戦、高みの見物どころではなくなってしまった。
 追い込まれた精神状態を整理する為、完敗と評されたことに納得がいっていない王座戦第3局を取り上げようと思いましたが、やはり納得のいかない第1局にも思考が向いてしまいました。
 書きたい記事がいっぱいあるのに、自ら首を絞めているなあ。それに、「勝局より敗局」、「ドラマを褒めるより、いちゃもんを付けたい」と、つくづくマイナス思考(ひねくれている)なあと、再認識。

 第1局を再考しようと思ったのは、『将棋世界』11月号の第1局観戦記「刻みつけた成長の証」(記・大川慎太郎氏)を読んだから。将棋の造りや指し手の解説、対局者の考えが丁寧に書かれていて分かりやすく、面白かった。
 まず、序盤の駆け引き。

 観戦記の受け売りだが、6手目(図の1手前)の△9四歩は、先手が▲9六歩と受ければ、△3四歩から一手損角換わりにすれば、9筋の歩の突き合いがない場合に比べて早繰り銀で8六で銀交換をした場合、▲9五角の王手飛車がない分だけ得しているという狙いだ。
 実戦も羽生三冠は一手損角換わりを採用し、△9四歩の意を継ぐかと思われたが、腰掛け銀に。しかし、腰掛け銀は先手棒銀への有力な対策がないというのが現在の定説。けれども、中村六段も棒銀にせず、▲3七桂と跳ねて腰掛け銀を目指した。
 深読みすれば、6手目△9四歩の一手損角換わり・早繰り銀対する対策を中村六段が見せてくれると期待した(羽生三冠はそれに対する対策も用意していた)、さらに「後手の一手損角換わり・腰掛け銀」対「先手の棒銀」の対策も用意していたのではないだろうか。
 それを外され、がっかりした。はぐらかされて、将棋感覚のずれを感じ、読みが合わないという印象を持ったのではないだろうか。


 第1図は、羽生三冠の△3一玉に▲3五歩と仕掛けたところ。中継サイトではこの2手前の局面(後手玉が4二にいて、先手の左銀が8八にいる状態)で、▲3五歩△同歩▲4五桂△2二銀の順を検討していた。「さすがに無理っぽいがあるかもしれない」という感触であったが、第1図は先手の壁銀が解消され、後手玉が3一に引いたため、5三の地点が薄くなり、先手の▲4五桂~▲7一角の仕掛けがより効果的になっている。
 なので、仕掛けられて≪大丈夫なのか?≫という控室。
 羽生三冠の局後の感想は「(△3一玉は)軽率だった」とある。△3一玉に2分の考慮、その前の△4二玉にも1分未満の考慮なので、この仕掛けはノーマークだったのだろう。
 中村六段にしてみれば、羽生三冠の指し手のペースを考えると、≪誘いのスキ?≫と疑心暗鬼になってしまう。61分の考慮で▲3五歩。
 羽生三冠もこの考慮中に仕掛けを察知したのだろう。▲3五歩に3分で△同歩。面白いのは、控室では「△3五同歩とせず、△4四歩▲3四歩△同銀▲2四歩△同歩▲同飛△4三金右で、先手攻めあぐねている」というのが控室の検討で、羽生三冠の△3五同歩を見て、「あれ、取りました。我々は何を検討していたんだ」(佐藤九段)と。
 羽生三冠は「へー、△4四歩。そういう手がありましたか」と。この辺り、広く手の可能性を考える羽生三冠にしては、珍しい局面の捉え方だ。
 第1図の▲3五歩に△同歩(3分)▲4五桂に銀を逃げては悪いので△4五同銀(1分)と銀桂交換に甘んじ、▲4五同歩△3六歩▲2六飛(16分)△5五角(23分)、第2図へと進む。

 羽生三冠は先手の仕掛けを軽視していたことを悔やんでいたが、中村六段もこの局面を迎えて、「形勢が思わしくないことに気づいた」という。第2図を想定して仕掛けを敢行したが、いざ局面を前にすると有効手がなかったという。(観戦記より) 銀桂交換の駒得と言っても、後手の銀は守備銀ではなく、香も取られ馬も作られる流れは先手にとっては思ったほど面白くないようだ。玉が6八にいるのも不安だ。
 しかし、『羽生三冠も「仕掛けられて面白くない」と悲観的で、仕掛け事態を軽視していたことが精神的に影響していたのではないか』と観戦記で述べられている。私も同感で、中村六段が仕掛けを決行するのに要した61分の間、羽生三冠はずっと≪しまった≫と後悔していて、それがその後にも影響を与えていたように思える。


 先手が▲2四歩と後手陣にアヤをつけたところ。実戦は△4五馬と引き付け、▲2三歩成に△同金と応じたが、馬引きでは△2四同歩と応じる方が良かったらしい。以下▲2三歩が嫌味だが△2三同金と応じれば、先手が歩切れとなるのが大きい。
 しかし、羽生ウオッチャーとしては、△2四同歩とは応じないと予想していた。羽生三冠はこういう玉頭の付き捨てに手抜きすることが多いのだ。本局に関しては、本人も取らなかったことを悔やんでいたが。


 中央で駒の振り変わりの後、後手の飛車を巡る駆け引きがあったが(私にはここら辺りの折衝が良く理解できないが)、先手が▲9八歩と謝るに至った。先手の8三に打った角は8三→6一→8三→7二→8一と動いている。7一に打った銀と合わせて費やした手数などを考えると、桂香を取っても目標だった飛車を世に出すのは割が合わない。
 ≪この将棋はいただき≫と思ったが……


 第5図は4六にいた角が6四に出た手に対して△3七歩と打ったところ。1手と1歩を費やす指し手には抵抗を感じる。ただ、4六に居た角が6四に出たのを呼び戻す形になるので、手数に関しては理に適っているのかもしれない。しかし、▲3七同角△同龍△同銀と金銀の連携を絶って△1九龍と進入したものの、与えた1歩で▲3九歩と龍の利きを遮断されたのが痛かった。
 △3七歩では△5六香▲同銀△同竜▲6八桂△6五竜引▲5三角成△5六歩(参考図1)と指すべきだったとのこと。

 図で▲5八歩なら△5一香が厳しい。
 羽生三冠がこの順を見送ったのは、『8一の馬が利いてくるからで、この日、羽生は第3図での△4五馬もそうだが、彼我の馬の力を過大評価していたように思う』と観戦記の大川氏の記述。
 また、第4図の直後の△1五龍では、
「ここでしたね。△2五竜でした」(羽生)
羽生は▲9一成銀△2九竜▲3九香△3八歩▲4七角でまずいと判断していたが、そこで△1九竜と角の利きを避けておけば後手相当だった。
「こちらが面白い局面があったとすれば、ここでしたね」(羽生)【中継サイトより】

 結局、歩と桂で防波堤を作られ、8一の馬を6三→5三→4二と活用を間に合わされて、勝ち目の薄い将棋になってしまった。

 途中図は、▲4五桂に金を逃げることが出来ず△2二歩と辛抱した局面。先手玉を寄せるには、まだ何手もかかるのに対し、後手玉は風前の灯。
 しかし、ここからがまだまだ大変で、この将棋を観戦した者は≪羽生三冠に勝つのは本当に大変なんだなあ≫と思い知らされることとなった。


 図の1手前の△4四角も勝負手だったが、▲1五金が好手で、さすがに中村六段の勝利が近づいたかと思われた局面。
 ここで△5三角が不思議な手。4四の角は打ったばかりの角。なので、1手で打てる角を2手掛けたことになる。しかも、角は4四にいた方が先手陣にも後手陣にも利いている。ところが、△4四角と打つところで、すぐ△5三角と打つと先手はまだ金を持っている(▲1五金と打っていない)ので、▲3三龍△同歩(桂)▲2三金で詰んでしまう。
 実戦でこんな訳の分からない手順を指されたら、たいていの者は平衡感覚が狂ってしまうのではないだろうか。

 ところで、この△5三角では△9九角成としたいが、▲1六金△同竜▲7七角△同馬▲同桂で「(後手玉は)受かる形ではないです」(羽生三冠)と感想戦で述べている。
 ところが、将棋ソフトのGPS将棋は上記手順の▲7七桂の後、△2三金打(参考図2)を推奨している。

 以下▲2三同歩成△同玉と、金を犠牲に玉の脱出を図る勝負手だ。
 「△2三同玉の後、▲5二龍△3七香成▲5四龍(参考図3)で悪そうです。しかし本譜よりはましかもしれません」というのが羽生三冠の見解。(『将棋世界』観戦記)

 確かに、金1枚献上するのは、後手の攻め駒が増え後手玉が逃げ切るのは難しそう。でも、実戦で見たかった気持ちが大きい。
 本当は△2三金打では△2三香と節約したいが、▲2二銀成△同玉▲3一角△1二玉に△3三龍(参考図4)で必至がかかってしまう。


 以後も難解な局面が続いたが(「その1」参照)、結局、▲2五飛と決め手を放ち、中村六段が初戦を制することとなった。


 この将棋、中村六段の指し手のリズムや感覚が独特で、また、将棋自体も異空間の感覚がずれるような将棋で、羽生三冠の将棋感覚がどこか歯車が狂った感があった。
 難解な将棋に崩れず、勝ちきった中村六段、手強し!の強い印象を与えた一局であった。
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