国際通貨基金(IMF)は、IMF協定第IV条に基づき、毎年加盟国政府と政策協議を行うこととなっています。7月6日から来訪したIMF調査団とカンボジア政府との協議結果について、7月18日にIMFから発表がありました(なお、詳細なレポートは、通常2ヶ月ほどで発表されます)。
IMFは、カンボジアが、高度成長と開放的政策によって、低所得国から低中所得国に格上げされたことを評価しました。2015年については、高成長にも関わらず、物価上昇率も安定していたとしています。2016年~2017年についても、縫製品輸出と建設・不動産の好調により約7%の成長を維持すると見ています。物価上昇率も、2016年末で3.2%程度にとどまると予測しています。対外収支については、順調な縫製品輸出とエネルギー輸入の減少によって、経常収支赤字(対GDP比)が、2015年の10.7%から2016年には9.7%に改善するとしています。この赤字も、海外直接投資と各国からの援助で十分に埋め合わされると見ています。
カンボジア経済にとってのリスクとしては、外的要因として、中国やEUの予想以上の経済スローダウン、ドル高、国内要因として、民間向け、特に不動産向け信用供与の急速拡大を挙げています。IMFからのアドバイスとしては、金融セクターの強靭化が求められています。IMFは、中央銀行(NBC)が最近導入した、バーゼルⅢ規制に沿った流動性カバレッジ率規制の導入、銀行の最低資本金の引上げ等を歓迎するとしています。
今回、IMFが議論した主要課題は、マクロ的金融リスクの封じ込め、財政安定の維持、競争力強化と産業多様化の推進、金融市場開発の促進の4点でした。
今回の結果では、IMFは、カンボジアの高成長と貧困削減実績を高く評価しています。また、現在進みつつあるアセアン地域統合と中国の貿易パターンの変化がカンボジアにとっては大きなチャンスであり、カンボジア政府の政策がこのチャンスをとらえたものであるとしています。この方向で、更に、生産性の向上、競争力強化、成長の果実の国民全体への分配促進に取り組むべきとしています。その中でも優先的に取り組むべき課題として、カンボジア政府の産業開発政策に沿って、電力のコスト削減と信頼性向上、運輸リンクインフラの拡充、教育と職業訓練の改善等を挙げています。
IMFの新聞発表(英文です)
http://www.imf.org/en/News/Articles/2016/07/18/13/34/PR16343-Cambodia-IMF-Staff-Completes-2016-Article-IV-Mission
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