2014年も押し詰まりました。カンボジア総合研究所チーフエコノミスト鈴木博の選ぶ「カンボジア経済2014年10大ニュース」です。
第1位 労働争議が拡大 流血の事態に
2013年12月中旬から始まった野党・救国党のデモは、12月25日ごろから賃上げを求める労組も加わって大規模化、長期化しましたが、1月3日、暴徒化したデモ隊の一部に政府側が発砲して5名の死者と多数の負傷者を出す最悪の惨事にまで至りました。また、1月4日には、民主広場の救国党デモの本拠地も政府側により強制排除されました。プノンペン市は、この日以降のデモを認めないとし、救国党側も混乱を避けるため、この日以降のデモを見送りました。その後は、プノンペン市内は平穏を取り戻しています。
1月10日 「野党のデモ 一段落か」
http://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/e5f4b5049c69360ad19c3a5ab174a8d2
第2位 イオンモールプノンペン 開店
イオンモールプノンペンが6月28日に開店しました。これまでカンボジアにはなかったタイプの最新のモールで、日本を始め各国からの投資による出店も多くなっています。初日から大変な人出で賑わいました。
6月30日 「イオンモールが開店 初日から大人気」
http://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/e8af46de6f815870687cd069d65069ab
第3位 最低賃金 大幅引き上げへ
2013年末には80ドルだった最低賃金は、労働争議の激化を受けて2月1日から100ドルに引き上げられました。更に、11月12日に、カンボジア政府は、2015年1月からの最低賃金を128ドル/月(約14700円/月)とすると決定しました。日本企業の立場から見ますと、大幅な賃金増加と円安ドル高のダブルパンチとなります。周辺国の賃金上昇も著しいため、当面はカンボジアの相対的な優位性は保たれるものと考えられますが、今回のような急激な動きは、海外投資家にとって心配の種となることが懸念されます。
11月17日 「2015年1月からの最低賃金 128ドルへ大幅上昇」
http://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/e0fc04abb80a21c15436daea28a256c0
第4位 証券市場に2社目の上場 出来高・株価は低迷続く
6月16日にカンボジア証券取引所に2社目となる Grand Twins International (Cambodia) Plcが上場を果たしました。更に、プノンペン経済特区社が2015年春に新規株式公開(IPO)を実施する方針です。カンボジア証券市場は、現在のところ2社のみしか上場しておらず、出来高、株価ともに低迷している状況ですが、プノンペン経済特区のような有名な会社が上場することにより、証券市場全体の活性化も期待されます。
6月18日 「証券取引所に2社目が上場 初日は軟調」
http://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/d5415d0f4d61a3d73aaf1b4ad5e2cc7f
12月22日 「プノンペン経済特区社 2015年春にも上場へ」
http://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/1659943e91048454a6475a4c272d2b8a
第5位 与野党合意 国会も正常化
救国党は2013年の選挙で躍進しましたが、選挙に不正があったとして、当選者全員が国会をボイコットしていました。しかし、7月22 日にサム・レンシー党首とフン・セン首相が会談し、選挙管理委員会の改革や国会の各委員長等の要職配分などをめぐり妥協が成立しました。政治の安定は、外国直接投資の誘致にも欠かせない要件であり、カンボジアの経済界は、この国会正常化を歓迎しています。日本政府もカンボジアの選挙改革を支援しています。
8月12日 「野党議員が宣誓就任 カンボジア国会が正常化」
http://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/cb61a95463f832fb13a23abafebf07fb
第6位 カンボジアに初の金メダル
韓国・インチョンで開催されたアジア大会で、カンボジアは大会史上初の金メダルを獲得しました。テコンドー73キロ以下級で、ソーン・セブメイさん(Ms. Sorn Seavmey)(19歳)が見事に優勝し、金メダルを獲得しました。カンボジアがアジア大会で金メダルを獲得するのは初めてのことであり、また、メダルを取ったのも1970年のバンコク大会以来44年ぶりとのことです。韓国の代表的スポーツでもあるテコンドーで金メダルを取ったことは本当に価値あることだと思います。心から祝福したいと思います。
10月5日 「カンボジアに初の金メダル!」
http://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/210ef2681393644ea4ed7ad1f63a2047
第7位 日本企業によるカンボジア企業の株式取得
6月2日、総合商社の丸紅はカンボジアで電力事業に参入すると発表しました。マレーシアのHNG Capital Sdn Bhd傘下で、カンボジア・シアヌークビルに石炭火力発電所(100MW)を保有・運営するCambodian Energy Limitedとコンポンチャム-ノースプノンペン間の送変電設備を保有・運営するCambodian Transmission Limited双方の持株会社の株式20%を取得することで合意し、株式売買契約を締結したとのことです。取得額は40億円程度とみられます。
また、三井住友銀行は、8月18日に、カンボジア最大手の商業銀行であるACLEDA銀行の株式の12.25%を取得すると発表しました。三井住友銀行はACLEDA銀行の既存株主である国際金融公社(IFC)から株式を取得する予定で、既に8月12日にカンボジア中央銀行(NBC)からの認可も取得済としています。取得金額は100億円強と見られます。
6月6日 「丸紅 カンボジアで発電事業に出資」
http://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/183f884479f5a05d8584a8e983cb41d1
8月22日 「三井住友銀行 カンボジアACKEDA銀行の筆頭株主に」
http://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/70d531088c3bf113fe0d84e1a033742e
第8位 カンボジア映画に注目集まる
第2回アジアコスモポリタン賞で、カンボジアの映画監督リティ・パニュ氏が文化賞を受賞することが決定し、10月22日にプノンペンで記者発表が行われました。今回受賞が決定したリティ・パニュ監督は、クメール・ルージュを題材とした作品をいくつも制作しており、最新の「消えた画」は、2014年のアカデミー賞で外国語映画賞にノミネートされています。続いて、10月31日、第27回東京国際映画祭におけるアジア新鋭監督の登竜門、「アジアの未来」部門に本年度より新設された「国際交流基金アジアセンター特別賞」をカンボジアの女性監督のソト・クォーリーカー監督の『遺されたフィルム』(2014年)が受賞しました。カンボジアの映画に国際的な脚光が集まることが期待されます。
10月27日 「アジアコスモポリタン賞 カンボジアの映画監督リティ・パニュ氏が受賞」
http://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/1509384db2fdaf39b9aba57c4d4df5a4
11月18日 「国際交流基金アジアセンター特別賞 カンボジアのソト・クォーリーカー監督に」
http://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/d6d15ecbf3fe7de71a9999ab3fab5113
第9位 日本 カンボジアに過去最大の円借款を供与
カンボジアに来訪された岸田文雄外務大臣とハオ・ナムホン副首相兼外務国際協力大臣との間で,6月30日に137億8500万円を限度とする円借款3件の交換公文の署名がプノンペンで行われました。金額的には過去最大規模の円借款供与であり、また、まとめて3件という件数も初めてのことです。今回供与されたのは、プノンペン首都圏送配電網拡張整備事業、国道5号線改修事業(プレッククダム-スレアマアム間)、プノンペン南西部灌漑・排水施設改修・改良事業です。
7月8日 「日本 カンボジアに最大規模の円借款を供与」
http://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/7c9fbf44e880c6ad6220f469cd369593
第10位 外資の撤退 シェブロンは海上油田開発から Tollは鉄道から
カンボジアの海上油田で最も有望なブロックAについては、シェブロンが中核となって試掘等を行い、カンボジア政府と税率等について交渉してきましたが、交渉が進まないため、シェブロンが撤退を決定し、持ち分である28.5%を全てシンガポールのクリスエナジーに売却しました。
また、Toll Groupは、持ち分である55%を全て合弁パートナーのロイヤルグループに12月19日付で売却して、カンボジアの鉄道事業から撤退しました。撤退の理由を、Toll側は、予想よりも低い利益と、カンボジア鉄道のリハビリ工事の遅れであるとしています。
8月18日 「シンガポールのクリスエナジー カンボジアの海上油田権益拡大」
http://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/4d88b859d2ca6b8b272e9092a478e067
12月25日 「オーストラリアのToll カンボジアの鉄道事業から撤退」
http://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh/e/f0496a6e6a14fabd89e29296b04025d0
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