京料理 道楽のブログ

道楽の新着情報や、日常のちょっとした一言を書き込んでいきます。

漸く

2008-12-31 | Weblog
おせち料理を詰め終えて、只今順次出荷しているところです。東京の明治屋さん、京阪百貨店さん、阪急百貨店さん、高島屋さん等々に配送します。
最高の素材を仕入れ心を込めて料理して、最高の秋田杉の特注重箱に丁寧に盛り付けました。
お買い求め頂きました皆様には、厚く御礼申し上げます。
うちのおせち料理の他にも、ぼくが監修しておりますお値打ちな価格の冷凍おせち料理もございます。こちらの方は、うちで作っているものではございませんが、ぼくが責任をもって献立を書き、料理を監修致しております。実にぎょうさんの御注文をいただきまして、心より感謝申し上げますと共に、限定数が決まっており御注文をお受け出来ませんでした数百の方々には、深謝申し上げます。
うちのおせち料理も午前3時には、出荷が完了する予定です。その後大掃除をして今年は終了となり元旦より通常営業です。
このブログも徐々に訪問者数が増えて、今ではたんと閲覧いただき大慶至極に存じ上げます。
皆様、今年は何かとお引き立て賜りまして本当に有難うございました。
どうぞ佳き新玉の年をお迎え下さいませ。
合掌

干物〓

2008-12-27 | Weblog
底冷えの砌(みぎり)となりました。干物を作るには最適の時期と言えましょう。夏場の高い気温、強い日差しの中では、天日干しの干物を作ることは出来ません。やわらかい日差しで寒風の吹く中、というのが干物作りに適した条件です。
本来は、お魚の大きさによって、丸干しにするか開き干しにするかを決め、下拵えしたら、塩水に浸けて天日干しにします。
塩水の濃度はかなり重要なポイントの一つです。市販のもんは10~13%くらいの塩水に20~30分程浸けて、機械で冷風乾燥したものが多いようです。
うちでは、鮮度のええ適度な大きさの魚を用いて、水洗いして三枚におろします。腹骨をすき取り、血合い骨も丁寧に抜いてから、4~6%(水1000㏄に塩40~60g)の塩水に一時間程、身の中まで均等に塩がまわるまで浸けます(塩は藻塩と岩塩を合わせて用います)。これを好みのお酒でサッと洗って、木枠に網を張ったもんに並べ、風通しのええ所でお日さんにあてて干します。天日にあてることでおいしさがギュッと凝縮され旨味が増します。この時、ハエや鳥などにじゅうぶん気ぃつけんとあきません。防虫網をかけたり、干物ネットに入れて吊しておくのもええでしょう。干し時間は風や日差しの強さによって加減します。時折裏表を返しながら、だいたい4~6時間くらいですかね。干し加減の目安は、身の表面に薄皮ができて、腹の一部にうっすらと脂がういた感じです。何回かやってみるとその干し加減が会得できます。魚の種類や大きさによっても塩水濃度や干し時間を加減するのがええでしょう。「あじ」や「かわはぎ」なら5~6%、「ささがれい」や「ぐじ」なら4~5%くらいですかね。とにかく頗る鮮度のええもんを用いること
です。
干す適当なスペースがない場合は、新鮮なお魚をおろして骨を除き塩水に浸けお酒で洗ったら、脱水シート(ピチット)に包んで一晩冷蔵庫に入れておくと、美味しい一夜干しが味わます。
朝ご飯にほんまに美味しい干物を骨を気にせんといただくのは、日本人の幸せやなぁと思います。あとお豆腐とお揚げさんのお味噌汁・おつけもん・菜っ葉のおしたし・野菜の炊いたんなんかがあったらもう最高ですね。

干物〓

2008-12-26 | Weblog
クリスマスも過ぎ今年もあと僅かとなりました。ぼくは、特にクリスマスを祝う習慣がないので、普段と全く変わることなく過ごしました。クリスマスが近づくと街が活気付き盛り上がったムードになるので、何となく楽しい気持ちになってええもんですね。
うちの店も営業は昨日までで、今日からおせち料理の段取りです。毎年お正月は通常通りに営業致しております。年の瀬はやらんとあかんことがよおけあって、毎日朝から晩まで追われております。
さて、今回も前回に続いて日本の誇るべき干物についてのお話です。
干物の干し方もいろいろあって、塩干し・味醂干し・丸干し・煮干し・灰干し等があります。塩干しは塩水に浸けるか塩を振り掛けてから干します。味醂干しは味醂・醤油・砂糖を合わせた調味汁に浸け込んでから干します。丸干しは、お魚の鱗などを除きそのまま丸ごと干します。灰干しは特殊なセロファンに包んで灰に埋めて干します。あとは水分除去シートに包んで水分を抜く方法があります。数多くのお魚貝類の干物がある中で、ぼくの特に好きなお魚は、ぐじ・ささがれい・あじ・かわはぎ・かますです。川魚ならあゆがええですね。
次回は、いよいよ干物の作り方のお話です。

干物

2008-12-24 | Weblog
むかし、京都は海が遠かったんで、海産物を乾物や塩漬けにして保存しといて、常備食としてました。
身欠きニシン・棒鱈・鯨のコロ・塩烏賊(いか)、あらめ・ひじき・わかめ・ほんだわらなどの海藻類…。それらは、京都の代表的なおぞよ(日常のおかず)の「ニシンなす」「ニシンこぶ」「ニシンそば」「里芋と棒鱈の炊いたん」「はりはり鍋」なんかの素材としても用いられてます。
とくに‘天日干し’にするとお日さんの恵みを授かり、生の新鮮な時にには味わうことが出来ない、別の旨味が加わります。干し鮑(あわび)、干し貝柱、きんこ(干しなまこ)、ばちこ(干したなまこの卵巣)、干し椎茸、切り干し大根、いもがら(干しズイキ)、薇(ぜんまい)…挙げたらきりがないくらい、まだまだなんぼでもあります。果物も干すと甘味が増します。干し柿、干し葡萄、干しマンゴー等々。うちの店では季節になると、桃を干した『干桃菓』や無花果(いちぢく)を干した『干笑菓』というもんを仕込みます。お芋さんで作るおやつの「いもするめ」なんかもそうですね。
太陽の光が無いと地球上の総ての営みは出来ないばかりか存在することすら不可能でしょう。だからこそ常日頃より天から注ぐ恩沢(おんたく)に日々感謝しながら、様々な干物を仕込んでおります。
昨日、敦賀の鰺の干物をいただきまして炭火で焼きました。いただくと身の旨味が増して凝縮された、ふくよかで自然な味わい!。そのやさしい美味しさに感動し、まさに至福のひと時でした。改めてお日さんの慈しみの不思議に驚きました。
料理人は変わった料理法や奇をてらった料理でお客様を驚かすことを考えるのではなくて、先達が作り上げた智恵を大切にして“ほんまもん”の日本料理・京料理をしっかり守り、心を込めて作ることで、お客様に感動を与えるようにせなあかんなぁ という思いを一層強く感じました。

しまい弘法

2008-12-22 | Weblog
昨日は、東寺さんで今年最後の『弘法さん』所謂(いわゆる)『終(しま)い弘法』の日でした。骨董や古着に加えて、迎春用の縁起もんや鉢植えの露天が所狭しと並んで、実にぎょうさんの人々で賑わいます。
この日うちにご来店のお客様にも朝から『終い弘法』に行って来られた方がよおけいたはりました。「それはそれは物凄い人出で、たいへんでした」とおっしゃられ、お疲れの御様子でした。
『弘法さん』は弘法大師の縁日で、東寺さんで毎月21日にあります。弘法大師はかの空海さんが世を去ってからの呼び名です。空海さんは、平安時代の僧で唐に渡って恵果(けいか)に学び、日本の真言宗の開祖、真言密教を国家仏教として定着させた人物です。三筆のひとりでもあり、詩文にも優れていて、書物は「三教指帰」「性霊集」「十住心論」等々数々の大書を著しました。東寺・高野山金剛峯寺の経営、また身分を問わない学校「綜芸種智院(しゅげいしゅちいん)」の設立…。
まさに【超人】です。

真味倶楽部

2008-12-21 | Weblog
昨夜は、毎月恒例の名工の器で楽しむ美食会『真味倶楽部』の日でした。
総てのお料理で絶賛賜りまして大慶至極に存じ上げます。
いつもお誉めいただけますのは「何の変哲もない献立が全く違う料理となる」とおっしゃいます。
昨夜も12品の料理の中には、鯖の塩焼きや京野菜のたいたんやきつねうどん等も入っています。
きつねうどんを例に挙げると、七代佐藤養助の稲庭うどんを使いました。おあげさんは自家製で中の白いとこをこそげとり針打ち(細切り)にします。お葱は有機九条葱の青いとこを糸のように細く切って綿(わた)のようにフワッとまとめます。おだしは濃いめにひいて、福来純(味醂)の長期熟成と厳選した藻塩、薄口醤油でお加減します。硬めに茹でた稲庭うどんを氷水でよくしめて、再び熱く手早く茹で上げあっためておいた輪島塗の時代根来椀に盛り、おあげさん入りの薄葛を引いたおだしをはり、たっぷりのお葱をのせます。各々に黒七味を添えてお好みで振ってお召し上がりいただきます。
こうして「たかがきつねうどん、されどきつねうどん」となるのです。
お献立は音楽の楽譜のようなもんでよく考えて起伏をつけスムーズに流れを作ります。
一品ずつ絶妙のタイミングを見計らって、心を込めて作っていきます。
ぼくの手書きのお献立は、お持ち帰りになって大事におとりいただいてると伺い忝なく存じます。
またご参加のお客様には、かえっていろいろとお気遣い賜りまして、心より深く感謝致し、厚く御礼申し上げます。
◆真味倶楽部御参加御希望の方はお電話にてお尋ね下さいませ。

おせち料理

2008-12-18 | Weblog
以前は、おせち料理と言うたら事始めからだんだんと用意を始めて、大晦日の夜に仕上げる大変手間隙のかかるもんでした。早いうちに黒豆やごまめなんかの食材を仕入れたり、棒鱈を戻したりしとかなあきません。
今はお正月から営業しているお店もたくさんあるので、三が日おせち料理を毎日食べるのも嫌やし、お祝いの形だけは整えたいんで縁起もんを少しずつ欲しい、または夫婦二人だけなんで、量もそんなに要らないし多種の料理をちょっとずつ作るのは大変なんでという理由から、近年ではデパ地下などで調達しはる方が仰山いたはります。うちも販売しておりますけど、やっぱりご家庭で煮炊きもんなど出来る料理は作って、手間の掛かるもんは良いもんを選んで買うてきてもええので、家のお重に詰めて新玉(あらたま)の年を祝って欲しいもんですね。うちの料理教室でも出来るだけ美味しく手軽に作れますようにレシピをお教えしております。
古(いにしえ)よりおせち料理は、食材それぞれに願いを込めていただきます。
黒豆はいつまでも健康でよく働けますように。海老は元気に長寿でありますように。蓮根は先の見通しがたつように。慈姑(くわい)はめがでるように。昆布巻き(こんまき)は慶ぶに通じる縁起もん。栗は勝負事に勝つ。数の子やいくらは子孫繁栄。田作りは五穀豊穣…等々です。
白味噌の具にも同様に、丸餅は万事角が立つことなく丸く収まるように。大根は大地に根を張るようにしっかりと地に足をつけて。人参は初日の出。頭芋は一家の頭に立って家の弥栄(いやさか)、子芋・孫芋は子孫繁栄など様々な祈りを込めていただくのです。
年の初めにいただく淑気の料理なんで、ぜひとも愛情を込めた手作りのおせち料理でお迎え下さいませ。

料理人の遣り甲斐(やりがい)

2008-12-18 | Weblog
ぼくは、丁稚の時分から今に至るまで、料理技術の向上、設(しつらえ)および器と料理の調和の妙味、お客様のお喜びの御様子、献立を考えること等々に幸せを感じて頑張ってまいりました。
板場の仕事というのは、体力面・神経面においてもしんどい仕事やし、楽しいことよりも辛く苦しいことのほうがはるかに多いでしょう。いずれの仕事でもいえることやと思いますけど、目標に向かって向上心を持ち遣り甲斐を感じて、一生懸命やることで充実した日々を送ることが出来るのでしょう。
ぼくは料理人兼経営者でありすが、自分が納得する料理を心を込めて作り、自分が選んだ器に盛り付ける。ただそれだけのです。掛け物や花においても同様です。如何に珍しく変わった料理に仕上げてお客様をびっくりさせるかなどは一切考えません。当たり前のことを当たり前にやるだけです。昨今は経済至上主義で如何に儲けるかを第一に考えるため、今様々な問題が露呈してきております。
料理人は誇りをもって自分の納得いく仕事をし、お客様に供するのみやと思てます。

京料理本

2008-12-18 | Weblog
昨日、知人からお知らせ頂いたのですが、Amazonの京料理売れ筋ランキングで、先般刊行致しました【京料理七十二候】が四位に入っていて、二十位以内にぼくの著書が三冊入っていると聞いて、とても嬉しく存じております。お買い求め賜りました方々には、厚く御礼申し上げます。
尚、来年には『尚古京料理(仮題)』の刊行を予定致しております。
感謝

松樹千年翠(しょうじゅせんねんのみどり)

2008-12-18 | Weblog
おめでたいお席やお正月のお床に『松樹千年翠』というお掛物とよく出会います。時が流れても松は変わらない緑色を湛えているところから永久(とわ)の吉上(きちじょう)を願う意と捉えていましたが、最近この句は対句になっており『不入時人意』〈時(とき)の人の意(こころ)に入(い)らず〉と続くことを知りました。つまり松は千年も万年も変わらぬ美しい緑色を湛えているけど、人はいつも松を目にしていながら、それを心から美しいなぁと感じられる人はどれだけいるのでしょうかという意味なんでしょう。人は、その美しさに気付かないでいることが多いのです。美しいもん素晴らしいもんを目(ま)の当たりににしていても、その美しさ素晴らしさ価値を認識出来る目や感じる心を持たなかったら味気ない人生になってしまいます。ぼくも、季節の移ろいや自然が織り成す美を感じられるように心を磨き、物の価値を理解出来る知識を身につけるよう勉強していかなあかんなぁといつも思っております。お招きに預かって、きれいに掃除し水が打たれた露地を通り、お香(こう)薫る中、お
心入れの道具でおもてなし頂いても、そのお心遣いが何も解らないようでは、自分自身も楽しめないし、もてなす側も残念でしょう。