京料理 道楽のブログ

道楽の新着情報や、日常のちょっとした一言を書き込んでいきます。

【渋川春海】

2017-06-19 | Weblog
ぼくは以前より、献立の冒頭に七十二候を書き、季節の情緒を感じる料理を心がけております。

2006年8月から2008年8月まで、朝日新聞の『あいあいAI京都』に連載してました「京料理七十二候」では、いくつかある七十二候から渋川春海(1639〜1715)が編纂した「大和暦(貞享暦)」の七十二候を用いました。

七十二候は最近テレビの天気予報などでよく出てまいりますが、二十四節気を三つに分け、五日を一候とする自然現象に基づく季節の区分です。

渋川春海は京都に生まれ、幼名は六蔵、のち助左衛門。
14歳で父の名を継ぎ二代安井(保井)算哲と称し、碁を打つことを職業とする江戸幕府碁所を勤めます。

当時はまだ地動説が信じられてない頃で、暦は平安時代初期に中国から輸入された「宣明暦」が用いられてました。春海は宣明暦にズレが生じることを明らかにし、これを改めるため、中国、元の郭守敬がまとめて1281年から88年間施行された「授時暦」に範をとります。北京と京都との経度差を考慮し、自らの観測によって、京都を基準とする日本人最初の暦法「大和暦」を編纂しました。朝廷は「大統暦」による改暦を決めてましたが、改めて大和暦を「貞享暦」として採用、1685年から宝暦暦に改められるまでの70年間施行され、それまでマチマチだった地方暦が統一されました。春海は天球儀や渾天儀や星図の制作も行い、初代幕府天文方となります。

「天を詳(つまび)らかにする」という夢を目標に掲げ、日々努力を怠らない生き方には、只々頭が下がります。

【江州葦】

2017-06-12 | Weblog
「葦」。
平安時代までは関西では「あし」と呼んでましたけど、「あし」は「悪し」に通ずることから、今では大抵「よし(良し)」と呼んでます。穂が出たものが「葦」、穂の出ないものが「蘆」「葭」とされてます。

近江八幡で屋形船に乗って廻る「水郷めぐり」にときおり出かけます。
西の湖まで出るにはエンジン船ですけど、ぼくは昔ながらの風情漂う手こき船がすきですね。
葦の大群落の中をゆっくりと進んで、鳥の声を聴きながら自然に包まれ心もゆったりとリフレッシュ。
かつて織田信長も安土城を見上げ楽しんだとされてます。

葦は昔から人の暮らしに大きく関わってきました。
稈(かん)と呼ばれる茎は簾(すだれ)や葦簀(よしず)にしますし、屋根葺きの材料や筆記具の葦ペン、葦笛や管楽器のリードなんかにもされます。滋賀県では紙原料の葦パルプも作られ、高級な名刺や葉書となってます。
若芽の蘆筍(ろじゅん)は苦みはありますけど食用にしますし、根を乾燥したもんは、生薬の蘆根(ろこん)として、利尿や止血に効くとされてます。

葦にまつわることわざは
「難波の葦は伊勢の浜荻」〈物の名は土地によって様々である〉。「葦の髄から天井を覗く」〈狭い了見では物事をとらえることはできない〉。フランスでは「すべての風になびく葦」〈都合によって節操を変える〉。イギリスでは「葦によりかかる」〈あてにならない〉。ヨーロッパでは「嵐がくればオークは倒れるが葦は立っている」〈弱さと共にある強かな存在〉。パスカルの「人間は考える葦である」〈人間は自然界では葦のように弱い存在だが、考えるという他の生物とは異なる偉大な能力をもった存在である」。…等々いろいろとあります。

葦原は環境の変化や開発等々で減少しておりますけど、水を浄化し、生物の拠り所となる、その価値が見直され高く評価されはじめてきたところです。

【芒種から夏至へ】

2017-06-07 | Weblog
先達ての二十四節気「芒種」は、料理勉強会。
蛸の柔らか煮やきらず汁、道楽の鮎寿司、じゃことうや枇杷のムース…等々を勉強しました。

本日は一日中雨、近畿地方も梅雨入りとなりました。京都の町のアチコチで、美しく潤った紫陽花が目を喜ばしてくれます。

今月21日はニ十四節気の「夏至」。夏至はニ至(夏至・冬至)のひとつで、北半球では一年間でお昼が最も長く夜が短い日です。ちなみにニ分とは春分・秋分のこと。

夏至になったと思たら、言うてる間に六月晦日の「夏越しの祓」、茅の輪をくぐって、半年間の無事に感謝です。

【消えた蓮】

2017-06-02 | Weblog
滋賀県草津市下物町に蓮の群生地があって、毎夏湖面を覆うように蓮の花が咲き誇ります。烏丸半島に行って蓮を愛で、蓮が漂わす不思議な空気感、蓮の魅力にふれるのが大きな楽しみでした。

昨年いきなり蓮の群生の姿が消えてしまい、狐につままれたようです。

主な原因は、蓮の育成に適した粘土層の消失や地中のメタンガス濃度の上昇ということです。かつての状態に戻すことは不可能らしく、残念でなりません。

自然を守り次世代に繋ぐことが、殊の外難しい世の中となってしまいました。

【麦秋の頃】

2017-06-02 | Weblog
昨日は建具替え。障子を簀戸に替え、絨毯を巻き上げて藤筵を敷き、涼しげな夏仕様となりました。

黄熟した麦の穂が、光輝き風に揺れる光景は、実に美しいもんです。
夏やのに「麦の秋」、秋は収穫の意味を表してます。

滋賀県の守山市は麦作が盛んで、毎年6月の初旬から中旬頃に麦の刈り入れが始まります。刈りとった麦は、麦扱(こ)きにかけ、あるいは麦打ちして麦の実を穂から落とします。

麦と言えば、先日の陽射しが物凄く強かった夏日、街を歩いていたら、帽子専門店でアメリカ製のステキな麦藁帽子に目を引かれ、気に入ったんですぐにいただきました。
レトロ調でリボンもきちんとしたもんなんで、カジュアルでも、ある程度のフォーマルでも大丈夫なかんじ。5月にしてはメチャクチャ暑かったんで、そのまま被ってました。

京都はついさっきまで、稲妻がひかり雷が鳴り響く大雨。この頃に降る雨を「麦雨」と呼びますけど、日本語の趣あることばは、あじわい深くてええもんですね。