京料理 道楽のブログ

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干物

2008-12-24 | Weblog
むかし、京都は海が遠かったんで、海産物を乾物や塩漬けにして保存しといて、常備食としてました。
身欠きニシン・棒鱈・鯨のコロ・塩烏賊(いか)、あらめ・ひじき・わかめ・ほんだわらなどの海藻類…。それらは、京都の代表的なおぞよ(日常のおかず)の「ニシンなす」「ニシンこぶ」「ニシンそば」「里芋と棒鱈の炊いたん」「はりはり鍋」なんかの素材としても用いられてます。
とくに‘天日干し’にするとお日さんの恵みを授かり、生の新鮮な時にには味わうことが出来ない、別の旨味が加わります。干し鮑(あわび)、干し貝柱、きんこ(干しなまこ)、ばちこ(干したなまこの卵巣)、干し椎茸、切り干し大根、いもがら(干しズイキ)、薇(ぜんまい)…挙げたらきりがないくらい、まだまだなんぼでもあります。果物も干すと甘味が増します。干し柿、干し葡萄、干しマンゴー等々。うちの店では季節になると、桃を干した『干桃菓』や無花果(いちぢく)を干した『干笑菓』というもんを仕込みます。お芋さんで作るおやつの「いもするめ」なんかもそうですね。
太陽の光が無いと地球上の総ての営みは出来ないばかりか存在することすら不可能でしょう。だからこそ常日頃より天から注ぐ恩沢(おんたく)に日々感謝しながら、様々な干物を仕込んでおります。
昨日、敦賀の鰺の干物をいただきまして炭火で焼きました。いただくと身の旨味が増して凝縮された、ふくよかで自然な味わい!。そのやさしい美味しさに感動し、まさに至福のひと時でした。改めてお日さんの慈しみの不思議に驚きました。
料理人は変わった料理法や奇をてらった料理でお客様を驚かすことを考えるのではなくて、先達が作り上げた智恵を大切にして“ほんまもん”の日本料理・京料理をしっかり守り、心を込めて作ることで、お客様に感動を与えるようにせなあかんなぁ という思いを一層強く感じました。