京料理 道楽のブログ

道楽の新着情報や、日常のちょっとした一言を書き込んでいきます。

【晩春の頃】

2017-04-26 | Weblog
来月より風炉の季節となります。

白山吹 白都忘れ 貝母 山紫陽花 鉄線 鷺草 撫子 姫桧扇 姫百合… 自分で育てております、晩春から初夏にかけての花達の蕾が、次々と膨らんで開いてきました。

昨日は、鶴首の黒釉花器に鷺草、白山吹、白の都忘れを入れて、花の白・葉の緑のみで、風薫る爽やかな空気感を表しました。

一年を通して折々の花は、四季の移ろいを顕著に現し表現してくれます。

底冷えの冬を越し、草木が芽吹き、桜が散って、間もなく初夏を迎え、うだるような暑さとなり、しみじみとした秋へと移ります。

ぼくは、日本の四季が情緒豊かで味わい深いことを改めて感じ、季節の移ろいがもたらす日本独自の繊細な感性や美意識というもんを、これから先も大切にして、未来へ受け継がれていってほしいなぁと願っております。

【火難除け】

2017-04-21 | Weblog
京都の旧いお家の台所にある「おくどさん」、その上方には荒神棚があります。

荒神棚には、荒神松が供えられ、伏見人形の布袋さんが小さいもんから順番に整然と並んだはります。

三宝荒神は竈の神さんとして祀られ、布袋さんの背に「火」の字を書いて奉ると、「火防布袋(かぼうほてい)」というて、火伏せとなるとされてます。

新しく家を持ったら、初午詣に行った際に、小さい布袋さんからちょっとずつ大きなもんへと毎年買い求め、七体揃ったら七福神に通じ、縁起がええとされてます。
ただし、七体揃うまでに家に不幸があったら、それまで求めた布袋さんを神社に納めて、再び一から求めます。

また、火のもと近くには、愛宕さんの「阿多古祀符 火廼要慎(ひのようじん)」の御札を祀って(貼って)、火難除けを願います。

これらの京の慣わしも、時代が流れ、徐々に減ってきてしまいました。

【穀雨】

2017-04-19 | Weblog
今年の桜は、えらい花もちがよくて、漸く葉桜となりました。
川端沿いの枝垂れ桜はまだ散らずにありますけど、人々の関心は失せ、先週まで山ほどあった人だかりは、まるでなくなりました。
桜は一気にパァーと咲き誇り、周りに春の陽気を漂わせ、瞬く間に散りゆく、見事な景観と共にその儚い姿もまた日本人の心を揺さぶるんでしょう。

明日は晴明から穀雨へと移ります。
ゑびす暦では、晴明は「草木の芽発生して何の木何の草と明らかに知得る故に晴明と云う」とあり、大辞林では「万物清く陽気になる時期」となってます。

穀雨は、ゑびす暦では「晴明の頃より穀雨の時節まで雨多し春雨降りて百穀を生化す依って穀雨と云う」とあり、大辞林では「百穀をうるおす春雨の意」となってます。

料理のテーマも、桜鯛や桜鱒、竹の子や山菜なんかを中心とした桜の頃から、だんだんと初夏の装いに移ります。器も吉野山や雲錦などから、徐々に菖蒲や紫陽花、硝子や銀器や青竹などを用いるようになります。

京料理の特色は、春夏秋冬季節の移ろいを敏感に捉え、季節感に従ってあるもんです。

【台所】

2017-04-16 | Weblog
家庭のキッチンは、年々機能性やデザインが目紛しく向上してます。

シンクもセラミックコーティングのステンレスや人造大理石等々あって、スムーズに水が流れるよう、各メーカーによっていろいろと工夫されてます。ワークトップの素材も実に様々で、それぞれ特長があります。

レンジフードは最もメーカーのオリジナリティが反映されるところのひとつで、汚れが付きにくく、洗い易いものが開発されてます。

たくさんの機器の中でも、ぼくが特に気に入ってるのが、オートムーブシステムの除菌乾燥ウォールキャビネット。これは、ほんまに便利で衛生的ですね。

最近は時間があるときに、いろんなメーカーのショールームを巡って、実際に見て、詳しい説明をきいてます。

昔の京都の台所は、細長い土間に長い木のすのこが敷いてあったり、石畳のとこも多いですね。
「はしり」はタイル張りが定番。壁面は漆喰や土壁やタイル張り。大きな水屋箪笥が据えられて、天井は高く梁があって、照明の笠電球がぶら下がってました。
おくどさんの上の方には神棚があって七つの布袋さん三宝荒神を祀り、愛宕さんの火除けの御札を貼ります。

食事をする部屋は、だいたい台所の向かい側の一段上がったとこですね。実に懐かしく、心が落ち着く光景です。

【さくら】

2017-04-14 | Weblog
今年のさくらも、今週末くらいが見納めでしょうか。

いつも店の行き帰りに、ブラブラ歩いて木屋町と川端沿いのさくらを観てますけど、朝露を含んだ早朝のさくらは、何ともええもんです。今年は長いこと散らずに咲いてるように思います。またライトアップされると、妖しく幽玄なムードを醸します。

散りゆく花は、物悲しく無情観に至ります。

さくらは、花びらが散ると同時に見向きもされなくなりますけど、葉桜の若々しい緑は生命力に溢れ、初夏へ向かう季節の移ろいを感じさせてくれます。

「あと何回観れるんやろか」自分もそんなことを思う年になったんやなぁ…

【ベーコン】

2017-04-10 | Weblog
今の時期は、京都産のえんどう豆を、葛引きにしたり、豚の角煮と炊合せたり、炊き込みごはんにしたりします。

豆さんのごはんは、おあげさんの刻んだんを加えて炊きますけど、うちでは桜のチップで燻したベーコンを小角に切って加え、炊き込みます。

ベーコン作りは、かなりの手間隙を要しますけど、適度に塩分を抜いて、好みの薫りを加えることができますんで、実にええですね。

針生姜も加えて炊き始め、上がりに釜の蓋を開け、刻んだ芹をパァーと散らします。おつゆはとき玉汁なんかがええですね。

ベーコンの旨味・桜チップの薫りが、豆さんとごはんに相俟って、相乗の味わいとなります。

【たけのこ】

2017-04-10 | Weblog
ようやく、筍の値も落ち着いてきて、求めやすい価格帯となってきました。

とは言うても、土壌や親竹の管理等々に手間を惜しまず丹念に作られた、「白子」の筍なんかはかなり高価ですけどね。

うちでは、大原野あたりのを主に使おてます。今年の走り(出始め)の新筍は高かったですね。

筍の木の芽和えは季節の巡り合わせの「であいもん」、山椒の葉の香りが一層筍を引き立て、季節感が溢れますね。若竹汁・にしんや鯛の子との炊合せなんかは山海の「であいもん」、筍ごはんはおあげさんとの相性が抜群。つけ焼きやてんぷらにしても美味しい、まさに春の味わいです。

きちんと育てられた堀りたての筍は、湯がかんと直炊きにしてもええぐらいやし、糠茹でするにしてもそんなに長いことは湯がかしません。筍の質や鮮度に合わして、糠や鷹の爪の量・湯がく時間を加減します。

噛んだらじゅうぶんやらこうて、適度に歯応えがあって、筍の香りが湧き出るような炊き方がよろしいね。

四季のめぐりがもたらす食材、先達の経験や知恵が込められ受け継がれてきた数々の料理に感謝です。

【筍花入れ】

2017-04-08 | Weblog
この時節、藤原雄作の「筍」という銘の花入れを好んで用いてます。

筍が土から30cmほど伸びた形の備前焼きで、火襷が面白く走った味わい深い花器です。

「無心帰大道」を掛け、大花延齢草 白の都忘れ 小手鞠を入れたところ、たっぷりと水を含んだ土色の花器に、葉の緑と白花の調和が自然の清々しさを醸し、部屋に爽やかな雰囲気が漂いました。

木や草花は、入れる人の感性によって、周りの空気感を作り上げ、切り取った季節の移ろいを、見事に表現してくれます。