デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

中村屋のボース

2006-01-20 15:11:42 | 買った本・読んだ本
書名 「中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義」
著者 中島岳志   出版社 白水社  出版年 2005年

以前対談ものだったある著書を読んで、小熊英二という若い思想家の存在を知って、すごい若手が出てきたものだとびっくり、また頼もしく思ったものだが、同年代の若手のかなりすごい研究者が現れたことにまずは拍手。
インドの独立運動の中心人物で、英国政府要人の暗殺容疑を受け、日本に逃亡、新宿の中村屋に匿われ、頭山満、大川周明などのアジア主義者と歩調を合わせ、日本でインド独立運動のために奔走した、ラース・ビハーリー・ボースの生涯と思想を追ったのが、この本である。現地まで赴き、インドでの彼の足跡を追い、その一生を見事に描き切るだけでなく、彼の書かれたものを丹念に追いながら、植民地政策に反対していたはずの彼が、第二次世界大戦中に、インド独立を第一義とすることにより、日本の侵した侵略戦争さえも認めるところまで、追いつめられたその思想的営為を追っている。小熊と同じように、大仏次郎賞をとったのは当然であろう。
伝記としても読みごたえがあるが、ボーズのこうした思想を追跡するなかで、頭山や大川らのアジア主義の限界とその可能性まで読み取ろうと、正面からぶちあっているのは見事であった。
学生の頃、ボースの娘さんの家を訪れ、そこで貴重な資料をもらった時の喜びを素直に書いたあとがきを読んでいたら、ほろっときてしまった。自分もそんなことがなんどもあったわけだが、まだ若い著者が、これで、自分はボースを絶対に書かなくてはならないという使命を感じたと語っているその心意気に、胸が熱くなってしまった。
文章や、その構成力も達者なものである。
満足度 5(5点満点)


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