デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

嘆きの天使

2014-05-28 10:55:22 | 観覧雑記帳
「Ninfa 嘆きの天使」
水族館劇場
作演出 桃山邑
会場 太子堂八幡神社境内特設舞臺「化外の杜」
観覧日 2014年5月27日

初めての水族館劇場体験。久しぶりに強烈だったし、楽しかったし、面白かった。古書ほうろうの宮地さんがずっと見たらいいですよと言っていた意味がやっとわかった気がした。自分のツボに一直線で来てしまったという感じか。
まず会場となった太子堂の八幡神社のたたずまいがいい、住宅地の中にあるのだが、なにか妖気のようなものがただよっていた。
開演はこの神社のなかの外で演じられるのだが、プロローグなんてあまいもんじゃない。神社の中に立っている木をつかい、さらには橋懸のようなセットも飛び出すわ、伊勢大神楽の水の曲が演じられるは、プールに人は落ちるわ(どうもこれがこの劇団の常套手法らしい)、一挙にまさに河原ものたちが奏でるカーニバルの世界へと引き込まれる。
これが終わり、整理番号順に特設テントステージへと案内されるのだが、これがまた本格的な小屋になっている。巧みな役者さんたちの誘導でこの小屋に入ると、さらにわくわく感が増してくる。しかもセットがこれまたすごいのと、中央に東洋一のサーカスと書かれた絵看板、下手側には映画館という嬉しくなるセット。これは弘前の設定で、これが何度か回り、網走のセットと変わる。これだけでも十分驚いたのだが、この前見た「フエルサブルータ」真っ青の水がなんども降り続けるし、さらにはこれらがまたセット替えしてしまうのだから、すごい。可笑しかったのはこのセット替えの間を埋めた山谷の玉三郎。ほぼできあがった状態で、よくわからない踊りらしきものを見せてくれた。
芝居自体だが、筋立てはかなり粗削りだが、自分にとっては身体の一部と言ってもいいか北方のエキスが詰め込まれたもので、北方幻想が見事に浮かびあがっていたと思う。
軸に永山則夫をおき、それを包む北を彷徨う人々たち、北のからゆきさん、ニコラエフスクで置いてロシア人とのハーフの曲馬団の娘、石光真清、ベーリング特急に乗り込む宮沢賢治の「氷皮鼠の毛皮」の登場人物たちが、濃密な北方流民たちの世界をつくりあげる。(二場のセットはコマリのラーゲリが上手、下手には商社のシマダ商会の看板がかけられた建物だったが、自分にとってはこのシマダがロシア語になっていたので、拙著「明治のサーカス芸人はなぜロシアに消えたか」に出てくる、シベリアを彷徨った朝鮮人サーカス芸人シマダと重なってきた。彼も間違いなくこの芝居の登場人物たちと重なりあう人物となる)
ラストシーン。ソリでオルガ(曲馬団の娘)がセットの背景となる杜のなかに消えていくシーンは幻想的で美しかった。
最後ダッタン海峡を渡った蝶に託された黒い女がつぶやく「星の声が聞こえたよ」というセリフも心に沁みた。
正直次の作品はなんなのとすでに楽しみにしている自分がいる。快作である。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« つばめは旅立った | トップ | アジサイ日誌1 »

コメントを投稿

観覧雑記帳」カテゴリの最新記事

カレンダー

2024年10月
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

バックナンバー