デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

それでも彼女は生きていく

2013-03-28 17:07:52 | 買った本・読んだ本
書名 「それでも彼女は生きていく-3・11をきっかけにAV女優になった7人の女の子」
著者 山川徹  出版社 双葉社 出版年 2013

前作『東北魂』で震災・津波に襲われた東北のレポートを怒りを胸に熱く語り起こした山川が、今度は震災をきっかけにAV女優となった7人の女性にインタビューをしてまとめたのがこの本。昭和の東北大飢饉の時に東北の女たちは生きるために身売りをしなければならなかった。それと同じことがいま起きているのかというプロローグを読んで、えっとそんなことがと思った。ここに登場する7人の女性は身売りというわけではないが、震災後に勤めていた会社が休業したり、就職が決まっていたところがやはり休業したり、あるいは家を助けるためにというそれぞれの動機を抱えていた。
山川は今回のこの聞き書きでは、聞く側に徹底してまわって、こうした事態に追い込んで地震や原発に対して、怒りをぶつけるのではなく、なぜAV女優にということに迫ろうとしている。きっかけになったり、追い詰められたりしたこうした女性の話しを聞くと、震災後みんなとにかく何かを奪われて、どうしたらいいのか迷っていたということが浮き彫りにされる。ただやはりAVという業界は特殊であり、震災がきっかけになったとはいえ、普通の女性がなぜこの業界へというところに話しがいってしまったのも事実である。
山川はきっと震災後の東北を取材し続けていくだろうし、また書き続けてもいくだろうと思う。彼が震災直後すぐに東北に入って見たもの、聞いた話し、それは彼のなかで怒りへとなっていく。それはこれを引き起こしたものに対するのではなく、こんなことになぜという怒りであり、いま見ている現実への怒りである。絆とか希望とかではなく、現状への怒りである。
彼のなかでは復興ということは、まだ現実とはなっていない。家を、家族を、友人を失った人びとの思い、それを直視するしかないというスタンスであろう。
このインタビュー集を読んでも、震災の被害を語るときにその思いが随所におりこまれる。
一番胸を衝いた話しは、AVで働く前に、仙台の風俗で働いていた女性が相手をした男たちのエピソード、何もせずにただ膝の上で震災のことを語るだけの男、死者を見続けていた自衛隊の男の話し。これがまさにあからさまの現実なのだろう。もうひとつ自分は被災者でないので、なにか悪いという思いを持った女性が何人もいた。その中のひとりが、AVで稼いだお金を被災地の救援のために使いたいという話しにも胸を衝かれた。
みんなまだ迷っているのだ、どうしていいかわからず、それを一番強く感じた。

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