デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

『興亡の世界史 18 大日本・満州帝国の遺産』

2010-06-09 23:32:24 | 買った本・読んだ本
書名 『興亡の世界史 18 大日本・満州帝国の遺産』
著者 姜尚中 玄武岩
出版社 講談社  出版年 2010

今回が最終刊行となった興亡の世界史シリーズは、人やモノの交流をダイナミックに、グローバルな視点から見ていくところに新しさがあり、面白さがあった。いままでにはない切り口の世界史といえる。あまりこうしたシリーズものの世界史は読まないのだが、興亡の世界史シリーズはずいぶんと読んでいる。
しかも今回は長谷川濬からみで手当たり次第に読んでいる満州もの。発売されたのを知ってすぐに購入、それまで読んでいた本をいったん読むのをやめて、読みにかかった。満州をどんな風に、いままでのようにグローバルな切り口で切り取るのかが一番の注目だったのだが、ずばり岸信介と朴正煕という日韓の魔物ともいうべきふたりを中心に据えてきた。
最近では新書版の本であるが、小林英夫が現在の自民党に脈々と続く満州人脈の話をまとめ、興味をひいたが、本書ではさらにぐさっと満州帝国の遺産を利用して戦後の礎を強引に築いていったふたりに焦点をあてている。満州という国の状態よりもむしろ、満州崩壊のあと、戦後に力点が置かれている、これはかなりの冒険的試みといえる。しかしこの思い切りの良さが迫力をもって、満州遺産が戦後だけでなく、いま現在にまで受け継げられていくという、いや受け継がざるをえないという現代の歪みにまで迫っていく。
満州国を新しい国づくりのモデルとして乗り込んだ日本のエリート官僚、その最大の中心人物が岸なわけだが、彼が施行していたのは北一輝、大川周明らが最初に提唱していた統制経済の実験である。自由経済ではなく統制経済という道を敷設していく。岸はA級戦犯として、朴正煕もまた逮捕され政治生命どころか、生命自体の危機にさらされるというどん底まで落されながら、冷戦が顕在化するのを巧みに利用し、這い上がり、そしてふたりとも権力の頂点を極める。非常に面白いかったのは、「岸と朴が、その内面深く米国への反発心を抱きながらも、同時に対米依存を通じて自らの権力を強化していったことである。アンビバレントな対米観をいわば「密教」のように内に潜ませつつ、自由陣営の反ソ(反中・反北)を「顕教」として掲げることで自らの権力の正当性を作りだそうとした岸と朴。彼らの内側に宿る反米の影は終生消えることはなかった」という指摘。 
朴が、最初満州軍の軍人からスタートしたというのは初めて知ったことだが、本書の後半はこの彼が暗殺されるまでの権力体制を満州仕込みの統制経済という道で、つくりあげていく道筋を明らかにしていくのだが、壮絶な人生であったとあらためて思う。
朴は身内のものに銃殺され、かたや岸は91才で大往生するという際立ったエンディングに思わずウーンとうなってしまった。
興奮して読んだのだが、岸のことを知れば知るほど、もうひとりの満州人脈に繋がる人のことがまた気になってしかたなかった。田村敏雄である。岸が安保騒動で退陣したあと、高度経済成長を訴え、総理となった池田勇人の側近である。彼については、沢木耕太郎が評伝を書いている。同じように満州での国づくりに参加した田村は、岸の路線とはちがうところにいたような気がする。田村のことをはっきりとソ連のスパイという人もいるようだが、彼が何故池田に夢を賭けようとしたのかそこのところをもう少し知りたいと思った。そして一番知りたいのはその田村満州人脈と、神彰のアートフレンドがどう繋がっていったのかということも気になる。。満州はやはり底無しの魑魅魍魎とした世界をいつも提示してくれる。
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梅雨近し

2010-06-09 11:14:11 | お仕事日誌
梅雨が確実に近づいてる。ベイサイドまで走っているうちに雨が降り出す。そういえば八景島のあじさい祭りも始まる頃だ。また走りに行かないと。通勤に読んでいた『大日本帝国・満州国の遺産』を読み終える。それにしても朴正煕という男の生きざまは凄いもんである。
ロシア語でつくった契約書がきちんと整理されていないので、ひとつのファイルにまとめる。14時から昼下がりの打ち合わせ、前回参戦したタカパーチが、とても楽しかった、また出たいと言っていたという話を聞く。オープニングをどうするかでアイディアを出している内に、タカパーチがあたまで何か演奏しているのに、絡めればという話になる。すぐにタカパーチに電話、出演交渉。出演を快諾してもらう。頭が決まれば、あとはスイスイ。次回の昼下がりは、ウィルスがテーマになる。ただ残念ながら自分はリトルの千秋楽と重なっているので、見れない。
18時退社。


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