デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

虚人魁人

2005-04-02 01:13:27 | 買った本・読んだ本
書名 「虚人魁人-国際暗黒プロデューサーの自伝」 著者 康芳夫   出版社 学研 定価1700円(税別) 出版年 2005年
さすが康さん、見事なこけおどしの本をつくったものである。一気に読ませてもらった。まさに痛快な書である。中国人の父と日本人の母の間に生まれた康さんが、日中戦争、さらには台湾と中国の対立という複雑な時世に少年・青年時代を送り、東大に入学して、文化祭をしきるところまでが、まず一章。そして神彰とともにアートフレンド・アートライフで、さまざまな負け戦興業を打つのが第二章、神と別れ、モハメド・アリのヘビー級タイトルマッチを武道館で実現するまでが三章、ネッシー探し、オリバー君、さらにはアリと猪木の異種格闘技のプロデュースをするまでが四章という感じだろうか。神彰が途中で呼び屋から飲み屋に転じたのとはちがい、康さんは、徹頭徹尾いかがわしい興行師であるところが、痛快である。康さんは自伝をいくつか出しているので、その意味では特に目新しいことはないのだが、今頃こんな本を出すというところに、なにか次なる仕掛けのための布石ではないかと勘繰ったりもしている。
いま連載中の「もうひとつの虚業成れり」で、康さんのことをとりあげようと思っているので、詳しくはそのなかでこの本の感想も書くつもりだが、康さんの魅力、そしていままで暗黒プロデューサー(すごい副題だ!)として生き抜いてきたのは、虚実皮膜の極意なのだろうと思う。虚のなかにこそ、実があり、実と思われたことが偽りだったというパラドックスを、怜悧な眼で見抜き、その皮膜のなかで勝負する、その見極めでこの世界を渡りきった(きろう)としているところ、そこが魁人となり得たところなのだと思う。その意味からすれば、康さんの真骨頂はオリバー君につきるような気がする。
『虚業成れり』のために二度康さんにお会いしたのだが、そこで康さんが話してくれたことで、私の本のなかで書かなかったことが、この本ではバンバンでてくる。それも面白かった。
また康さんと会いたくなった。しかしすごいよな、この本のタイトル、そして白髪の長髪という実物だけでも充分ヘンなのに、魔女のような格好をした表紙の写真・・・やっぱり康さんはすごい人である。


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