英文讀解自修室

  - in the historical Japanese kana/kanji orthography

・英文讀解のヒント (9) 《be + to-不定詞》

2014-08-13 | 英文讀解のヒント

英文讀解のヒント (9) 《be+to-不定詞》

1  次の英文を音讀または默讀しながら意味をとらへ、下線部(1)(2)については意味を日本語で言つて、または書いてみませう。(※讀み方がわからない語はあとで辭書で調べておきませう)

   (1)How much will the demand for electricity increase if all of the 74.1 million passenger cars registered in Japan as of the end of fiscal 2006 were to be replaced by battery vehicles?  Based on the statistics mentioned above, the increase would be 74.1 billion kilowatt-hours, which is equivalent to only 12.8 percent of the total power sales of 580 billion kilowatt-hours recorded in fiscal 2007.  (2)If the price of crude oil is to soar to more than $200 per barrel by 2030, as is forecast by the International Energy Agency, there is every reason to encourage replacement of gasoline engines with batteries from the standpoint of ensuring Japan’s security in energy supply.

(青山學院大學 2010 5パラ; 2011年8月29日掲載)

 

2  下線部の解説

2.1  不定詞について

  to-不定詞の to は起源的には前置詞であり、何かの方を指し示す(in the direction of)意味を持ちました。不定詞は文中で多樣な使はれ方がなされ、意味合ひも茫漠としてゐる印象を受けますが、この「指し示す」といふはたらきを念頭に置くと、わかりやすくなつてきます。「指し示す」ことによつて、相手に對し、説明を加へ、足りない情報を補ふわけです。

  不定詞は置かれる位置によつて、さまざまなはたらきをしますが、今囘はbe動詞のあとに不定詞がつづくかたちを取り扱ひます。

2.2  is to soar ...下線部(2)

  このかたち〈be+to-不定詞〉では to-不定詞のもつ「何かを指し示す」はたらきからさまざまな意味合ひが生じます。Michael Swan の Practical English Usage (Third Edition)で「be+infinitive」の項(p. 80)を眺めると、以下の記述が見えます。(カッコ内は拙譯)

1 plans and arrangements(計畫・豫定): He is to visit Nigeria. (彼はナイジェリアを訪問することになつてゐる)

2 fate(運命): We were to meet again. (私たちは再び出會ふ運命(/こと)になつてゐた)

3 pre-conditions (in if-clauses)(前提條件): If we are to get there in time ... (時間内にそこに着くとする(/着くつもり)なら...)

4 orders(命令): You are to do your homework. (宿題をやらなくてはいけません)

5 notices and instructions (to+passive infinitive)(注意書き・指示): It is not to be removed. (それは取り外さないこと)

  ※5項には受動態・否定文で「(不)可能」の例文も擧げてゐます: There’s nothing to be done. (打つ手がない)

  日本の文法書では「豫定」「運命」「義務・命令」「意圖」「可能」などを擧げてゐます。これらを意味をさぐるための手がかりとして利用し、to-不定詞のもつ、これからのことを何か指し示すやうなイメーヂを念頭に置きつつ、文脈で判斷するのが良いかと思ひます。微妙なニュアンスを捉へるのが難しいこともあります。

  なほ、上の「手がかり」には擧げられてゐませんが、To teach is to learn twice.(教へることは二度習ふことである)のやうに一般的な事柄を述べるケースもあります。

  上述の手がかりの頭をとつて「ヨウギイカ(容疑烏賊)」「カイギヨウ(會議用)」「ヨウカイギ(要會議)」などの暗記法はいかがでせうか。

■諳誦例文

10       You are to finish this homework by tomorrow morning.

            この宿題を明日の朝までに仕上げるんだよ(/仕上げなくてはいけません)。

 

2.3  were to be replaced ...下線部(1)

  このかたちは、文法書では「假定法未來」の項に分類・解説されます。未來のことに言及するので「假定法未來」と呼ばれますが、文法書によつては、かたちをみて「were to」、また「假定法過去の一種」と記載されることもあります。2.2のbe動詞を假定法の動詞 were として、現實味を遠ざけ、可能性があまり大きくない印象を持たせます。「議論のための純粹な假定の條件を提示」してゐるとする文法書もありますが、これも現實味のうすさを示すものと言へませう。

  Michael Swan の Practical English Usage (Third Edition)で「if ...was/were to」の項(p. 238)を眺めると、以下の記述が見えます。(カッコ内は拙譯)

This is another way of talking about unreal or imaginary future events.(これは非現實的な或は想像上の未來のことについて語る一法である)

  If the boss was/were to come in now, we’d be in real trouble.

(もし今上司が入つてくるとしたら、私たちは本當に困つたことになるだらう)

It can be used to make a suggestion sound less direct, and so more polite.(それは提案をより控へめに、より叮嚀にするために使ふことができる)

 If you were to move you chair a bit, we could all sit down. (椅子をすこし動かしていただけると、皆着席できますが)

■諳誦例文

S.8     What would you do if war were to break out?

            假に戰爭が起こるやうなことになれば、君はどうしますか。

  ※S.8は「英文法ミニ解説 假定法の讀み方(13)」(2011年7月13日付)に掲載した諳誦例文です。〈were+to-不定詞〉はここにも解説や例文があります。

 

 

 

3  意味把握チェック

  (1)假に、2006會計年度末現在(で)日本で登録されてゐる7410萬台の乘用車のすべてが電氣自動車に置き換へられたとすると、電力需要の増加はどれほどであらうか。上述の統計に基くなら、その増加は741億キロワット時で、それは2007會計年度に記録された5800億キロワット時といふ電力總賣上のわづか12.8パーセントに相當するだけである。(2)もし原油價格が、IEA(國際エネルギー機關)により豫告されるやうに、2030年までに1バーレルあたり200ドル以上にはね上がることになるなら、エネルギー供給における日本の安全を保障する見地からすれば、ガソリンエンジンを蓄電池と置き換へるやう獎勵するだけの十分な理由がある。

 

4  意味把握チェックの下線部を參考にして、元の英文に戻してみませう。

 

※《be+to-不定詞》以外の解説については2011年8月29日付のブログ記事をご參照ください。畫面右の Back Numbers で該當の月・年をクリックし、Calendar で該當日をクリックしてご利用ください。