英文讀解自修室

  - in the historical Japanese kana/kanji orthography

・用例研究 159 <假定法-條件節省略⑤>

2018-12-31 | 用例研究

[用例研究 159] 〈假定法-條件節省略⑤〉

 

  (BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake)

 

1  Food, food, food!  You have no idea how boring this is to me.

2  What I really wanted to do was be a scuba diver.

2  How would you’ve made a living scuba diving?

3  I could’ve had a little seafood restaurant on the side.

 

[解説]

1

・no idea how boring this is to me: no idea のあとに「同格の of」 が省略されてゐるとみることができます。名詞(idea)の後に節を置いて、名詞の説明を加へてゐます。「~といふ idea は持たない」→「これがぼくにはどれほど(うんざり/退屈)なのかは君にはわからないよ」

□參考例文: 話し言葉では通例 of が省略されます。

159        I have no idea (of) what she means.

                 彼女が何を言つてゐるのかさつぱりわからない。

2

・be: 原形不定詞です。補語として使はれてゐます。

・would you’ve made: you would have made が疑問文の語順となり、さらに have が短縮形になつてゐます。

・make a living (-ing): 「(-して/-で)生計を立てる」。make のほか earn / gain / get が使はれることがあります。-ing の前に by / from / out of が置かれることがあります。

・scuba: [skjú:bə]  self-contained underwater breathing apparatus / aqualung [ǽkwəlʌ̀ŋ] (※商標名 Aqua-Lung から普通名詞化)

3

・could’ve had: could have made の have が短縮形になつてゐます。〈could have made〉や上述の〈would have made〉は共に假定法過去完了の歸結節のかたちであり、ここでは條件節がありません。假に補ふとしたら、例へば「もしスキューバ・ダイバーになつてゐたら(/だつたなら)」でせうか。if で始まる假定法過去完了の文の基本については 「假定法の讀み方 (8) (9)」 (2011年6月15日掲載;ただし(8)(9)は逆順)で解説してゐます。

・on the side: 「内職として」「副業で」「別に」。[用例研究 148] では on the side が「添へ料理として」の意味で使はれてゐました。

 

[意味把握チェック]

1 「食べ物、食べ物、食べ物!これがぼくにはどれほどうんざり(/退屈)なのか、あなたにはわかりませんよ」

1 「ぼくがほんたうにやりたかつたことは、スキューバ・ダイバーになることでしたね」

2 「スキューバ・ダイビングでどうやつて生計を立てただらうな」

3 「副業で(/傍ら)小さなシーフード・レストランを持てたでせうね(/やれたんぢやないかなあ)」

 

[笑ひのポイント]

・結局のところ「食べ物」關聯の仕事に行き着いて「うんざり/退屈」から逃れられないことになつてしまひ、をかしみが生じます。


・用例研究 158 <假定法-條件節省略④>

2018-12-24 | 用例研究

[用例研究 158] 〈假定法-條件節省略④〉

 

  (BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake)

 

1  This proposal you wrote is horrible!  You butchered it!

1  Could you have written it better?

2  I don’t have to do things better than you!  I’m the boss!

3  Boy, I sure wish I had a good answer for that one!

 

[解説]

1

・butcher: 「~を(へまをやつて)だいなしにする」

・Could you have written it better?: 〈助動詞の過去形+have+過去分詞〉のかたちは假定法過去完了の歸結節に多く見られます。ここは疑問文になつてゐます。條件節がありませんが、主語 you に條件が仄めかされてゐるやうにも見えます。條件を補つてみると、例へば「あなたなら」とか「もしあなたが(ぼくの)代はりに書いたなら」でせうか。それで「あなたは提案書をもつとうまく書けたでせうか」と問ふことになります。

□參考例文:主語に條件が仄めかされてゐる例文です。

          A true friend would have acted otherwise.

            本當の友達ならさうはしなかつたでせう。

            ※ if s/he had been a true friend の意味が主語にこめられてゐます。

□參考例文: could の例文で、條件節がうしろにつくケース。

       You could have caught the train if you had hurried.

       もしあなたが急いでゐたら列車に間に合つたのに。

□參考例文: could の例文で、had が短縮形になるケース。

      If he'd run a bit faster, he could have won.

      彼がもう少し速く走つたら、勝てただらうに。

3

・boy: 間投詞で「まあ」「おや」「やれやれ」などの意味。

・I sure wish I had a good answer: had が假定法過去の動詞として使はれてゐます。實際には「うまい囘答がない」のですが、「持つてゐればなあ」と事實と異なる願望を述べてゐます。

□參考例文:

     I wish I were a billionaire.

  私が億萬長者であればなあ。

  このかたちは 「假定法の讀み方 (7)」 (2011年6月8日掲載)で解説し、例文を紹介してゐます。(※ 參照するには下線部をクリックしてください)

・one: 前出の answer の言ひ換へです。that one は2コマめの社長の囘答を指してゐます。「あの囘答に對するうまい囘答(/應答)があればなあとホント思ふよ」

・sure: 副詞として使つてゐます。「確かに」「ほんたうに」「全く」

 

[意味把握チェック]

1 「おまへの書いた提案書はひどいもんだな。だいなしにしたな」

1 「あなたなら(/社長なら)もつとうまく書けたでせうかね」

2 「わしはおまへより上手に物事を處理しなくていいんだ。わしはおまへの上司なんだぞ(/わしが社長なんだからな)」

3 「やれやれ、あの囘答に對してうまい囘答があればなあとホント思ふよ(/チェッ、あの應答にうまく切り返せればなあ)」


・用例研究 157 <假定法-條件節省略③>

2018-12-17 | 用例研究

[用例研究 157] 〈假定法-條件節省略③〉

  

  (BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake)

 

1  How did you come up with the batter for these salmon cakes?

1  I keep experimenting until I’m satisfied.

2  My first three husbands would have loved them and I’m sure this one will too.

2  You’ve had four husbands?

3  Yes, I do husbands like you do salmon cakes.

 

[解説]

1

・come up with~: ここでは「~を考へ出す」「~を生み出す」の意味。

・batter: [bǽtər]「こね粉」(小麥粉、牛乳、卵などを水でこねたもの)。(※ butter [bʌ́tər]「バター」)

・salmon cake: 平たく丸いかたち(a flat round shape)にして調理した salmon 料理。ここでは「サーモンだんご」としてみました。(※ a fish cake 「魚肉だんご」、a cake of soap「石鹸一個」)

・keep ~ing: 「~し續ける」

2

・would have loved: 〈would、could など助動詞の過去形+have+過去分詞〉のかたちは「假定法過去完了」の歸結節に見られるものです。そのひとつの例は、過去における、事實とは異なる何らかの状況を「もし~であつたなら」「もし~してゐたなら」などと條件節で假定して、歸結節でその結果を「~であつたらう」「~したであらう」などと推定する文體です。ここでは條件節が省略されてゐますが、假に補ふとすると、例へば「もし前の夫達がこのサーモンだんごを供されてゐたなら」でせうか。

  假定法過去完了のこのタイプは「假定法の讀み方(8)」(2011年6月15日掲載)で扱つてゐます。

□參考例文

   If you had worked harder, you would have passed your exam.

もつとよく勉強してゐたら、あなたは試驗に受かつただらうに。

・this one: 現在の husband を指してゐます。

・you’ve had ...: = you have had ... 現在完了形は日本語には無いもので、解釋には注意を要します。現在の状態や行爲を中心に、過去のある時點から現在までの經驗・繼續・完了・結果を含めて表はす文體です。ここで You’ve had four husbands? といふと、現在四人目である夫と過去の三人の夫を含めて表現してゐることになります。「これまで、(現在の夫をいれて)四人の夫を持つてこられたのですか」と(驚いて)問ひ返したのでせう。「御主人が四人も」とすると誤解(「一妻多夫」?)されかねないので、[意味把握チェック]では「今の御主人が四人めなんですか」としてみました。

  現在完了時制については、「英文讀解のヒント(78)」(2017年7月26日掲載)で解説や例文を紹介してゐます。

3

・do: 「(料理などを)作る」「こしらへる」

・like: (話し言葉で接續詞として)「~と同じやうに」「~のやうに」(※ as / just as のやうな使ひ方です)

 

[意味把握チェック]

1 「どうやつてこのサーモンだんご(用)のこね粉を思ひついたんですか」

1 「滿足のゆくまで試し續けるんです」

2 「最初の三人の夫たちはこのサーモンだんごが氣に入つたことでせうね、そして今の夫もきつと(氣に入るわ)ね」

2 「今の御主人が四人めなんですか」

3 「ええ、あなたがサーモンだんごをこしらへるみたいに私は夫をこしらへるのよ」


・用例研究 156 <假定法-條件節省略②>

2018-12-10 | 用例研究

[用例研究 156] 〈假定法-條件節省略②〉

 

  (BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake)

1  This is the worst hotel room I’ve ever seen!

1  It sure is!

2  It’s so cramped and drab.

2  I couldn’t agree more.

3  I’m going to my suite, I’ll see you in the morning.

 

[解説]

1

・hotel: アクセント注意 [houtél]

・sure: ここは副詞で「確かに」「ほんたうに」「全く」

2

・cramped: 「窮屈な」「狹苦しい」

・drab: 「さえない」「味氣ない」「つまらない」

・I couldn’t agree more: 假定法過去で「今以上の同意は不可能でせう」、つまり「最大限に同意する」といふ意味になります。ここでは「全く仰るとほりです」としてみました。かくれてゐる條件は、例へば「これ以上同意しようとしても」でせうか。結局、相手の意見や感想を強く支持する、といふことになります。「君に同意する」と言ひたいなら I couldn’t agree with you more. です。(※このかたちは2018年6月4日掲載の「用例研究 131 <couldn’t be better>」でも扱ひました。下線部をクリックするか、畫面右の Back Numbers で該當の月・年をクリックし、Calendar で該當日をクリックしてご覽ください。)

3

・suite: 「(ホテルなどの)特別室」 ※發音注意 [swi:t]  ちなみに sweet(「甘い」)の發音も [swi:t]。[w]音に留意します。

 

[意味把握チェック]

1 「こいつは見たことないほどひどいホテル部屋だな(←こいつは、これまでに見たうちで最惡のホテル部屋だな)」

1 「たしかにさうですね」

2 「すごく狹苦しいし冴えんな」

2 「全く仰有る通りで」

3 「ワシはスヰート・ルーム(/特別室)に行くからな、ぢや(明日の)朝に會はう」


・用例研究 155 <假定法-條件節省略>

2018-12-03 | 用例研究

[用例研究 155] 〈假定法-條件節省略〉

  假定法の表現では、その含意の廣汎さと直説法と同じかたちの動詞・助動詞が使はれること等により、しばしば惱まされることがあります。筆者も假定法については勉強途上です。拙ブログでも問題文に即して假定法を解説し、また「英文法ミニ解説」で「假定法の讀み方」として連載しつつ學んできました。用例に多く接して馴れることも對策として有效だと考へ、「用例研究」でも假定法を扱つてきたところです。今後もうしばらくこの[用例研究]カテゴリーで假定法を採り上げたいと思つてゐます。

 

  今囘は假定法過去の條件節がなく、歸結節のみが出現する例を扱ひます。「もし~したら」「~しようと思へば」「たとへ~しても」「ひょつしたら」など、條件が裏にかくされたり省略されてゐるケースです。[用例研究 154]で採り上げた〈假定法由來のていねい表現〉もこのかたちからくるものであり、助動詞の過去形はこのケースで多用されます。

  以下の例で、下の偶數番號の例文は假定法過去完了の條件節がかくれて或は省略されてゐます。

□參考例文: 「もし~したら」の例です。

155.1     "Do they really come to you?"  "You'd be surprised."

        (※ you’d be = you would be)

                 「みなさん本當にいらつしゃるの」「(本當よ、來れば)驚くでせう」

155.2     There was a dead silence, during which a pin might have been heard to drop.

                 水をうつたやうばな靜けさで、その間針一本でも落ちれば聞こえさうだつた。

□參考例文: 「~しようと思へば」の例です。

155.3     You could meet her when you go to England.

                 イギリスに行かれるときに、彼女に(會はうと思へば/會ひたいなら)會へますよ。

155.4     He wasted his money on sweets when he could have bought fruit.

                 彼は(買はうと思へば)果物が買へたのに、お菓子にお金をつかつてしまつた。

□參考例文: 「たとへ~しても」の例です。

155.5     The town has changed a lot - you wouldn't recognise it now.

      (※ recognise は英國式のつづり)

                 その町は隨分變はりました。今では(訪ねても)その町だとわからないでせう。

155.6     No one was to blame. The accident could not have been prevented.

                 誰の責任でもない。事故は(防がうとしたとしても)防げなかつただらう。

□參考例文: 「ひょつとしたら」の例です。

155.7     Do you think you could help me move this weekend?

                 今週末、私の引越を手傳つてもらへませんか。

155.8     They discussed what they could have done.

                 彼らはひょつとしたらできたかもしれないことを論議した。

 

[用例研究 155] 〈假定法過去の歸結節〉

 

  (BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake)

 

1  There is a rumor that the boss is going to announce his retirement today!

1  I heard!

2  I could retire today with no worries about my company’s future...

3  But you’re all so wonderful to work with, I’m staying on forever!

 

[解説]

1

・a rumor that ~: 「~といふ噂」。名詞にthat節を並べて、名詞の説明を補足・追加してゐます。文法書では「同格」の項に説明があります。

2

・could retire: 直説法の過去形とみると「けふ引退することができた 」と解され、退任の挨拶のやうになつてしまつて3コマめとつながりません。ここは假定法過去の歸結節であると推定されます。條件節はありませんが、例へば「(話者に引退する氣はないものの)引退しようと思へば」が考へられます。それを承けて「今日にでも引退することができるだらう」と續きます。「けふ」といふ極端な表現にしたことにより、「けふにでも」といふ讓歩めいたニュアンスが釀し出されてゐます。

3

・〈so~that〉で「とても~なので」。ここでは that が省略され、コンマが置かれてゐます。

・to work with は不定詞の副詞的用法で、直前の形容詞 wonderful を修飾してゐます。「~するといふ點でである」といつた意味になります。ここでは「共に働くのに(/共に働く上で)とてもすばらしいので」としてみました。

□參考例文: 「讀むのに易しい」→「讀み易い」

155.9     I want a book that is easy to read.

                 私は讀み易い本が欲しいんです。

・on: 副詞で「續けて」「どんどん」「ずつと」などの意味を持ちます。

・I’m staying: 現在進行形は「現在進行中の動作や出來事」や「確定的な未來・豫定」を表はします。ここは後者です。

 

[意味把握チェック]

1 「社長が今日引退を發表しようとしてゐるつて噂があるんだ」

1 「聞いたよ」

2 「わしは會社の將來についての心配なしに、けふにでも引退できるだらう…」

3 「が、君たちみんなは、一緒に仕事をするのに(/共に働く上で)とつてもすばらしいんで、わしはこの先(/ずつと)永久に(社長職に)とどまることになるだらうな」

 

[笑ひのポイント]

・おそらく「退任の噂」はDithers 社長の耳にも入つてゐたのでせう。その噂を否定すべく Dithers 社長らしく皮肉たつぷりに切りかへしたのかと思ひます。