英文讀解自修室

  - in the historical Japanese kana/kanji orthography

・40 宮崎大學 2013 (10) 9パラ

2014-04-28 | 出題英文讀解

     This was a concept of myself that I’d been lacking.  I was an underdog; therefore, I had to control the pace ―― of everything.  This was more than I learned in *English 4W, but the concept was applicable to my *Creative Writing ―― and to all my schoolwork, too.  If my classmates could read our history assignment in an hour, I allowed myself two or three.  If I couldn’t learn to spell, I would keep a list of my most frequently misspelled words ―― and I kept the list with me; I had it handy even for unannounced quizzes.  Most of all, I rewrote everything: first drafts were like the first time you tried a new takedown ―― you needed to drill it, over and over again, before you even dreamed of trying it in a match.  I began to take my lack of talent seriously.

*English 4W: 大学での文学関連の授業名(主に文学作品の読解や批評的分析を学ぶ授業である。)

*Creative Writing: 大学での文学関連の授業名(詩や小説などの創作を行う授業。のちに小説家となった筆者のように、作家志望の学生が受講することが多い。)

 

 

【設問】

4. コーチが筆者のレスラーとしての特徴を表すために用いた比喩表現で、著者の長所を引き出すことになった言葉を、段落[B]から1単語で抜き出しなさい。

5. 筆者はコーチからレスリングを通して何を学び、それを小説家になるためにどのように活かしたか。文章中の具体例に言及しながら記述しなさい。

 

 

9.1  This was a concept of myself that I’d been lacking.

 

[意味把握チェック]  9.1 これが、(それまで)私に缺けてゐた、自分自身についての理解(/解釋/見解)であつた。

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

・過去完了形: 〈had+過去分詞〉のかたちで、過去のある時までの「完了・結果」「經驗」「繼續」などの意味を傳へます。過去のさらに過去であることを示す「大過去」として用ゐられることもあります。ここでは had が縮約形になつてゐます。

 

9.2  I was an underdog; therefore, I had to control the pace ―― of everything.

 

[意味把握チェック]  9.2 私は弱い犬(/弱者/劣等者)なのであつた。それゆゑにペースを制禦しなければならなかつたのだ――それもあらゆることについて、だ。

 

9.3  This was more than I learned in *English 4W, but the concept was applicable to my *Creative Writing ―― and to all my schoolwork, too.

 

[意味把握チェック]  9.3 このことは私が English 4W (の科目)で學んだ以上のものであつたが、その(自己)認識は私が受けた Creative Writing に應用できた――すべての學業にも。

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

・擬似關係代名詞(than): learned の目的語がブランクになつてゐます。先行する more について than I learned in English 4W が説明するといふ文構造になつてゐますから、than が關係代名詞に似たはたらきを擔つてゐると解して than を「擬似關係代名詞」と呼ぶことがあります。「私が~で學んだ以上のもの(/こと)」といつた意味を傳へます。(※「擬似關係代名詞」については2012年8月22日付の拙稿に實際例の解説や例文(16.2.1)があります。畫面右の Back Numbers で該當の月・年をクリックし、Calendar で該當日をクリックしてご利用ください)

 

9.4  If my classmates could read our history assignment in an hour, I allowed myself two or three.

 

[意味把握チェック]  9.4 級友が歴史の(授業の前に、指定された分量の文章を讀んでおく)課題(/宿題)を1時間で讀めるとしたら、私は自身に2時間或は3時間を與へた(/かけることにした)。

 

9.5  If I couldn’t learn to spell, I would keep a list of my most frequently misspelled words ―― and I kept the list with me; I had it handy even for unannounced quizzes.

 

[意味把握チェック]  9.5 綴が覺えられなければ、綴を頻繁に間違へる語のリストを手許に置いておいた――そしてそれを携行しておき、豫告なしの小テストにも備へて役立て(られるやうにしておい)た。

 

9.6  Most of all, I rewrote everything: first drafts were like the first time you tried a new takedown ―― you needed to drill it, over and over again, before you even dreamed of trying it in a match.

 

[意味把握チェック]  9.6 何より、あらゆるものについて書き直しをした。最初の下書(/草稿)は、新しいテイクダウンを初めて試してみるやうなものであつた――それを試合で試してみることを夢みる(に到る)まででさへ、何度も繰り返して練習する必要があつたのだ。

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

the first time について you tried a new takedown が説明を加へてゐると解することができます。關係副詞 whenthat を補つて解するとわかりやすいかもしれません。

 

[語句]

9.6

 

most of all

何よりも

9.6

 

over and over (again)

何度も(何度も繰り返して)

 

9.7  I began to take my lack of talent seriously.

 

[意味把握チェック]  9.7 私は自分の才能不足(/素質が足らないこと)を眞劍に考へ(/受けとめ)始めたのである。

 

 

【設問】

4. コーチが筆者のレスラーとしての特徴を表すために用いた比喩表現で、著者の長所を引き出すことになった言葉を、段落[B]から1単語で抜き出しなさい。

【解答例】

underdog(※8.9)

 

5. 筆者はコーチからレスリングを通して何を学び、それを小説家になるためにどのように活かしたか。文章中の具体例に言及しながら記述しなさい。

【解答に含める内容例と(文番號)】

(筆者はコーチからレスリングを通して何を學び……)

・運動選手としての素質が不足してゐること(4.1)

・素質不足や短所を補ふ方法(4.2)

  ・(具體例)①レスリングにひたむきに打ち込み、研究しつくす(4.2)

    ②試合運びにおいて工夫する: 試合で接戰にしておく(6.1) 亂鬪を避ける(6.2) 技の組み合せ、ポジションの選擇、身體調節により試合ペースを制禦する(6.4) 反撃に仕方を工夫する(8.4-6)

(それを小説家になるためにどのように活かしたか……)

・自己についての理解(素質の不足)を全學業に適用する(9.3)

  ・(具體例)①課題を讀む際に他人の二三倍の時間をかける(9.4) ②綴を間違ひやすい語のリスト作成・携行する(9.5) ③何度も書き直す(9.6)

【解答例】(字數制限がなく、解答スペースもわかりませんので、簡潔に記しておきます)

  レスリングにひたむきに取組み、研究するといつた努力と試合の運び方の工夫とによつて、素質の不足や短所を補ふことができるといふことを、筆者は(レスリングを通して)學んだ。筆者は(讀み書きの苦手を克服して)(小説家になるために)、課題の本を讀む際に他人より多くの時間をかける、綴を間違ひやすい語のリストを作成し携行する、推敲を繰り返すといつた努力と工夫をすることにより、レスリングを通して得た教訓を活かした。


・40 宮崎大學 2013 (9) 8パラ

2014-04-25 | 出題英文讀解

[B]  I won 5-2 when I dominated an opponent; I won 2-1 or 3-2 when I was lucky, and lost 3-2 or 4-3 when I was less lucky. If I got the first takedown, I could usually win; if I lost the first takedown, I was hard-pressed to recover ―― I was not a *come-from-behind man.  I was, as Coach Seabrooke said, “halfway decent” as a counter-wrestler, too. But if my opponent was a superior athlete, I couldn’t afford to rely on my counter-moves to his first shots; my counters weren’t quick enough ―― my reflexes weren’t quick enough.  Against a superior athlete, I would take the first shot; against a superior wrestler, I would try to counter his first move. “Or vice versa, if it’s not working,” Coach Seabrooke used to say.  He had a sense of humor.  “Where the head goes, the body must follow ―― usually,” Ted would add.  And: “An underdog is in a position to take a healthy bite.”

*come-from-behind: 逆転の、逆転が得意な

 

【設問】

4. コーチが筆者のレスラーとしての特徴を表すために用いた比喩表現で、著者の長所を引き出すことになった言葉を、段落[B]から1単語で抜き出しなさい。

(※この設問の解答例は、次囘9パラの解説に掲載します)

 

 

8.1  I won 5-2 when I dominated an opponent; I won 2-1 or 3-2 when I was lucky, and lost 3-2 or 4-3 when I was less lucky.

 

[意味把握チェック]  8.1 相手を壓倒してゐる(/相手より優勢のとき)には5對2で勝つた。運が良いときには2對1か3對2で勝ち、それほど運が良くないときには3對2か4對3で敗れた。

 

8.2  If I got the first takedown, I could usually win; if I lost the first takedown, I was hard-pressed to recover ―― I was not a *come-from-behind man.

 

[意味把握チェック]  8.2 私が最初のテイクダウンをとれば、たいてい勝てた。最初のテイクダウンをとられると、それを取り戻さうとして苦しんだ――私は逆轉が得意な選手ではなかつたのだ。

 

8.3  I was, as Coach Seabrooke said, “halfway decent” as a counter-wrestler, too.

 

[意味把握チェック]  8.3  Seabrooke コーチが言ふやうに、私はレスリングの對戰者としては「halfway decent(まあまあ/そこそこ/中途半端に良い)」なのでもあつた。

 

8.4  But if my opponent was a superior athlete, I couldn’t afford to rely on my counter-moves to his first shots; my counters weren’t quick enough ―― my reflexes weren’t quick enough.

 

[意味把握チェック]  8.4 しかし對戰相手が優れた竸技者であれば、相手の最初の一撃に對して迎へ撃つ動きをあてにする(/に頼る)ほどの餘裕はなかつた。私の反撃はすばやさが足りなかつた――反射的な動きが十分にすばやくなかつたのだ。

 

[語句]

8.4

 

rely on

~にたよる / ~をあてにする

 

8.5  Against a superior athlete, I would take the first shot; against a superior wrestler, I would try to counter his first move.

 

[意味把握チェック]  8.5 (運動能力の高い)優れた竸技者に對しては、私は最初の一撃を加へようとしたし、レスリング巧者に對しては、相手の最初の一撃に反撃しようとした。

 

8.6  “Or vice versa, if it’s not working,” Coach Seabrooke used to say.

 

[意味把握チェック]  8.6  Seabrooke コーチは「效きめがなければ、逆にするんだな」と言ふのが常だつた。

 

[語句]

8.6

 

vice versa

[vàisi və́:rsə]  逆に/反對に

 

8.7  He had a sense of humor.

 

[意味把握チェック]  8.7 彼はユーモアを解する心の持ち主だつた。

 

8.8  “Where the head goes, the body must follow ―― usually,” Ted would add.

 

[意味把握チェック]  8.8 「頭が行くところに身體はついていかなくちやならないんだ――たいていはな」と Ted は附け加へたものだつた。

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

where(接續詞): 「~するところに」「~へ」「~に」。積極的な姿勢を求めるアドヴァイスでせうか。

 

8.9  And: “An underdog is in a position to take a healthy bite.”

 

[意味把握チェック]  8.9 それに、「弱い犬は(強い)相手にガブリと食ひつけ(/て勝て)る位置にあるんだ」とも。

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

・強い犬(強者)が、勝てる優位な立場にあることに對して、獨特な言ひ方で(やや自嘲的な或は負け惜しみの意味合ひも感じられるものの)、それでも弱い犬(弱者)にもわるくない面やかへつて強みになるところもあるのだと説いてゐるのかと思ひます。(※この表現については既に「定譯」があるのか或はこれからできるのか……ある種の名文句として殘るのではないかといふ印象を持ちました)


・英文讀解のヒント (2) 《倒置の條件節》

2014-04-23 | 英文讀解のヒント

1  次の英文を音讀または默讀しながら意味をとらへ、下線部については意味を日本語で言つて、または書いてみませう。(※讀み方がわからない語はあとで辭書で調べておきませう)

     Globalization in mathematics as well as in science and engineering played a major part in the revolution of thought and social organization that helped to transform Europe into its modern shape.  Europe would have been much poorer had it resisted the globalization of mathematics, science and technology at that time, and to a great extent the same – working in the opposite direction – is true today.  To identify the phenomenon of the global spread of ideas with a form of ideological imperialism would be a serious error, somewhat similar to the way any European resistance to Eastern influence would have been at the beginning of the last millennium.

(02 學習院大學 2010 4パラ; 2011年5月13日掲載)

 

2  下線部の解説

2.1  had it resisted ~は假定法過去完了の條件節で、(助)動詞が主語の前に置かれる「倒置」で表現されてゐます。had it resisted は if it had resisted とほぼ同じ意味ですが、倒置の場合、formal and literary style であると言はれます。ここでは主節のうしろにコンマ無しで置かれてゐるため讀みにくくなつてゐます。

■諳誦例文

2  Had the doctor come an hour earlier, the injured man would have been saved.

    (醫師が1時間早く來たなら、怪我人は救はれたであらうに)

(※2011年8月10日付の拙稿に「倒置の條件節」の例文をいくつか載せてをります)

  假定法過去完了は、過去の事實とは異なる事態を設定し、その結果を推定する際に使はれます。the Beatles の1965年の曲 If I needed someone のなかにこんなフレーズがありました。

Had you come some other day

Then it might not have been like this

But you see now I’m too much in love

  歌詞には隱れた意味がこめられてゐることがあるので正確なところはわかりませんが、字面だけでみるなら「君がちがふ日にやつて來てゐたなら、こんな風ではなかつたかもしれないが」といつた意味を傳へてゐるのでせう。

  Neil Sedaka の1961年の曲  Don’t lead me on には should ではじまる倒置の條件節が見えます。

 

Should we part

I’ll get along somehow

So if you’re gonna break my heart

Then come on, break it now

  「(たとへ)ぼくたちが別れることになつても、ぼくは何とかやつていくさ」くらゐの意味になるでせうか。この曲は「すてきな16才」のB面で發賣され、邦題は「泣かさないで」でした。以前は歌詞をみても第三聯のこの部分の意味がわかりませんでしたが、英文法で「倒置」と「讓歩(文脈による)」を學んでやうやく意味がつかめたやうに思ひます。

2.2  – working in the opposite direction –: 分詞の句が插入されてゐます。 the same is true (「同じことがあてはまる」)といふ文に、「逆の方向に作用して」とそのまま意味を補足して解すれば可いでせう。

 

3  意味把握チェック

  科學や技術における globalizationと同樣、數學における globalization は、現代のヨーロッパへの變貌を助けた思想と社會組織の改革に大きな役割を果した。ヨーロッパが當時の數學、科學、技術のglobalizationに抗つてゐたなら、ヨーロッパははるかに貧しかつたことであらう。そして、今日同じことが-作用する方向は逆であるが-大いにあてはまるのである。思想の地球規模の擴散現象をイデオロギー上の帝國主義の一形態とみるなら、大きな誤りであらうし、それは、かりにヨーロッパがこの1000年の初期(11世紀ごろ)に東洋の影響に對して抵抗してゐたなら示したであらう(抵抗する)すがたに幾分か似てゐる。

 

4  意味把握チェックの下線部を參考にして、元の英文に戻してみませう。

 

※下線部以外の解説については2011年5月13日付のブログ記事をご參照ください。畫面右の Back Numbers で該當の月・年をクリックし、Calendar で該當日をクリックしてご利用ください。


・40 宮崎大學 2013 (8) 7パラ

2014-04-21 | 出題英文讀解

     I rarely won by a *fall; in five years of wrestling at Exeter, I probably *pinned no more than a half-dozen opponents.  I was almost never pinned ―― only twice, in fact.

*fall: レスリングで相手の両肩をマットに押さえつけること

*pin: レスリングで「相手をフォールする」の意

 

 

7.1  I rarely won by a *fall; in five years of wrestling at Exeter, I probably *pinned no more than a half-dozen opponents.

 

[意味把握チェック]  7.1 私がフォール勝ちすることは滅多になかつた。エクセター(校)でレスリングをやつた五年でおそらく六人(の對戰相手)しかフォールしなかつた。

 

[語句]

7.1

 

no more than

~に過ぎない/わづか~/たつた~

 

7.2  I was almost never pinned ―― only twice, in fact.

 

[意味把握チェック]  7.2 フォールされることはほとんど無かつた――實のところ二囘だけだ。

 

[語句]

7.2

 

in fact

實のところ/實際上


・40 宮崎大學 2013 (7) 6パラ

2014-04-18 | 出題英文讀解

     ()What Coach Seabrooke taught me was that I should keep the score close through two periods ―― close enough so that one *takedown in the third period could win the match.  And I needed to avoid “mix-ups” ―― *free-for-all situations that were not in either wrestler’s control.  (The outcome of such a scramble favors the better athlete.)  Controlling the pace of the match ―― a combination of technique, correct position, and physical conditioning ―― was my objective.  I know it sounds boring  ――I was a boring wrestler.  The pace that worked for me was slow.  I liked a low-scoring match.

*takedown: レスリングで立っている相手をマットに倒す一連の技(ここでは、そのまま「テイクダウン」と訳して良い。)

*free-for-all situations: 様々な技を次々と繰り出して闘い合う状況

 

【設問】

3. 下線部(ア)を日本語に訳しなさい。

 

 

6.1  ()What Coach Seabrooke taught me was that I should keep the score close through two periods ―― close enough so that one *takedown in the third period could win the match.

 

[意味把握チェック]  6.1  Seabrooke コーチが教へてくれたのは、第一、第二ピリオドを通して(/2つのピリオドが終了するまで)得點を接近させておく(/接戰にしておく)――第三ピリオドでのテイクダウンひとつで試合に勝てるやう十分に接近させておくべきだ、とふことである。

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

・設問は和譯を求めてゐます。やや複雜な文構造を見拔き、意味を正確に把握できるか、を觀ようとしてゐるのでせう。全體は第二文型(SVC)です。補語が that 節ですが、close をさらに詳しく説明する中に、もうひとつの節が入り込んでゐます。

keep the score close: 「得點を接近した状態に保つ」→「點差がひらかないやうにしておく」「接戰を續ける」。close は形容詞で、發音は [klous] です。

・この close について――を置いてさらに詳しく説明してゐます。「十分に近い状態」……何に「十分に」か……「一囘のテイクダウンをとれば試合に勝てるやうに十分に近くしておく」と述べてゐます。〈so that S can/will/may ~〉のかたちは「目的」を表はします。

[例文]

Speak clearly so that the audience will understand you.

(聽衆があなたの話を理解するやうに明瞭に話しなさい)

 

6.2  And I needed to avoid “mix-ups” ―― *free-for-all situations that were not in either wrestler’s control.

 

[意味把握チェック]  6.2 それで私は「mix-ups(亂鬪)」――(つまり)いづれのレスラーにも制禦されない、様々な技を次々と繰り出して闘ひ合ふ状況――を避ける必要があつた。

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

・引用符: 語本來の意味ではなく、レスリング試合中の特定の状態をこれに喩へて用ゐてゐますから引用符に入れたのでせう。――の後に説明を加へてゐます。

 

6.3  (The outcome of such a scramble favors the better athlete.)

 

[意味把握チェック]  6.3 (そのやうな(點の取りあひの)亂戰の結果は、優れた選手の方を利するのである)

 

6.4  Controlling the pace of the match ―― a combination of technique, correct position, and physical conditioning ―― was my objective.

 

[意味把握チェック]  6.4 試合のペースを制禦すること――技の組み合せ、適切なポジション(選擇)と、身體調節(による制禦)――が私の目標であつた。

 

6.5  I know it sounds boring ―― I was a boring wrestler.

 

[意味把握チェック]  6.5 そんな状況(/さういふ試合の進め方)は面白くないやうに(/退屈なものに)聞こえるとは承知してゐる――私は面白みのない(/退屈な)レスラーであつた。

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

it: 6.4で示された「状況を指」してゐるのではないかと思ひます。my objective を指してゐると解することも可能でせう。

 

6.6  The pace that worked for me was slow.

 

[意味把握チェック] 6.6 私に具合の好い(/有效な)試合の進め方(/速度)はゆつくりしたものであつた。

 

6.7  I liked a low-scoring match.

 

[意味把握チェック]  6.7 私は低得點の試合が好きだつた。

 

 

【設問】

3. 下線部(ア)を日本語に訳しなさい。

・解答例は 6.1 參照。


・40 宮崎大學 2013 (6) 5パラ

2014-04-14 | 出題英文讀解

     A high school wrestling match is six minutes long, divided into three two-minute *periods ―― with no rest between the periods.  In the first period, both wrestlers start on their feet, a neutral position with neither wrestler having an advantage.  In the second period, in those days, one wrestler had the choice of taking the top or the bottom position; in the third period, the choice of positions was reversed.  (Nowadays, the options of choice have been expanded to include the neutral position, and the wrestler given the choice in the second period may *defer his choice until the third.)

*period(s) : (試合の前半、後半などの)一区切り(日本語でも「ピリオド」と訳す。)   

*defer: (実行・行動・考慮などを)延期する、据え置く、遅らせる

 

 

5.1  A high school wrestling match is six minutes long, divided into three two-minute *periods ―― with no rest between the periods.

 

[意味把握チェック]  5.1 高校レスリングの試合は6分の長さで、2分のピリオド3つに分けられてゐる――ピリオド間の休憩は無い。

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

・分詞構文: 過去分詞に率ゐられた句が「付帶状況」を表はしてゐます。and is divided ~ ほどの意味を傳へてゐます。

 

5.2  In the first period, both wrestlers start on their feet, a neutral position with neither wrestler / having an advantage.

 

[意味把握チェック]  5.2 第一ピリオドでは、レスラー雙方が立ち姿勢で、(つまり)どちらにもアドバンテーヂ(/優先權)なしのニュートラル・ポジションで始める。

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

・〈with OC〉: 「neither wrestlerhaving an advantage の状態で」といふ意味を添へてゐます。このかたちは、辭書では with の「付帶状況」の項、文法書では「獨立分詞構文」の項に説明がみつかります。

・立つて向きあふかたちで始めるやり方と、いづれかに優先的な位置どりを與へて始めるやり方があることが推察されます。

 

5.3  In the second period, in those days, one wrestler had the choice of taking the top or the bottom position; in the third period, the choice of positions was reversed.

 

[意味把握チェック]  5.3 當時、第二ピリオドでは一方のレスラーがトップまたはボトムのポジションを選擇でき、第三ピリオドではポジションの選擇權が入れ替はつた(/もう一方の選手に與へられた)。

 

5.4  (Nowadays, the options of choice have been expanded to include the neutral position, and the wrestler given the choice in the second period may *defer his choice until the third.)

 

[意味把握チェック]  5.4 (今日では選擇肢が擴大されてニュートラル・ポジションを含めるやうになつてきてをり、第二ピリオドで選擇權を與へられたレスラーは選擇を第三ピリオドまで遲らせてもよい)

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

・不定詞(副詞的用法): 「the options of choice が擴大されてきた」と述べ、その説明を不定詞句が行なつてゐます。

・過去分詞: given the choice in the second period が前の the wrestler を修飾してゐます。


・40 宮崎大學 2013 (5) 4パラ

2014-04-11 | 出題英文讀解

     Not only did Ted Seabrooke teach me how to wrestle; more important, he *forewarned me that I would never be better than “halfway decent” as a wrestler ―― because of my limitations as an athlete.  He also impressed upon me how I could compensate for my shortcomings: I had to be especially dedicated ―― a thorough student of the sport ―― if I wished to overcome my lack of any observable ability.  “Talent is overrated,” Ted told me.  That you’re not very talented needn’t be the end of it.”

*forewarn: 前もって警告する

 

 

4.1  Not only did Ted Seabrooke teach me how to wrestle; more important, he *forewarned me that I would never be better than “halfway decent” as a wrestler ―― because of my limitations as an athlete.

 

[意味把握チェック]  4.1 Ted Seabrooke は私にレスリング(のやり方)を教へてくれただけではなかつた。一層重要なことなんだが、私はレスラーとしては「まあまあ」以上には決していかない(/「そこそこ」どまりだらう)と前もつて私に警告したのだ――私には運動選手としては限界があつたから。

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

・倒置: 否定の副詞語句が先頭に置かれたため〈助動詞-主語-動詞〉の順に配置されてゐます。ここは強調表現の一種と觀て可いでせう。

 

[語句]

4.1

 

because of

~のために/~が原因で

4.1

 

athlete

[ǽƟli:t]

 

4.2  He also impressed upon me how I could compensate for my shortcomings: I had to be especially dedicated ―― a thorough student of the sport ―― if I wished to overcome my lack of any observable ability.

 

[意味把握チェック]  4.2 彼は私の缺點をどうすれば埋め合せることができるかについて私の胸に刻みつけもした。(その方法とは)ひたむきに打ち込まなければならない――レスリングを研究しつくして――(何であれ)目につく能力が缺如してゐることを克服したいのなら(、といふものであつた)。

 

4.3  “Talent is overrated,” Ted told me.

 

[意味把握チェック]  4.3 「才能は重視され過ぎてるんだ(/過大に評価されてゐる)」と Ted は私に語つた。

 

4.4  That you’re not very talented needn’t be the end of it.”

 

[意味把握チェック]  4.4 そんなに才能に惠まれてないといふことで、もうおしまひとは限らないんだ」

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

that 節が主部となつてゐます。

it(Situation ‘it’/Indefinite ‘it’): 「漠然と状況を表はす」 it とみます。

・引用符が片方しかついてゐませんでしたが、おそらく That でせう。コーチのことばが續いてゐます。

 

[語句]

 4.4 needn’t=need not  「~とは限らない」


・英文讀解のヒント (1) 《too ~ to-不定詞(…)》

2014-04-09 | 英文讀解のヒント

1  次の英文を音讀または默讀しながら意味をとらへ、下線部については意味を日本語で言つて、または書いてみませう。(※讀み方がわからない語はあとで辭書で調べておきませう)

     Long known for importing a multitude of ideas and technologies from other countries, Japan’s innovation and creativity have only rarely been applied to language study.  People around the world know they need language skills to perform their increasingly communication-based, internationally-oriented jobs.  For most Japanese, though, using English at work or in life remains a romantic daydream, too tough to make real.

01 聖心女子大學 2008 1パラ; 2011年4月4日掲載)

 

2  下線部の解説

2.1  too 以下は、a romantic daydream の(ひいては using English at work or in life の)説明が後置されたものです。〈tooto-不定詞(…)〉のかたちでは、まづ too tough と述べ、何が難しいかについての説明を不定詞で補足します。このかたちでの…部分は否定的な意味合ひで捉へ、「あまりに~なので…しない/できない」と解します。

■諳誦例文

1

 

It’s too late for the pubs to be open.

 

 

(時間が遲いのでパブは開いてゐない)

  ※ for the pubs を置いて、不定詞の意味上の主語を示してゐます。

 

2.2  下線部では make の目的語がブランクになつてゐます。本來はmake a romantic daydream real で、a romantic daydreamreal にする、つまり「夢想を實現する」(SVOC-第5文型)といふ意味です。その a romantic daydream が前に出て、make real が現はれたと考へるとわかりやすいでせう。例へば、假に“The romantic daydream is too tough to make real”と置いてみるなど。

 

2.3  説明後置のかたちに馴れると英語が讀みやすく(/聽きやすく)なります。關係代名詞節や名詞に續く同格の名詞節などでは日本語との順のちがひがあるため、とまどつた經驗をお持ちの方もあるでせう。下線部もさうしたかたちのひとつであり、今後も「英文讀解のヒント」で何度か採りあげることになるかと思ひます。かうした英語の構造を意識しつつ、前から順に文意を頭に入れてゆく練習をされることをお勸めします。音讀はさうした方法のひとつです。

 

3  意味把握チェック

  日本は、他国から多くの思想や科学技術を導入することで長く知られてきたが、その革新性や創造性は言語の學習にはごくまれにしか適用されてこなかつた。世界中の人々は、ますます相互の意思疏通をはかるとともに諸外國を相手にするやうになつてゆく仕事を遂行するため、言語の技能が必要だと承知してゐる。だが、ほとんどの日本人には、仕事或は生活で英語を使ふことは非現實的な夢想にとどまつてをり、それはあまりに困難で實現できさうもないのである。

 

4  意味把握チェックの下線部を元の英文に戻してみませう。

 

※下線部以外の解説については上記日付のブログ記事をご參照ください。畫面右の Back Numbers で該當の月・年をクリックし、Calendar で該當日をクリックしてご利用ください。


・40 宮崎大學 2013 (4) 3パラ

2014-04-07 | 出題英文讀解

     Coach Seabrooke had been a Big 10 Champion and a two-time All-America at Illinois; he was way overqualified for the job of coaching wrestling at Exeter ―― his teams dominated New England prep-school and high-school wrestling for years.

 

 

3.1  Coach Seabrooke had been a Big 10 Champion and a two-time All-America at Illinois; he was way overqualified for the job of coaching wrestling at Exeter ―― his teams dominated New England prep-school and high-school wrestling for years.

 

[意味把握チェック]  3.1 Seabrooke コーチは Big 10 (Wrestling Championships) で優勝してゐたし、イリノイ大學で(在學時に)全米代表に二度なつてゐた。エクセターのレスリング・コーチの仕事をするには隨分と過ぎた資格・能力をそなへてゐた――彼の(指導する)チームはニュー・イングランド(地域)の私立中等學校と高等學校のレスリングで長年優位を占めてゐた。

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

way は副詞として使はれてゐます。「ずつと」「はるかに」など強調の意味を添へる口語表現です。

 

[語句]

3.1  prep school (=preparatory school) : 進學を念頭に置いた私立中等學校

3.1  Big 10 Wrestling Championships: 大學間のレスリング大會名


・40 宮崎大學 2013 (3) 2パラ

2014-04-04 | 出題英文讀解

[A]  When you love something, you have the capacity to bore everyone about why ―― it doesn’t matter why.  Wrestling, like boxing, is a weight-class sport; you get to bump into people your own size.  You can bump into them very hard, but where you land is reasonably soft.  And there are civilized aspects to the sport’s combativeness: I’ve always admired the rule that holds you responsible, if you lift your opponent off the mat, for your opponent’s “safe return.”  But the best answer to why I love wrestling is that it was the very first thing I was any good at.  And what limited success I had in the sport I owe completely to my first coach, Ted Seabrooke.

 

【設問】

2.  段落[A]には、筆者がレスリング競技を好む理由が書かれている。ここで理由として書かれているものを選択肢(a)~(h)から三つ選びなさい。

(a) 肉体を鍛えることができるから。

(b) 自分にとって初めて特技といえるものだったから。

(c) 攻撃中も相手の安全に配慮する、というルールが洗練されていると思うから。

(d) 反射神経が磨かれるから。

(e) 自分と同じくらいの大きさの相手と対戦すれば良いから。

(f) 自分よりも身体の大きな相手と対戦する楽しみがあるから。

(g) ほかの苦手なスポーツも得意になったから。

(h) 集中力を養うことができるから。

 

 

2.1  When you love something, you have the capacity to bore everyone about why ―― it doesn’t matter why.

 

[意味把握チェック]  2.1 何かがとても好きなときには、好きな理由(/どうして好きか)について皆をうんざりさせることができる――(つまり)好きな理由(/どうして好きか)はどうでもいいのだ。

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

・省略: why のあとに主語、動詞などが省略されてゐると考へると良いでせう。例へば (why) you love it といつた節を補つてみるなど。(※why は名詞化してをり、「理由」「原因」などの意味で使ふこともあります)

preparatory it(形式主語): 眞主語は why (you love it) と考へると良いでせう。

 

2.2  Wrestling, like boxing, is a weight-class sport; you get to bump into people your own size.

 

[意味把握チェック]  2.2 レスリングは、ボクシング同樣、體重制のスポーツであり、自分と同じ體格の人々にぶつかつてゆくことになる(/ことができる)。

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

・〈getto-不定詞(~)〉:「~する機會がある」「~することができる」「徐々に~するやうになる」

 

2.3  You can bump into them very hard, but where you land is reasonably soft.

 

[意味把握チェック]  2.3 相手選手にひどくぶつかることもできるが、落ちるところはかなり柔い。

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

where (關係副詞/接續詞): 「~する場所」。關係副詞の先行詞が省略されたものと考へると解しやすいでせう。接續詞として關係代名詞的に用ゐられる、とする辭書もあります。

 

2.4  And there are civilized aspects to the sport’s combativeness: I’ve always admired the rule that holds you responsible, if you lift your opponent off the mat, for your opponent’s “safe return.”

 

[意味把握チェック]  2.4 そしてレスリングの鬪ひには洗煉された面があり、選手が竸技相手を抱へ上げてマットから離したら「安全に戻」す責任が維持されるルールを私は常に稱揚してきた。

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

・第五文型(SVOC): 動詞が hold ですから「OがCである状態を保つ」、つまり選手が responsible である状態を維持するルールだといふことになります。

・總稱人稱(you): 「不特定一般の人々」を指してゐます。

 

2.5  But the best answer to why I love wrestling is that it was the very first thing I was any good at.

 

[意味把握チェック]  2.5 しかし、どうしてレスリングが好きかといふ疑問への最も適切な答は、(程度はどうあれ)自分が得意であつた全くの最初のものだつたといふことである。

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

・強調: very を置いて the first thing の意味を強調してゐます。

 

2.6  And what limited success I had in the sport I owe completely to my first coach, Ted Seabrooke.

 

[意味把握チェック] 2.6 さうしてレスリングでのささやかな成功のすべては完全に最初のコーチ Ted Seabrookeのおかげである。

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

what: 關係代名詞 what を形容詞的に用ゐると what ~で「~はすべて」の意味になることがあります。さらに limited が置かれてゐますから「限られてはゐるが全ての成功は」と解します。ここでは謙遜の乃至はやや自嘲的な響きが感じられますから「ささやかな成功」としてみました。この limited については次の例文が參考になるでせう。

[例文]

He sent his mother what little money he had saved.

(彼は貯へたお金は少ないながらも全部母親に送つた)

 

[語句]

 2.6 coach  [koutʃ]

 

【設問】

2.  段落[A]には、筆者がレスリング競技を好む理由が書かれている。ここで理由として書かれているものを選択肢(a)~(h)から三つ選びなさい。

(a) 肉体を鍛えることができるから。

(b) 自分にとって初めて特技といえるものだったから。

(c) 攻撃中も相手の安全に配慮する、というルールが洗練されていると思うから。

(d) 反射神経が磨かれるから。

(e) 自分と同じくらいの大きさの相手と対戦すれば良いから。

(f) 自分よりも身体の大きな相手と対戦する楽しみがあるから。

(g) ほかの苦手なスポーツも得意になったから。

(h) 集中力を養うことができるから。

【解答】 ※2.1でレスリングが好きな理由を述べることを示唆して、このパラグラフで理由を展開してゐます。

(b)  2.5 の内容に合致します。

(c)  2.4 の内容に合致します。

(e)  2.2 の内容に合致します。


・「英文讀解のヒント」連載について

2014-04-02 | 英文讀解のヒント

  四月より「英文讀解のヒント」を月二囘くらゐのペースで水曜日に連載いたします。これは、英文の特質考察と、例文による「かたち」認識とを通じて、難所の越え方(讀解のコツ)をさぐることを目的とするものです。

  「英文讀解のヒント」では、これまで本ブログで解説してきた英文の中から「難所」と思はれる箇所を適宜拾ひ上げ、演習形式をとりつつ、上記目的に向ふことといたします。豫測はし難いのですが、百内外の項目を扱ふことになるのか、とは想定してゐます。ブログに採り上げた英文にもとづく記事ですから、扱ふ項目の順については原則が立てられさうにありません(※當面はブログ掲載順を追ふことになります)。體系的網羅も難しいので、それは文法書に委ねることといたします。

  健康上の理由であまり無理がきかないものですから、蝸牛ペースでゆるゆると進むことになりますが、よろしければお付き合ひください。なほ「出題英文讀解」は、從來通り月曜日と金曜日の掲載です。