英文讀解自修室

  - in the historical Japanese kana/kanji orthography

・用例研究 137 〈would rather - 假定法過去の節〉

2018-07-30 | 用例研究

 [用例研究 137] 〈would rather-假定法過去の節〉

  would rather の後に、先囘紹介した原形不定詞ではなく假定法過去を用ゐた節を置くことがあります。現實に起こつてゐる事實としてではなく、話者の頭の中の假定として述べるために、直説法ではなく假定法のシステムを用ゐて表現します。

  このかたちは文の主語と、續く節の主語が異なるときに使はれます。たとへば、相手に自分が望む行動を促したいときなど、假定法を使ふと遠囘しな表現となり、叮嚀・控へめに意向を傅へることができます。

 

□  參考例文: 相手に自分の希望を傅へます。

137.1      Shall I open the window? ~ I'd rather you didn't.

                   窗を開けませうか。~ (どちらかといへば)開けないでほしいです。

137.2      I'd (/I would) rather you didn't smoke in my room.

                   私の部屋ではタバコを吸はないでいただきたいのですが。

137.3     I would rather you came tomorrow.

                 むしろ明日來ていただきたいのですが。

 

□  參考例文: 第三者の意向を傅へる例です。

137.4      My wife would rather we didn't see each other any more.

                   私の妻は、私たちがもう會はないでほしいと望んでゐるんですが。

 

□參考例文: 現在形や假定法現在を用ゐることも可能とはされますが、ふつうは使はれてゐないやうです。

△137.5 I'd rather he goes home now. / I'd rather he go home now.

                 彼には今歸宅してほしい。

□參考例文: 過去の行爲について述べるときに過去完了時制を用ゐることも可能ですが、ふつうは、後のはうに擧げた I wish ~のはうが使はれます。

137.6     I'd rather you hadn't done that. / I wish you hadn't done that.

                 君にはそんなことをしてほしくなかつたんだが。

 

[用例研究 137]〈would rather-假定法過去〉

 

  (BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake)

1  May I give him something?

2  I’d rather you wouldn’t…We don’t want to spoil him.

3  N-not even a tiny little m-morsel?

 

[解説]

2

・I’d rather の後に節を置き、假定法過去の動詞を使つてゐます。wouldn’t の後に give him anything が省略されてゐます。「(どちらかといへば)犬に食べ物をやらないで欲しいんだが…」といつた意味かと思ひます。

・spoil: to make (especially a child) selfish from having too much attention or praise

3

・morsel [mɔ́r:sǝl]: 一口 / 一片 / 少量

・N-not, m-morsel: 犬に押し倒され發聲がむつかしい状況を表はしてゐます。

 

[意味把握チェック]

1 「犬に何かやつていいかい」

2 「(どちらかといへば)(犬に食べ物を)やらないで欲しいんだが…。甘やかし(て行儀の惡い犬にし)たくないんだよ」

3 「ほんの小さなかけらでもかい」

 

[笑ひのポイント]

・Dagwood は小さなかけらをやらうとする素振でも見せたのか…「甘やかしたくない」と主人は言ふけれど、すでに甘やかされて(行儀の惡いペットになつて)しまつてゐた、といふわけでせうか。


・用例研究 136 〈would rather~(than…)〉

2018-07-23 | 用例研究

 

[用例研究 136]〈would rather~(than)〉

  would rather~(than) は「(するよりは)むしろ~したい」「(するくらゐなら)~したはうがましだ」「どちらかといふと~したい」などの意味を表はします。~には原形不定詞(/動詞原形)が置かれ、話者の念頭にある動作(現在の事實ではない)を表現します。not は原形不定詞の直前に置きます。

□    參考例文

136.1

 

I'd rather say nothing than tell a lie.

 

 

嘘をつくよりは何も言はないでゐたい。

□    參考例文:否定の例です。

136.2

 

If you would rather not receive this information, please uncheck the box.

 

 

もしこの情報をうけとりたくないなら、ボックスのチェックを外してください。

136.3

 

You'd rather not wake a sleeping dog, would you?

 

 

君も寢てゐる子を起すやうなまねはしたくないだらう。

□    參考例文: 疑問文の例です。

136.4

 

Which would you rather have-meat or fish?

 

 

君はどつちが食べたいですか-肉、それとも魚ですか。

□    參考例文: than 以下を省略した例です。

136.5

 

I would rather wait and see.

 

 

私はどちらかといふと靜觀してゐたい。

 

  would rather~(than)は同じ意味で would sooner~(than) /  had rather~(than) /  had sooner~(than)といつたかたちになることがあります。(※Michael

Swan は Practical English Usage の would rather の項で、had rather は古い英語では使はれてゐて、文法(書)には見出されるものの、通常は使はれないと記してゐます。)sooner については、Neil Sedaka が1960年に發表した Run Samson Run には次のやうな歌詞があつたことを思ひ出します。

I’d sooner trust a hungry lion than a gal with a cheatin’ heart.

 

[用例研究 136]〈would rather~(than)〉: Dagwoodが新人社員を連れて社内を案内してゐるのでせう。

 

  (BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake)

1  Who’s that gentleman?

1  That’s Twitchell...  He’s Mr. Dithers’ right-hand man.

2  And the one over there?

2  That’s Carrigan...  He’s Mr. Dithers’ left-hand man.

3  And who are you?

4  I’d rather not say.

 

[解説]

1

・right-hand は語をハイフンでつないで形容詞のはたらきをしてゐます。「(助手・補助者として)最も信頼できる、片腕となる、腹心の」を意味します。a right-hand man はいはば「右腕」、社長の信頼あつい腹心といつたところでせうか。比喩的表現で單に a right hand と表現されることもあります。

2

・ところが left-handには right-hand ほどの確立された意味合ひはないやうです。この漫畫の文脈で意味をさぐつてみます……「右腕」といふほどの能力はないこと、不器用であることが示唆されてゐますが、紹介の場面で使はれてゐること、上司の片腕として言及されてゐることを考慮すると、さほど否定的な意味合ひではないやうに感じられます。「右腕」ほどのはたらきはできないが、曲がりなりにもどうにか役には立つてゐる…そんな存在かと。しかし、確信はもてませんので、諸兄の御教示をいただけるとありがたいです。[意味把握チェック]では「左腕」としてみました。

3

・boom [bu:m]: 擬聲語です。A loud deep sound that you can hear for several seconds after it begins といつた説明があります。大砲や雷などのとどろき、蜂などのぶんぶんいふ音などを描寫します。

4

・    不定詞、分詞、動名詞など準動詞を否定する語は直前に置きます。參考例文136.2、136.3 參照。

 

[意味把握チェック]

1 「あの人は誰ですか?」

1 「あれは Twitchell … Dithers さん(/社長)の右腕(的存在)なんだ」

2 「で、向うの人は?」

2 「あれは Carrigan … Dithers さん(/社長)の左腕(的存在)だな 」

3 「で、あなたは(誰/どんな存在なの)?」

4 「(どちらかといふと)言ひたくないんだ」

 

[笑ひのポイント]

・名前の紹介の際に、社内でどんな存在であるかに言及したため、Dagwood は自分の名前を問はれて I’d rather not say と口にする破目に陷つてしまひました。


・用例研究 135 〈假定法過去-假定法過去完了〉

2018-07-16 | 用例研究

  先囘述べた假定法の「パターンと例文」として、以下の1~10のやうなものを考へたことがあります。とかく混亂しがちな假定法をできるだけすつきりと覺えることを優先して竝べてみたものです。右側の≪≫でそれぞれのかたちを示し、「假定法のシステム」で動詞、助動詞等を用ゐる部分に下線を施してゐます。これを簡潔な例文で覺えてやるとわかりやすくなるのではないかと思ひます。(※かつて拙稿で紹介した諳誦例文S.1~S.10を添へてみます。注釋*の詳細や他の例文については、各項の日附の拙ブログ記事を御覽ください。畫面右の Back Numbers で該當の月・年をクリックし、Calendar で該當日をクリックしてご利用ください。)

 

1  「if・假定法過去」型: ≪if 過去形, would*原形.≫(2011年5月25日)

S.1  If I had a lot of nerve, I would tell you the truth.

もし私に十分な勇氣があれば、あなたに眞實を話すのですが。

     ※勇氣がもてず眞實が語れない状況で述べてゐます。

 

2  「as if・假定法過去」型: ≪直説法・as if 過去形.≫(2011年6月1日)

S.2  He speaks as if he were an expert.

彼はまるで專門家であるやうな口のきき方をする。

     ※實際には專門家ではないことがわかつてゐる状況で述べられてゐます。

 

3  「wish・假定法過去」型: ≪wish (that) 過去形.≫(2011年6月8日)

S.3  I wish I were a billionaire.

私が億萬長者であればなあ。

 

4  「if・假定法過去完了」型: ≪if had過去分詞, would* have 過去分詞.≫(2011年6月15日)

S.4  If you had worked harder, you would have passed your exam.

もつとよく勉強してゐたら、あなたは試驗に受かつただらうに。

 

5  「as if・假定法過去完了」型: ≪直説法 as if had過去分詞.≫(2011年6月22日)

S.5  He talks as if he had done all the work himself.

彼はまるでその仕事を自分ひとりでやつたかのやうな口ぶりだ。

 

6  「wish・假定法過去完了」型: ≪wish (that) had過去分詞.≫(2011年6月29日)

S.6  I wish you had been here yesterday.

あなたが昨日ここにゐたら良かつたのになあ。

 

7  「if・should」型: ≪if should 原形, would*原形 / will* 原形 / 命令法.≫(2011年7月6日)

S.7  It would be terrible if all the elevators in skyscrapers should stop running.

萬一高層ビルのエレベーターがすべて停止することがあれば恐ろしいことだらう。

 

8  「if・were to」型: ≪if were* to原形, would*原形.≫(2011年7月13日)

S.8  What would you do if war were to break out?

假に戰爭が起こるやうなことになれば、君はどうしますか。

 

9  「propose」型: ≪propose * that 原形*.≫(2011年7月20日)

S.9  He proposed to us that the plan be put into practice at once.

彼は、その計畫をただちに實行に移すことを私たちに提案した。

 

10  「It is desirable」型: ≪It is desirable * that 原形*.≫(2011年7月27日)

S10  It is desirable that the course in general science be taken before the chemistry course.

化學の講座の前に一般(教科としての)科學の講座を履修することが望ましい。

 

  さらに大學入試對策として習得しておいたはうが良い型には以下のやうなものが考へられます(※私見です)。

11  「It is time」型: ≪It is time that 過去形≫(2011年8月3日)

12  「would rather」型: ≪would rather 原形 (than~)≫(2018年7月23, 30日)

13  「had better」型: ≪had better 原形≫(2018年8月6日)

14  「if only」型: ≪if only 過去形/ had 過去分詞≫(2011年8月3日)

15  「if it were not for」型: ≪if it were not for~/if it had not been for~≫(2011年8月3日)

  その他に、

16  「倒置の條件節」(2011年8月10日)

17  「假定法過去と假定法過去完了の組合せ」(2011年8月31日)

18  「婉曲・控へ目・叮嚀な表現」(2011年8月24日)

19  「多樣な條件設定」(2011年8月17日)

  などを習得すると良いと思ひます。ちなみに以下の[用例研究]は17項の例です。(※12、13については、助動詞や不定詞の項で扱ふ文法書が多いやうです。)

 

[用例研究 135]〈假定法過去ー假定法過去完了〉

 

  (BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake)

1  I’m going to the basketball game after dinner tonight.

1  Who’s playing?

2  A lot of very tall people.

3  Ho Ho Ha Ha Ha Ha

4  He probably only laughed because I’m a good customer.

4  I probably wouldn’t have laughed if he wasn’t such a good customer.

 

[解説]

1

・Who’s playing と單數で訊いてゐますから、誰か有名な選手、贔屓の選手などを念頭に置いた質問であつたかもしれません。

4

・店主の内なる思ひが假定法で述べられてゐます。條件節が假定法過去で、歸結節が假定法過去完了です。

  「過去もさうだつたが今も變らずさうである」といふ「變らない事實」に反することを條件として述べ(「良いおとくいさんでないならば」)、過去のことについて假定を述べる(「笑はなかつただらう」)場合には、かういふかたちになるのがふつうです。

□    參考例文

135

 

If I were a man, I would have fallen in love with her, too.

 

 

もし私が男なら、私も彼女に戀してしまつたことでせう。

 

・確信の程度を表はす副詞は、度合が強いはうから、

definitely: 「絶對」―完全に疑念がない。

certainly: 「確かに」―強い搖ぎない信念、客觀性が感じられます。

surely: 「きつと」―主觀的なニュアンスが感じられます。

probably: 「たぶん」―だいたい80%ほどの確信です。

maybe: 「たぶん」―probably より弱く50%くらゐの確信です。

perhaps: 「たぶん」―maybe と同程度で maybe よりややformalな雰圍氣。

possibly: 「もしかすると」―單に可能性があるといふ程度です。

 

[意味把握チェック]

1 「今夜は夕食後にバスケットボールの試合(を觀)に行くんだ」

1 「誰が出るの?」

2 「大勢の背高のつぽたちさ」

3 「ハハハハ」

4 「ぼくがとくい客だから笑つただけだな、おそらく」

4 「彼があんな良いおとくいさんでないなら、たぶん笑はなかつただらうな」

 

[笑ひのポイント]

・あまり上手でない joke に對する思ひやりある對應で、それ自體はをかしくないのですが、4コマめのそれぞれの内心を似通つたことばで表現してゐるところにをかしみが釀しだされてゐるやうに思ひます。譯出はうまくできませんでした。これは直に英語で樂しむはうが良いケースでせう。

(※條件節に假定法過去完了、帰結節に假定法過去を用ゐた例は2011年8月31日付の記事で紹介してゐます。)


・用例研究 134 〈假定法過去〉

2018-07-09 | 用例研究

[用例研究 134]  〈if・假定法過去〉

  假定法がわかりやすくなる方法を提案してみます。

  Michael Swan は Practical English Usage で subjunctive の項で次のやうに記してゐます。

 

  Some languages have special verb forms called ‘subjunctive’, which are used especially to talk about ‘unreal’ situations: things which are possible, desirable or imaginary. Older English had subjunctives, but in modern English they have mostly been replaced by uses of should, would and other modal verbs, by special uses of past tenses, and by ordinary verb forms. English only has a few subjunctive forms left: third-person singular present verbs without -(e)s, (e.g. she see, he have) and special forms of be (e.g. I be, he were). Except for I/he/she/it/were after if, they are not very common. ( Michael Swan, Practical English Usage. 3rd ed. [Oxford: Oxford University Press, 2005], p. 559.)

 

[拙譯]

 言語には「subjunctive」と呼ばれる特別な動詞の形態をもつものがあり、それは特に「現實ではない架空の」状況、つまりあり得る(があまり可能性が高くない)こと、さうあればいいのにと願ふこと、想像することなどについて語るときに使はれる。古い英語には subjunctive があつたが、現代英語ではたいてい should 、would やその他の法動詞に、また過去時制の特別な使用に、そして通常の動詞の形態にとつて代はられてきてゐる。英語には少數の subjunctive forms が殘されてゐるにすぎない。つまり、三人稱單數現在で (e)s がつかない動詞 (たとへば she see, he have)や be (たとへば I be, he were)である。

 

  この一節で Michael Swan は動詞のかたちとして假定法をとらへてゐます。その意味で、English only has a few subjunctive forms left と述べたのですが、私たちは通常、上記の英文にいふ「とつて代はつたもの」まで含めて「假定法」と看做してをり、動詞、助動詞、不定詞などは直説法と共通のかたちで使つてゐます。ここに假定法のわかりにくさの一因があるのではないかと思はれます。區別がつきにくく、いつのことを述べてゐるのかわかりにくいわけです。

 

對處法としては、次のやうなことが考へられます。

1假定法を使つて述べられる内容は、‘unreal’ situations: things which are possible, desirable or imaginary.である、と理解すること。

2 假定法を(直説法とは別個で)「獨自の動詞・助動詞使用のシステム」としてとらへること。

3 假定法が使はれる文體をパターン化してやること。

 

  ※2について: 假定法のシステムでは、多くの場合、直説法(システム)の動詞、助動詞を借りて、時制を變へて用ゐたり、時制のない不定詞(原形)を用ゐます。

  なぜ過去時制を使ふのかについて、Michael Swan は次のやうに説明してゐます。

  we use past tenses and would to ‘distance’ our language from reality. (ことばを現實から「引き離す(/遠くに離れてゐるやうに見せる)」ために過去時制や would を用ゐます。)

  動詞の時制を過去形にすると、現在の事實から視點を過去に移すことになり、その結果、假定の氣持を表現できる、といふわけなんでせう。過去の事實からさらに遠ざけるために過去完了時制を使ふのが假定法過去完了といふことになります。このあたりの感覺は、日本人にはなかなかわかりづらいところがあります。

 

※3について具體的に記すと、假定法が使はれる文體をある程度パターン化し、できるだけ簡潔な例文によつて暗記する方法が有效ではないかと思ひます。假定法が使はれた英文を讀む際には、パターンを把握して、簡潔な例文に「還元」し、そこから文意をくみとることになります。発信は例文に倣います。

 現代の英語では、假定法の出現パターンはさう多くはなく、 30内外の例文で網羅できるやうに思ひます。そのうち大學入試レベルの英文でよく見かけるパターンは20以内におさまるのではないかと思ひます。下の紹介する用例はパターンの1番め「if・假定法過去」型です。かうしたパターンと例文については、2011年6月1日投稿の『假定法の讀み方(5)』とその續きのシリーズ(水曜日掲載)に解説があります。

 

[用例研究 134] 〈if・假定法過去〉

 

  (BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake)

1  If I had all these great tools, I could fix the plumbing myself.

2  I already told you three times, these tools would cost you $2,000.

2  Then I guess it’s cheaper to have you fix it.

3  If you keep on talking to me, I wouldn’t be too sure!

 

[解説]

1

・had / could fix は假定法過去として使はれてゐる動詞です。現実には道具を持つてゐない状況で、「もし(今)持つてゐれば」と假定してみたわけです。

・myself: 強調用法で「自分自身が」「自分自身で」。強く発声します。

□參考例文

134

 

One must take the initiative oneself in making friends with others.

 

 

人と親しくなるには自分から率先していかなければならない。

2

・would cost が假定法過去です。「もし買ふとすれば」といふ條件が隱れてゐます。

2

・to have you fix it は使役表現です。第5文型で「OがCである状態で持つ」→「君が the plumbing を直す状態で持つ」→「君に the plumbing を直してもらふ」といふ意味に解されます。「使役」については2014年5月28日付の記事に解説と例文があります。

3

・keep は直説法で使はれてゐる動詞です。Dagwood がしゃべり續けてゐない事實があつて、「もし話し續けるなら」と條件を提示してゐるわけではありません。現在の事実と關はりのないところで、單なる條件を述べてゐることになります。

・keep on ―ing: keep ―ing と比べると、on が加はる場合は「繼續・反復が強調され、話し手の苛立ちを暗示する場合が多い」とされます。この場面でも plumber は少し苛立つてゐるのかもしれません。

・wouldn’t be は假定法過去の動詞です。「あまり確信がもてないだらう」「そんなには確信しないだらう」と婉曲に釘をさしてゐるやうに見えます。確信の内容は記されてゐませんが、直前の it’s cheaper to have you fix it のことだらうと解せます。つまり修理代が高くつくことを匂はせて Dagwood のおしゃべりを牽制してゐるのではないでせうか。

・not と too / so を一緒につかふと not はこれらを否定して「あまり~ない」「そんなには~ない」といつたニュアンスが出てきます。

 

[意味把握チェック]

1 「こんなすごい道具が揃つてゐれば(ぼくにも)自分で配管を直せるだらうな」

2 「もう三度言ひましたがね、これらの道具は(買へば)2000ドルするでせうよ」

  「それならあんたに直してもらふのが安あがりつて思ふな」

3 「もししやべり續けるんでしたら、どうですかな(/安あがりかどうかわかりませんぜ)」

 

[笑ひのポイント]

・修理代が2000ドルと讀者にまさかの思ひを抱かせ、獨自のやり方で Dagwood の多辯を牽制してみせました。ぎよつとする Dagwood の樣子や Daisy の視線もをかしみを加へてゐます。


・用例研究 133 〈命令法〉

2018-07-02 | 用例研究

[用例研究 133]  <命令法>

  2018年6月11日付記事で、動詞のかたちには「直説法 Indicative Mood」「命令法 Imperative Mood」「假定法 Subjunctive Mood」の三通りがあることを記しました。話し手が自分の言ふ文の内容についてどう考へてゐるかによつて動詞のかたちが變はるわけです。今囘は命令法の用例を紹介いたします。

  命令法は、話し手の命令・要求・希望・禁止・提案などを述べる法であり、動詞のかたちは原形になります。主語の you は省略されるのが一般的ですが、つけられることもあります。また下の用例のやうに他の主語が置かれることもあります。主語がついても動詞は原形です。否定には don’t や never を用ゐます。

□參考例文

133.1

 

Don't be so pessimistic, OK?

 

 

そんなに悲觀するなよ、な。

  「~させてください」「~させなさい」と云ふ時の〈let+目的語+原形不定詞〉は、1人稱、3人稱の人があることをするやう2人稱の人に對して命令するものです。

  下の用例では、目的語が us ですから自分たちへの提案・勸誘・希望を提示してゐることになります。

□參考例文

133.2

 

Let her do what she likes.

 

 

彼女の好きなやうにさせなさい。

133.3

 

Let's not talk about it.

 

 

それについて話すのはやめようよ。

 

[用例研究 133] 〈命令法〉

 

  (BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake)

 

1  I’m sinking fast, Cora

1  Oh Julius!

1  I sure wish you weren’t sick, Boss!

2  We’re about to lose our two biggest accounts!

2  No way!  Somebody get my pants!!

3  That was brilliant, Dagwood

3  Let’s just hope he forgives you when he finds out you weren’t serious

3  That’s the problem...I was serious!

 

[語句・構文等]

1

・Cora [kɔ:rə]: 奧さんの名前  ※ [ɔ] にアクセント符号

・sink: 「衰弱する」

・Julius [ʤú:ljəs]: 主人(社長)の名前

・weren’t: 假定法過去で使はれた動詞のかたちです。wish は直説法です。この文體については2011年6月8日付の記事で解説してゐます。

・sure: 「ほんたうに」(副詞)

2

・be about to-不定詞(~): 「まさに~しようとして」

・no way: 「どんなことがあつてもいやだ」

・get: は命令法の動詞で、原形ですから gets とはなつてゐません。

3

・let: 命令法の動詞のかたちです。

・just: 強調的な意味合ひで使はれてゐると思ひますが、口調を整へるはたらきもしてゐるのではないでせうか。

・find out: 「(~であると)氣づく」

 

[意味把握チェック]

1 「急に弱つてきてるんだ、Cora」

「まあJulius!」

「病氣でなければいいがと、ほんたうに思ひますよ、社長!」

2 「うちのふたつの最大取引(先)をなくしかけてるんです(/今にもなくしさうなんです)!」

「そんなことがあつてはならん!だれかわしのズボンを持つてきてくれ!!」

3 「お見事だつたわ、Dagwood」

「あなたが本氣ぢやないと社長が氣づいたときにあなたを許してくれるやう願ひませうね」

「そこが問題なんだ。ぼくは本氣だつたんだよ!」

 

[笑ひのポイント]

・女性ふたりは、社長を元氣づけるお芝居かと受けとめましたが、實はほんたうのことを言つてゐたのだと明かして、Dagwood らしい結末だと讀者を納得させ、笑ひを誘ひます。