英文讀解自修室

  - in the historical Japanese kana/kanji orthography

愛知縣立大學 2007 (6) 4パラ

2011-05-30 | 出題英文讀解

【第4パラグラフ】

4.1  Japan certainly has the technology.

 

[意味]

4.1  日本はたしかにさうした技術をもつてゐる。

 

4.2  It is already the world leader in making industrial robots, which look nothing like pets or people but increasingly do much of the work in its factories.

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

4.2  <~, which…> のかたちは、關係代名詞 which の繼續用法です。先行詞についての説明・情報を追加するもので、「そしてそれ(は)」と前から讀み下ろしてゆけば可いのです。

  關係代名詞の繼續用法(非制限的用法、追敍用法、連續用法とも)は、who, whose, whom, which,( as* )にあります。繼續用法の which には前文の一部または全部を先行詞とする用法もあります。

*as は擬似關係代名詞と呼ばれるもので、第2パラグラフの第1文(2.1)に出てきました。

 

[意味]

4.2  日本は、産業用ロボットの製作ではすでに世界的に優位にたち、それらはペットや人にはすこしも似てゐないが、ますます工場での仕事の多くをこなすやうになつてゐる。

 

4.3  What’s more, Japan is far ahead of other countries in developing robots with more human features, ones that can interact more easily with people.

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

4.3 ones は、前出の可算名詞のくりかへしを避けるために用ゐられてゐます。ここでは ones=robotswith more human featuresで、人型ロボット( humanoid robots )について説明を追加してゐます。

單數なら one で、a(an)+可算名詞の代用となります。この one は「不定代名詞」の項に解説があります。

 

[語句]

4.3  what is more

その上に / おまけに

 

[意味]

4.3  その上、一層人間に似た顏つきのロボットの開發では、日本は他國に(はるかに)ぬきんでてをり、さうしたロボットは人々とのやりとりがさらに容易にできるのである。

 

[用例]  one 不定代名詞

(BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake)

 

1  I went all over the place trying to find scented candles, but couldn’t find the ones I was looking for.

   all over the place そこら中

   芳香蝋燭をみつけようとそこら中行つたんだけど、さがしてるのがみつからなかつたよ。

2  What fragrances were you looking for, dear?

   どんな香りのをさがしてたの、あなた?

2  Oh, just common relaxing ones…

   ああ、ごく普通のやすらぐやつだよ…

3  You know…liverwurst…bacon…coconut custard…

   レバーソーセージ…ベーコン…ココナツ・カスタードなんかだね…

 

【ユーモア】

  Dagwood Bumstead は無類の食ひしん坊であるだけに、そんな香りでくつろげるのでせう。just common といふ伏線のあとでありさうもない具體的例を竝べるものですから、讀者は意外の感に打たれ、主人公の「らしさ」に納得の笑ひを誘はれます。

  relaxing には、形容詞として「人を怠けものにする(~)」といふ意味がありますが、主人公は怠けものですから、そこも笑ひを誘ふところかもしれません。

 


愛知縣立大學 2007 (5) 3パラ

2011-05-27 | 出題英文讀解

【第3パラグラフ】 

3.1  This is good news in Japan, where the population has begun shrinking.

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

3.1  <~, where…> は關係副詞の繼續用法(非制限的用法、連續用法、追敍用法とも)と呼ばれ、先行詞についての説明・情報を追加する表現です。「そしてそこで(は)」と前から讀み下ろしてゆけば可いのですが、ここでは good news となる理由が添へられてゐるかに見えます。

關係副詞 when にも同じ用法があり、「そしてそのとき(は)」などと讀み下ろしてゆきます。

 

 

[意味]

3.1  このことは日本では朗報である、といふのも日本では人口の縮小が始まつてゐるからである。

 

3.2  With few young workers to support an aging population, somebody – or something – needs to fill the gap, especially since many of Japan’s young people will be needed in science, business and other creative and knowledge-intensive jobs.

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

3.2  with O+C>のかたちで付帶状況を説明することがあります。with に二組のセンス・グループが續き、前が名詞、後ろが形容詞、分詞、副詞句などのときが該當します。

ここではfew young workers(O) について、後ろから to support an aging population(C) が説明してゐます。英文を讀むとき、聽くときには前から順に目、耳に入りますから、「OがCである状況で」と意味をとらへるとスムーズに解することができます。和譯が求められる場合は、その意味が出るやうに譯文を工夫すればいいわけです。(※ OとCは第5文型を表はすSVOCに準じて使ひました。)

 

[例文]  with O+C C=不定詞句)

3.2  With the fog to help me, there wasn't any danger of being seen.

  霧の助けもあつて、人に見られる危險はなかつた。

3.2  few は、 a few とはちがつて、否定的な意味合ひをもちます。

 

[意味]

3.2  高齡化する人口をささへる若年勞働者が少ない(状況な)ので、誰か-あるひは何か-が空隙を埋める必要がある。殊に若者の多くが、科學や實業その他の創造的で知識集約型の仕事に必要とされるであらうから。

 

3.3  Making humanoid robots is clearly a simple and practical solution.

 

[意味]

3.3  人型ロボットの製作は明らかに單純かつ實效性のある解決策である。

 

[用例]  with O+C C=現在分詞)

 

(BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake)

 

1  But, boss, they closed the schools and the malls…No one’s driving in this blizzard!

   「でも社長、學校もモールも休みで…誰もこの猛ふぶきのなか車を走らせませんよ」 

2  Well, yeah, that’s a good point.

  ・a good point 長所 / 良いところ

   「さうですね、ええ、なるほど」 

2  What did he say?

   「何て?」 

3  He said, with everybody staying home, the roads should be safe to drive on.

  ・should~: (話し手の期待に添ふ可能性について)「~のはずだ」

   「みんな家にゐて、道路は車を走らせるには安全なはずだつて」

 

 

 

 


假定法の讀み方 (4) 「if・假定法過去」つづき

2011-05-25 | 英文法ミニ解説

【假定法の讀み方 (3)のつづき】

1.5  

[例文]  いくつか出現パターンを示します。

The weather is cold today, but if it weren't, I would go swimming.

けふは寒いが、寒くなければ泳ぎに行くのになあ。

I'd play football with you if I were younger.

もつと若ければ君たちとフットボールをするのだが。

If your feet were smaller, you could borrow my shoes.

あなたの足がもつと小さければ私の靴を借りることができるのに。

If he took his doctor's advice, he might soon be well again.

醫師の忠告に從ふなら、彼はほどなく囘復するであらうに。

The town has changed a lotyou wouldn't recognize it now.

 

その町は隨分變はりました-今では訪ねてもその町だとわからないでせう。

 

 

[用例]

(BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake)

 

1  I can’t make up my mind what to have.

   何を食べるか決められないよ。

2  What would you get if you were me?

   君が僕だつたら何を食べるだらう?

3  I don’t know…Let’s find out.

   わかりませんね…見つけませうや。

4  Some of your delicious chili, please, and a side order of fries.

  ここの美味しいチリ(メキシコ料理の一種)をください、それに揚げ物を添へてね。

 

【ユーモア】

  背景ですが、この lunch counter の主人は顧客相手に結構おしつけがましいメニュー選擇を迫ることがあります。面倒な料理を注文されるといやがつたり、切らしてゐるときには、とぼけて他の料理や飮み物をすすめたりもします。ここでは、ちやつかりと供したい料理を擧げ、併せて自分の料理の自慢・宣傳をしてゐるのでせう。わざわざ服を交換してゐるところもクスリと笑はせます。

 

 


假定法の讀み方 (3) 「if・假定法過去」

2011-05-25 | 英文法ミニ解説

假定法の讀み方 (3) 「if假定法過去」 

 

  if・假定法過去」型: ≪if 過去時制, would* 原形.≫

 

【諳誦例文】

S.1  If I had a lot of nerve, I would tell you the truth.

もし私に十分な勇氣があれば、あなたに眞實を話すのですが。

     ※勇氣がもてず眞實が語れない状況で述べてゐます

 

1.1  * would のほか could / might / should が使はれることがあります。

    could: = would be able to (できるのだが)

    might: = would perhaps / would possibly (かもしれないのだが)

    should: 主にイギリス英語で、主語が I ,we のとき、would と同意で。

 

1.2  このかたちで表はされる内容は以下のやうに説明されます。

  unreal situations – things that will probably not happen, situations that are untrue or imaginary, and similar ideas (現實でない状況、つまり起こりさうにないことや、眞實ではない状況或ひは想像上の状況、同樣の考へ)

 

1.3  なぜ過去時制を使ふのかについて、Michael Swan Practical English Usage には次のやうな説明があります。

  we use past tenses and would to ‘distance’ our language from reality. (ことばを現實から「遠くに離れてゐるやうに見せる」ために過去時制や would を用ゐます。)

  動詞の時制を過去形にすると、現在の事實から視線を過去に移すことになり、その結果、假定の氣持を表現できる、といふわけなんでせう。過去の事實からさらに遠ざけるために過去完了時制を使ふのが假定法過去完了といふことになります。このあたりの感覺は、日本人にはなかなかわかりづらいところがあります。

 

1.4  if 節で假定法過去のbe 動詞を使ふ際には、 were を使ふのが一般的だとされます。一人稱、三人稱單數の主語で was が使はれることもありますが、 formal な文體では were のはうが more correct とされるやうです。

 

 

 

【假定法の讀み方 (4)につづく】


假定法の讀み方 (2) 直説法と假定法

2011-05-25 | 英文法ミニ解説

  英語では、ある事柄を事實として述べるか(直説法 Indicative Mood)、命令として述べるか(命令法 Imperative Mood)、話者が心の中で考へた假定として述べるか(假定法 Subjunctive Mood)によつて動詞のかたちが變はります。

  ここでは接續詞 if を使ふ例文を概觀して、直説法と假定法のちがひについて確認したいと思ひます。例文は、下記の書物から引用したものです。

 

(a) If it is fine tomorrow, we’ll go fishing.

 

(b) If it should be fine tomorrow, we would ( will ) go fishing.

 

(c) If it were fine today, we would go fishing.

 

(d) If it had been fine yesterday, we would have gone fishing.

 

(堀口俊一・吉田劭, 英語表現文法, [聖文社, 1984], p. 287 から)

 

(a) は、假定法ではなく直説法の文です。天氣の見込みについては觸れてゐません。晴れれば行くでせうし、雨が降つたらやめるかもしれません。

 

(b) は、明日天氣がよくなる可能性が少ない状況で述べる文です。未來のことを述べるから、「假定法未來」と名づけられてゐますが、should が使はれるため假定法過去に分類する人もゐます。

 

(c) は、今日天氣がよくなくて釣りに行けない現實の状況で述べる文です。「晴れてゐれば行くのになあ」と殘念がつてゐるのでせう。「假定法過去」と名づけられてゐます。動詞、助動詞の過去形を使ふからですが、述べることがらは現在です。

 

(d) は、昨日天氣がよくなくて釣りに行けなかつたことを殘念に思ふ氣持で述べてゐます。過去完了時制を使ふため「假定法過去完了」と名づけられ、過去のことについて語るときに使はれます。

 

  さて、これから假定法が使はれるさまざまな文體を眺めてゆきます。文のかたちと表はす意味とで分類してゆきますが、それぞれのグループについて代表的な例文を暗記すると、わかりやすくなるのではないかと思ひます。


愛知縣立大學 2007 (4) 2パラ

2011-05-23 | 出題英文讀解

【第2パラグラフ】

2.1  Robots, as many Japanese will tell you, are wonderful creatures.

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

  tell の目的語のもうひとつがブランクになつてゐますから、as が擬似關係代名詞として、それを示してゐるのだと思ひます。先行詞は主節全體でせう。

 

[例文]  主格として、主節全體を先行詞としてゐる例です。

21  As might have been expected, the two girls were sisters.

豫想されたやうに、その二人の少女は姉妹だつた。

 

[意味]

2.1  多くの日本人が口にするやうに、ロボットはすばらしい被造物である。

 

2.2  They are getting more skillful all the time, and soon will be able to do cheaply and easily many tasks that human workers do now.

 

[語句]

2.2  all the time

いつも  ( continuously )

 

[意味]

2.2  ロボットは間斷なく技術を向上させてをり、やがて、現在人間の労働者がやつてゐる多くの仕事を廉価にまた容易にやつてのけることができるやうになるだらう。

 

2.3  They will care for the sick, pick up the garbage, guard homes and offices, and give directions on the street.

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

2.3  the+形容詞 / 過去分詞>: 形容詞あるひは過去分詞で示される状態のグループを指し、「~な人々」といふ名詞の意味になります。通例複數扱ひにします。

 

[語句]

2.3  care for

~の世話をする

2.3  pick up

~を拾ひ集める

 

[意味]

2.3 ロボットは病人の世話をし、ごみを集め、住居や事務所を警備し、街路で指示を出すだらう。

 

[用例]  all the time

 

(BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake)

 

1  In the merry, merry month of July…La la la la la

   愉快な、愉快な7月に…ラララララ…

2  Hi there! See how happy I am? You can be this happy, too, if you’ll just read this little book of mine!

   やあ、こんにちは! ぼくがどんなに幸せかわかるでせう? あなたもこんなに幸せになれますよ、ぼくのこの小さな本を讀もうといふのでしたら!

2  I don’t need it…I’m naturally happy all the time.

   ぼくには要らないね…特に何かしなくてもぼくはいつも幸せなんだ。

3  Happy all the time!! That liar!! What a bunch of baloney!!

いつも幸せだつて!! あの嘘つきめ!!たわごとを竝べやがつて!!

a bunch of ~: ~の束 / ~の山

baloney たわごと / 愚かな考へ

 

 


愛知縣立大學 2007 (3) 1パラつづき

2011-05-20 | 出題英文讀解

【愛知縣立大學 2007 第1パラグラフ つづき】

 

1.7  Unfortunately for MARIE, however, she has one trait that makes it hard for Japanese patients to accept her: she is a flesh-and-blood human being – a non-Japanese nurse.

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

1.7  makes it hard のかたちは第五文型(SVOC)と同類です。SVOCでは、Oの説明であるCが後に置かれてゐます。いはばO=Cなんですが、動詞が make ですから、O=Cの状態に「する」のだとわかります。

it は形式目的語と呼ばれます。 とりあへず假に it と置いておいて、その内容はあとから述べます。ここでは for Japanese patients to accept her がその内容といふことになります。for Japanese patientsは、不定詞の意味上の主語となりますので、「日本人の患者が彼女を受け容れること」と解します。

 

1.7  unfortunately は文全體を修飾する副詞です。

 

1.7  flesh-and-blood ハイフンで3語をつないで形容詞的に用ゐてゐます。

 

1.7  non-Japanese  は「日本人ではない」の意味(ここでは形容詞のはたらき)。日本に來て仕事をし、日本語もある程度使へるといつた事情に鑑み、foreign を避けたのでせう。

 

[意味]

1.7  しかしながら、MARIE にとつて不運なことに、彼女は日本の患者が受け容れがたい一つの特質をもつてゐる:つまり彼女は血の通つた人間-外國人看護師なのである。

 

1.8  If only she were a robot instead.

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

1.8  If only were に着目します。假定法過去の型のひとつであり、<I wish 假定法過去>と同樣に「現實とは異る事態を願望する」文體です。<If only 假定法過去>は「~でありさへすればいいのに」といつたつよい表現で、しばしば!(exclamation mark)を伴つて使はれます。<I wish 假定法過去>よりやや強い表現といへませう。

 

[意味]

1.8  non-Japaneseではなく)代はりにロボットでありさへすれば。


愛知縣立大學 2007 (2)

2011-05-20 | 出題英文讀解

【第1パラグラフ】

1.1  Her name is MARIE, and her impressive skills come in handy in a nursing home.

 

[語句]

1.1  come in handy

役に立つ 

 

[意味]

1.1  彼女の名前は MARIE で、彼女のみごとな手腕は療護施設で役立てられる。

 

1.2  MARIE can move under her own power.

 

[意味]

1.2  MARIE は自分(の力)で動くことができる。

 

1.3  She can distinguish among similar-looking objects, such as different bottles of medicine.

 

[語句]

1.3  such as

例へば~など

 

[意味]

1.3  彼女は外見が似た物の識別ができる、たとへばさまざまな藥瓶など。

 

1.4  MARIE can interpret a range of facial expressions and gestures, and respond in ways that suggest compassion.

 

[意味]

MARIE は一聯の表情や身振りを解することができ、思ひやりを示すやうに應ずることができる。

 

1.5  Although her language skills are not perfect, she can recognize and respond to speech.

 

[意味]

1.5  彼女の言葉の技能は完璧とはいへないが、話がわかり、話に應ずることができる。

 

1.6  Above all, she is inexpensive.

 

[語句]

1.6  above all

とりわけ

 

[意味]

1.6  何より彼女は(雇傭の)經費が高くない。

 

【愛知縣立大學 2007 (3) につづく】


假定法の讀み方 (1)

2011-05-18 | 英文法ミニ解説

假定法の讀み方(仮定法の読みかた) (1)

  英文を讀む際、假定法に惱まされることがありますが、何故なのでせうか。513日付拙稿の學習院大學【第4パラグラフ】に出て來た、

 

4.2  Europe would have been much poorer had it resisted the globalization of mathematics, science and technology at that time, and to a great extent the same – working in the opposite direction – is true today.

 

4.3  To identify the phenomenon of the global spread of ideas with a form of ideological imperialism would be a serious error, somewhat similar to the way any European resistance to Eastern influence would have been at the beginning of the last millennium.

 

  を眺めてゐると、ふたつの理由がうかがへます。

 

  ひとつは、「條件」の部分が見えにくいことでせうか。4.3では主部に條件が示されてをり、4.2では倒置の條件節がうしろにコンマなしで置かれてゐるためわかりにくいのでせう。

 

  もうひとつ、動詞、助動詞、原形不定詞が直説法と共通してゐることが擧げられると思ひます。それでも何とか文意がつかめるのは、「助動詞の過去形が使はれる場合は假定法が多い」といふ一種の經驗則、また「would have beenhad resistedは假定法過去完了で使はれるかたちだ」といふ認識があるからでせう。

 

かうしたことを念頭に置いて、假定法へのアプロウチを試みてみたいと思ひます。具體的には、假定法とは①嚴密には何を指すのか、②どんな内容を述べるのか、③どういふかたちで用ゐられるのか、④どんな方法でマスターしたらいいか、といつた問ひを發しつつ試みることになりませう。

 

  ①②については、Michael Swan Practical English Usageの記述が參考になりさうです。氏はsubjunctiveについて次のやうに記してゐます。

 

  Some languages have special verb forms called ‘subjunctive’, which are used especially to talk about ‘unreal’ situations: things which are possible, desirable or imaginary. Older English had subjunctives, but in modern English they have mostly been replaced by uses of should, would and other modal verbs, by special uses of past tenses, and by ordinary verb forms. English only has a few subjunctive forms left: third-person singular present verbs without -(e)s, (e.g. she see, he have) and special forms of be (e.g. I be, he were). Except for I/he/she/it/were after if, they are not very common. ( From Michael Swan, Practical English Usage. 3rd ed. [Oxford: Oxford University Press, 2005], p. 559.)

 

  この一節で Michael Swanは動詞のかたちとして假定法をとらへてゐます。その意味で、English only has a few subjunctive forms left と述べたのですが、私たちは通常、上記の英文にいふ「とつて代はつたもの」まで含めて「假定法」と看做してをり、動詞、助動詞、不定詞などは直説法と共通のかたちで使つてゐます。ここに假定法のわかりにくさの一因があるのではないかと思はれます。

 

對處法としては、假定法を使つて述べられる内容‘unreal’ situations: things which are possible, desirable or imaginary.について知ること、つぎに假定法を「獨自の動詞・助動詞使用のシステム」として受けとめること、そして假定法が使はれる文體をパターン化してやること、が有效ではないかと思はれます。

 

具體的には、假定法が使はれる文體をある程度パターン化し、できるだけ簡潔な例文によつて暗記する方法となります。そして假定法が使はれた英文を讀む際には、パターンを把握して、簡潔な例文に「還元」し、そこから文意をくみとることになります。現代の英語では、假定法の出現パターンはさう多くはなく、主だつたものは 30程度の例文で網羅できるやうに思ひます。そのうち大學入試レベルの英文でよく見かけるパターンは20以内におさまるのではないかと思ひます。

 

動詞、助動詞がどのやうな「かたち」で使はれるのか。これから、ネイテイヴ・スピーカーのつくつた例文に、例の[用例]をまじへつつ、ゆるゆると連載形式で紹介してゆきたいと思ひます。よろしければおつきあひください。

 

 

[上掲英文譯例]

 言語には「subjunctive」と呼ばれる特別な動詞の形態をもつものがあり、それは特に「現實ではない架空の」状況、つまり、あり得る(としても起こりさうにない)こと、あるひはさうなればいいのにと願ふこと、あるひは想像することなどについて語るときに使はれる。古い英語には subjunctive があつたが、現代英語ではたいてい should would やその他の法動詞に、また過去時制の特別な使用に、そして通常の動詞の形態にとつて代はられてきてゐる。英語には小數の subjunctive formsが殘されてゐるにすぎない。つまり、三人稱單數現在で (e)sがつかない動詞 (たとへば she see, he have)や be(たとへばI be, he were)である。


愛知縣立大學 2007 (1)

2011-05-16 | 出題英文讀解

 

  愛知縣立大學で2007年に出題された長文問題3題のうち、3題めの問題文です。入學試驗では他にリスニング問題が課されたやうです。

 

Better Than People: Japan’s Humanoid Robots

   Her name is MARIE, and her impressive skills come in handy in a nursing home. MARIE can move under her own power. She can distinguish among similar-looking objects, such as different bottles of medicine. MARIE can interpret a range of facial expressions and gestures, and respond in ways that suggest compassion. Although her language skills are not perfect, she can recognize and respond to speech. Above all, she is inexpensive. Unfortunately for MARIE, however, she has one trait that makes it hard for Japanese patients to accept her: she is a flesh-and-blood human being – a non-Japanese nurse. If only she were a robot instead.

   Robots, as many Japanese will tell you, are wonderful creatures. They are getting more skillful all the time, and soon will be able to do cheaply and easily many tasks that human workers do now. They will care for the sick, pick up the garbage, guard homes and offices, and give directions on the street.

   This is good news in Japan, where the population has begun shrinking. With few young workers to support an aging population, somebody – or something – needs to fill the gap, especially since many of Japan’s young people will be needed in science, business and other creative and knowledge-intensive jobs. Making humanoid robots is clearly a simple and practical solution.

   Japan certainly has the technology. It is already the world leader in making industrial robots, which look nothing like pets or people but increasingly do much of the work in its factories. What’s more, Japan is far ahead of other countries in developing robots with more human features, ones that can interact more easily with people.

   The country showed off its newest robots at the Expo in 2005 in Aichi Prefecture. More than 22 million visitors came, 95% of them Japanese. The robots stole the show: from the nanny robot that babysits to a Toyota-made musician that plays a trumpet. As they gain skills and confidence, robots such as Sony’s QRIO and Honda’s ASIMO are attracting attention in the real world. They have attended factory openings and greeted foreign leaders. ASIMO can even take the stage to accept awards.

   Japan will need workers, and it is learning how to make robots that can do many of their jobs. But the country’s keen interest in robots may also reflect something else: it seems that many Japanese really like dealing with robots. Few Japanese have the fear of robots that troubles Westerners in science-fiction stories and Hollywood films.

   In Western popular culture, robots are often a threat. By contrast, most Japanese view robots as friendly and helpful. Robots like people, and they can do good. The prevailing view in Japan is that the country is lucky to be free of robophobia*. Without the complexes that bother many Westerners, the theory goes, Japan is able to make use of a great new tool at the very moment when its abilities can meet the country’s needs. "Of all the nations involved in such research,” The Japan Times wrote in a 2004 editorial, “Japan is the most inclined to approach it in a spirit of fun.”

   This, however, may be only part of the story. Although they are at ease with robots, many Japanese are less comfortable around other people. Having always to watch what you say and do around others is difficult. Many Japanese seem to like robot versions of living creatures mainly because they are different from the real thing.

   To understand how Japanese might find robots less intimidating than people, Osaka University’s Karl MacDorman has been investigating eye movements using headsets that monitor where his test subjects are looking. One popular myth about Japanese, that they rarely make eye contact, is not really true. When answering questions asked by another Japanese, MacDorman’s subjects made eye contact around 30% of the time. But they behaved differently when talking to a humanoid robot whose face has been modeled on that of a famous newsreader, with complex controls that imitate her facial movements. When answering the robot’s questions, MacDorman’s Japanese subjects looked it in the eye more than they did when answering a real person. MacDorman believes that the discomfort many Japanese feel when dealing with others explains his results, and that people are much more comfortable when talking to a humanoid robot.

   Eventually, interactive robots are going to become more common, not just in Japan but in other rich countries as well. As children and the elderly begin spending time with them, they are likely to develop emotional ties to such lifelike machines. That is human nature.

*phobia = a strong unreasonable fear of a particular thing

[766語]

 


學習院大學 2010 (8)

2011-05-13 | 出題英文讀解

【第4パラグラフつづき】 

 

[用例]

the way を接續詞的に用ゐるのは informal とされます。

 

   (BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake)

 

1  Mr. Dithers, I demand a minute of your time!

  「社長、ちよつと時間を!」

  Mr. Dithers といふ強い呼びかけをしてゐるやうですから、あらたまつた、よそよそしい氣持がこめられてゐるのではないでせうか。

  demand は「つよく要求する」の意味です。

2  I’m sick and tired of the way you treat me!

  「私に對する處遇にはもううんざりなんです」

  sicktired とも「うんざりしてゐる」といふ意味ですが、ふたつ重ねて強調した言ひ方をすることがあります。

  treat は「~を遇する」の意味です。

3  I’m the office manager here and I deserve more respect!! What do you say about that?!

  「ぼくはここでは管理職だし、もつと敬意を拂はれてもいいはず。そのこと、どう思ひます?」

desereve は「~を受けるに値する」の意味。

4  Your minute’s up.

  「時間切れだね」

  your minute is up の縮約形です。

 

【ユーモア】

a minute には「少しの時間」と、文字どほりの「1分」といふ意味があり、その double meaning で笑ひを生んでゐるのでせう。經營者像については、受けとめ方が日本とはすこしちがつて見えますね。誇張の效果をねらつた漫畫ゆゑでせうか。

 

 

【意味把握の確認】

4.1  科學や技術における globalizationと同樣、數學における globalization は、現代のヨーロッパへの變貌を助けた思想と社會組織の改革に大きな役割を果した。

 

4.2  もしヨーロッパが當時の數學、科學、技術の globalization に抗つてゐたなら、ヨーロッパははるかに貧しかつたことであらう。そして、今日同じことが-作用する方向は逆であるが-大いにあてはまるのである。

 

4.3  思想の地球規模の擴散現象をイデオロギー上の帝國主義の一形態とみるなら、大きな誤りであらうし、それは、かりにヨーロッパがこの1000年の初期(11世紀ごろ)に東洋の影響に對して抵抗してゐたなら示したであらう(抵抗する)すがたに幾分か似てゐる。

 

【豫告】

   4.2 4.3 の讀解には假定法の知識が役に立ちます。假定法に惱む人がをられるかもしれませんので、この出題文を機に、假定法の解説を試みてみたいと思ひます。蝸牛ペースでゆるゆると、水曜日に少しづつ連載するつもりです。89囘を要するでせう。

 

 

 


學習院大學 2010 (7)

2011-05-13 | 出題英文讀解

【第4パラグラフ】

4.1  Globalization in mathematics as well as in science and engineering played a major part in the revolution of thought and social organization that helped to transform Europe into its modern shape.

 

4.2  Europe would have been much poorer had it resisted the globalization of mathematics, science and technology at that time, and to a great extent the same – working in the opposite direction – is true today.

 

4.3  To identify the phenomenon of the global spread of ideas with a form of ideological imperialism would be a serious error, somewhat similar to the way any European resistance to Eastern influence would have been at the beginning of the last millennium.

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

4.1  A as well as B は「Bと同樣にA」といふ意味ですが、力點はAに置かれます。主部(主語)に位置する場合、動詞もAに一致します。

 

4.2  假定法過去完了が使はれた文です。倒置の條件節がうしろに置かれてゐるため、構文の把握にとまどふことがあるかもしれません。had it resisted ~ if it had resisted とほぼ同じ意味ですが、倒置の場合、formal and literary style であると言はれます。

 

4.2– working in the opposite direction – 分詞の句が插入されてゐます。 the same is true (「同じことがあてはまる」)といふ文に、「逆の方向に作用して」とそのまま意味を補足して解すれば可いでせう。

 

4.3  would bewould have been ともに假定法の構文に用ゐられるかたちですが、「歸結の節」のみが現はれてゐます。if に率ゐられた條件節があればわかりやすいのですが、この「歸結節」のみといふかたちも英文には大變多く見受けられ、惱まされることがあります。

  とくにまぎらはしいのは「時制の一致」により、前の動詞に合はせて will would に變はるケースでせう。未來完了形だと would have 過去分詞 のかたちが出てきます。

 

兩者とも、主部に條件が表現されてゐます。

  前半では、To identify the phenomenon of the global spread of ideas with a form of ideological imperialism、つまり「思想の地球規模での擴大現象をイデオロギー上の帝國主義の一形態とみるならば」といふことになります。

  後半では、any European resistance to Eastern influence、つまり「どんなものであれもしヨーロッパが東洋の影響に抗つたなら」と、過去の事實とは異る事態を述べる「假定法過去完了」の條件節の意味をくみとります。

 

後半は、「前半の内容が the way と同樣( similar )である」と説明を後置してゐるわけです。 the way は節を率ゐて、「~の仕方」「~の方法」などと解しますが、ここは be動詞で「状態」を表はしてゐますから「~の在り方」と解することができます。ここでは「どんなものであれ、もしヨーロッパが東洋の影響に抵抗してゐたなら示したであらう(抵抗する)すがた」といつた意味になります。

 

【つづく】


學習院大學 2010 (6)

2011-05-09 | 出題英文讀解

【第3パラグラフ つづき】

3.4 「同樣に」といふことは、3.3と類似した現象であると述べてゐるのでせう。

 

3.5  after はここでは副詞です。「あとで」。

 

3.6  procedure an act composed of steps といつた意味合ひと思はれますが、ここでは具體的には、東洋の高度技術や知識が西洋に傳播したことを指してゐます。

 

 

 

【意味把握の確認】

3.1  例へば、西暦1000年の世界の高度技術には、紙と印刷、火藥、時計や磁針式羅針盤が含まれた。

 

3.2  1000年前の世界の知識のうち、これら「高度技術」の分野の悉くが中國でしつかりと確立され、同時にそれ以外の地域ではほとんど知られてゐなかつた。

 

3.3  それらを、ヨーロッパを含め世界中にひろめたのは globalization であつた。

 

3.4  私たちは、西洋の數學に與へた東洋の影響の衝撃を同樣のものと考へることができる。

 

3.5  十進法は2世紀から6世紀にかけてインドで生れ、十分な發達を遂げ、ほどなくアラビアの數學者にもひろく使はれた。

 

3.6  かうした傳播は、おもに10世紀の最後の25年間にヨーロッパに達し、ヨーロッパでは、それからの1000年間のうち早い時期に非常に大きな影響を受けた。

 


學習院大學 2010 (5)

2011-05-09 | 出題英文讀解

【第3パラグラフ】 

3.1  For example, the high technology in the world of 1000 included paper and printing, gunpowder, the clock and the magnetic compass.

 

3.2  Every one of these ‘high-tech’ fields of knowledge in the world a millennium ago was well established in China, and at the same time was practically unknown elsewhere.

 

3.3  It was globalization that spread them across the world, including Europe.

 

3.4  We can similarly consider the impact of Eastern influence on Western mathematics.

 

3.5  The decimal system* emerged and became well developed in India between the second and the sixth centuries, and was also used extensively soon after by Arab mathematicians.

 

3.6  These procedures reached Europe mainly in the last quarter of the tenth century, and their huge effects were felt in the early years of the last millennium.

 

Notes: decimal system 十進法

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

3.3 強調構文で、1.6に使はれたのと同じ種類のものです。過去形の文脈の場合、It was で始めることがあります。

 

[用例]

主語が強調されてゐる例です。單數複數に關はりなく It is / was で始めますが、 that で導かれる動詞は、強調された主語に一致します。

 

 

 

(BLONDIE   By Dean Young & Stan Drake)

 

1  I’m selling this revolutionary scooper-dooper.

   私はこの劃期的な scooper-dooper(アイスクリーム用の大匙)を賣つてるんです。

   scooper-dooper は商品名に近い印象を受けます。音で遊んでゐるのでせう。

2  You get three scoops of ice cream with one dip.

   一度入れたらアイスクリームが3つすくへるんですよ。

3  I’ll take it!

   買ふよ。

4  It’s inventions like this that give you hope for the future!

   未來への希望を與へてくれるのはこんな發明だよね。

 

 


學習院大學 2010 (4)

2011-05-06 | 出題英文讀解

【第2パラグラフ】

2.1  It may, in fact, teach us much if we think about the nature of the world not at the end of the second millennium, but at the end of the previous millennium.

 

2.2  At the end of the first millennium, around 1000 CE*, globalization of science, technology, and mathematics was changing the nature of the old world, even though, as it happens, the main flow of change then was typically in the opposite direction to what we see today.

 

Notes: 1000 CE 西暦1000

 

【讀解のポイント-かたちからのアプロウチ】

2.1  主語は preparatory it とか introductory it と呼ばれるもので、ここでは if as if as though を伴ふ文を導くのに用ゐられるケースでせう。英語は主語を必要とする言語ですから、ここは假に輕く it を置いて文を始めておき、あとから詳しく述べてゆく體裁をとつたのだと思ひます。

 

[例文]

 

 

 

 

It will be a pity if we have to ask her to leave.

 

 

 

 

もし彼女に去るやうに頼まなくてはならないとしたら殘念だ。

 

2.1  in fact

實際 / 實のところ

 

2.1  not but :~ではなく…

  このかたちはよく見かけますが、not but が離れてゐる場合に氣づき難いことがあります。

 

2.2  even though = though

[例文]

Even though I didn't know anybody at the party, I had a good time.

パーテイでは誰も知つてゐる人がゐなかつたけれども、私は愉しく過ごした。

 

2.2  as it happens

たまたま

 

2.2  typically: この言葉がどういふ意味合ひで添へられてゐるのかよくわかりません。似た事象がかつて起こつた、方向は逆だけれども、と……その邊りをどう形容しようとしてゐるのでせうか。

 

【意味把握の確認】

2.1  20世紀末ではなく10世紀末の世界の性質について考へるなら、實際多くのことを教へられるかもしれない。

 

2.2  最初の1000年の終はり、つまり西暦1000年頃には、科學、技術、數學の globalization が舊世界の性質を變へつつあつた、當時の變化の主たる流れは、たまたま、今日見かけるものとは反對の方向であつたが。