僕と僕の母様 第24回
次の朝、駅のホームで順平に会った。 もうケロッとしている。 昨日のあの暗いオーラはどこに行ったのか。
「昨日あれからどうなった?」 とニコニコしながら聞いてきた。
僕の肩は落ちるしかない「お前なー」 と言いながらため息を一つを漏らすと それを無視するかのように
「それより見て、見て、昨日エレキ仲間とチャットをしてたら やっぱり学校のクラブとかじゃなくて きちんと教室にレッスンを受けに行くほうがいいみたいって みんな言ってるの。」 と言って アウトプットしてきたエレキ教室の一覧を見せてくる。
もうどうでもイイや「あ、そう」 と気力なく学校に着くまで 適当に相づちだけ打っていた。 そんな僕とは正反対に 順平はずっとテンションが高かった。
本当に立ち直りの早いヤツだ。 まあ、そんなところも羨ましいと思う所の一つなんだが。
僕は明日から 週に三回だけのブラバンの練習に 参加する事になっていた。
取り合えず楽譜は読める。 しかしピアノ以外の楽器をあまり触った事がない。 あまりどころではない。
第一音楽室がブラバンの部室になる。
翌日の放課後
すぐに部室に行くのも やる気があるみたいで恥ずかしいから ちょっと時間を潰し そして無い勇気を振り絞って 部室の前に行った。
ドアに手をかけると 鍵がかかっていない もう誰かいるのだろうかと そっと開けてみた。
「失礼しま~す」 小さい声でそう言いながら顔を覗かしたが 鞄やお菓子が置いてあるだけで誰もいない。
入っていいのかなと思いながら まるで泥棒のように 抜き足差し足で入っていった。
音楽の授業を選択していなかったので まじまじと音楽室を見るのは初めてだった。
小学校や中学校の音楽室とはえらい違いだ 見たこともない楽器が置いてある。 ぐるっと回って色々な楽器を見たが 特に目を惹く楽器はなかった。
少しして 部長と何人かがやってきた。 ドアがガラッと開いて部長の顔が見えた。 みんなもう楽器を手に持っている。 ああ、みんなでどこかへ出ていたのか。
「やぁ、 早いね、どう? 楽器を見てやる気に火が点いた?」
こんにちは と言おうとしてたけど 思いがけない質問に笑いでごまかす。
部長にどの楽器をやってみたいと聞かれても 全く自分で自分が何をしたいのか分からない。
すると部長の首にかかっていた サックスを見て思い出した。
ああ、そうだ。 そういえば 小学校のときにサックスを首にかけて、そしておもむろに吹きはじめたドラマのシーンを見て かっこいいと思ったんだ。 それで中学に入って ブラバンでサックスをやってみたいと思ったんだ。 そのシーンが頭の中で一瞬にして甦った。
「サックスをやりたいです」 僕の口が勝手にそう言ってしまった。
部長がその答えを聞いて
「サックスにも色々種類があるけど何がしたい?」 と、逆に聞かれた。 何の事ですか? 意味が分かりません。
ボケッとしている僕を見て 部長がこっちに来てと言いながら 窓際の方に歩いていく。
ついて行ってみると サックスらしき物が二つある。 大きいのと小さいのだ。
あ、そうか大小の差があるんだ。 待てよ、部長の首に掛かっているのは そのどちらでもなく微妙に大より少し大きいって感じで 形が少し違うという具合だ。 目の前のが大小ではなくて 中小で部長のが大のようだ。
「今このテナーサックスは僕が吹いているけど 残りの二つは誰もやっていないから どちらでもいいし 僕も、もう少しで引退だから テナーをやってもいいよ、どうする?」 と言った。
あのときのドラマで どれを吹いていたのかは分からないけど 一番大きいのが一番カッコイイだろうと思ったのだが 部長が吹いているからいくら何でも 部長のが良いとは言えない。 部長が卒業したらテナーをしよう。 それまでは中でやってみよう。
「こっちの大きいの」 と、目の前の中を指さして言った。
最後まで読んで頂き有難うございました。
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次の朝、駅のホームで順平に会った。 もうケロッとしている。 昨日のあの暗いオーラはどこに行ったのか。
「昨日あれからどうなった?」 とニコニコしながら聞いてきた。
僕の肩は落ちるしかない「お前なー」 と言いながらため息を一つを漏らすと それを無視するかのように
「それより見て、見て、昨日エレキ仲間とチャットをしてたら やっぱり学校のクラブとかじゃなくて きちんと教室にレッスンを受けに行くほうがいいみたいって みんな言ってるの。」 と言って アウトプットしてきたエレキ教室の一覧を見せてくる。
もうどうでもイイや「あ、そう」 と気力なく学校に着くまで 適当に相づちだけ打っていた。 そんな僕とは正反対に 順平はずっとテンションが高かった。
本当に立ち直りの早いヤツだ。 まあ、そんなところも羨ましいと思う所の一つなんだが。
僕は明日から 週に三回だけのブラバンの練習に 参加する事になっていた。
取り合えず楽譜は読める。 しかしピアノ以外の楽器をあまり触った事がない。 あまりどころではない。
第一音楽室がブラバンの部室になる。
翌日の放課後
すぐに部室に行くのも やる気があるみたいで恥ずかしいから ちょっと時間を潰し そして無い勇気を振り絞って 部室の前に行った。
ドアに手をかけると 鍵がかかっていない もう誰かいるのだろうかと そっと開けてみた。
「失礼しま~す」 小さい声でそう言いながら顔を覗かしたが 鞄やお菓子が置いてあるだけで誰もいない。
入っていいのかなと思いながら まるで泥棒のように 抜き足差し足で入っていった。
音楽の授業を選択していなかったので まじまじと音楽室を見るのは初めてだった。
小学校や中学校の音楽室とはえらい違いだ 見たこともない楽器が置いてある。 ぐるっと回って色々な楽器を見たが 特に目を惹く楽器はなかった。
少しして 部長と何人かがやってきた。 ドアがガラッと開いて部長の顔が見えた。 みんなもう楽器を手に持っている。 ああ、みんなでどこかへ出ていたのか。
「やぁ、 早いね、どう? 楽器を見てやる気に火が点いた?」
こんにちは と言おうとしてたけど 思いがけない質問に笑いでごまかす。
部長にどの楽器をやってみたいと聞かれても 全く自分で自分が何をしたいのか分からない。
すると部長の首にかかっていた サックスを見て思い出した。
ああ、そうだ。 そういえば 小学校のときにサックスを首にかけて、そしておもむろに吹きはじめたドラマのシーンを見て かっこいいと思ったんだ。 それで中学に入って ブラバンでサックスをやってみたいと思ったんだ。 そのシーンが頭の中で一瞬にして甦った。
「サックスをやりたいです」 僕の口が勝手にそう言ってしまった。
部長がその答えを聞いて
「サックスにも色々種類があるけど何がしたい?」 と、逆に聞かれた。 何の事ですか? 意味が分かりません。
ボケッとしている僕を見て 部長がこっちに来てと言いながら 窓際の方に歩いていく。
ついて行ってみると サックスらしき物が二つある。 大きいのと小さいのだ。
あ、そうか大小の差があるんだ。 待てよ、部長の首に掛かっているのは そのどちらでもなく微妙に大より少し大きいって感じで 形が少し違うという具合だ。 目の前のが大小ではなくて 中小で部長のが大のようだ。
「今このテナーサックスは僕が吹いているけど 残りの二つは誰もやっていないから どちらでもいいし 僕も、もう少しで引退だから テナーをやってもいいよ、どうする?」 と言った。
あのときのドラマで どれを吹いていたのかは分からないけど 一番大きいのが一番カッコイイだろうと思ったのだが 部長が吹いているからいくら何でも 部長のが良いとは言えない。 部長が卒業したらテナーをしよう。 それまでは中でやってみよう。
「こっちの大きいの」 と、目の前の中を指さして言った。
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