写真可の場所にて。
ジャコメッティ展に 2017年9月1日
国立新美術館にて9月4日まで行われているジャコメッティ展に、ようやく行くことができました。友人の誘いで、行っていないことに気付き、感謝感謝です。
4,5年前に神奈川県立美術館葉山別館で行われたジャコメッティ展は、ジャコメッティと彼のモデルとなった矢内原伊作氏の周囲の文化人にまつわるものだったように記憶しており、日本で生まれた無教会派の誰がしかと哲学的な繋がりがあったことが印象的な展覧会でした。
今回は、ほとんどがジャコメッティを最初に手掛けたフランスのニースに近いサン・ポールヴァンスにある現在のマグリット&エメ・マーグ財団美術館所蔵の作品が多く展示され、矢内原伊作氏がモデルとなった作品を多く所蔵している神奈川県立美術館の作品が融合した、とても分かりやすい展覧会でした。
モデリングをしては、それ以上に削ぎ、人間の骨格や筋肉を目の見える状態まで突き詰めていく表現は、作風というよりもそれしかできない個性の業のようなものであることが、苦しくも見えますが、それこそがジャコメッティそのものであることが、長きにわたり見る人に魅力を感じさせるのだと、改めて思いながら拝見しました。
鑑賞というか、拝見です。
やっぱり好きだなぁ~
ジャコメッティ。
東博(東京国立博物館)別館の法隆寺館に所蔵されている仏様方と並列に見てみたい情動に駆られ、特にヴェネツィアヴィエンナーレに出品した10体の立像は、聖像のように見え、新薬師寺の12神将とも長谷寺の11面観音とも重なり、心地よさに溢れるのでした。
アトリエの写真や映像を見る事も叶い、年がら年中制作する事しか頭に無い暮らしぶりのジャコメッティのお楽しみは制作終えた夕方に立ち寄るカフェで友人知人たちとお喋りをすることだったそうです。
人間の本質を見抜くというより、人間の本質を探り出して、それを表現する、というなストイックさだけでなく、ジャコメッティの人柄に興味を注ぐ人々との関係に曇りが無い事が垣間見える展覧会でもありました。
私の母方の祖父が最期の一か月、右手に筆を持っているかのようにキャンパスに描く仕草を常にしていました。真っ暗な窓の外に向き、「ほら、桃源郷みたいに奇麗な花が咲いているよ。」と、嬉しそうに話す祖父の言葉を思い出し、同じ時代に生きてきた芸術家の空気感が懐かしく伝わり、祖父にも会えたような温かい時間を過ごしました。