五感で観る

「生き甲斐の心理学」教育普及活動中。五感を通して観えてくるものを書き綴っています。

織物から経済を考えた

2013年10月28日 | 第2章 五感と体感
日本の神学校で学び神父になったベトナム人のTさんを久しぶりに見かけました。

彼のストラの色と意匠があまりにも美しく、ミサの間そればかり眺めていました。
きっと叙階(仏教で言えば戒壇)の時に周囲の信徒さんからプレゼントされたものだと推察。
祭服に首から掛ける仏教のお坊さんで言うと「袈裟」に相当するものをストラと呼びます。

首あたりは薄いキナリ色でそこから橙色が始まり、その橙色がまたキナリ色にグラテーションで変化し更に水を表わすターコイズブルーに近い色がやはり微妙なグラテーションで織られています。その水の部分あたりに小さな舟が黒色で刺繍されてあります。
故郷の風景の色なのでしょう。
晴々とした気持になる配色に惚れ惚れしているうちにミサが終わってしまいました。

シルクロードの時代を経て大航海時代から日本の西陣織物がバチカンで使用され、3年程前に国立博物館で開催された近衛家伝来の美術品の大規模な展覧会では、キリスト教ののシンボルを織った西陣の織物も公開されていました。日本の織物での祭服はかなりの高級品であるはずです。昔の貢物はお金ではなく「物」でした。物持ちであるからこそ蔵も建ったわけです。

祇園祭の鉾の設えはユーラシア大陸の工芸品の展覧会の様なものですし、博物館に行かなくても大交易時代を垣間見ることができるのです。

手間と材料費が値段と見合わない今の時代、どんどんと手間が省かれていきます。手間が省かれると人の脳みそに組み込まれている創造力の需要と供給のバランスが崩れていきます。
経済至上社会では、人の手間と材料にお金が付いて回ることで、手間のかかる値段のつけられないものに対しての価値がどんどん高騰していくのです。

対価を支払うことも大事でしょうが、物々交換も大事な生業での生き延び方かもしれない、、、と、思うのです。

手間暇かかるものに対しての人件費を加算していくと、日本の文化継承にもフェアトレードは必要です。

お金に代わるものを真面目に考える時代であるはずなのですが、ノンプロフィットオーガニゼーション、つまりNPOというシステムは日本では行政の外郭団体的な認識しか持っていない人が多すぎるようにも思います。ちょっと残念に思っています。

技を持つ人がそれを生業にして食べていける社会がいつの間にやら消滅寸前になっていることは、人間の消滅にも繋がりかねないかもしれません。

昨日のブログの続きではありませんが、プライスレス的生活は、精神面だけではなさそうです。

戦後反物を持って米と引き変え生き延びた祖先の話は、そう昔の事ではありません。

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