五感で観る

「生き甲斐の心理学」教育普及活動中。五感を通して観えてくるものを書き綴っています。

ほんものと対峙する

2015年08月18日 | 第2章 五感と体感
ほんものと対峙する2015年8月18日

久しぶりに美術の話題で一日を過ごしました。
私もそれなりに時代を経て見て重ねる行為を繰り返してきたな、と改めて感じました。
そうはいっても心が動かされる作品は、時を経てもそうそう変わらないことも思うわけですが、確かに比較考察する力は養ってきたようです。

昨年2014年にロンドンで行われたキーファーの大規模な展覧会のカタログを見せて頂き、30年前にニューヨークのあるプロジェクトで簡易的に設置されたアトリエを訪ねた事を思い出しました。
コンテンポラリーアートが面白い時代でもあり、私が訪ねたプロジェクトは、活躍している選ばれた世界中のアーティストがニューヨークの廃校に招待され、一人ずつに教室が与えられて、そこで表現するというものだったように記憶しています。そのプロジェクトに東西に分離された西ドイツからやってきたのがキーファーでした。
コールタールで描かれた大きな作品は、とても衝撃的でしたし、描くマチエールに一気に引き込まれました。そんなエネルギーを持つとは思えない華奢でハンサムな青年は、その頃既に大きな美術館で回顧展をやるほどの美術界で知られたアーティストであり、私自身帰国してから何とはなしに気になるアーティストの一人として垣間見てきました。
キーファーが、訪ねた私に自分の作品カタログを自ら見せ、その時代の感情を作品に籠めている事を話してくれました。

1989年にベルリンの壁が崩壊した時、真っ先に思い浮かんだのは、キーファーでした。彼は、これからどんなことを表現していくのだろう、と。

30年ぶりにキーファーの足跡を追ったような展覧会の大きなカタログを一枚一枚捲るとニューヨークのアトリエのあのコールタール臭いアトリエと華奢で物静かな話し方のキーファーがまざまざと蘇ってきたのです。
表現者としての役割と情動が、その時代にピタリと焦点付けされ、心と表現が一致した内から湧き出す力強さが私の好む何かと性が合った、という表現が一番相応しいかもしれません。
次はいつ、どこで、展覧会を行うのでしょう。
30年前に置いてきた感情と向き合う不思議さを実際に作品に対峙して感じ取りたいものです。

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