Mr.コンティのRising JAPAN

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Del=Piero は救世主となるか Sydney FC 2-1 Brisbane Roar 10th Feb., 2013

2013-03-10 | Aussie & Kiwi
昨年8月末頃、オーストラリア新聞紙上を騒がす話題を見つけた。数ヶ月前に長年所属していた Serie A の Juventus Torino から引退を宣言したあのイタリアの英雄 Alessandro Del Piero が何故か Australia の Hyundai A-League の Sydney FC のアプローチを受けているという記事だった。 

J-League が開幕した当時、Zico , リネカー、ラモン=ディアスを始めスキラッチ、ストイコヴィッチ、メディナ=ベージョ、ロナウダン、レオナルド、サンパイオ、ドゥンガら世界の現役スーパースターが来日したものだった。 しかし最近は欧州市場が10数年前から活性したこともあり J-League はそれほど魅力のあるリーグではなくなってしまった様だ。 
そしてオイルダラーを背景にワールドカップが終わる度に一線を退く選手たちは中東に渡りだした。アルゼンチンのバティステゥータの様に。 しかし100人にも満たない観客席の前でプレーする寂しさ?かそれともイスラムの戒律の厳しさか?はたまた気温の高さか?ここで長くプレーする選手は多くはない。 
1970年代アメリカ新大陸に North American Soccer League が発足した。そして神様ペレを強引に口説き落とした New York Cosomos を筆頭に世界中のスーパースターが新大陸を目指した。 キナーリヤ、ベッケンバウアー、クライフ、そしてあのジョージ=ベストも。 
世界中が不況にあえぐ中このオーストラリア大陸は豊富な地下資源を背景に欧州より一足先に景気は回復しているみたいだ。

9月5日。地元紙は Del=Piero と Sydney FC との契約が締結された事が報道された。新聞や専門誌の話を総合すると2年契約の年棒は200万豪ドル(当時のレートで1億7千万円 ) との事。 Liverpool を筆頭に Celtic, Olimpiacos 等の欧州のクラブとの争奪戦を勝ちぬけたのはロシア人のDavid Traktovenko オーナーの豊富な資金力があったからだ。しかし Del Piero 獲得のためにはチーム内の Marquee Player であった Brett= Emerto か Nick=Carle のいずれかを他のチームに“売却”する必要があった。 そして UAE のBaniyas FC に Carle をトレードに出すことに成功した。 そして幾度かのアポイント申し込みを経て9月2日に連絡を受け、最後は5日の午前1時に text を受けて同日11時から交渉に入り契約締結にこぎつけた。 
しかし39歳の Del Piero に Liverpool, Celtic が興味を示したこと、そして年棒200 万豪ドルで契約が決まったこと、 Del Piero の“価値”の二面性を見た気になった。 メッシやロナウドには何十億を示すが Del Piero になるともう二億円も出さないのである。
Liverpool が興味を示した時は Del Piero を知る多くの人たちがそこに行くと思ったらしいが。 まぁ Liverpool は赤字で大変なのだけど。Del=Piero 獲得に就いてはオーストラリアの Julia Gillard 首相からメッセージが届くほどであった。



10月5日Del=Piero を獲得した Sydney FC はシーズン開幕戦となる Wellington Phoenix 戦に臨む為に Wellington の Westpac Stadium に乗り込んだ。 しかし Del Piero 旋風に奮起したのは対戦相手の Wellington Phoenix 。見事に Sydney FC を 2-0 で破った。 開幕戦を落としたSydney FC は続く Newcastle Jets とのホーム開幕戦も 35,419人の観衆を集めながら 2-3 で落とし連敗スタート。
第3戦は小野擁する Western Sydney Wanderers との Sydney Derbyを 1-0 で制しシーズン初勝利を収め、続く Perth Glory も 2-1 で破り連勝を飾り、上位進出かと思われたが第5節、昨シーズンのリーグ王者 Central Coast Mariners に 2-7 と惨敗を喫してしまう。更に, 2-3 Melbourne Victory , Brisbane Roar 4-2 と連敗を重ねる。そして開幕7戦を終えて遂にかつてサンフレッチェ広島でプレーしたIan Crook 監督が更迭された。 しかしSteve Corica 代理監督を立てて臨んだ Adelaide United 戦も終了2分前、 Dario Vidosic に決勝ゴールを許し連敗も4となってしまった。そしてこの試合はホームゲームで初めて2万人を大幅に割る 13,317人と観客数も落ち込ませてしまった。この試合の唯一の明るいニュースはかつての代表選手 Jason Culina が1年ぶりに怪我で復帰を果たしたことだった。



第9節からチームの指揮をとったのはかつての Socceroos の監督も務めた Frank Farina。 連敗街道から抜け出せたけど以降11試合で4勝4敗3分。 第19節終えて6勝3分10敗。首位 Central Coast Mariners と18勝点差の8位。 Final Series に進出出来るのは上位6チーム。 4位 Adelaide は勝点32であるが5位 Newcastle Jets は勝点23。第20節の相手は 昨シーズンの Grand Final 王者 Brisbane Roar 。今シーズンは前の対戦では 2-4 で敗れている。対戦前までは Sydney FC と同じ勝ち点21であるが得失点差で二つ上の6位にいた。上位6以内が進出出来る Final Series 圏内に留まる為にはこれ以上勝点を落としたくないところだ.



Brisbane Roar 戦の前日、地元紙にはベテラン MF Jason = Culina が Farina 監督ともめて次の試合にはベンチ入りしない可能性がかなり高いとの報道があった。Culinaはあの2006年のワールドカップの日本戦にも出場した選手。Farina 監督がオーストラリア代表監督時代、2005年の FIFA Confederations Cup 等は Culina が招集されプレーするなど両者にはある信頼関係があると思っていた。 しかし Brisbane 戦の前の練習でレギュラー組からはずされた事に Culina は不満を隠さなかったらしい。
そしてこの試合がかつて PSV Eindhoven でもプレーした Jason Culina はチームを退団してしまった。

Sydney FCは2-2で引き分けたNewcastle Jets戦のスタメンから3人替えた。前節終了直前に決定的なピンチをハンドで止めて退場となった Terry McFlynn に替わって Adam Griffiths がCBに入った。Ryan Grant と組むボランチは Peter Triantis.
本来はここに Culina が入りたかったか? 最前線は Del Pierro のワントップではなく立ち上がりは Blake Powell との2トップだった。
Brisbane は前節 Mariners 戦 ( 2-2 で引き分け)から2人替えてこの試合に臨んできた。 この試合に起用された Stefan Nijland がトップ下に入った。
Roar のキックオフで始まった試合は地元 Sydney FCは戦う姿勢を見せたいのかいきなり ⑰ Mitch Nicholus に左SB③ Fabio Alves が激しく当たりホイッスルが鳴る。 それに呼応する様にSydney が Brisbane ゴールに迫る。 2分51秒、Brisbaneゴール前でDel=Piero が粘ってCKを得て CB ⑧ Griffitsh がヘッドを放つが惜しくも外れる。4分50秒には③ Alves が倒されて FKを貰い右 SB ② Sebastian Ryall がヘッドで合わせるがここもわずかに外れる。 立て続けの攻撃に続いて6分50秒、⑫ Powell の縦パスを受けたDel=Piero が CB の⑬ Jade North ⑤ Ivan Franjic をかわして放ったドリブルシュートがGK① Michael Theo を破ってBrisbaneゴールネットを揺らし先制ゴールが決まった。
立ち上がりの攻撃に続いてチームの看板選手が決めたゴールに地元サポーター達は喜びを爆発させた。





更に2列目右の⑦ Brett=Emerton が起点となりSydney は中盤でよくボールがつながり攻勢を見せた。 Asian Cup 2011 までSocceroos の2列目を担っていた Emerton は他の選手と少し格の違いを見せていた。 Emertonもワールドカップ 2006 年大会のメンバーで日本戦にも出場していた選手。それだけ当時の選手はすごかったという事か、それとも彼らを脅かす選手が出てこないのか。


 
先制を許した Brisbane であったが13分を過ぎたあたりから徐々にペースを握りだす。 左サイドの22. Thomas Broich とSBの③Shane Stefanutto の2人が左サイドをよく上がっていた。 そしてワントップアルバニア人 FW 185cm の ⑦ Besart Berisha が楔となり ⑨ Nijland が拾ってつなぐという攻撃が目立った。



14分、21分にはミドルシュートが Sydney ゴールを襲うが GK ⑳ Vedran Janjetovic がファインセーブを連発する。 Janjetovic は Farina 監督が指揮を執り始めた第10節からポジションを Ivan Necevski からGKを任され、その試合, Melbourne Victory 戦を完封したことにより Farina 監督の信頼を得たのかその後はずっとSydney ゴールを守り続けている。 
Del=Piero は先制ゴールこそ決めたがその後は歩くシーンが目立った。今夏のシドニーは大変な暑さ、39歳のDel=Piero には重く圧し掛かっていたことだろう。 それでも34分、40分に得たFKではさすがと思わせられる弾道のFKを放っていた。
そしてこのまま Sydney リードで前半終了かと思われた44分、中央からPAにドリブルで切れ込んできた ⑨ Nijland に
③ Alaves がタックルで止めると主審はペナルティースポットを指した。 これには Sydney の全選手が猛抗議を行う。そしてスタンドからは大ブーイングが起こるが勿論判定は変わらない。 ⑦ Berisha が決めて試合を振り出しに戻した。
スクリーンに ③Alaves のタックルが映し出されるがそのタイミングといい場所といい少し微妙であった。 ただもしそうでなければスクリーンには映し出されなかっただろう。



審判団はダイブーイングを浴びながら控室に消えていった。うち一人は女性線審だった。



ハーフタイム中に隣の御夫婦と話をした。言葉からしてイタリア人でDel=Piero を見に来たのかと思ったらマドリード出身のスペインからの移民御夫婦でもうシドニー在住に30年以上との事だった。 あの Mundial 1982 の話、そして EURO2008 からのスペインの快進撃の話をしたりした。マドリード出身だけどサポートするチームは Real Madrid ではなく Athletico Madrid だった。1989年に Athletic が来日してその試合を観戦したこと(相手は日本代表じゃないけど)バルセロナに家内とクラシコを観戦しに行ったことも話した。 
昨年のロンドン五輪では日本に敗れた事を話すと奥方は知らなかったけど御主人はよく知っていた。その時の試合の事を同じ観戦ノートに書いていたのでそのページを見せた。するとすごく驚いていた。 ⑪ Koke は A. Madrid の選手だと喜んでいた。
そして現役スペインの代表のDavid Silva の母親は日本人の血が流れているということを教えてもらい今度はこちらが驚かされた。奥さんがわざわざ“スマホ”で Wikipedia を検索し見せてくれた。 おそらく彼女のおばあさんがそうだろう、だから彼は Oriental っぽい目をしていると彼の写真を指さして教えてくれた。 はぁ~知らなかった。
最近になってオーストラリアでもサッカーを楽しめるようになったと言っておられた。



後半に入りBrisbaneは2列目右の Broich をワントップに上げて⑦ Berisha を2列目左に置き前線のフォーメーションを替えてきた。そして攻撃時は ⑦Berisha が上がり2トップを形成しボランチ⑭ Lustica が ⑦Berisha の位置に入ってくる。これで ⑦ Emerton が上がってこれなくなってしまった。 そして課題でもあったDF陣のマークの甘さが目立ってきた。 51分 ⑦Berisha がミドルを放ち55分には ⑨Nijland から絶妙のスルーが⑦ Berisha に通るがここはオフサイド。57分にはBroichi のミドルを GK Janjetovic がナイスセーブでストップするがいずれもDF陣のマークが甘かった。
58分には Sydney ベンチが動いた。⑫ Blake Powell を下げて⑯ Joel Chianese を入れて、22 Ali Abbas を下げて ⑰ Terry Antonis を入れて。 そして前線を⑩Del=Piero と⑯ Chianese の②トプにし左サイドに ⑰ Antonis を入れた。
しかしそれでも前半は攻撃の起点なっていた Emerton のいた右サイドが崩されここからシュートに持ち込まれるシーンが続いた。
入れ替えた攻撃陣はまだパスのタイミングが合わないようだった。
68分今度はBrisbaneベンチが動き ③ Stefanutto が下がり ⑮James Donachie が投入された。
しかしこの直後、左に流れたDel=Piero が上げた素晴らしいクロスは⑬ Jade North がヘッドでクリアーするもこぼれ球を拾った26 Triantis が右足を振りぬきゴール左隅に突き刺さり Sydney が再びリードを奪った。 この試合スタメンに起用された Triantis のすばらしい地を這うような低いライナーのミドルシュートだった。 



攻勢の中しかも選手交代後に失点を喫したBrisbaneベンチは72分ボランチの⑱Luka Brattan を下げて⑪ Ben Holloran を入れて前線を厚くする。 そして試合は Sydney 陣内で進む。ファールで相手を止めるシーンが目立つようになり79分には ⑯Chianese が⑦ Berisha を倒してイエローが出る。Emerton がポジションを下げてDel=Piero まで守備にまわりBrisbaneの攻撃を食い止める。 82分には⑨ Nijland が下がり⑰ Mitch Nicholas が入る。 そしえ85分には CB ⑤ Franjic が前線に上がってくる。 それでもSydney FC は2度FKを得て82分にはDel=Piero が直接狙ったFKがクロスバーの下に当たりサポーター達から一斉にため息がもれた。



87分 ⑦Berisha へ絶妙のスルーパスが通りそのまま放ったショットがシドニーゴールに決まるが線審がオフサイドの判定。これには⑦ Berisha が激しく抗議しイエローを受ける。確かに微妙であったけど….



そして92分またもDel=PieroのFKが Brisbane ゴールを襲うが GK ① Michael Theo がパンチで弾き出し、試合終了を告げるホイッスルが鳴り響いた。
これで Sydney FC は勝点が24となり8位から一気に5位に浮上した。 ただ試合はDel=Piero の個人技が主導権を握らせ最後はDF陣や中盤、Del=Piero まで下がって体を張って波状攻撃を防いだという上位に進出するにはまだ心もとない内容だった。

試合が終わり隣のスペイン人ご夫妻と別れの言葉をかわし脚早に競技場を後にした….
その後4試合を2勝2敗で消化し第24節を終えてSydney FC は勝点30で5位に浮上してきた。 しかし1ゲーム差、3勝点差の勝点27、9位 Melbourne Hearts まで中に5チームが犇めく混戦となっており Final Series 争いはまだまだわからない。

来年ACLではシドニーホームの2チームが日本に来てくれればと思うんだけど、 A-League には他にも魅力のあるチームがある。日本ではあまり話題にならない A-League を私は大切に見続けて行きたい。