Mr.コンティのRising JAPAN

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6年目の Hyndai A-Leauge  Adelaide vs Newcastle

2010-09-17 | Aussie & Kiwi
2005年にデビューした Hyndai A-League は6年目を迎えた。 
今シーズンから新チーム Melbourne Hearts を加え11チームとなり、各チーム3回戦総当たりの30試合のレギュラーシーズンが始まっている…

8月5日、ワールドカップ終了約3週間後に開幕した今シーズンは9月 Week 5 を終えて昨シーズン最下位だった Adelaide United と5位だった Perth Glory が勝点11で首位に並んでいた。
昨シーズン覇者のSydney FC は勝星なしの2分3敗で最下位。 もう片方の Grand Finalist であった Melbourne Victory も7位と出遅れいていた。また昨シーズンから A-League 入りし3位となった Gold Coast United も勝ち星無しの10位。 
好成績を残したチームが翌シーズンは主力選手が他チームのオファーに引き抜かれて下位に沈むと言う A-League の“悪循環”は今年も“健在”の様だった…
9月10日、Week 6 の最初の試合で Central Coast Mariners は Melbourne Hearts を 1-0 で降し勝点を11と伸ばし、得失点差で後塵を拝しているものの Adelaide, Perth と並んで勝点を11とした。そして私は9月11日に Hindmarsh Stadium で行われた Adelaide United vs Newcastle Jets の観戦の機会を得る事が出来た….

Adelaide United は上述した通り昨シーズンは最下位に沈んだが今年は第5節を終わっても負けなしと好調だ。昨シーズンが終わっても一昨シーズン、Grand Final に進出した事から今年2月に始まった Asian Champions League の出場権を獲得しており、 ACLではベスト16に進出した。クラブ経営が一時悪化しA-League 当局の管理下に置かれていた時期もあったが主力選手残留を決めた事から今年は出だしから好調を見せている。A-League 開幕以来 1位、2位、6位、2位 10位 の順位に終わっているので今年は上位に進出のシーズンと思っているファンも多いとか…
一方、対戦相手のビジター、 Newcastle United は今シーズンまだ勝ち星がない。
前節を終えて4試合で僅かに1得点。 生え抜きでチームの重鎮であり昨シーズンチームの得点王だった Matt Thompson そして Jason Hoffman までもが新生 Melbourne Hearts に移籍してしまい、戦力的にも精神的にもその穴が埋まっていない様に思われた。
そして今シーズンは未だメインスポンサーが決まっておらず財政的にも心配されるシーズンインだった。 2007-08 のシーズンは Grand Final で Central Coast Mariners を降し見事に優勝を果たしたのだが…. その時も主力が次々と流出してしまっていた。歴代の在籍選手を見ても Adam & Joel Griffith の兄弟選手, 五輪代表GKだった Ante Covic , Jason Hoffman, James Holland,  Socceroos の Jade North 今 JEF千葉でプレーする Mark Milligan…素晴らしい選手達がプレーしたんだけどなぁ…
サラリーキャップ制度を導入している事もありこういう事実は避けられないのが A-League の現状だ….

                                          GK Ben Kennedy

11 Tarek Elrich   5 Ljubo Milicevic   4 Nikolai Topor-Stanley   3 Adam D’Apuzzo

           7 Kasey Wehrman                                  6 Ben Kantarovski

                                          8 Michael Bridge

          18 Marko Jesic                                              16 Jeremy Brockie 

                                               9 Zhang Shuo

                                               9 Sergio van Djik

      7 lucas Pantelis                 10 Marco Flores                 19 Mathew Leckie

                           12 Paul Reid                          8 Adam Hughes

    6 Cassio           4 Ian Fyfe             5 Daniel Mullen     24 Cameron Waston
 
                                                    1 Eugrn Galekovic

ホームの Adelaide は前節 アウェーでSydney FC を 3-1 で降した試合と同じスタメン。一方の Newcastle は中心選手の Ruben Zadkovich が前節 Brisbane Roar 戦で退場となり出場停止。この日は中国人FW Zhang Shuo がスタメン起用された。

試合は立ち上がりからホームの Adelaide が攻勢に出る展開。特に左サイドバックの Cassio と2列目左のPantelis のドリブル突破が効果的で何度も Newcastle ゴールに迫る。中盤戦は1対1でも圧倒的に Adelaide に分があり、最後は何とか CB の Milicevic と Topor-Staley が身体を張って止める。それでも19分にはCKからこぼれ球を拾った Bridge が右ポストをかすめる強烈なミドルを放ちゴール裏に陣取る Adelaide サポーター達の肝を冷やす。このCKでは長身 189cm の Tipor-Stanley が上がって来た。かつては Sydney FC でプレーし、2007年ACLでは浦和レッズと対戦。マークをしたワシントンを見事に完封したCBだ。その後も北京五輪に出場する等の実績もある選手。ポストワールドカップにはCBで代表も..と思っていたんだけど…まだ Lucas Neil が起用されている。そのうち今浦和でプレーする Spiranovich とCBを組むじゃないかな…とちょっと想像している。
ピッチの上では Adelaideの攻勢が続き先制点も時間の問題と思った22分49秒。またも Cassio のドリブル突破で左サイドを崩し最後は Pantelis の入れたクロス に Leckie が合わせたヘッドが Newcastle ゴールネットに突き刺さった。オーストラリア U-20 代表のLeckie の見事はヘッドだった。
劣勢の Newcastle がゴールを先制許したことでAdelaideのゴールラッシュもあるのではないかと思ったが30分を過ぎると今度は Newcastle が攻勢に出る時間が俄然増えた。左サイドの Brockie 右サイドの Jesic がワイドに開き両サイドにボールが回る様になる。更にトップ下の Bridge も前線に絡みトップの Zhang Shuo と合わせた4人が最前線に入りボールが回る様になる。そしてカウンター時には右サイドバックの生え抜き選手 Elrich が効果的に押し上げてくるので Adelaide が後手に回るシーンが続く。29分には Brockie のシュートが左ポストを叩き、そのこぼれ球を拾った Bridge のシュートは GK Galekovic がナイスセーブで防ぐ。その直後には Jesic がドルブルシュートを放つがこれは Galekovic の正面。更に32分にはCKから Zhang Shuo が押し込もうとするが Galekovich が倒れ込んでキャッチ。 この数分間でも決定機が3度もあったがワールドカップメンバーだった GK Galekovich のセーブもあって同点ゴールは阻止される。
前半終了直前にも Elrich がBridge との素晴らしいワンツーで抜け出すがシュートには持ち込めなかった。 1分あったロスタイムも過ぎ前半は何とか Adelaide リードのまま終えたが、失点後の Newcastle を見ると今度は同点ゴールは時間の問題かと思わされた。 早く同点に追い付けば面白くなるのになぁ…と思いながらハーフタイムにゴール裏に移動した…

   

ハーフタイム中に移動した席の隣に座っていた初老のサポーターに声を掛けられた。私が手にしていたメモ帳を見て。 “ You はスパイか?”と訊かれたので “2年後のACLに向けて調べに日本から来た。”と答えた。今シースンはかつてオランダの Twente でも指揮を執った Rini Coolen 新監督になってまだ負け無しで好調なことを話していた。そして Cassio 位置だけど彼は今シーズンからサイドバックになったのか?と尋ねたら、彼は元々あのポジションだ。と言っていた。ACL での印象は左サイドをドリブルであがる印象があるのでMFかと思っていたと話した。 
3月の広島戦は彼が入って流れが変わった。 Adelaide は ACL では鹿島、ガンバ大阪、広島等と対戦しているので日本でも結構馴染みのあるチームだと言うとけっこう喜んでいた。 ここで最も知られるJ-League のチームはガンバ大阪と浦和 REDS だった…

   

後半に入って立ち上がりこそ Adelaide が攻め込み FK のチャンスから Pantelis がヘッドを放つが(その前にファールを取られた。)1点ビハインドの Newcastle が攻めるシーンが続く。しかし前半の様に顕著にサイドを使うわけではなく, 中盤からスルーパスを狙う様になっていた。だが相手DFラインの裏への飛び出しが少なく、タイミングが合わなかったりこちらから見てのパスの出しどころが解るので前に繋がってもシュートを読まれておりゴールには至らない。 
57分には FW Zhang Shuo が下がって Newcastle のルーニーこと Sean Rooney が投入される。2008-09 のACL の北京国安戦では終了直前奇跡のゴールを決めてチームをベスト 16 に導いた選手だ。62分には強烈なミドルを放った。
後半に入り押される展開が続く Adelaide は 右サイドバックの Waston を下げて 197cm の長身DF Cornthwaite を入れる。 ACL の広島戦では強烈なヘッドを決めた選手だ。だが追加点を上げたのは空中戦ではなく アルゼンチン人MF の Marcos Flores のドリブル。65分中盤で van Dijek からボールを受けると Wehrman, Kantarovski をかわして中央をドリブル突破。最後は Milicevic, Elrich もかわしてそのまま見事なドリブルシュートを決めた。Flores は勢い余ってそのままゴール裏のサポーター達に抱きついてしまった。 さすがアルゼンチンと思わせる素晴らしいドリブルシュートだった。

   

このゴールは得点力の乏しい Newcastle には重くのしかかった事だろう。
追加点を機会に Adelaide が勢いを取り戻す。73分には右サイドを崩し Leckie の上げたクロスに中央でフリーの van Djik がヘッドで押し込む。大歓声があがるが線審がオフサイドの判定。 Newcastle は最終ラインのマークが甘い。
CB のTopor Stanley が攻撃参加しその裏を元シドニー五輪メンバーのボランチ Wehrman が下がって埋めるがそこを狙われているみたいだった。
77分に Newcastle ベンチはその Wehrman を下げて Brodie Mooy を投入し左サイドバックに入れ D’Apuzzo を中盤に上げる。 Mooy は オーストラリアU-17, U-20 代表にも選出された20歳の選手だが緊張のせいかプレーが堅かった。投入早々クリアーボールを中に入れてしまいそこから拾われて繋がれ Leckie にシュートを撃たれるがクロスバーを越えた。 Newcastle の Branko Culina 監督が腕組をしてピッチを見つめている…. かつては Sydney FC を率いてさいたまスタジアムで浦和レッズと対戦した監督だ。
78分、2点目を決めた Flores が大歓声を受けてベンチに下がり Iain Ramsay を投入し 84分には Pantelis を下げて Joseph Keenan を入れ守備固めを図る。2点差の余裕か…89分にはスルーパスが Leckie に入りフリーでシュート体勢に入るが今度は Mooy が必死に戻ってブロックでCKに逃れた。
ロスタイムに入り Adelaide の勝利が秒読みか..となった89分、 Cassio が不用意なバックパスを送るとそれを見た Rooney が走り込み、そのままスライディングシュートを放ち Adelaide ゴールに捻じ込んでしまった。スタジアムには歓声が上がらず静寂が支配したので最初はゴールインかどうか解らなかった。 しかし向こう正面の7,8人しかいない Newcastle のサポーター達が狂喜しているのが見えたのと Rooney がボールを拾ってセンターサークルに疾走しはじめたのでゴールインと解った。大活躍の Cassio だったけど、バックパスをする距離では無かったなぁ…
ロスタイムが3分と表示される。試合終了間際になりこれで試合が面白くなると思った。 92分 Newcastle は左サイドで FK を得る。  Miliceiv ,Topor-Stanley といった長身CBががゴール前に入る。そして D’Apuzzo が入れたFKが右ポスト前でジャンプした Topor-Stanley にぴたりと合う…. しかしそこから放たれたヘッドは僅かにゴールポストの右に外れた…
恐らくそちらのゴール裏にいた Adelaide のサポーター達は心臓が凍っただろう…. 練習でもあんなに良いクロスは上がらないんじゃないかな…
そしてタイムアップのホイッスルが吹かれ、ホームチームの勝利に大歓声が上がった。 これで Adelaide は勝点14に伸ばし首位をキープした…

試合後、“恒例の” Stadium Bar に向かう。多くの子供達がサインを貰おうと選手達の登場を待っている…子供だけでは無い、老若男女が….選手達はみな丁寧にサインや写真撮影に応じている…今の J-League ではちょっと不可能なシーンだ、何とか人気獲得を…と云う A-League ならではのシーンだ。
私も数人の選手と話をする機会が…. Cassio には最後のバックパスの事を… van Dijk にはオフサイドゴールの事を…そして Fyfe とはかつて Sydney FC 時代にさいたまスタジアムで浦和レッズと対戦した事を言うと、懐かしそうに色々話してくれた。“ウラワレッズは今も強いのか?またあそこで戦いたい.. “ そして当時レッズの監督だったオジェク氏が今 Socceroos の監督に決まった事には彼も少し驚いたらしい…. こんな会話が出来るのも A-League ならではだ…

翌日、空港で今度は Newcastle の選手達と偶然に出会ったので Season Guide Book にサインをしてもらった。右サイドバックの Elrich は主審がずいぶんホームチームよりだったと少し不機嫌義気…Culina監督は…と尋ねると、おそらく Bath Room で髪を整えているだろう….と髪の毛を櫛でとぐしぐさをしておどけていた

こんな事が出来るのも A-League の醍醐味かもしれないな……. そう想いながら私はメルボルン行きの機内に乗り込んだ....