1-2とリードされていたのはサンガ。1点を追う後半、45分も過ぎロスタイムは4分と表示される。あぁこれで奇跡でも起こらない限り勝ちは無くなった、せめて引分けを… 46分48秒、左サイドからドトゥラが上げたクロスに柳沢がヘッドを放つがクロスバーをわずかに越える。そして49分を過ぎる。もういつホイッスルが吹かれるかとドキドキする。正面やや右から放たれた郭泰輝のシュートがクロスバーを直撃する。
あぁ…もうあかんわ。やっぱりあかんわ。
私はしゃがみ込んでしまった。しかし次に私の目に飛んで来た光景はそのこぼれ球を拾っての2次攻撃、そして最後に放たれたシュートがゴール右上隅に吸い込まれ、ゴールネットが揺れるシーンだった。
サンガのゴールが決まった時にいつもやる“オーレ ! サンガ !! “ も忘れた私は飛びあがって狂喜乱舞した。殊勲の同点ゴールは中山からボールを受けた柳沢。さすが元日本代表。地獄の一歩手前で踏みとどまった瞬間だった。
湘南の選手の何人かは倒れ込んでしまった。これでタイムアップと思いきや、湘南のキックオフが始まる。おいおいもう後半50分を過ぎているぞ… だが試合はすぐにそのまま 2-2 ですぐに終わった……
平塚競技場に来たのは….21年振りになる。当時はまだ J-League が創設される前。あの時は日本リーグの日産自動車対古河電工の試合観戦だった。 日産は木村和司、水沼、松永らがいた..そして古河はゴルゴン金子、それから後の日本代表監督岡田武史らがいた…平塚駅から競技場までどのバスに乗れば良いかわからず歩いたなぁ….それにしても平塚は遠かった…… 実業団時代にここで実業団の全国大会や東日本大会あ開催されたけど出場の縁は無かったなぁ…
この試合の Match Day Program にはこう書かれていた。今日の相手は京都サンガFC 今季は序盤戦こそ攻守が噛み合い、順調にスタートしたが徐々に失速。指揮官を秋田新監督に代えたが、その後も白星を掴めず現在も6連敗。目下最下位に沈んでいる…
サンガは開幕戦の神戸戦に敗れたが以降は連勝を飾るなど第4節まで2勝1敗1分の好スタート。しかし第5節以降、さっぱり勝てなくなっている。
代表の居ぬ間のナビスコカップでは勝利を重ねたが、決勝トーナメント進出を懸けた引き分けてもよいFC東京戦に敗れてからはまたも失速......湘南との前の対戦は西京極での第13節。試合内容で圧倒していながら 0-1 で敗れた。その試合が連敗街道の始まりだった。6連敗中のサンガは目も覆いたくなる6試合連続無得点。得点が入らねば勝てないのは当然だ。
このままではまた降格してしまう。 湘南戦に勝ってなんとか上昇のきっかけにしたいところだが対戦相手も降格を免れる為にも勝点3を上げた試合だった。
この試合、専門紙では“ザ・ボトム対決”と書かれていたが、湘南からすれば今の最下位サンガは“格下”なのかもしれない….
ただでさえ“得点力不足”のサンガはディエゴが出場停止。 注目のワントップは柳沢でなくて金成勇。2列目は右に中山、左は中村充孝。 ドトゥラはベンチスタート。 ボランチは加藤弘堅と安藤淳、DFは3バックで右から郭泰輝、水本、森下。MFの右サイドに大剛、左に中村太亮。 ベンチのドトゥラ、ヤナギがいつ投入されるか。それに角田、FW宮吉…
ベルマーレのキックオフで始まった試合は開始4分に田原豊がヘッドで落としたところを中村裕也が強烈なショットを見舞う。この弾道はゴールポストの右に外れたが、前半はホームの湘南が押す展開が続いた。
7分には右サイドバックの臼井に突破を許し10分17秒にはボランチの永本がミドルを放つ。 15分42秒にはワンツーで抜け出された山口をファールで止めて危ない位置でFKを与えてしまう。 18分51秒には坂本がドルブルシュートを放つ。そのCKからこぼれ球を拾われピンチを招くが最後は水本がクリアー。24分にはパスミスを拾われて田原豊にシュートを打たれる。28分には波状攻撃を受け、郭泰輝、森下が何とか身体を張って失点を防ぐが、バイタルエリアでボールを繋がれ過ぎだ…
ベルマーレは左サイドの阿部がDFラインの裏に飛び出す動きを見せサンガDFラインを下げさせる。 そのせいか中盤との間があいてしまい、サンガは攻撃に移っても最後にはロングパスでしか繋げないので最前線に繋がらない。 そして守勢にまわるとファールで止めるシーンが目立つ。前半だけで弘堅、郭泰輝がイエローを貰ってしまった。そしてかつてサンガでプレーした田原豊、迫力のある攻撃を見せるなぁ…
こんな良い選手をなんで出したんだろう…
31分にはカウンター攻撃から最後は阿部にシュートを打たれるがここはGK水谷の正面。 32分には中村祐也にドリブルシュートを撃たれる。 サンガは 26分にオフサイドになった安藤の飛び出しと44分に加藤から大剛にボールが入ったがこれもオフサイド。このシーンぐらいしか相手サポーターを驚かすシーンは無かった。
前半は何とか無失点で切り抜けたがベルマーレサポーターには失礼だが、湘南相手にこれだけ押されていては他のチームにどうして戦うのだろう…と悲観的な気持ちになってしまった…
後半に入ってサンガは弘堅に替えてドトゥラを投入し、大剛をDFラインに入れて4バックに。そして安藤の1ボランチにしたのか….. 後半のサンガはその選手交替、フォーメーションの変更が功を奏して劇的に良くなった。 46分47秒には充孝のドリブル方太亮に繋ぎ中山がシュートを放つ。 48分31 秒には充孝から金成勇に繋ぎシュートに持ち込むが惜しくも決まらない。 50分20秒森下が左サイドをドリブルで切り裂く。劣勢続きの湘南は53分に右サイドの臼井に替えて村松大輔を投入する。これは相対する森下とドトゥラ対策か? その直後FKのチャンスを得た湘南はそこから島村が強烈なヘッドを放つがゴールには至らなかった。
しかし再びサンガの攻勢が繰り広げられる。55分45秒には安藤がミドルを放つが惜しくも外れる。そして59分、左サイドをドリブルで上がって来た金成勇がそのままシュートを放つとグラウンダーのシュートはGK都築の手を掻い潜りゴールネットを揺らす。 見事なドリブルシュートだった。 6試合ぶりのゴール。そして私が観た久々の“生サンガのゴール”に喜びを爆発させた。
更に3分後の62分にはドゥトラが素晴らしいドリブルシュートを見せるが惜しくも決まらない。このドゥトラが入ったことが劇的にサンガを後半蘇生させた。
よし次の1点。2点差にすれば今日は勝てる。何か月ぶりかの勝利が近づく….とこの時思ったがそれは安易な希望的観測でしかなかった。
64分23秒、セットプレーからサンガゴールが割られてしまう。後方に陣取ったベルマーレサポーター達から大歓声が上がるがその前にファールがあったのか主審はノーゴールの判定に今度は数少ないサンガサポーターから安堵の息が漏れる。しかしそれもつかの間、69分エメルソンのロビングを上手く阿部が頭で落としたところを田原豊が強烈な放った強烈なショットがサンガゴールに突き刺さる。向こう正面のベルマーレサポーター達からは大歓声が上がり、田原豊のチャントが始まる。
“タハラユタカ、タハラユタカ、タハラユタカゴール… Get Goal, Get Goal タハラユタカゴール~” 思わず心の中で歌ってしまった。 田原は今でも好きなんだけど、京都戦以外で決めて欲しかったなぁ~
同点にされたサンガベンチはここで柳沢を金成勇にかわって投入し、充孝にかわって角田を入れる。その直後に太亮がミドルを放つが都築がナイスセーブを見せる。 さすが元日本代表GK。彼はワールドカップメンバーに入るのではないのかと思っていたんだけど… 75分にはドゥトラのドリブルから柳沢にナイスパスが入るが惜しくもオフサイド。 ボールを受ける柳沢の動きはさすがだ…
攻勢を続けていたサンガだったが81分、逆転を許してしまった。中央をエメルソンにドリブル突破を許し田原に繋がれGKと1対1になる。水谷が田原の足元に飛び込み田原が倒れると岡部主審はペナルティースポットを指す。 水谷が必死に抗議をするが判定はもちろん覆らない。 このPKをエメルソンが決めてホームの湘南がリードを奪った。
11年ぶりに昇格した湘南の「J1での戦いは厳しく前節神戸戦を引き分けたが4連敗中。ようやくカムバックしたJ1での舞台から簡単に降りたくは無いのは良く理解できる。でもサンガだってもう落ちたくないんだよなぁ….
残り時間あと10分足らず、湘南は61分に投入されたエメルソンのボールキープが効果的だ。彼がボールを持つとなかなか止められない。ファールで止めるとなかなか起き上らない。 88分に湘南ベンチは坂本に替えて寺川を入れるがこれは守備固めか… ロスタイム4分と表示されるが、時間は刻一刻となくなり勝ち星どころか勝点が消えて行くように感じた。ここまで来たのに、折角来たのに… 21年ぶりに来た平塚なのに…..
劇的な柳沢のゴールで何とか勝点1は確保した。しかしこの試合はサンガも湘南もJ1残留の為には絶対に勝たねばならない試合だった。
“勝点1では足らないんですよね~….”
近くにいたサンガサポーターとそんな話をした。
ポツリポツリと雨が落ちて来た。
喜んでいいのか複雑な心境でバス乗り場に急いだ。夏休みなのでベルマーレのサポーターの親子連れが多く目に着いた。彼らの方が無念の思いだろうなぁ…..
自宅に着いた時は日付が替りそうだった….
その後サンガもベルマーレも勝点を伸ばせていない。J1残留圏のチームとは勝点10の差をつけられている。残り試合を10試合以上あるとはいえ….
12月に日程を終えてあの試合で引き分けた事が…と思わない様な結果になっている事を祈るよ…