鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

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お気に入りその2077~メルケル2

2022-05-02 12:57:27 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、メルケル2です。
メルケルさんの伝記「メルケル 世界一の宰相」を読みました。
今回は後半について感想を書きます。
メルケルさんの首相任期の後半が随分辛いものだったことを知りました。
辛さの原因の第一はトランプ大統領の登場です。
本書にはトランプが人の話を聞かない、人を攻撃する、事実と虚偽を織り交ぜて人を翻弄する、長い説明は飽きて聞かないなど、人としてどうなの?と言わざるを得ない人物であることが改めて書かれていました。
誰でも多少は自国ファースト主義であることは認めますが、自国だけ自分だけが良ければ他はどうでも良いという考えや行動を押し通すトランプのような人はどうしても理解できません。
メルケルさんは努めて冷静に接したようですが、苦労したと書かれています。
プーチンの相手をするよりも大変だったようです。
プーチンはメルケルさん引退後に牙をむきました。
盤石と思われていた西側陣営を内部から壊したトランプはプーチンより怖いかもしれません。
メルケルさんのいない西側諸国はこの二人にどう対応するのでしょうか。
辛さの原因の第二は極右政党の台頭です。
旧東ドイツの人々は旧西ドイツの人々に比べ経済的に恵まれないことを不満に思っていました。
そこに100万人にも及ぶシリア難民を受け入れたため、不満はさらに高まりました。
極右政党は彼らの不満の代弁者として一気に力をつけメルケルさんを追い込みました。
敬虔なキリスト教徒であり科学者でもあるメルケルさんが国民に対し事実を誠実に語りかけましたが支持率が見る見る下がていったときはとても辛かったことでしょう。
辛さの原因の第三は体調不良です。
無限の体力、鋼鉄の肉体を誇ったメルケルさんも長年の無理がたたって体調不良に苦しみました。
彼女の体に震えが起きて止められずにいる痛々しい姿がニュース映像として世界に発信されました。
これを見た人々は彼女が口にした首相引退を撤回させる事ができなくなったことでしょう。
ただ現在はどうでしょうか?
もし体調がすっかり回復したのなら世界を救うために再登場願えるかもしれません。
そんな淡い期待を持ちつつ読みました。
本書を読んだのは、プーチンを止めるためにメルケルさんが再登場できるかを知るためでした。
結論としては再登場はなかなか難しいのではないかと思います。
でもそれを知った上であえて言いますが、現在の世界のリーダーたちはメルケルさんに比べ何とも頼りなく、侵攻問題を解決に導けるかは甚だ疑問です。
任期の最後は本来総仕上げをしたかった環境問題を棚上げし、コロナ対策に明け暮れました。
国民に端的に命の危険を訴えロックダウンを求めた演説は、15年間事実しか語らなかった実績がものを言い、事の深刻さを十分伝える効果がありました。
ドイツ国民は、この稀に見る危機において信頼できるリーダーがいてくれることの幸運を感じたようで、この時期の支持率は80%に達したそうです。
ドイツ国民はメルケルさんの引退を目前にして初めて彼女を正しく評価したのではないでしょうか。
合理的に国の未来を考え、国民に耳の痛い倹約を求める政策を打つことで、国の収支を黒字に維持し、国力を高めた功績は計り知れません。
さらに膨大な難民を受け入れ、EUの経済的に苦しい国々を助けるなど、人道的な政策も実施しました。
派手なパフォーマンスを好まず、演説も事実しか語らず無骨でしたが、それだけに国民の信頼感は群を抜いていたと思います。
日本の政治家のバラまき競争とは、国民を思う政治理念が違い過ぎます。
赤字国債乱発に拍車をかけて子や孫の世代に重い借金を負わせることを何とも思わないのはとても危険なことです。
本来は国家財政の健全化を実現するために国民に倹約を求め、社会サービスを削減する政策を打つべきです。
そのためには国のための倹約ではなく子や孫のための倹約であることを明確に示さなくてはなりません。
それは圧倒的優位にある政権政党にしかできません。
かつて竹下総理は財政健全化を目指して消費税を導入したことから、国民の反感を買い支持率が消費税率を下回ったことが話題になりましたが、日本の未来を見据えた素晴らしい決断だったと思います。
政治家の保身のためのバラまき政策よりも、日本の未来を守るためには厳しい政策でも受け入れる度量を国民は持たなくてはいけません。
日本にもメルケルさんのような素晴らしいリーダーが登場することを願いますし、それを支持する国民でありたいものだと思います。
ちなみに本書後半には辛い話ばかりでなくメルケルさんがとても幸福を感じた場面も書かれており、それこそが本書で一番心に残りました。
それはハーバード大学の卒業式で彼女が行ったスピーチの場面を描写したものです。
最後にこの部分を引用します。
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彼女が登場すると、道徳的に正しいことを貫く勇気を持った、歴史に残る人物がここにいりという空気が生まれました。
今後はもう存在しえないかもしれないひとつの生き方を体現する我々の最大にして最後の希望がそこにいると。
学生たちは、メルケル首相が守ろうとしているものが、自分たちにも大いに関係があると理解しているようでした。
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