鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

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お気に入りその1366~純米酒を極める

2017-05-22 12:17:34 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「純米酒を極める」です。

先日、北海道新聞のエッセイ欄に本書のことが紹介されていました。
上原浩という「酒造界の生き字引」が書いた本です。
この手の本は、これまでウイスキーについて書かれたものをいろいろ読みましたが、そこそこかじったライターが書いたものと、業界関係者が書いたものがあります。
どちらもここまでズバッと斬り込んで書いたものを読んだことがありませんでした。
読み始めてすぐに、本書は一種の告発書であることが判り、真剣に読みました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
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酒は純米、燗ならなおよし――。
本来、米と水だけでつくる日本酒は、これ以上ないほど安全で健康的な食品である。
しかし戦中戦後の緊急避難策として始まったアルコール添加が定着し、経済効率のみが優先されてきた結果、「日本酒は悪酔いする、飲むと頭痛がする」といった誤解を生じさせ、今日の危機を迎えた。
我が国固有の文化である日本酒はどうあるべきか。
60年近く、第一線の酒造技術者として酒一筋に生きてきた「酒造界の生き字引」が本当の日本酒の姿と味わい方を伝える。
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本書が書かれたのは15年前の2002年。
著者は2006年に亡くなっています。
その後の日本酒業界を、著者はどう思って見ているしょうか?

戦中戦後のコメ不足に緊急対策として始められた醸造用アルコール添加(アル添)。
本書が書かれたのはその全盛期。

燗をするとアルコール臭が立つので、やたらに冷で飲むことをすすめます。
そして新型酵母により上立香(うわだちこう)のやたら高いものをつくります。
果ては三倍増醸酒の存在。
醸造用アルコールを大量に添加すると辛過ぎるため、糖類を大量に転嫁しなくてはならなくなります。
こうして米と水だけからつくるよりも三倍の量の酒ができあがります。
信じられない酒があったものです。
もしかしたら昔、合成酒と呼んでいた、やたらに安くて甘い、悪酔いする酒のことでしょうか?
ただしあまりに不味いため、アル添清酒をブレンドせざるを得なくなったそうです。

著者は醸造用アルコールの添加に多少の理解は示しています。
米と水だけで酒を作ることは難しく、万一腐敗させると何年も蔵に菌が残り、倒産の恐れがあります。
だからある程度までの発酵で止めて、アル添に頼るのだそうです。
ただしその場合は、日本酒とは呼ばず、清酒と呼ぶことで区別することを提唱しています。
米と水だけで酒をつくることはとても難しく、それができる技術者はそれほど多くないと述べています。

これまでアル添した酒を普通に飲んできましたが、本書を読んで考えを改めました。
今は味わいの違いがよく分からないながらも、「男山生もと純米」「神亀 純米酒」「大七純米生もと」で勉強中です。

それにしても、現代の科学をもってしても自動化できない酒造りの技って凄いですね。
その理由を端的に言い表した言葉を最後に引用します。
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同じ米と水、同じ酵母を使ったとしても、つくり手が違えば酒は違ってくる。
同じ酒造家がつくっても気持ちの入れようが変われば酒は別物になってくる。
醪(もろみ)の中には何億という微生物が活動する。
その複雑な働きを完全に予想することは不可能に近い。
科学万能の現代においても、理屈で説明できないことはある。
そこで重要になってくるのがつくり手の勘だ。
(勘とは)無数の経験の積み重ねによって発揮される瞬発的なひらめきである。
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