鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1998~牧野富太郎2

2021-02-26 12:41:26 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、牧野富太郎2です。
「牧野植物図鑑原図集 ~牧野図鑑の成立」の感想です。
届いてすぐにパラパラめくりました。
牧野富太郎が描いた図鑑原図を写真撮影して掲載しています。
紙の質や色、しわまで克明に再現しています。
しかもそのほとんどが原寸。
原図の欄外には図鑑の掲載番号などいろいろな但し書きが添えられています。
原図そのものを手に取っているような感覚でとても感激しました。
「素晴らしい!」とつい心の声が漏れたほどです。
妻が話しかけるのに生返事をしながら、次々現れる原図から目が離せませんでした。
注文するときは、1万円超もの価値が本当にあるのかと少し心配でしたが、現物を確認して納得。
大満足です。
科学と芸術が融合した美しい博物図を鑑賞することを目的とする私にとって、まさにお宝。
大切に1ページ1ページ図版を鑑賞しつつ解説を読んでいます。
本書はわずか2000部限定。
ボタニカルアートが趣味の方、植物学に興味がある方は、ぜひ今のうちにご購入されることをおすすめします。
紀伊国屋さんのHPに「在庫僅少」と出ていましたよ!
ちなみに北隆館のコピーは次の通り
=====
北隆館創業130年記念出版! 
牧野図鑑刊行80年を記念し、北隆館蔵「牧野植物図鑑原図」の最初で最後の蔵出し!
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図鑑好きには垂涎の品です。

さてそれでは本書の感想です。
まずは「はじめに」がとても素敵だったので、概要と感想を書きます。
数年前、北隆館から東大植物園・邑田教授のもとに創業130年を記念して北隆館が所蔵する牧野植物図鑑原図を収録した書籍を刊行したいという企画が持ち込まれました。
これまで牧野植物図鑑の改定に携わってきたとはいえ、3000枚以上ある牧野原図を改めて整理し直し新たな書籍にまとめることは物理的に不可能です。
書籍の制作方針が決まらない中、偶然にも東大博物館から植物画家・山田壽雄の図鑑原図が大量に発見されたという報が入りました。
山田は牧野の信頼厚く牧野図鑑の原図も描いています。
邑田教授は、本書の目的を牧野が描いた植物画と図鑑原図、山田が描いた牧野図鑑原図などを比較することで、牧野図鑑の成り立ちを解き明かすことに決めました。
この大事業には多くの専門家の協力が必要なため、編集委員会を組織して臨みました。
それぞれの委員が就任していく経緯が順に紹介されていました。
頼もしい仲間が一人また一人と増えていく様子をマンガ「ワンピース」と重ねながら読みました。
また邑田教授は、図版の模写を嫌った牧野が、自身は模写を行っていたことを指摘しています。
牧野の考えでは、植物の細部まで把握している者が、理想的な植物画を目にした時にそれを模写することは許されるのです。
この考えは十分理解できます。
牧野と図鑑競争を繰り広げた村越三千男の植物画は、植物の細部を把握せずに牧野の植物画を模写したため科学的に不正確なものになっており、認めることができなかったのです。
それに比べ牧野自身が英国ボタニカルマガジンから模写するときは、科学的に正確なため認められるのです。
正確なら認めるというという考えは、山田壽雄の描く原図を認めていたことに通じる部分です。
本書の内容が素晴らしいことは当然として、以上の通り「はじめに」もとても素晴らしい読み物です。
幸運にも本書を入手された方は飛ばさずにぜひお読みいただきたいと思います。

コメント
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