鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1997~たくさんのふしぎ4

2021-02-24 12:49:12 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、たくさんのふしぎ4です。
昨年たくさん読んだこのシリーズ。
これまで何冊読んだのか数えてみると、前回までで98冊でした。
今回の4冊を入れるとついに100冊越え。
随分たくさん読んだものです。
ところでこのシリーズは全部で何巻あるのでしょうか?
最新刊を調べると2021年2月号=通算431号。
これまで431もの不思議を紹介してきたのですね。
といことは、まだ1/4ほどしか読んでいない・・・。
300冊以上の読んでいない巻には面白くて興味深い不思議がいっぱいあるのでしょうね。
今後も楽しみたいと思います。
それでは「たくさんのふしぎ」シリーズ第4弾の感想を書きます。
①「サンゴしょうの海」
出版社の内容紹介を引用します。
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南の海に潜ってみましょう。
海の神秘を垣間見ることができます。
サンゴを中心にした食い食われの関係や巧みな共生。
美しいサンゴ礁で繰り広げられる自然の姿を紹介します。
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内容も魅力的ですが、どちらかというとお気に入りの画家・松岡達英さんの作品を鑑賞したくて選びました。
生き物が大好きな松岡さんがサンゴ礁の生き物たちを美しく正確に描いています。
ウロコ1枚1枚まで丁寧に描いているので生き物の特徴を写真よりも詳しく知ることができます。
さらにシュノーケリングの装備の選び方、装着の仕方、使い方までも絵を使って判りやすく説明しています。
また本書の主役であるサンゴについても細部まで丁寧に描くことで解説しています。
海水の出し入れにより体を出し入れする構造、エサを獲るための刺胞、光合成で作った栄養を分けてくれる褐虫藻、個体同士がつながる群体、成長し続ける骨格など、とても判りやすいです。
本書は絵だけでなく解説文もわかりやすく、特にサンゴと褐虫藻の関係が興味深かったです。
サンゴは獲ったエサを分解してチッソやリンを体内に飼っている褐虫藻に与えます。
褐虫藻はそれらを元に光合成でたっぷり栄養を作り、サンゴに返します。
そのおかげでサンゴの骨格がどんどん成長し、島のように大きくなるのです。
本書はサンゴ礁の入門書としてベスト。おススメです!
ただ本の制作方法に難点があります。
背景のイラストの上に直に生き物の名前を印刷しているためとても読みづらいです。
できれば白抜きしてから文字を入れるか、もっと目立つ色にして欲しかったです。
せっかく興味を持って読んでくれる子どもたちが名前を間違えて覚えてしまっては大変です。
1987年発行の本に意見しても始まりませんが、シリーズの今後に活かして欲しいです。

②「水爆の島 マーシャルの子どもたち」
出版社の内容紹介を引用します。
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太平洋に浮かぶ美しいサンゴ礁の島々、マーシャル群島。
しかし、この島々は40年以上前アメリカがおこなった水爆実験の「死の灰」がふり、その放射能が残っているのです。
今も食料の不足や病気で苦しんでいる人たちがいることを知ってもらいたいと思います  
=====
広島や長崎は原爆投下後何十年も草木が生えないだろうと言われたそうです。
ところが放射能はあっという間に消え、草木は茂り、普通の暮らしが戻りました。
なぜマーシャルの人々は40年以上も苦しんでいるのでしょうか?
その違いを知るべく読みました。
(ただし本書は1996年10月号で25年前の内容です)
前半はマーシャルののどかで幸せな暮らしを紹介しています。
週に一度飛行機が降り立つと島の子どもたちが総出で出迎えます。
大きなパンの実をたくさん焼いて食べ、ヤシの実でのどを潤し、子どもはさばきたての魚を大人から分けてもらいおやつがわりにします。
まさに楽園のような日常が紹介されています。
ところが後半は、40年以上前に行われた水爆実験により死の灰をかぶった人々が次から次へと登場します。
ある日予告なしに行われたその実験により何百キロも離れた島に白い灰がたっぷり降りました。
その晩から髪が抜け、皮膚がただれ、具合の悪い人が続出しました。
数か月後、アメリカから調査団が到着しました。
その後もアメリカは定期的に人体への影響を調査する船を派遣しています。
採血、採尿、X線撮影、甲状腺の腫れ具合の確認など。
でも診断結果を島民に教えてくれないので、みんなは不安がつのるばかり。
やがてガンで亡くなる人が増え、流産や死産が増えました。
水爆実験により楽園のような幸せな暮らしが失われたことを知りました。
これまでのたくさんのふしぎシリーズとは違い、本書には恐ろしい悲劇が描かれてたのでした。
もっと詳しく知りたくなり、豊崎博光さんというフリージャーナリストの方が書いた「キャッスル作戦とマーシャル諸島の人びと」(2015年6月公開)という論文を読みました。
この論文にはマーシャル諸島の人びとの身に起きたことが詳しく書かれていました。
1946年から1958年まで67回もの核実験が行われ、その延べ威力は広島型原爆の7200発相当であり、放出された放射性物質は地球全体に降ったそうです。
アメリカは放射性物質が島に偶然降ったと言ったそうですが、これは人体実験です。
救命のための治療よりも観察と記録、分析に重点が置かれていたことは明らかです。
島の人々の惨状が、苦悩が、悔しさが豊崎さんの論文から痛いほど伝わりました。
特に島の女性たちが産んだ子が「ブドウのような」「クラゲのような」「頭や骨が無い」子だった、というくだりに生涯忘れられない衝撃を受けました。
その後もアメリカは「あの実験が冷戦終結に貢献した」と実験を正当化する公式見解を発表したそうですが、島の人々はモルモットにされたと猛反発。
当然です。
豊崎さんは次のようにまとめています。
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核兵器爆発、原子力発電所の事故による放射能被害は非人道的、人権侵害であると共に人間を含めた生き物すべての生きる権利をも破壊することを改めて認識しなければならない。
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東京電力福島第一原発事故から来月で10年を迎えます。
原発事故は人々から健康的な暮らしを奪い、社会的つながりや文化を引き裂き、代々引き継がれてきた大切な土地から人々を追い出しました。
日本で発生する自然災害は年々頻度と規模が増しています。
想定をはるかに超える自然の猛威により、原発の運転や核廃棄物の貯蔵が今後危機にさらされる可能性は大いにあると考えます。
その危機に対処するため、もっともっと真剣に人類の英知を結集して欲しいと願います。

③「絵とき 生きものは円柱形」
出版社の内容紹介を引用します。
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自分の体の形を考えてみましょう。
指は?円柱形です。
腕は?足は?胴体は?どれも円柱形。
そして体全体でも円柱形です。
ネコもイヌも、足や尾や胴体など円柱形が多い。
植物も、平たい葉という例外もありますが、根、幹、枝など、やはり円柱形が多い。
なぜ生きものの形には、こんなにも円柱形が多いのでしょう?
その理由を考えていくと、生きものに共通するある特徴と、生きもののルーツが見えてきます。
=====
「円柱形から生きもののルーツが見えてくる」
この言葉に惹かれて読みましたが期待外れでした。
平たいものは支えがないと形を維持できません。
四角柱は角が弱く、何かにぶつかると欠けてしまいます。
それらに比べ、円柱形は強度があります。
だから生き物の体は丈夫な円柱形でできていて中の液体を守っています。
光を受ける葉、空気を押す羽、水を押すヒレは平たいので円柱形の支えがあります。
生き物の基本形は円柱形であることを学ぶことができます。

④「海中を飛ぶ鳥 海鳥たちのくらし」
出版社の内容紹介を引用します。
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鳥は空を飛ぶ生きものです。
鳥の中で海でくらし、海に浮かぶことができるものを海鳥といいます。
といっても海鳥のタイプはいろいろ。
いつも空を飛んでいるアホウドリやカモメ。
空を飛んでいたかと思うと海に飛びこみ、同じ翼を上手に使って海中を潜水するウミスズメやウミガラス。
空は飛ばずにもぐってばかりのペンギン。
いずれもエサをさがしてヒナを育てるのに懸命なのですが、さて、あなたなら、どのくらし方をえらぶでしょう?
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前にこのシリーズの「水辺の番人 カワウ」を読みました。
カワウが50km先の餌場まで空を飛び、水中を自在に泳ぎ、枝にとまって休憩することができる生き物界のオールラウンダーであることを知りました。
本書で紹介される海鳥の中にはカワウを超える能力の鳥がいるでしょうか?
結果的にはカワウほどのオールラウンダーはいませんでした。
登場したのはいろいろな分野のスペシャリストばかり。
500mもの深さまで潜る鳥、何百kmもほどんど羽ばたかずに飛び続ける鳥、生まれてすぐに親と同じくらいの大きさになる鳥、生まれて2日目で海上生活に移る鳥など。
特殊能力のオンパレードです。
特にペンギンとウミガラスの筋肉の違いについては興味深く読みました。
ウミガラスは空を飛ぶために翼を押し下げる力が必要です。
そのため胸の筋肉が発達しました。
ところがペンギンは海中を自由に泳ぐために翼を押し下げるときだけでなく、押し上げるときも力を入れることができるように、胸と背中と両方の筋肉が発達しました。
だからあの独特のシルエットになったと知りました。
本書は世界中のたくさんの海鳥を紹介したため、焦点ぼけしてしまったことが残念でした。
著者が暮らす天売島の海鳥たちに焦点を当て「これぞ著者ならでは」と思える情報を提供して欲しかったです。
まだまだご活躍されているようなので、次回作に期待します。


コメント
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