元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「咬みつきたい」

2009-06-09 06:24:34 | 映画の感想(か行)
 91年作品。会社の汚職事件の責任をとらされた上、殺されてしまった男が、ドラキュラとなって復讐するという日本映画では珍しいホラー・コメディ。こんなおちゃらけた企画がよく通ったなとあきれたものの、監督が金子修介なら話は別だ。なんといっても彼は話がマンガであればあるほど、作品にリアリティが出てくるという、珍しい才能の持ち主なのだから(これは褒めているのだ)。

 さらに、チャウシェスクが実はドラキュラの血の研究をしていて、それを安田成美扮する科学者の執事が日本に持ってくる導入部とか、緒方拳のドラキュラが昼間出歩いたために帰ってきたら老人になっているエピソードとか、ところが日傘とサングラスをかけていたら日光も平気だったり、人間に戻すために血を入れ換えるシーン(これってほとんどフランケンシュタインだ)、極め付けは採血する医者になりすまして血を集めるくだりなど、由緒正しいドラキュラ映画ファン(そんなのいるのか知らないが)が見たら腹を立てそうな場面のオンパレードで、徹底的に遊んでいるといった感じだ。第一、ドラキュラといえば昔から色白で長身の美男子と相場が決まっているはずだが、頭の薄い疲れた中年の緒方拳では、イメージが壊れてしまう(爆)。

 それではつまらない映画かというと、そうではないのだ。主人公と石田ひかり演じる娘の関係が丁寧に描かれていたり、吉田日出子の妻と彼女に思いを寄せる主人公の弟のエピソードなど、けっこう登場人物が等身大にとらえられていて、話が絵空事になるのを抑えている。そして安田成美が血を吸われるシーンのこの監督にしては耽美的なイメージも捨て難い。やっぱりファンタジーにこそ日常的リアリティが不可欠であるという、常識を再確認できる。空撮を生かしたカメラワークも見所のひとつだ。

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