元・副会長のCinema Days

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首相の靖国参拝が「個人の自由」でいいのか?

2006-08-28 07:03:00 | 時事ネタ
 8月15日のテレビは一日中「小泉純一郎首相、靖国参拝!」で大騒ぎしていたが、正直言ってそんなに騒ぐような事件ではない。だって、7月に小泉は「(谷垣禎一財務相が靖国神社を参拝しない考えを示したことに対して)参拝は個人の自由だ!」との考えを明らかにしているじゃないか。要するに参拝は小泉にとっての「個人の自由」ってわけだから、他の連中がギャーコラ言う筋合いのものではない。

 そもそも靖国参拝みたいな「近隣諸国にとっても、憲法解釈の面からも、デリケートとされる案件」を「個人の自由」で片付けること自体、おかしなことだと思う。政治家たるもの、「個人の自由」でゴリ押し可能なネタとそうでないネタがあるのことは、知っていて当然だ。中国・韓国からの「雑音」がどんなに的外れなものであろうとも、それが少なくとも表面上は「外交問題」になっているのは事実なのだから、そこで安易に「個人の自由」を振り回すのは子供じみている。

 靖国参拝をするならするで、これが外交・内政にどうリンクし、今後どのような方針で対処していくか、それを明らかにした上で断行すべきじゃなかったのか? だいたい、首相が靖国に行ったことで、日本を取り巻く諸問題が何か進展した(あるいは、進展する兆しが見えた)のか? 靖国に参拝すると北朝鮮がテポドン発射を控えるのか? 靖国参拝でGDPは大幅シフトするのか? 靖国参拝で竹島問題も解決か? 靖国に参拝したら憲法改正が成就するのか? だいたい靖国参拝を外交カードにするほどのしたたかさぐらい、首相は持ち合わせているのか? まあ、そんなはずはないよね。何せ「個人の自由」なんだから。「個人の自由」である限り、何をどうしようと「個人」にしか収斂されないネタなんだから。要するに小泉自身の「個人の趣味」の問題。彼にとって観劇や映画鑑賞と同等のレベルだ。ちなみに靖国には執心するが、広島での「被爆者代表から要望を聞く会」は完全無視。それも「個人の自由」ってか?

 遺族会も「8月15日の首相の靖国参拝マンセー!」なんて意味のことを軽々しく言ってほしくない。「ちゃんと“公式参拝”を明言すべきだ!」とか「略式ではなく正式な参拝の手順を踏め!」とか「まずはA級戦犯を犯罪人扱いしたコメントを取り下げてから参拝しろ!」とか、そういった硬派な主張ぐらいしてみなさい。英霊への追悼を「個人の自由」で片付ける首相なんて胡散臭いとは思わないのか?

 今回の騒ぎは、どうでもいいこと(←首相の個人の自由)をマスコミが針小棒大に取り上げることに関して、前年の「郵政民営化キャンペーン」と構造としては似ていると思う。大多数の国民にとっては、靖国参拝よりも年金問題その他の案件の方が重要なはずで、自民党の新総裁候補たちがそれについてどういう見解を示しているのかをクローズアップすべきなのに、まるで靖国参拝こそが国の将来を左右するかのような大騒ぎだ。またそれに釣られて周囲やネット上に「理由はどうあれ、とにかく首相が靖国に8月15日に行ったことは一歩前進だ!」と無邪気に褒め称える者が複数出てきたことも脱力ものである。

 再度念を押しておくが、今回の首相の靖国参拝は、やれ「(保守派の溜飲を下げたから)賛成だ!」とか「(政治・外交の面で)反対だ!」とかいう世論を喚起させるべきものでは断じてない。それが小泉の「個人の自由」(≒任期満了間近のパフォーマンス)である限り、国民としてはシカトすべきネタなのだ。

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