元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「永遠の愛に生きて」

2014-12-06 06:37:22 | 映画の感想(た行)
 (原題:SHADOWLANDS )93年作品。おそらく「ガンジー」や「コーラスライン」と並んで、リチャード・アッテンボロー監督の代表作として記憶されるであろう佳篇である。これまで幾度か実録物を手掛けてきた彼だが、その出来映え以前に事実の重みが強く印象づけられることが多かったように思う。しかし本作は、題材が広く知られた事実ではなく作家の私生活という(それまでの作品に比べれば)小さな世界で展開されるためか、ドラマとして優れた演出の構築性が前面に出ている。そしてそのタッチはスムーズで淀みが無い。

 1952年。「ナルニア国ものがたり」等で知られる小説家C・S・ルイスの名声は、本国イギリスをはじめ世界中に轟いていた。ある日、アメリカの女流詩人ジョイ・グレシャムから“あなたのことが好きになったので、息子と一緒に会いに行く”という不躾な手紙が届く。ルイスは興味にかられて彼女と会うことにするが、保守的な英国社会で育った彼は自分の意見をハッキリと言うジョイに面食らう。



 それでも彼女に惹かれた彼は、乱暴な夫と別れて活動の拠点をイギリスに移したいというジョイの意向を受けて、当初は戸籍上の夫婦となることを決める。だが、いくら戸籍上だけの連れ合いとはいえ、一緒にいる時間が長い二人の間にはカルチャーギャップその他の行き違いが生じ始め、次第に上手くいかなくなる。そんな中、ジョイが不治の病に冒されていることが明らかになり、ルイスは自分が彼女のために何をしてやれるのか、真剣に考えるようになる。

 作家としての成功の陰に、幼い頃に母親を亡くしたトラウマが大きく存在しているルイスの屈託。それを伴侶であるジョイの感性を通して浮き彫りにしようという、構成の巧みさが光る。またそれによって自分も彼女の人生そして愛の一部であったことを知り、自らの“闇の世界”(原題のシャドウランド)からのブレイクスルーを果たすのだ。元は舞台劇だが、その戯曲も手掛けたウィリアム・ニコルソンのシナリオは、ルイスの作品の真髄を知り抜いているのだろう。

 ルイスに服するアンソニー・ホプキンス、ジョイ役のデブラ・ウィンガー、共に好演。ロジャー・プラットのカメラによる映像は格調高く、ジョージ・フェントンの音楽も素晴らしい。

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