元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「レッド・ファミリー」

2014-12-05 06:43:05 | 映画の感想(ら行)

 (英題:Red Family)やっぱりキム・ギドクが製作に関わった映画はダメである。彼は世評は高いが、個人的には彼の作品のどこが良いのか分からない。いずれも思わせぶりな設定、センセーショナルなモチーフ、しかし内実はお寒い限り。シナリオを担当した本作も同様で、要領を得ない展開に終始している。

 郊外の住宅地に住む一見平凡な4人家族、しかしその実体は、母国からの密命を遂行するために韓国に潜入している北朝鮮の工作員チーム“サザンカ班”であった。表では仲良く見せかけても、一歩家の中に入ると厳格な階級社会に早変わり。鉄の掟で縛られたスパイ集団となる。主な任務は政治活動に手を染めた脱北者の“粛正”だ。

 そんな彼らに付きまとうのが、事あるごとに図々しく押し掛けてくる隣人一家である。鬱陶しく思いながらも、いつの間にか家族ぐるみで仲良くなってしまう。そんな中、メンバーの一人が母国に残した妻子が脱北に失敗し、身柄を拘束される。助け出すには大きな手柄を立て、それを大義名分にして上層部と交渉するしかない。ところが、先走った行動により逆に彼らは窮地に追い込まれてしまう。そして“サザンカ班”に悪影響を与えていると思われた隣の一家を始末しろとの命令が下る。果たして彼らに残された道はあるのか。

 シチュエーションはちょっと面白そうだが、ディテールが粗雑で話にならない。まず、どう見たって隣人達は“サザンカ班”が憧れを抱く“資本主義の権化”ではない。父親は甲斐性無し、母親は借金まみれで、息子はヘタレ野郎だ。しかも、下品でギャーギャーうるさい。こんなのが隣にいたら“サザンカ班”ならずとも“粛正”したくなる(笑)。少なくとも、マジメに付き合いたくはない連中だ。

 加えて言えば、彼らおよび現地司令部の面々は韓国暮らしが長いはずであり、資本主義にかぶれた(と思われる)“南”の国民なんか珍しくもない。それがどうして今回に限って親密になり、あまつさえ憧憬の念を覚えるのか、説明がまるで不足している。また“サザンカ班”の仕事ぶりはけっこう杜撰で、いつ司直の手が入ってもおかしくない。しかも手口は残忍で、相手が女子供でも簡単に抹殺してしまう。これでこの一家に感情移入しろと言われても、そうはいかないのだ。

 話もヘンにオフビートなところがあると思ったら、一方では残虐描写も出てくるし、ドラマ運びに筋が通っていない。終盤の脱力するような愁嘆場もどきを経て、御都合主義的なラストを見せられるに及び、ドッと疲れが出てきた。

 イ・ジュヒョンの演出はリズムが悪く、ギャグも外しっぱなしだ。キム・ユミやパク・ソヨンらのキャストは可も無く不可も無し。2013年の東京国際映画祭で観客賞を受賞したことが信じられないほど、ヴォルテージの低いシャシンである。

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