元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「モービウス」

2022-06-04 06:13:30 | 映画の感想(ま行)
 (原題:MORBIUS )特段手応えのある映画ではないが、ストレスフリーで画面に向き合い退屈せずに1時間40分ほどを過ごすことが出来た。ホラーテイストが苦手な観客ならば別だが、一般的な訴求力は高いのではないだろうか。マーベル映画ながら“一見さんお断り”のような態度が(ごく一部を除いて)見られないのもポイントが高い。

 ノーベル賞も獲得した医師のマイケル・モービウスは、幼いころから先天的な血液の難病を患っていた。彼には同じ病に苦しんでいるマイロという親友がいて、彼のためにも治療法を見つけるため日々頑張っている。やがてマイケルは、ある種のコウモリの血清がこの病気に効くのではという仮説を立てる。リスクを顧みずに彼は自らの肉体を実験台にして試すのだが、その結果、彼は超人的な能力を手にするものの、血液を飲まないと生きていけない身体になってしまう。一方、マイロはその血清の投与を強く希望していた。同じ頃、ニューヨーク市内では全身の血が抜かれた他殺体が次々と発見される。



 モービウスはマーベルコミックではスパイダーマンの敵役として登場するが、今回は(一応)スパイダーマン抜きで映画は進む。ひょんなことからスーパーパワーを得た主人公がその境遇に苦悩するという、ヒーロー物の定番を着実にトレースしている。敵役の設定は型通りで“安心”できるし、巻き込まれるハメになるヒロインも、ちゃんと用意されている。

 上映時間が短いせいか、主人公が罹患している疾病に関する説明が足りず、登場人物たちの行動が行き当たりばったりになる傾向はあるが、作劇のテンポが良いのであまり気にならない。ダニエル・エスピノーサの演出は活劇場面に力が入っており、画面の暗さをものともせずにスピード感に圧倒される。

 主演のジャレッド・レトは今回も役柄に応じて肉体改造じみたパフォーマンスを披露。いかにも現代によみがえったヴァンパイアの佇まいを再現していた。マット・スミスにアドリア・アルホナ、ジャレッド・ハリス、アル・マドリガルといった脇の面子も良い。

 そしてウケたのは終盤に“あの人”が登場する場面で、モービウスがマーベルの本流に今後どう関与していくか、興味は尽きない。オリバー・ウッドのカメラによる、ダークな映像世界の創出。そしてケレン味たっぷりだがその分効果的なヨン・エクストランドの音楽も、場を盛り上げる。

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