元・副会長のCinema Days

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「マグニフィセント・セブン」

2017-02-20 06:33:22 | 映画の感想(ま行)

 (原題:THE MAGNIFICENT SEVEN )楽しんで最後まで観ることができた。黒澤明監督の「七人の侍」(1954年)と、同作をハリウッドがリメイクした「荒野の七人」(60年)を原案に作られた西部劇。筋書きは事前にだいたい分かっているので、映画の出来は語り口と仕掛けによるところが大きいのだが、及第点に達している。

 西部の町ローズ・クリークの人々は、鉱山を所有しているバーソロミュー・ボーグの一味に搾取されていた。ボーグ一派は支配を完全なものにするために、住民を追い出そうとする。エマの夫マシューはこれに逆らったが、殺害されてしまう。ボーグが町を離れている間、エマは町を守るために7人の強者を雇い入れ、数週間後に町に戻ってくるボーグとの対決に臨む。

 依頼主は女性で、メンバーは多様な人種で構成されている。悪役は山賊の類いではなく、横暴な大企業(?)だ。そのあたりが今日性を反映していると言えるが、基本線は元ネタの2本とそう変わらない。しかしながら、7人の容貌がハッキリと見分けられ、それぞれの得意技が強く印象づけられているあたりは、アントワン・フークア監督の手柄だろう。また、活劇描写には定評があるフークアの演出は、アクション場面の配置には抜かりが無く、それがドラマ運びにも良い影響を与えている。

 「七人の侍」では悪者どもの人数が最初から決まっていて、その中の何人を片付けることが出来るのかという展開がストーリーの興趣になっていたのだが、上映時間が長くなるのは仕方が無かった。対して本作では敵方はカウントできないほどの多人数でやってくる。幾分大味だが、戦争アクションのような面白さが出てきて悪くない。

 フークワ監督は黒澤明の熱烈なファンであり、2004年に撮った「キング・アーサー」なんかは「七人の侍」の再映画化のような佇まいだった。それが今回“正式に”リメイクを任せられたのは感無量だったろう。

 ガンマンのリーダー格のサムを演じるのはデンゼル・ワシントンで、彼もまた黒澤明の信奉者だ。ここでの彼は「荒野の七人」のユル・ブリンナーよりも雰囲気は志村喬に通じるものがある。しかも、終盤にはサムがこの戦いに参加した“真の目的”が明かされるが、かつてフークア監督と組んだ「イコライザー」(2014年)の主人公を彷彿とさせ、元ネタ2本とは違うタッチを見せるのも面白い。

 クリス・プラットやイーサン・ホーク、ビンセント・ドノフリオ、イ・ビョンホンといった他の面子も良いし、ヒロイン役のヘイリー・ベネットや敵役のピーター・サースガードも良い。ジェームズ・ホーナーの音楽は申し分ないが、それよりもラストに流れるエルマー・バーンスタインの名スコアには感激した。とにかく、観て損の無い娯楽編である。

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