元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「亜人」

2022-08-22 06:25:08 | 映画の感想(あ行)
 2017年東宝作品。まったくもって、箸にも棒にもかからない出来だ。ある意味、昨今の日本映画のダメな点を集約したような内容である。まず、有名な元ネタ(今回は漫画)を安直に採用し、そして付け焼き刃的に脚色、さらには人気のある(と思われる)キャストを集め、なけなしの予算で作家性の欠片も無い演出家に丸投げする。興行成績に対する責任の所在は曖昧だ(製作委員会方式の弊害)。これらが全て垣間見えるような出で立ちのシャシンである。

 不死身の新人類“亜人”の存在が認知されるようになった日本社会。研修医の永井圭は、交通事故で死亡したはずが生き返ったのをきっかけに、亜人であることが発覚する。政府の研究施設に監禁されて非道な実験材料にされた圭は、同じく亜人の男である佐藤と田中によって救われる。しかし、佐藤らは人間そのものを憎み、東京の“亜人特区化”を狙うテロリストだった。その過激な思想に共感できない圭は、佐藤一派と対立することになる。

 大ヒットしてテレビアニメにもなった桜井画門による原作は読んでいないが、全17巻にも及ぶ長編のようで、これを2時間以内の映画に収めるのはどう考えても不可能だ。事実、いちいち突っ込むのが面倒くさくなるほど無理筋の展開やモチーフがてんこ盛りである。そもそも、主要キャラクターのバックグラウンドが十分描き込まれていないので、感情移入する対象が見出せない。

 肝心の活劇場面も大したことはなく、亜人が戦闘ツールとして現出させる“幽霊”の造形や動きもアイデア不足だ。本広克行の演出はいつも通りであり、深みの無いシナリオをトレースしているに過ぎない。あと気になったのが、佐藤たちがジェット旅客機を乗っ取ってビルに突入させる場面で、9.11テロのパクリのつもりだろうが、観ていて不愉快である(しかも、安っぽいCG処理)。

 主演の佐藤健をはじめ、綾野剛に玉山鉄二、城田優、千葉雄大、川栄李奈、浜辺美波、吉行和子、山田裕貴、宮野真守と、そこそこ名のあるキャストが顔を揃えているにも関わらず、誰一人として魅力を醸し出していない。それに、ユーチューバーのHIKAKINが何の脈絡も無く(お笑い担当として)出てくるのには脱力した。

 唯一感慨深かったのが、大林宣彦が顔を出していること。たぶん彼の最晩年のドラマ出演の一つだろうが、もしも脚本を大幅に改訂して大林に監督させればどんな作品に仕上がったのだろうかと、そんなことを思ってしまった。

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