元・副会長のCinema Days

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最近購入したCD(その42)。

2023-06-25 06:05:17 | 音楽ネタ
 ミズーリ州セントルイス出身の女性R&BシンガーのSZA(シザ)が2022年12月に発表したセカンドアルバム「SOS」は、10週全米ナンバーワンを記録するほど評判を呼んだが、長らくネット配信のみのリリースであった。ところが2023年5月にやっとCDでの発売が始まり、早速買い求めた。やはり音楽ソフトはフィジカルで所有した方が安心できる(笑)。

 内容だが、実に質が高い。R&Bだけではなく、ヒップホップやロックなどの複数ジャンルのテイストを取り込んでいるが、いずも自家薬籠中の物としており、それが精緻なアレンジと共に提供される。音像の一つ一つにまで神経が行き届いており、聴くたびに感心させられる。ハスキーな声質は魅力的であり、歌詞の内容もリアルで一切妥協が無い。売れたのも十分納得できる。



 ファーストアルバムの「Ctrl」が発表されたのが2017年だったので、この「SOS」の製作には足かけ5年以上も要したことになる。前作も決して悪くはなかったのだが、やはり2枚目の本作の方がキャッチーで良く練られている。なお、国内盤のCDにはボーナストラックが2曲収められており、お得感が強い。リリース後の国内ツアーも大盛況だったようで、当分彼女の快進撃は続きそうだ。

 東京出身ながら活動拠点を九州に移して意欲的な活動を展開していたジャズ・ピアニストの細川正彦が、2022年8月に急逝していたことを最近知りとても驚いた。まだ若かったのに本当に残念だ。彼の遺作になってしまった最新アルバム「デュオローグ」では相変わらず手堅いパフォーマンスを見せており、惜しい人材を失ったものだとつくづく思う。

 山本学のベースとセバスティアン・カプテインのドラムスを従えたトリオ作で、細田のオリジナル曲が多いが、チック・コリアやビル・エヴァンスのナンバーのカバーもある。細田のピアノは確固としたテクニックに裏打ちされた骨太なものだが、流麗な歌心がありロマンティックで美しい。決して甘くならず、ある意味ビターなテイストも前面に出るが、抜群のリズム感により幅広い層にアピールできると思う。



 なお、本ディスクはレコーディングエンジニアの小宮山英一郎が監修した“小宮山スーパーケーブル”を使用しており、96KHz32ビットのスペックで収録されている。だからというわけではないが、録音はかなり良い。低域から高域まで曖昧さが無く、位相が整ったサウンドだ。音場の掴み方は自然だし、音像の滲みも無い。オーディオシステムのチェックにも十分使える内容だ。

 コリン・デイヴィスがロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団を指揮して70年代後半に吹き込んだ「ペトルーシュカ」などのストラヴィンスキーのバレエ音楽3部作をまとめたディスクが廉価版2枚組で出ていたので、思わず買ってしまった。しかも、1963年にロンドン交響楽団とレコーディングした「春の祭典」もオマケに付いている。これが1800円ほどで手に入るのだから、コストパフォーマンス(?)は本当に高い。



 たぶん、それまで野趣に富んだケレン味の強い演奏が多かったストラヴィンスキーの作品を、純音楽的に練り上げたアプローチの嚆矢ではなかったか。どのナンバーも洗練された味わいで、しかも決してエルネギーは失わない。第16回(78年)レコード・アカデミー賞を獲得しており、特に「火の鳥」はこの曲の代表的名盤の一つだと思う。

 クラシックのソフトではアナログ録音の最終時期に当たり、それだけに従来からのノウハウの集大成的な仕上がりになるほど、このディスクの音は良い。音場は前後左右に広く、音像は決してヒステリックにならず中庸をキープ。それでいてボケたところは無い。63年版の「春の祭典」はさすがに古さを感じさせるが、資料的な意味合いはあるだろう。とにかく、買って損の無いCDだ。

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