元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「にっぽん三銃士 博多帯しめ一本どっこの巻」

2024-08-30 06:23:27 | 映画の感想(な行)
 73年東宝作品。私は福岡市総合図書館にある映像ホール“シネラ”の特集上映にて鑑賞した。72年に公開された「にっぽん三銃士 おさらば東京の巻」の続編という建て付けだが、私はそっちの方は観ていない。そのため、登場人物たちの設定が唐突で付いていけない部分が多い。だが、それはあまり気にすることはなさそうだ。何しろこの映画、大してコメントする余地は無い。良く言えば軽量級、率直な印象は単なる珍作だ。

 東京で何やらヘマをやらかして仕事も家庭も失ってしまった黒田忠吾と八木修、そして風見一郎の3人は、貨物列車に潜り込んで博多駅にまでたどり着く。福岡市内のスラム街で彼らは“カラス”のお新と知り合う。お新は仲間と共に酒場やレストランで客が飲み残したビールをかき集め、それらを勝手に“調合”して“玄海ビール”と称して売っていた。



 3人は早速ビール集めを手伝い始めるが、そこに立ちはだかったのがヤクザ組織“ウルフ興行”の総務部長で剣の達人である北風の健である。健は彼らをお新が雇った用心棒だと勘違いしたのだ。一方、大手ゼネコンがスラム街を買いとってパンスト工場を建築しようと企み、住民たちに立ち退きを要求してきた。

 福岡市総合図書館は福岡を舞台にした映像ソフトを収集しており、本作もその一環として所蔵されたものだと思うが、意外と福岡ローカル色は希薄だ。中洲や天神の風景は出てくるものの、重点的には描かれない。主なロケーションは川沿いの貧民街で、どこの県でもありそうな御膳立てだ。

 主人公3人の設定は戦中派と戦後派、そして戦無派の代表ということらしく、当時としてはそれだけで笑いを取れたのだろうが、今観てもまるでピンと来ない。任侠映画のパロディみたいな健の出で立ちも、全くキマらず弛緩した空気が流れるのみ。筋立ては御都合主義なのだろうが、現時点では“笑って済ませる”わけにもいかず、ギャグもすべて上滑りだ。

 小林桂樹にミッキー安川、岡田裕介の主役3人は確かに演技力はあるが、ここでは役柄上オーバーアクトを強いられているのが何とも言えない。健に扮する田中邦衛も手持ち無沙汰の様子だ。監督の岡本喜八は、ここでは肩の力が抜けすぎ(笑)。なお、冒頭に“東宝創立40周年記念作品”なるタイトルが現われて面食らってしまった。こういうお手軽な映画が“創立記念作品”になってしまったとは、当時いかなる事情があったのか、映画の中身よりそっちの方が気になってしまう。

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