元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

最近購入したCD(その38)。

2020-08-21 06:31:50 | 音楽ネタ
 2002年に英国チェシャー州ウィルムスローで結成された4人組のバンドThe 1975の4枚目のアルバム「仮定形に関する注釈」(原題:Notes on a Conditional Form )は、2020年度のロック・シーンを代表する名盤だと断言したい。とにかく、恐るべきクォリティの高さだ。

 このグループのサウンドは以前から聴いてはいるが、どうもピンと来ないというか、一回流したら“もういいかな”といった具合であまり訴求力は感じなかった(まあ、それでもセールス面では万全だったが)。ところがこの4枚目は、どのナンバーも密度が高い。しかも、曲調がバラエティに富んでいる。あらゆるジャンルをカバーしているかのようだ。それでいて、メロディラインが一貫性のあるエッジの効いたポップさで彩られている。



 本ディスクは22曲収録で、トータルタイムは80分以上というボリュームだが、少しも退屈させない。また歌詞も良い意味で“意識が高い”。現代社会を取り巻く問題について、そして人間にとって一番大事なものは何かという真摯な問いかけもあり、見事と言うしかない。とにかく、現時点で斯様な確固とした世界観を持つバンドが存在していること自体、奇跡だと思う。ロックファンにとっては必携盤だ。

 2020年9月に解散することが決定している3人組の“楽曲派”アイドルグループsora tob sakana(通称:オサカナ)のラスト・アルバム「deep blue」は、その独特のサウンド・デザインを大いに堪能できる内容になっている。アイドル好きだけではなく、一般の音楽ファンが聴いても好印象なのではないだろうか。



 彼女たちのやっている音楽は、プログレッシブ・ロック仕立てのポストロックと言うべきもの。変拍子の多用とエレクトロニカ風味等で、屹立した個性を獲得している。それでいて、アイドル歌謡としてのルーティンもしっかり確保しているというのが面白い。3人の見た目やステージ上での仕草や振り付けは、まさにアイドルそのもの(笑)。しかしながら、バックの演奏やアレンジは精妙で、そのギャップもインパクト大だ。

 それにしても、プログレとアイドルソングというのは、けっこう相性が良い。オサカナ以外にも、それらしい方法論を採用しているグループはいくつか存在するし、日本の“楽曲派”アイドルの動向は今後もチェックしていきたい気になる。今のところ“楽曲派”は女性ユニットばかりだが、男性版も聴いてみたい(でもまあ、この分野は某大手事務所の独占状態なので難しいかもしれないが ^^;)。



 ベルリオーズの幻想交響曲はポピュラーなナンバーだけに過去にいくつも名盤が存在したが、ここにまた一枚加えて良いと思う出来のディスクが登場した。アンドレア・バッティストーニ指揮の東京フィルハーモニー交響楽団によるものだ。バッティストーニは87年生まれの、クラシック界では若手といえる年代に属し、2016年から東フィルの首席指揮者を務めている。

 バッティストーニのパフォーマンスは実に筋肉質。力任せにグイグイと引っ張ってゆく。特に終楽章付近のノリの良さには圧倒される。それでいて解釈自体はオーソドックス。たとえば、この曲の代表盤と言われるシャルル・ミュンシュ&パリ管のような超ロマンティックなアプローチとは異なり、またクリストフ・フォン・ドホナーニ&クリーヴランド管のようなクールで突き放したようなスタンスとも違う。誰が聴いても納得するような、良い意味での中庸をキープする。

 また、録音がとても良い。このレーベル(DENON)らしい、ピラミッド型の帯域バランスで音場感の豊かさを実感出来る。カップリングは黛敏郎のバレエ音楽「舞楽」で、初めて聴く曲だ。雅楽の舞をベースにしているらしいが、ゆっくりした導入部から怒濤の展開を見せる第二部まで、飽きさせることが無い。この演奏だけでもこのディスクの価値は十分ある。

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