(原題:TWISTERS)ヤン・デ・ボン監督による「ツイスター」(96年)の続編という設定ながら、ストーリーは繋がっておらず、独立した一本として観ても一向に構わない。ただ、中身がさほど濃くなくて、アトラクションの趣がある点は前作と共通している。もちろん各キャラクターはそこそこ肉付けされており、ライト方面に振り切ったわけでもないのだが、鑑賞後にまず印象に残っているのは精緻な特殊効果であるのは正直なところだ。
ニューヨークで気象予測の仕事に就いているケイト・クーパーには、不幸な過去があった。学生時代に故郷オクラホマ州で竜巻の観測をしていた際に、巨大竜巻に巻き込まれて多数の僚友を失っていたのだ。そんな折、彼女はくだんの事故で幸いにも生き残った友人ハビからの強い依頼で、竜巻対策のため帰省することになる。そこで出会ったのが、ストームチェイサー兼映像クリエイターのタイラー・オーウェンズとその仲間たち。ケイトは彼らと反目し合いながら、当地に現出した超弩級の竜巻に立ち向かっていく。
ケイトが抱える屈託に加え、タイラーたちの一見いい加減ながら実は強い信念を持っている様子など、軽佻浮薄な登場人物の扱いは排除されている。竜巻多発地域が抱える社会的問題(阿漕な不動産業者の暗躍など)も取り上げられ、作品が薄っぺらくならない。そして何といっても、竜巻の圧倒的な描写だ。
本来は4DXで観るべきシャシンなのだろうが、通常の上映で鑑賞した私でもその凄さは分かる。ケイトたちがこんな化け物に果敢に立ち向かっていく様子を追うだけでも、映画的興趣は十分醸し出されてくるのだ。リー・アイザック・チョンの演出は前回「ミナリ」(2020年)の時よりも進歩しており、多少テンポが緩い場面はあるにせよ、あまり気にならないレベルに抑えている。
主演のデイジー・エドガー=ジョーンズは「ザリガニの鳴くところ」(2021年)の頃と比べて演技面はもちろん、ルックスに磨きが掛かっていることに驚いた。彼女を眺めているだけで本作を観る価値はある(笑)。タイラー役のグレン・パウエルをはじめ、アンソニー・ラモスにブランドン・ペレア、キーナン・シプカ、デイヴィッド・コレンスウェット、モーラ・ティアニーなど、脇のキャストも良い演技をしている。ベンジャミン・ウォルフィッシュの音楽はさほど目立たないが、的確な仕事ぶりだと思う。